A DAY IN MY LIFE

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2004/01/31/Sat.
▲快晴。
▲早朝から、鴨を撃ちに行く人たちについて、埼玉へ行く。猟の写真を撮ろうという魂胆だったが、あんがい鉄砲の弾は当たらないもので、猟果ゼロ。川原に落ちているゴミを観察するのが面白かった。風が強く、気温以上に身体が凍えた。帰りに古代蓮物語という施設の温泉に入った。家族連れでにぎわっていた。夜はイシカワさんのうちで鍋をご馳走になった。
▲そういえば。朝食は山田うどんで食べたのだが、いつのまにかファミレス化していた。うどん屋なのに、麻婆豆腐とか。しかし、店舗は昔ながらのカウンター主体のこぢんまりとしたもの。北関東のロードサイドショップの進化形態の一つとして興味深い。ネットで検索してみたら、ウォッチャーがちゃんといた。山田うどん伝説。山田うどんの公式ホームページもあるようだが、開かなかった。


2004/01/30/Fri.
▲快晴。
▲アサヒカメラ別冊『ニコンD70』(朝日新聞社・3月刊行予定)の取材で(株)ニコン大井町製作所へ。ニコンD70の開発に携わった方々にインタビュー。EOS Kiss Digitalのライバル機と目されるD70だが、その機能と性能はEOS Kiss Digitalよりも充実している(その分、価格はやや高いが)。プロのサブ機としても十分なほどだ。開発コンセプトなどについてお話をうかがった。
▲『ニコンD70』のマニュアル記事の構成完了。週明けにデザインに渡すことに。
▲横山秀夫『看守眼』(新潮社)読了。横山節は健在。刑事になれず看守を務めてきた男が、定年を迎える寸前、「刑事眼」ならぬ「看守眼」で事件の真相を喝破する表題作ほか、人の心の奥底にあるミステリーを鮮やかにあぶりだす短篇集。毎度、似たような話……と思いながらも引き込まれる。次もまた読んでみたいと思わせるだけの手堅さがあるのだ。昨年から単行本の刊行ラッシュが続く横山秀夫だが、1冊1冊のクォリティーは高い。当代の人気作家たるゆえんだろう。
▲編集者の岡本正史さんと、写真家の藤里一郎さんと歌舞伎町の888中華民俗料理村へ。岡本さんは昨年、写真家として初めての個展「here, there and everywhere」(art and river bank)を開いた。藤里さんは写真集販売レーベルREVERSE-ONEを主宰し、ダンスカンパニー「コンドルズ」とのコラボレーションをはじめとした作品を発表している。藤里さんがいま取り組んでいるシリーズは、格闘家・武田幸三をモティーフとした写真。いずれ写真集にまとめる構想を持っている。藤里さんとゆっくり話すのは初めてだったが、3人3様、写真について考えていることなどを話すことが出来、楽しい会だった。


2004/01/29/Thu.
▲快晴。
deptrai氏の写真展実行委員会。deptrai氏自ら焼いたカラープリント、ベタ焼きを見せてもらう。茗荷谷→池袋で飲み。深夜まで。


2004/01/28/Wed.
▲快晴。
▲サイトの更新や、今日の打ち合わせのためのメモ作りなどで午前中が終わる。午後はD70本のための原稿修正などなど。
▲『「噂の眞相」1行情報大全集』のデザイン打ち合わせ。傑作選に加えて、巻末にこれまで「噂の眞相」が掲載した1行情報のすべてが収録されることになり、「傑作選」から「大全集」にタイトルが変わった。さらに資料価値が増した。
▲打ち合わせの後、屋田くん来宅。夕飯を食べながら四方山話など。
西岡研介『スキャンダルを追え!『噂の真相』トップ屋稼業』(講談社)読了。新刊で出た時に一度読んでいる。その後、本売ってしまったのだが、もういちど読みたくなって買い直した。最初に読んだ時にも猛烈に面白かったが、二度読んでも面白い!
▲神戸新聞記者だった著者が転職先に選んだのは「噂の眞相」だった。朝日新聞が一面トップで「『噂の眞相』によると……』と書き、天下の朝日が「噂の眞相」の記事を後追いしたと話題を呼んだ則定検事長(当時)のスキャンダル記事、森首相(当時)の買春疑惑を追いつめる記事などを担当し、「エラい人を斬る」ことにのめり込んでいく。ペンによって権力者の「首をとる」ことの爽快感と、大手マスコミではタブーとされる情報を活字する小気味よさ。「噂の眞相」編集部の人々の個性を生き生きと描いているところも読み応えがある。


2004/01/27/Tue.
▲快晴。
▲古賀潤一郎が気になってしょうがない──というわけで、朝8時からの街頭演説を見るためにテレビの前に。街頭演説なら、会見のように質問に答える必要はない、というのは悪知恵だと思う。演説中に感極まって泣いてる、その自己陶酔ぶりも醜悪。政治家というのは、人の聞きたいことに答えず、自分の言いたいことだけを言う人種だということをあらためて実感した。そして、古賀の脳内と現実の世界には大きな隔たりがあることも。
▲自分の脳内では「卒業したと思っていた」のだから、現実に卒業していようといまいと関係ないのである。「悪気」はないのだ。こういう主張をされると、意外や、現実の側が古賀を断罪する言葉というのはなかなか見つからないもので、ようするに古賀という人の人格を攻撃するほかはなくなってくる。事実、アメリカのどこの大学を卒業していようといまいと、選挙の勝敗には関係なかったろうし。
▲しかし、見たくない現実を見ない人が国会議員ってのは明らかにまずいだろう。呆れるほかはない。しかし、訪米する頃の古賀を見ていると、このままアメリカで失踪して自殺するんじゃないかと思っていたので、生きて帰って、国会議員も辞めないという生命力の強さには感心してしまった。それが山拓復活死守という小沢親分の絶対的な命令を背景にしたものだとしても。
▲国会の会期中、しかもイラク派兵問題で揺れる「国家の一大事」にあって、電話一本で確認できることで渡米(いや、電話をかけることもなく、自分の心に問いかければわかることだろう)。たった1人の国会議員とはいえ、そんなに軽い仕事なのか、とも思う。
▲神田神保町。『「噂の眞相」1行情報傑作選』打ち合わせ。大まかなイメージが決まる。ところで、編集者屋田吾郎氏の最新刊は竹熊健太郎『竹熊漫談 漫画家の原稿料はなぜ安いのか』(イーストプレス・2月刊行予定)。「噂の眞相」編集長の岡留さんに「一般に漫画家の原稿料は高いと思ってるんじゃないの?」とツッコミを入れられていた。「なぜ安いのか」以前に「本当に安いのか?」というわけだが、そのへんも含めて、業界の内幕が書かれているらしい。楽しみだ。
▲神保町に来るといつも寄るのがアジア文庫。いつも何かしら面白そうな本を見つけることができる。今日は前川健一『旅行記でめぐる世界』(文春新書)を買う。前川健一は好きな書き手。過去の著書から、彼が読書家であることは知っていたが、予想通りの面白さで一気に読んだ。
▲体裁は日本人が書いた新旧旅行記のブックガイドである。『深夜特急』『なんでも見てやろう』のような、ベストセラーから、古典的名著、忘れ去られた本まで幅広く取り上げている。前川にとって心地よい本はもちろんだが、日本人の異文化への接し方の特徴がよく出ている本は不愉快な本であっても取り上げている。単なる「おすすめブックガイド」ではない。
▲アジア、アメリカ、ヨーロッパ、アフリカの世界各地を戦後の日本人がどう書いてきたか。日本人が旅というかたちで異文化に触れ、その異文化をどう受け止めたかを旅行記から探ろうとしている。戦後、時代とともに日本人が外国を旅するという体験が変化していった過程が、数々の旅行記によって鮮明に浮かびあがる仕組みになっている。
▲本を紹介すると同時に、日本人の旅に対する意識の変遷まで明らかにした本書は、一粒で二度、三度(紹介してある本をどれも読んでみたくなる。そして読んだらもう一度読み直したい)と楽しめるお徳な本でもある。惜しむらくは新書版ゆえ、分量が少ないこと。この倍くらいないと物足りない。もっともっと読みたかった。
▲好評だというドラマ『僕と彼女と彼女の生きる道』を見た。サラリーマンは哀しい、というお話なのかな? ずいぶん紋切り型だなと思ったけど。
▲スポーツニュース『スポルト』。グルジア出身の力士、黒海のレポート。今場所、初入幕を果たし見事勝ち越した。曙のKー1転向、モンゴル出身の朝青龍が批判されるさまを見ていると、相撲って何なんだろうと思う。伝統芸能(興業)なのか、スポーツなのか。伝統+スポーツという折衷的な概念の金属疲労が出てきているように思う。そもそも日本の伝統に「スポーツ」なんてものはなかったんだし。いっそ、海外巡業を「本場所」にして、世界的なスポーツにしたほうがいいんじゃないか──なんて、そんなに相撲には興味はないんだけど、ガイジン力士はつい応援したくなってしまう。


2004/01/26/Mon.
▲快晴。
▲早起きして仕事とかがんばろー! と思ったが、気がついたら12時を回っていた。
▲写真家の尾仲浩二さんと打ち合わせ。アサヒカメラ別冊『ニコンD70』(朝日新聞社・3月刊行予定)の記事で、尾仲さんにデジタルプリントをやてもらおうという企画。尾仲さん公式ホームページはこちら『Tokyo Candy Box』(ワイズ出版)について。ガイジンが撮った写真みたいですね、と言ったら、尾仲さんが「ガイジンが買うかと思ったんだけどね」と。カバーデザインのサイケな感じはたしかにそんな感じ。
▲もう一仕事してうちに帰ると、注文してあった和久峻三『京都嵯峨 柚子の里殺人事件』(角川文庫)が届いていた。「赤かぶ検事奮戦記」シリーズ31作。「噂の眞相」への私憤をぶちまけた長編小説と知ってアマゾンマーケットプレイスで買い求めたのだ。カバー裏の作品紹介に曰く「赤かぶ検事の活躍を通して無責任なマスコミ報道に対する痛烈な批判をテーマに描」いた作品だという(笑)。
▲元裁判官の人気作家が「冗談半分」なるゴシップ誌のスキャンダル報道に巻き込まれ、柚の里で死体となって発見される──というあたりまで読んだのだが、面白すぎる(笑)。元裁判官の人気作家は「さすが裁判官出身だけに、法廷の描写が実に的確だ。登場人物もなかなか魅力的だしよぉ」と赤かぶ検事をして言わしめているし、「冗談半分」については女刑事の口から「記事の中で人を誹謗中傷するときは、従業員の人権を侵害したとか、社会正義に反することをしているとか、セクハラをやったとか、ありもしないことをまくし立て、低俗な興味を煽り立てて、たた一筋に売らんかなの戦略なんです」と言わせている。この女刑事の言ってる内容が、そっくりそのまま和久峻三が「噂の眞相」に書かれた記事内容と同じなんだから、おかしいったらない。もちろん、赤かぶ検事ほか登場人物たちに「冗談半分」をコキおろさせることも忘れてはいない。しかも、この殺人事件の容疑者が「冗談半分」の編集長とその右腕なのだ(笑)。こういう、粘着的な妄想力、嫌いじゃない。もっとも、肝心の小説のほうは、会話ばかりがだらだらと続き、緊張感を欠くことはなはだしく、二時間ドラマを小説にしたような出来だけど。就寝前に読んで、疲れが少し取れた(笑)。


2004/01/25/Sun.
▲快晴。
▲写真ギャラリープレイスMで写真展を見る。あとでプレイスMのサイトで確認すればいいやと思ってポストカードももらっていなかったので、誰の何というタイトルの写真展かもわからない(過去の写真展の記録にもアクセスできるようにしてほしい!)。9.11とアフガン、イラクの3つがテーマのスナップ写真(カラー)。ムービーも回していて、パソコンで視聴できるようになっていた。ジャーナリストではないのだろう。旅人の視点で撮影したスナップ写真。いい写真もあったが、その「いい」がいかにも弱い。ようするに、通りすがりの人が撮ったという写真。では、通りすがりではない写真とはどんな写真なのか? と自問してしまう。写真で何かを表現するって難しいなあ、とあらためて思う。
▲プレイスMに併設されているブックショップで尾仲浩二『Tokyo Candy Box』(ワイズ出版)購入。以前から何度となく手にとっていた写真集。立ち読みで済ましてきたのは、どこか自分に関わりのない写真家だと感じてきたからかも。どこか批評されることを拒絶しているというか、わが道を行く感じの写真家なので一生縁がないような気がしていた。仕事でお会いすることになったので、ゆっくり見てみようと思って買ってみた。改めてじっくり見ていくと、この写真集の何が引っかかって、気になっていたのかが少しずつわかってくる。
▲すべてカラーで撮影された東京の写真だ。色調には人為的な操作が加えられ、紙質とあいまって、キッチュなムードを醸し出している。キッチュと書いたが、ようは安っぽい。しかし、安っぽいだけでは終わっていないところが作品の作品たるところで、確信犯的に作り出された安っぽさは東京という町によく似合っている。
▲90年代の東京を象徴するバブルの宴のあとに残された空き地。その空き地に野放図に育っている雑草。収まりの悪さというか、居心地の悪さ、ばつの悪さを感じさせる風景。その風景を突き放したような距離感で淡々と撮っている。それほど昔の写真ではないのに、時間的にも隔たりを感じる。その感性の特異さが印象に残る。
▲その後、仕事。泥沼化してる……。


2004/01/24/Sat.
▲快晴。
▲5時起きで北浦和の母の家に行く。もう、眠くて眠くて。
▲「噂の眞相」別冊『自由な言論』(1995年11月刊 創刊200号記念)、読み始めると止まらない。和久峻三と西川りゅうじんからの名誉毀損の刑事告訴を受けた「噂の眞相」。その背景には同誌の検察に対する疑惑追及に対する報復なのではないか? と実にウワシンらしい発想による記事展開。常に闘い続けるメディア「噂の眞相」の真骨頂だ。ほかにも、警察、長野地検、日本野鳥の会らの言論封殺と闘う人々の寄稿と、故竹中労のアナーキーな言論活動についての論評など、「自由な言論」をめぐる記事を掲載している。
▲もう1冊、「噂の眞相」別冊『日本の文化人』(1998年7月刊)。文壇、論壇の内実を暴露、文化人50人をメッタ切り……という一冊。ウワシンが小林よしのりとケンカしていた当時の別冊。巻頭の佐高信×田中康夫の対談がとくに面白い。二人のキャラクターのコントラストと、田中康夫の知性あるやぶれかぶれな言いたい放題。ほかにも文化人をめぐる暴露記事の再録が入っているが、文壇地図、論壇地図はとくに笑える。


2004/01/23/Fri.
▲曇り。
▲今年一番の二日酔い。いつもながら、生きていることを後悔したくなる。ニコンD70の液晶パネルのキャプチャー画像を延々と撮る。モニタに向かっていると吐きそうになる。ソルマック一気飲みで嘔吐を回避。作業は深夜まで続く。
▲高田馬場のファミレスBIG BOYで夕飯を食べたのは12時近かった。この店、このご時世にローストビーフのセール中。メニューにある「アメリカンハンバーグ」という字も痛々しい。店内も、暖房をケチっているのか、うすら寒い。客筋も相当にキテいて、茶髪のヤンキー娘や、グレた男の子がたむろっている一方、太った中年男が飯をぱくついているといった有様。客席から厨房をのぞくと「ローストビーフはすぐに出すこと。冷めているというクレームが多いです」という意味の貼り紙が見える。一事が万事、店員のやる気のなさが店全体を覆っている。結局、いっしょに行った二人はチキン、ぼくはシーフードドリアを頼んだ。味についてはノーコメント。


2004/01/22/Thu.
▲晴れのち曇り。
▲藤山哲人『萌える聖地 アキバ』(毎日コミュニケーションズ)に刺激されて秋葉原へ。
▲この街からは拒絶されている感じがいつもする。トーシローは来るな、というような。電子部品が小分けされた露店を楽しめない人間は来ちゃいかないっていうか。ミニスカのメイドさんたちがいる「メイド喫茶」に入ってみる。小綺麗な店内にはクラシック音楽が流れている。メイドさんたちは、店内の片隅でだべっている。それが仕事なんだろう。お客さんたちにその姿を見せることも仕事の一つだから。テーブルには「店内での写真撮影(カメラ付携帯電話を含む)を原則禁止」「90分までのご利用」と但し書きがある。コーヒー1杯400円。オレの前の席のハゲオヤジは、ずーっとメイドさんたちを見ている。その堂々とした注視ぶりが羨ましい。ちょっとキモいけど。
▲店内に張ってあるポスターには、ナースフェアとか、寒中水泳大会(スクール水着?)とか。イベントもあるらしい。
▲平日の今日は5〜6卓埋まっているという感じ。女性客もいる。
▲ファーを着たゲイっぽいお兄さんもいる。一人できている客はノートPCに向かって一心不乱。メイドさんに話しかけてる人はハゲ人オヤジだ。甲高い声で早口でしゃべる。いわゆるオタクっぽいの条件を忠実に満たしている。常連なんだろう。
▲まあ、なんというか、ここも一つの場末だ。
▲あきばおーで買い物。999円の光学式マウスとおにぎり党(2ちゃんねるgoods)のハンドタオル350円を買う。
▲仕事の続き。夜は焼き肉。新宿西口で日本酒。飲み過ぎる。どうやって帰ったか記憶がない。


2004/01/21/Wed.
▲曇り。
▲仕事は終日昨日の続き。
▲途中、D70のテストを兼ねてマニュアルページ用の写真を撮りに行くがパッとしなかった。後楽園まで歩いて揚げたてのメンチかつを食べたのが唯一の収穫。
▲三池崇史(文・構成=相田冬二)『監督中毒』(ぴあ)に痺れる。いま、日本で一番たくさん映画を撮っている監督、三池崇史が助監督生活、監督生活を語り下ろした1冊。哀川翔の本といっしょに本棚に並べておきたい! 三池はフリーの助監督として「ハングマン」などのテレビシリーズで働き、その後、Vシネマを撮り続け、やがて劇場用映画に進出していくのだが、そのバイタリティーあふれる仕事ぶりの原点がここに書かれている。
▲三池が現場に飛び込んだ時代、監督たちはまだ映画育ちの猛者がいた。キネ旬のベストテンに入るような監督ではない。プログラムピクチャーと呼ばれた、娯楽映画をひたすら撮っていた監督たちだ。井上梅次、村川透、児玉進、山根成之、野田幸男……懐かしい名前だ。ほかにも今村昌平、恩地日出夫らの現場についても語られている。
▲映画にしろ、テレビにしろ、劣悪な制作条件、過酷な労働現場に変わりなはい。その中で、三池は生き抜いていく。その闘いの日々が、そっくりそのまま三池映画になっている。お仕着せの企画を引き受けても、そこで好き勝手暴れ回る。その性根がどうできていったのか。本書にはその一端が生々しく描かれていて、ページを繰るのももどかしい。すべてのフリーランサーにおすすめしたい、男汁あふれる1冊!


2004/01/20/Tue.
▲晴れ。今日は安原顯さんの命日。合掌。
▲D70本のマニュアルページの制作がスタート。
▲長嶋有『ジャージの二人』(集英社)読了。1冊目の『猛スピードで母は』(文藝春秋)では佐野洋子、2冊目の『タンノイのエジンバラ』(集英社) では高野文子、そして、今回は大島弓子!(装幀は榎本了壱!)。本を手に取っただけで、なんか、いいなあ〜という感じ。この感じが、いかにも長嶋有。オビの背部分には「なんか こう…」とだけある。わかる人にはわかる微妙さがこの人の持ち味。波長が合う人にはたまらない。
▲これまでの2冊とちがい、この本は同じ主人公と同じ舞台設定の中篇2篇が収録されている。30直前の男が主人公。妻は婚外恋愛に夢中で、自分は失業中。母と離婚して新しい家庭を持っている父に誘われて、軽井沢の古い別荘に向かう。そこで、祖母が集めていた古着の中から、中学生のお古のジャージを着て生活する……というようなお話。長嶋有の小説には、子どもの頃に見た夕焼けのような切なさがつきものだが(といいつつ、切なさ、と言ってしまうとちょっと違うか。もうちょっと淡い感情かな)、この小説では、主人公の妻に対する嫉妬とか、憎しみがなんとも切ない。しかし、その切なさは主題ではなくて、真ん中にあるのは生活することのあてのなさ、という気もする。まあ、そのへんは読む人が勝手に考えればいいんだろうけど。
▲小難しい文学論とか……というものとは無縁で、かといって、心地よさだけの小説でもない。どこかひねくれているんだけど、決して悪い人ではないんだという、不思議な魅力。マイペースに面白い小説を書いていける人なのではないか。「ku:nel」の巻末のコラム「褒め負ける俺」も面白かった。おすすめです。


2004/01/19/Mon.
▲曇り。
▲「噂の眞相」編集部での作業は今日で終了。
▲アサヒカメラ別冊『ニコンD70』(朝日新聞社・3月刊行予定)の第2回目の打ち合わせ。写真家の尾仲浩二さんに電話、来週月曜のアポを取る。ニコンD70のマニュアルをコピー。
トーマ女史来宅。イクの匍匐前進、推進力がさらにアップしている。「高い高い〜」ってやつに異常に興奮。キャッキャと喜んでいる。お客さんがいる時にはことにご機嫌。


2004/01/18/Sun.
▲快晴。「スーパーエディター」安原顯さんの一周忌。
▲安原さん、晴れ男だなあ。お葬式も初七日も49日も、一周忌も、ことごとく晴れ。東漸寺で一周忌法要。個人的にメールをいただいたWさんの分まで焼香する。お墓参りをしてから、伊豆榮で精進落とし。作家の松本賢吾さん(最新作は『女の街』)、草野さん、びーへさん、モトヒロさん、翻訳家の井上真希さん(『サムライ ジャン=ピエール・メルヴィルの映画人生』が出たばかり)、幻冬舎の見城徹社長、村松友視さん(『ヤスケンの海』、まだお読みになっていない方はぜひ!)、露木茂さんら、昨年の49日と同じ顔ぶれが集まった。席上、マツケンさんに「日記ぜんぜん更新してないじゃないか!」と怒られ、有り難いやら申し訳ないやら。心を入れ替えてがんばります……。
▲帰宅してドラマ『砂の器』第1回。力作の予感。光と影を効果的に使った映像はシリアスドラマの王道。中居くんのシリアス演技も『白い影』に較べれば断然良い。
▲藤山哲人『萌える聖地 アキバ』(毎日コミュニケーションズ)。たまんない。アキバの人になりたいと思ったことがないわけではない。しかし、ならなくて良かった(なりたくてもなれなかった)と複雑な気持ちにさせてくれる「歩き方」。アキバのヒトにはなれないが、せめて本書をガイドにアキバを1日観光してみたい。
『萌える英単語 もえたん』(三才ブックス)。10万部突破のオタク専用英単語+例文集。イラスト、本の設定から、例文の絶妙さ、書体の一つまで、じつに丁寧に作り込まれている。英語を勉強し直したくなるね!(ウソ)。どんな例文かというと、[aid]ならこんな感じ→「少女の援助を申し出たいのだが、誤解されそうだ。 I want to offer to aid the girl but I am afraid that there may be a misunderstanding.」。[acquire]→「気がついたら、アニメのセリフを覚えていた。 I found myself being able to acquire the word in the animation film.」
▲しかし、この2冊を読んで思うのは、「萌え」なる言葉に独特のニュアンスをかぎとり、違った文脈で普遍化したオタク文化のパワーだ。ねちっこいまでにこだわった本の作りに感動。


2004/01/17/Sat.
▲曇り。ちょっと雪。
▲無印良品でガスコンロとガスボンベ、コーンチップス、麦チョコを購入。
▲「かぼちゃ」のハルちゃん、陽さんとクリリン来宅。ハルちゃんはチワワのぬいぐるみ、陽さんは豚肉ととらやの最中、クリリンは手作りの生春巻きを持ってきてくれた。アリガトゴザマス。


2004/01/16/Fri.
▲晴れ。
▲終日「噂の眞相」編集部。夜は「かぼちゃ」で飲み。


2004/01/15/Thu.
▲曇り。
▲「噂の眞相」編集部。午後5時に茗荷谷。オンライン書店bk1で打ち合わせ。午後6時30分から良心堂。アサヒカメラ別冊『ニコンD70』(朝日新聞社・3月刊行予定)の第1回目の打ち合わせ。3月刊行の予定ということで、時間がない。来週から本格始動。
▲オンライン書店bk1<怪奇幻想ブックストア>に東雅夫さんの幻妖通信巻頭コラムの再録記事(鴻斎! 貢太郎!! 龍彦!!! 夏彦!?――怪異雄勁の文学の系譜)をアップ。石川鴻斎の『夜窓鬼談』(春風社)から京極夏彦まで、「怪談」「奇談」の系譜をさらりと。面白いです。もう一つ、東さんの人気連載幻妖週報〜店長備忘録〜も更新しました。
▲bk1での打ち合わせでも話題に上った直木賞。京極夏彦さんが『後巷説百物語』(角川書店 )で受賞! ところが、今回は芥川賞受賞者の二人が19歳と20歳の女性ということで、当代の人気作家である京極さんと、江國香織(『号泣する準備はできていた』(新潮社))はほとんど無視状態。直木賞の二人は遅すぎるくらいの受賞だったせいかもしれないが、割を食ったかたちになった。
▲芥川賞は女性で若い(で、ルックスもいい)ということが話題になっているが、いいんじゃないでしょうか。村上龍が芥川賞の審査員になったあたりから始まった潮流が、大きな波になったのが今回の芥川賞だという気がする。長嶋有、吉田修一、吉村万壱、そして今回の芥川賞の二人あたりの作品というのは、明らかに芥川賞的なものから逸脱している。で、ぼくはけっこうこの人たちの小説は好きです。なにしろ、「文学=偉い」って感じがしないところが良い。


2004/01/14/Wed.
▲曇り。
▲「噂の眞相」編集部。昨日とほぼ同じパターンの1日。


2004/01/13/Tue.
▲晴れ。寒い。
▲「チーズプラザ」でお世話になったイラストレーター、近藤恵子さんが長男出産! おめでとうございます。
▲終日「噂の眞相」編集部。「噂の眞相」のバックナンバーが合本形式できれいに揃っている。創刊は79年だが、1行情報が始まったのが80年から。屋田くんと2人で手分けして合本をめくっていく。1行情報を見ていくだけだから、サクサクとすすむ。しかし、記事も気になる。ページを繰る手が止まると、屋田くんに叱られる。彼が出ている時にこっそり読もう……と思う。初期はとくに出版社、出版人などの研究が冴えている。もともとはマスコミ・ウォッチングの雑誌なんだろう。反権力、有名人に対する意地悪なヒューマンインタレストは一貫していて、創刊以来、その姿勢がブレていないことに驚きを感じる。個性的な編集長が一貫して仕切っているからだろう。凄い。誌は生き物だ。続いていくうちに、成長もすれば衰えもする。私見では、「噂の眞相」はまだ壮年期。休刊は惜しい。ひたすら1行情報を読んでいくので、午後には眠気に襲われるのではと危惧していたが、まったくそんなことはなかった。面白すぎる。
▲編集部は校了明けということで静か。岡留編集長の出社は夕方から。手書きで原稿を書いていた。


2004/01/12/Mon.
▲晴れ。成人の日。体育の日は10月10日、成人の日は1月15日と思ってるのは昔の人ってことになるのかな? このフレーズ、毎年日記に書きそうな気がする。まあ、いいけど。
▲坂木俊公『死体洗いのアルバイト』(イーストプレス)、みなもと太郎『冗談新選組』(イーストプレス)などヒット作を連発している編集者の屋田吾郎氏宅で打ち合わせ。以前から飲むたびに屋田くんが口にしていた『「噂の眞相」1行情報傑作選』(仮)が実現する運びになり、その編集のお手伝いを頼まれた。明日から「噂の眞相」編集部に通って、バックナンバーから1行情報を引っぱり出すことに。ぼくも『ウワシン』の愛読者なので、ワクワクする。『噂の眞相』休刊に合わせて3月に出す予定だというから、あまり時間はないが、そのほうがライブ感(?)が出るかも。
▲『冗談新選組』をいただいて帰り、さっそく読む。今年のNHKの大河ドラマ『新選組!』の脚本を書いている三谷幸喜も大ファンだというみなもと太郎の傑作マンガ。三谷幸喜とみなもと太郎の対談も収録されている、充実の復刊。企画と、三谷・みなもと対談の司会・構成は斎藤宣彦さん。気合いの入った好著ナリ。
▲月9『プライド』野島伸司脚本、中江功演出による月9の「王道」ともいえる作品。アイスホッケーチームが舞台というところは新味だが、野島の旧作(というかデビュー作)『君が嘘をついた』(1988年)の自己模倣っぽいところもあり、懐かしさ半分、パワーの半減を感じて寂しさ半分。キムタクと竹内結子の持ち味を生かして、出だしはまずまず。
▲よみうりテレビのドラマ『乱歩R』。吉本興業+乱歩という奇妙な取り合わせ。藤井隆が三代目明智小五郎を演じるのだが、マシュー以外の藤井隆なんか見たくない! 大滝秀次が「小林老人」なら、いっそ、小林信彦の傑作『中年探偵団』(絶版かよ!)の設定を借りてドラマ化して欲しかった。


2004/01/11/Sun.
▲晴れ。
▲デジカメで撮ったイクヤの写真を家庭用プリンタでプリントアウト。楽しい。親バカもいいところ。見せられる人は可哀想。でも見せるけど。
▲天気がいいので、新大久保まで写真を撮りながら歩く。歩くたびに新らしい店が増えている。中国茶+台湾料理「紅鶴」。韓国食材店も。職安通りまで歩き、ドトールで土屋隆夫『天狗の面』(光文社文庫)を読んでいたら、眠くてたまらなくなり、西武線に乗って帰宅。
▲Y女史が来ていた。夜は彼女も交えて白菜鍋に。


2004/01/10/Sat.
▲晴れ。
▲物置部屋の奥に小さな机があり、そこがささやかな仕事場なのだが、暖房器具がないので、冬はダイニングテーブルにノートPCを置いて仕事をしている。今日は物置の本を片づけ、久々に机を「発掘」した。どんな狭いところでも、腰掛けるとそれなりに広く感じるから不思議だ。
▲午後5時30分にA氏とルミネ1のスタバで待ち合わせ。青山ブックセンターを冷やかすも気になる本はとくになし。しょんべん横町からゴールデン街、文壇バーを経由して東京麺通団。新宿西東。長い夜に。


2004/01/09/Fri.
▲晴れ。
▲新宿。クリリンと「お多幸」でおでん。1年ぶりくらいに「H」に行く。この店に11年勤めているという生き字引のようなキャバクラ嬢に出会いたじろぐ。歌舞伎町の闇は深い。心療内科に通っていたS嬢も元気になったようで何より。


2004/01/08/Thu.
▲晴れ。
▲四谷三丁目。Days Photo Gallery。永井明写真展「HORIZON」。『ぼくが医者をやめた理由(わけ)』(角川文庫)シリーズや、漫画『医龍』の原作者として知られる永井明の写真展。船医を務めている永井が出会った水平線の数々がカラープリントに。はじめての旅でインドネシア洋上の水平線の意外な表情の豊かさに驚かされたことを思い出す。ギャラリーではこの「HORIZON」の1,000円のミニ写真集を販売していた。Days Photo Gallery最初の「出版」だという。昨年オープンしたばかりのDays Photo Galleryだが、次々に新しい展開が続く。今年はワークショップも開くという。要注目。
▲Days Photo Galleryの目と鼻の先にある写真ギャラリーがギャラリー・ニエプス。主宰者の写真家、中藤毅彦さんにdeptrai氏を紹介する。3人で「あぶさん」へ。
▲うちに帰って「情熱大陸」。鬼海弘雄さん。浅草を回遊する人間たちを捕まえて撮影する。インドをぶらり歩いてはパチリ。写真家の一つの理想の姿じゃないかと思う。鬼海さんには1度取材でお目に掛かったことがあるのだが、テレビのなかの鬼海さんと寸分違わぬ印象。浅草とインドが地続きだと感じさせてくれるのも、鬼海さんのテンションが変わらないから。不思議な人だ。
▲「白い巨塔」。第二部スタートの2時間スペシャル。気合いが入っている。アウシュビッツまで行っちゃって……。ぼくもアウシュビッツを訪ねたことがある。テレビドラマの撮影は初めてとの触れ込みだったが、見学者の撮影は自由にできる。この悲惨さを多くの人に知らせて欲しいという理由からだと断りが書いてあった記憶がある。たしかに訪れる価値のある場所だ。人間が組織的に規律正しく、どこまで間違ったことができるかがよくわかる。


2004/01/07/Wed.
▲晴れ。
▲身体がだるい。今シーズンはいまだ風邪知らず、なんぞと見栄を切ったのがマズかったのか。口内炎も。頭も痛い。
▲苦手な事務作業。思った以上に手間取ってイライラ。
▲まだ年賀状を書いている。沖縄モノレール開通記念切手を貼って投函。
▲オンライン書店bk1<怪奇幻想ブックストア>がお送りするメールマガジン幻妖通信無事配信完了。まだ登録されていない方はぜひ!


2004/01/06/Tue.
▲晴れ。
▲田口久美子『書店風雲録』(本の雑誌社)読了。
▲1980年代後半、池袋リブロという大型書店が異彩を放った。単なるジャンル別、著者別の棚ではなく、「文脈棚」と呼ばれた独得の棚作りで、情報発信基地としての書店を強くアピールし、リブロへ行けば面白い本が見つかると本好きに支持された。当時、ぼくは大学生で買うのは大学生協(1割引だった)と決めていたが、この本屋に行くと何かしら欲しい本が見つかって困った(金銭的理由で)記憶がある。当時はほかの書店と比較して云々という視点は持ち合わせていなかったので、単に好きな本屋に過ぎなかったが、のちにぼく自身がオンライン書店bk1に関わり、池袋リブロが業界で伝説の書店だったことを知る。
▲本書は、元リブロ社員で池袋リブロの店長でもあった著者が、自身の記憶を掘り起こしながら、同時にリブロの黄金時代を担った人々に取材した1冊。時代背景と業界の事情を織り交ぜながら、伝説の書店はいかに作られたのかを書いている。
▲個人的に驚いたのは、先日亡くなった中川道弘さんがリブロ池袋店初代店長だったこと。中川さんの名前は、上野で古書店を営んでいる安原顯さんの同級生といして、何度も安原さんから聞いていたが、リブロの店長だったとは! また、安原さんがリブロに協力して豪華出演者による対談イベントの相談に乗っていたことも初めて知った。まさに書店という枠を超えた情報発信を盛んにやり始めたはしりがリブロだったのだろう。
▲さらに個人的なことになるが、リブロの黄金時代を築いた1人で「今泉文脈棚」として今も語られる伝説の書店員、今泉正光さんは池袋リブロに異動する前に前橋西武のブックセンターにいたのだが、ちょうどその時代、ぼくは学校帰りにしょっちゅうそのブックセンターに行っていた。小学校の6年生から中学くらいまでの間だと思うが、まさに本屋をうろつくことにヨロコビを見いだしていた頃で、西武のブックセンターと煥乎堂(かんこどう)をはしごするのが楽しみだった。煥乎堂は地元の大型書店で、これも後に知ることになるのだが、地方書店の雄として古くから知られる地方文化の拠点だった。たしかに、煥乎堂に行けばない本はない、と子供心に思っていた。一方、西武のブックセンターは規模では煥乎堂と比較にならなかったが、わくわくするような本(サブカルチャー関連が充実していた)や、見たこともないような本(文学、芸術のシブい本)がたくさんあったような気がする。もっとも子供の小遣いで買える本は限られているから、大した買い物はしなかったと思うけど。いずれにせよ、西武のブックセンターと煥乎堂という二つの書店が人格形成に大きな影響を与えたのは間違いない。そして、大学に入ると、池袋リブロがあった。ちょうど西武セゾングループの文化戦略が最高潮だった頃だ。ぼくらの世代は、よくも悪くもセゾン文化に人生最初の一撃を食らった世代なんじゃないかと思う。翻っていえば、「文化」なるものに憧憬を抱く最後の世代ではないかとも思うが。ちなみに、前橋の西武はのちに西友の格下げになり、書店の規模も縮小された。先日久々に前橋に帰った時に聞いた話では西友そのものが撤退するとか。もう一方の煥乎堂も昔日の面影はない。まあ、そこには郊外型店舗が隆盛を極め、町の中心部が空洞化しつつある群馬特有の事情が一番大きな影響を与えているんだけど。
▲そんなわけで、『書店風雲録』は自分の体験を思い出しつつ、涙なくしては読めない本だった。ぼくらの世代は「西武セゾン・グループの文化戦略」にお世話になった世代だなあ、と改めて思った。日本のカルチャー、アートシーンで「西武セゾン」以前と以後という線引きができるんじゃないかな。今現在の印象から、経営的な失敗ばかりが印象づけられている西武セゾンだが、その恩恵に被った世代があることは間違いなく、やがて再評価されていくような気がするな。


2004/01/05/Mon.
▲晴れ。
▲まだまだ年賀状。仕事始めと決めてあったので、年を越してしまった原稿にも取りかかる。それから、オンライン書店bk1のほうの仕事もスタート。
▲日記、ずいぶんサボっていたのでまとめて。12月も書き加えたので、よろしかったらそちらもどうぞ。また、1月1日のリンクからも張ってありますが、アルカリ日記で取り上げた本と映画の中からおすすめ


2004/01/04/Sun.
▲晴れ。
▲年賀状のラベル印刷で1日暮れる。難儀だった。
▲土屋隆夫『針の誘い』(光文社文庫 土屋隆夫コレクション)読了。大泉町の本屋で買った。シブい文庫があるじゃん、と。土屋隆夫は寡作で知られるベテラン推理小説家(という古風な呼び方が似合う)。ディスクン・カーとかエラリー・クイーンが引用されるような、「本格」ミステリーだ。ここまで伝統に忠実で、なおかつ古めかしいとなると、逆に新鮮。中坊の頃に端からミステリを読んでいた頃を思い出す。「土屋隆夫コレクション」には表題の長篇小説以外にも中短篇が収められていて読み応えがある。本書に収録されている作品も、いずれもよく練られていて、読みはじめると止まらない。表題作について紹介すると、千草検事という探偵役が活躍するシリーズ。中堅菓子メーカーの社長の1歳になる娘が誘拐される。身代金の受け渡しに出向いた妻が殺され、事件は迷走する。犯人は誰なのか? アリバイはどう崩せるのかなどなど、おなじみの謎をめぐって物語が二転三転する。シンプルだが、手強いミステリ。


2004/01/03/Sat.
▲晴れ。
▲今日は群馬県のリトルブラジル、大泉町を見物に行くことにしていた。
▲駅まで写真を撮りながら歩く。すでにアカの他人の町になった前橋は新鮮だ。上毛電鉄裏から、飲屋街のさびれ方など愉快。スナックの看板のセンス一つに泣ける。「大衆クラブ アメリカン」「おふくろの味 コロンビア」「スナック エルメス」などなど。
▲2年ほど前に構えだけはきれいになった上毛電鉄。1時間に2本だけのローカル線だ。乗り込もうとして、さて、どこがめざす駅なのかわからない。二人もいる女性駅員に訪ねようとして果たせず(恥ずかしかった)、適当に切符を買ってから電車の中で大泉町への行き方を検索する。結論としては大間違い。東武伊勢崎線だった。
そもそも緊張感のない旅なので、急遽、ぶっり途中下車の旅にする。沿線の中で比較的大きな駅そうな「大胡」で下車。駅前に真新しい風車があって驚いた。ここはどこだ? 商店街は気持ちいいほど閉まっていた。これぞ正月風景。東京は店が開きすぎていて正月気分がない。自分の原風景ってこんな感じだったなあ、と畑と住宅地を見渡した。
▲赤城駅で東武伊勢崎線に乗り換えることができるとわかり、切符を買う。赤城駅で乗り継ぎの30分ほどの間に駅前のラーメン屋でラーメンと餃子。やっとメシにありついた。
▲太田駅下車。はじめて降りた。ブラジリアン・ショップのほかにハラール(イスラムの儀式にしたがって捌かれた羊肉などのイスラム食材)ショップもある。太田駅前そのものは寂しいかぎり。 東小泉駅で乗り換え。西小泉駅へ。ようやくリトル・ブラジルにたどり着いたときには3時を回っていた。
▲街には予想以上に日系南米人の姿が目立つ。ちょっとしたショッピングセンター「ブラジリアンプラザ」では日本人は見かけなかった。ちょっとした外国気分を味わえる。街そのものは田舎町らしく閑散としているが、南米系の店だけが活気がある。もっとも、群馬ではロードサイドショップが発達しているので、もともとの地元の人たちはクルマで買い物に出かけるというライフスタイルなのだろう。事実、前橋も大田もそれなりに大きな町だが、駅前のさびれ方はちょっと異常なほどだ。
▲西小泉駅前にはブラジルで急成長している神の国ユニバーサル教会がある。プロテスタント系新興教団で、ブラジルでは主流派であるカソリック系勢力と鋭く対立しているとも伝えられている。チラシをもらったが、生活上での道徳面に厳しい教義がうかがえ、生活レベルの向上を目指すよう説いている。なるほど、現世的でわかりやすい。
▲森見登美彦『太陽の塔』(新潮社)読了。日本ファンタジーノベル大賞受賞作だが、どこがファンタジー? と思った。まあ、そんなことはとるにたらないことだが、この小説、ぼくにはよくわからなかった。たしかに出だしからしばらくはいい感じだし、文章も面白い(と最初のあたりでは思った)。しかし、次第に飽きてきてしまった。女性に恐怖感に近い苦手意識を感じる京大生たちが、男だけの妄想を膨らます一方で、主人公は別れた女の子のことを忘れられないでいる。それどころか、「研究」と称して後をつけ回している。その主人公に立ちふさがる男が登場するが、その男もまた似たもの同士で……。せめて妄想が面白ければそれで十分にモトは取れたと思うのだけど。こちらがすれてしまったのか? とも思うけど、単につまらない小説ではないかという気もする。微妙。


2004/01/02/Fri.
▲晴れ。
▲何かと慌ただしい。というのも、年賀状を1枚も出していないからだ。名簿の整理だけで時間を食い、さらにラベル印刷に手こずる。時間切れであきらめる(言い訳)。
▲有栖川有栖『白い兎が逃げる』(光文社カッパ・ノベルス)読了。謎解きを中心にした本格ミステリー短篇集。推理作家有栖川有栖と、犯罪心理学者火村のコンビが事件に挑む。古風、王道。すらすら読めて面白い。十代前半にこういうミステリー、よく読んだような気がして懐かしい。
▲前橋へ。高校を卒業するまでこの町に住んでいた。高校時代の恩師、友人たちと小さな新年会。高校時代は男子校だったせいで、ごく平坦な毎日を送っていたものだから、正直、この頃のことはあまりよく覚えていない。話題にのぼる同級生の名前もほぼ完全に忘れていて、本当にあの学校にいたのか不安になる、というのはウソだが、この会のメンツとも、高校を出てからの方が親しくしてもらっているような気がする。
▲会に出るのは2年ぶりだったので、結婚して子供ができましたと言ったら驚かれた。たまたま昨年2月に第1子が生まれた友人がいて、子供の名前を「紘子」と付けたと聞き、その趣味の良さに親しい気持ちを持った。今時の突飛な名前になじめないのである。4時すぎまで飲む。いまはもう前橋に帰る家はないので、駅前のビジネスホテルに泊まる。


2004/01/01/Thu.
▲晴れ。
▲ヤフーグリーティングによるメッセージを複数の方からいたいだいたので、年賀状代わりにグリーティングカードを数十人の人に配ってみる。うちのプリンタの調子が悪く、年賀状印刷のはかがいかない。それに、メルアドしか知らない人もけっこういる。メルアドがわかっている人にはメールで……と。しかし、名簿が不備なことがわかり後からもう一度配信することに。ヤフーのグリーティングカードを使ったのだが、文字制限1000はキツイ。結局、入れたい内容の半分くらいしか入らなかった。
▲入れたい内容というのは、昨年の「収穫」。超個人的なお薦めである。入りきらなかったものを含めてこちらに挙げておきます。
▲おふくろのうちにイクヤとカミさんを連れていく。イクヤがケラケラと笑ってくれたおかげで、場の雰囲気がずいぶん助かった。感謝。
▲田舎の正月風にだらだらと飲んで食う。テレビはくだらない番組ばかり。昔はマキノ雅裕の『次郎長三国志』あたりの折り目正しい日本映画を延々と放送していたりしたものだったが。


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