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2001/12/31/Mon.
▲晴れ。
▲ゲ、もう今年も終わりかよ! と思っている人はたくさんいるんだろうな。
▲池袋で写真家の中藤毅彦さんと打ち合わせ。カラーポジ作品をいろいろと見せてもらう。
▲池袋をぶらぶら。
▲年越しそば。紅白歌合戦。そばはともかく、紅白が子供の頃から苦手。わざとらしい演出におぞけが来る。でも、裏番組も大したことがないというのも例年のこと。ってゆーか、テレビなんか見てるんじゃねーよ、ということだよな。
▲しかし、結局はテレビで午前零時を知るのだった。
▲新宿花園神社に初詣。えらく混んでいたので、脇の宝物殿(御神輿が入っているところ)をお参りして済ます。
▲「かぼちゃ」に寄るとちゃんとOさんがいたので飲む。お餅と焼酎とワイン。


2001/12/30/Sun.
▲晴れ。
▲不毛な一日。iMacの調子が悪く、システムを入れ替えたり、ソフトを入れ直したり。なんとなく不具合という状態で、非常に気色悪い。
▲ついついテレビをつけっぱなしで「ザ・ベストテン」(かなりサムかったな……)、「あいのり スペシャル」(どこまでやらせなのかな……)。自己嫌悪。
▲テレビをつけっぱなしにしつつ、坂口弘の『あさま山荘1972 下』を半分まで読む。下巻の冒頭は時系列をとばして「あさま山荘事件」の内幕を描く。アメリカン・ニューシネマな感じ。しかし、そのとき、日本中はリンチ事件の全貌を知らなかった。ゆえに、あさま山荘の中にいた坂口らが抱えていた闇は、殺した彼らだけのものだった。寒気がするような話だ。
▲映画『略称・連続射殺魔』(1969年製作・公開は75年)をビデオで。
▲パレスチナで重信房子らと行動をともにし、先ごろ帰国し逮捕された足立正生(すでに刑期を終えて出所)監督作品。「連続射殺魔」永山則夫の足跡を追う。登場人物はいない。風景だけ。足立自身のナレーション。感想は……どうもこういう作りの映画は苦手だ。やりたいことはわかるけど。


2001/12/29/Sat.
▲晴れ。
▲坂口弘の『あさま山荘1972 上』。最初の犠牲者が出たところまで。
▲どうもピンとこない。結局、頭の中の宇宙のことなのかな……。永田洋子との関係についてきわめて冷淡な描写しかないというのはどういうことなんだろう。革命戦士にとって色恋とか性欲とかはどういうものなの? という素朴な疑問が。カップルはけっこう登場するんだけど、決定的にエロスが欠けている。禁欲的と言うより無欲的というか。性欲の代わりに運動だったのかとはとても思えないし。謎。
▲新宿でレンズの受け渡しなど。待ち合わせ場所は某中古カメラ店だったりする……。
▲歌舞伎町「カオケン」で忘年会。そのあと「かぼちゃ」。結局、飲み過ぎたような気がする。


2001/12/28/Fri.
▲晴れ。
▲やや二日酔い。bk1でヤスケンページのリニューアル案を提案。おおむね好評でほっとする。
▲加藤泰監督の映画『みな殺しの霊歌』(1968・松竹)をビデオで。
▲時代劇、任侠映画の巨匠、加藤泰の異色作。脚本を加藤組の助監督であり、のちに松本清張原作の『天城越え』を監督し評価を得た三村晴彦が書いている。舞台は現代、ジャンルはミステリーである。
▲謎の殺人者(佐藤允)が次々に有閑マダムを殺害する。その理由は何か? 殺人者の「殺す理由」に迫ろうとした意欲作。回想シーンではハイトーンの荒れた映像を使うなど実験的な手法も組み込んでいる。モダンな演出が効果を上げている。
▲面白かったが、やはり動機の点では今ひとつ納得がいかないというか……、現代で映画化すればサイコ・スリラーになるのかもしれず、そちらの方が得心がいく。もしくはゲイの話にした方がよかったんじゃないかとか。セクシャリティーの問題を描いているにしてはやはりツッコミが足りないなと思ってしまうのだ。「時代」と言ってしまえばそれまでなのだが。
▲しかし「不朽」の任侠映画、時代映画よりも、この映画のように古びてしまってもなお、画面からみなぎる迫力や、演出のテクニックで見せる映画の方が個人的には好きである。「偏愛」の対象たる不思議な魅力を持ったスリラー。
▲映画『曽根崎心中』(1978・行動社=木村プロ=ATG)。
▲増村保造監督の映画としては、リアルタイムでもっとも高く評価された一本。大映が潰れ、独立プロダクション体制で作られた。
▲近松門左衛門の心中モノ。役者たちがしゃべること、しゃべること。増村映画の特徴は、登場人物たちが心情を徹底して言葉で表出するという「非・日本的」な表現にある。それはイタリアのチネ・チッタに留学経験があるモダニスト増村が、日本的な文化に対するアンチ・テーゼとして打ち出した革命的演出法である。それは結局のところ、日本的な風土の中では異端であった。晩年、増村が関わり、そのストーリー、セリフ、演技がことごとく「お笑い」の対象となった『赤い』シリーズ、『スチュワーデス物語』をはじめとする大映ドラマはその悲しき残滓と言える。
▲この時代劇もノンストップ心中劇とでも呼びたくなるような異様なテンポの良さで進む。映画初出演の宇崎竜童が音楽を担当し、エレキギターが浄瑠璃のごとくほぼキレ目ナシで流れる。いまとなっては、かなり無理があるのだが、現代性を盛り込もうとした意欲は認めたい。梶芽衣子のノーまばたき演技の迫力も魅力だ。


2001/12/27/Thu.
▲晴れ。
▲編集部の大掃除。
▲池袋新文芸座で映画『光の雨』を見る。なんの予備知識もなかったので、途中からこの映画が『光の雨』を映画化するというメタ的な構造になっていることに驚きつつ、納得もする。「なぜ、いま連合赤軍事件か」というお決まりの問いかけに答えること、同時に作り手が「連合赤軍事件」との距離感を確認するために、この方法論が必要だったのだろう。
▲監督の高橋伴明は映画作りが本当に巧い。ぐいぐい画面に引き込まれた。役者も粒ぞろいで、なかでも裕木奈江が演じた「永田洋子」はハマりすぎ。力作である。
▲ところどころ、こりゃないぜ、と思うところもあった。映画化に参加した役者連中の「事情」がありきたりだったり(アイドル脱皮のためとか、同じ事務所での役争いとか)、監督役の大杉漣の「消えます」とか。とりわけ、エンドロールの最後に付け加えられたシーンは蛇足以外の何者でもない。
▲しかし、ぼくはこの映画が好きだ。「連合赤軍事件」をどう映画化するかに敢然と取り組み、知恵を出し合って、優れた技術によってねばり強く作り上げられた作品である。賛否はあるだろうが、見てソンはないことは間違いない。
▲「連合赤軍事件」の映画化企画といえばあの長谷川和彦監督が長年温めていると伝えられている。噂では前後編3時間づつの計6時間の大長編作とか。連合赤軍メンバーの青春大河巨編であり、曖昧ままに「総括」されていないあの時代を描くことを構想しているに違いない(と勝手に妄想している)。
▲『金融腐食列島 呪縛』の原田眞人監督は「あさま山荘事件」を題材に『突入せよ! 「あさま山荘」事件』を映画化中(来年五月公開予定)だが、こちらは元警察官僚の佐々淳行の本が原作。主人公も佐々淳行その人(演じるのは役所広司)。つまり、鎮圧側、権力側からのストーリーとなる。個人的にはいやな感じだけど、原田眞人の腕前なら、ハリウッド調に「立てこもり犯との息詰まる闘い」を娯楽性豊かに描くのだろう。やはり見てみたい。
▲帰りに映画館で売っていた坂口弘の『あさま山荘1972 上』『下』『続』、永田洋子の『十六の墓標 上』『下』『続』(すべて彩流社)をまとめて買う。なんだbk1でも在庫してましたね。単行本六冊は重かった。
▲新宿でK氏と打ち合わせ。激飲。


2001/12/26/Wed.
▲晴れ。
▲やっと一仕事終わったのでやや脱力。
▲掃除は苦手だ! と言い訳してみたりして。
▲ゲイ雑誌の老舗「薔薇族」編集長の伊藤文學が同誌に書きつづってきた名物コラムを単行本化した『薔薇ひらく日を』(発行:第二書房/発売:河出書房新社)を一気読み。「季刊クラシックカメラ」に連載をお願いしているカミゾノ☆サトコ女史から借りた。意外だったのは伊藤文學が「ノンケ」(異性愛者)だったこと。父親の出版社を引き継ぎ、オナニーのハウツー本を出して好評を博したことをきっかけにゲイ専門誌の創刊を思い立ったという。
▲コラムの内容は編集部へ届いたゲイからの手紙を伊藤が取り上げるというもの。かつての深夜ラジオにあった「ディスクジョッキー」風とでもいえばいいのか、親しみやすい文体と、時にはやや保守的とも取れる現実主義、バランス感覚が特徴である。30年という長きに渡ってゲイ雑誌を舵取りしてきた持続の秘訣はそのあたりにあるのかもしれない。
▲と思ったら、ちょうど伊藤文學の新刊『編集長「秘話」』(文春ネスコ)が出た。こちらも面白そうだ。
■コラム★山之口洋の『不審事物』第15回★《記憶》の中への冒険 カズオ・イシグロ
作家・山之口洋さんのブックコラム。実作者ならではのカズオ・イシグロ論です。
■井上夢人『クリスマスの4人』/鯨統一郎『鬼のすべて』(12/25)
クリスマスは終わったけど『クリスマスの4人』の賞味期限はまだ大丈夫です。


2001/12/25/Tue.
▲晴れ。
▲原稿……。深夜、仕上げ。ふー。
▲松竹で木下恵介の『女の園』や『二十四の瞳』、日活で川島雄三の『洲崎パラダイス』や今村昌平の『豚と軍艦』など、錚々たる作品で美術を担当した中村公彦の『映画美術に賭けた男』(草思社)を読む。戦後再開した新宿ムーラン・ルージュで舞台美術を手がけ、のちに映画界へ転じたベテラン美術監督への聞き書きである。映画を見て、再読したい箇所多数。本の作りが「研究」っぽいというか、単調なのにはちょっと不満。
■新刊ホラー&幻想文学レビュー 喜国雅彦『本棚探偵の冒険』
人気漫画家、喜国雅彦は知る人ぞしる古本マニア。遊び心が楽しいこだわりの一冊!


2001/12/24/Mon.
▲晴れ。
▲原稿……。
▲映画『竜二』(1983年)をビデオで。何度も見た作品だが、最後に見てから10年近くたっているかもしれない。今見ると、個々のシーンが意外とあっさりとしていることに気付く。自分の中でイメージが膨らんでいたんだろう。来年の映画『竜二 Forever』の予習がてら見たのだが、やっぱり金子正次はいいなあ、とあらためて思う。永島暎子、佐藤(桜)金造、北公次などワキの役者もみんないい。いわゆるヤクザ映画から大きく逸脱した作品だが、それゆえかいまだに古びていない。20年前の映画とはちょっと思えないくらいだ。
■『図書新聞』天才ヤスケンの「今週のおススメ」より第54回★『サニーサイドジャズカフェが選ぶ超ビギナーのためのCDガイド』
ぼくはジャズは聴かないんだけど、寺島靖国さんの文章を読むと聴いてみたい、と思います。
■このミステリを読みのがしていませんか? 北森鴻『共犯マジック』
100パーセント的中するという予言書「フォーチュンブック」をめぐるミステリ。


2001/12/23/Sun.
▲晴れ。
ブックオフをハシゴ。高田馬場には大小二軒あるのだ。いつもながら、最新刊がすでに並んでいていることに驚く。目当ては図書館で借りられなかった何冊かの「ちょっと前のベストセラー」。ちゃんと100円で買えた。原稿料が安い仕事の資料。資料代だけで赤字ってのはやっぱり避けたい。でも、そういうことってよくあるような気も……。
▲原稿……。
▲映画『怪談昇り竜』(1972・日活)をビデオで。カルトムービーとして名高い怪作。監督の石井輝男は新東宝、ニュー東映、日活、東映と映画会社各社を渡り歩いて娯楽映画を量産してきた手練れ。
▲『怪談昇り竜』は任侠映画+怪談という奇妙なクロスジャンル映画。若き女親分、梶芽衣子が黒猫に呪われる。で、組の抗争に巻き込まれ、最後は梶を兄の仇とつけねらうホキ徳田と一騎打ちとなる。ワイシャツにベストを着て、なぜか下半身は赤フン一丁の内田良平、どこかとぼけた味わいの安倍徹、暗黒舞踏の土方巽がせむし男の役で登場するなど脇役がいい味を出している。
▲主役の梶芽衣子は少しふっくらとしていて、女囚さそりのシャープさはない。立ち回りでは長ドスが決まらない。やはり梶には出刃包丁がよく似合う。むしろ、敵役のホキ徳田がすばらしい。
▲全体に支離滅裂な映画だが、それなりにちゃんと客を愉しませるだけの材料が用意されているところがさすが。ところで、任侠部分のストーリーは石井輝男監督自身の作品『女王蜂と大学の竜』とそっくり。この職人監督は、自身の過去作品の焼き直しも厭わないというが、こんなふうに奇天烈なひねりを加えるところがカルト監督たるゆえんか。


2001/12/22/Sat.
▲晴れ。
▲作家の永瀬隼介さんにインタビュー。好きな小説や映画の話などもうかがい、楽しい時間を過ごした。
▲永瀬さんは昨年、長篇小説『サイレント・ボーダー』(文藝春秋)でデビューした新鋭作家。『サイレント・ボーダー』は少年犯罪、サイコ・スリラー、老人介護、家族問題など、さまざま社会問題をテンコ盛りしたオンストップ・サスペンスで、その新人離れした筆力に唸った覚えがある。
▲永瀬さんの長篇第2作『アッシュ・ロード』(双葉社)が1月に刊行刊行されるので、そのタイミングに合わせたインタビューとなった。『アッシュ・ロード』のゲラを読ませていただくことができたのだが、こちらも実に面白かった。前作とはやや作風が違い、よりドラマチックな盛り上がりを見せる。元女優が息子の非行をきっかけにヤクザと接点を持ち、そこから弾けていくというサスペンスだ。しかも元女優の息子は実父を殺して、わずか4年で施設から戻ってきたという不気味な設定が効いている。ワキの登場人物たちの個性も魅力的で、男たちのドラマとしても楽しめる。
▲永瀬さんは本名の祝康成という名前で活躍しているノンフィクション・ライターでもある。千葉県市川市で起こった19歳の少年による一家四人惨殺事件を追った『19歳の結末』(新潮社)は日本版『冷血』と評したくなるような迫力。今年は過去の大事件を再取材し、当時明らかにされなかった真相に迫る短篇ルポ集『真相はこれだ!』(新潮社)を刊行したばかり。
▲しかし、来年は「永瀬隼介」名義のフィクションに専念する予定とのことで、連載、書き下ろしと大活躍が期待できそうだ。
▲永瀬隼介さんへのインタビューはbk1で来年1月下旬にアップ予定。お楽しみに。
▲新宿「かぼちゃ」でクリスマスパーティー、っていうか、なんでみんなそんなに仮装したがるのか……。O氏宅でトーク。
<不審船>発砲で巡視艇の係官が2人負傷 不審船は沈没


2001/12/21/Fri.
▲雪のち雨のち晴れ。
▲安原顯さんと打ち合わせ。bk1文芸サイトをリニューアルし、「ブックサイト<ヤスケン>」として新装するプランについて。文芸・ミステリ・SF・ホラー 全体はいまのままで、ヤスケン部分をアネックス化する予定。bk1という総合書店のなかに、ヤスケンコーナーを作って、ノンジャンルで本やカルチャー、時事ネタを紹介していこうというのが大まかなイメージ。
bk1は本屋さん。だから、お客さんが欲しい本があるということが一番大切。本を探しやすかったり、最新のインフォメーションが得られることが重要だ。それに加えて、リアル書店にない機能として、「ヤスケン」的な情報発信機能も必要なんじゃないだろうか。本屋さんにメディアとしての機能を加えることで、オンライン書店ならではの個性が生まれるのではないかと思っている。もちろん、これは一つの実験で、どんな反応があるかを見ながらということだけど。
▲「季刊クラシックカメラ」関係者忘年会。明け方まで。カメラ絡みのバカ話から写真論まで(笑)。初参加のライター、カミゾノ☆サトコ大興奮の巻。マジ話としては、【アルカリ】ではあまり取り上げてこなかった写真集評を書こうと決意。なにごともチャレンジってことで!
「季刊クラシックカメラ ロッコール伝説」(双葉社)がbk1に入荷しました。お買い求めいただけます。
TIME誌「今年の人」に田代まさし!? ワラタ(笑)。


2001/12/20/Thu.
▲晴れ。
▲モンゴル(中国内蒙古)出身の日本語詩人ボヤンヒシグの長篇エッセー『わたしはモンゴル人』(講談社)読了。この人を知ったのは「文藝春秋」の巻頭エッセーだった。大きな日本語、とでも言えばいいのか。豊かな気分にさせてくれる。この本は歌手・中里豊子を主人公に、モンゴルと日本、西洋、音楽と人間について書いたもの。
▲下北沢。久しぶりにモンゴル料理店「遊牧民」へ。ボーズとかホーショールとか、メニューに並ぶ料理の名前だけで懐かしさがつのる。
▲プチ忘年会的飲み。M嬢、Nくん、Sさん。イニシャルで書いてもよくわからんな(笑)。結局は仕事の話。
■週刊文春「2001傑作ミステリーベスト10」ランクイン作品
ベストテン入りした本はこちらでお買い求め出来ます。
■第5回司馬遼太郎賞決定
宮部みゆきさん、今年はいくつ賞をもらったのかな。


2001/12/19/Wed.
▲晴れ。
▲すっかり忘れてたけど月曜日から■bk1トップインタビュー 蓮實重彦氏新刊発売記念インタビューがアップされてます。大学教育の話しがメインですが、蓮実さんどくとくの語り口をお楽しみ下さい。原稿書いてから時間が経つと他人の原稿みたいだな(笑)。
▲「セラピスト」誌(BABジャパン)の仕事で、精神科医の町沢静夫さんと、解離性同一性障害(一般に「多重人格症」と呼ばれたりするが的確ではない。略称はDID)の患者さん(女性)に取材。この日は交代人格の方から治療のプロセスについて聞いた。次回、主人格の方にもお話をうかがう予定。小説や映画などで奇異な病気として扱われることの多い病気なので、原稿にするのはかなり大変そうだ。でも、話しを聞いているだけでいろいろなことを考えさせられた。5月発売の号に載る予定なので、じっくりと取り組むつもり。解離性同一性障害についてはこちらのページがわかりやすい。
▲偶然入った目白の店で深酒。


2001/12/18/Tue.
▲晴れ。
▲次号打ち合わせなど。
▲映画『女囚さそり けもの部屋』(1973)。伊藤俊也監督の「さそり」三部作完結編。こののち、梶芽衣子は古巣日活出身の長谷部安春監督で『女囚さそり 701号恨み節』に主演してたのが最後の「さそり」となる。ほかに多岐川裕美、夏樹陽子、岡本夏生が演じた「さそり」がある。
▲前作『女囚さそり 第41雑居房』で脱走に成功した「さそり」こと松島ナミは全国に指名手配されている。地下鉄の中で刑事二人組に見つかったナミは包丁を振り回して逃亡。ホームへ降り立つ寸前に刑事権藤(成田三樹夫)に手錠を掛けられるが、ドアに権藤の腕がはさまったすきに、包丁でぶった切る! そのまま白昼の銀座を男の腕をぶらぶらさせながら疾走するナミ。
▲「あんちゃん……もういいだろ」。長屋の薄暗い部屋。ユキ(渡辺やよい)は事故で「バカになった」(劇中ママ)兄の世話(性的な方面も含む)をしている。夜はマッチを売って、スカートの下を照らすという特殊マッチ売りと売春で暮らしている。
▲ユキは墓場で青カンの真っ最中に、不気味な音を聴く。その音は、ナミが男の腕を口にくわえ、手錠の鎖を墓石にあてて、ギコギコとこすって断ち切ろうとしている音だった……。
▲ナミとユキの衝撃的すぎる出会い。そして、ヤクザの女ボス李礼仙のエリザベス調悪趣味ファッション(趣味はカラスの飼育)、スケコマシの藤木孝、スナックの女真山知子の惑乱など、見所満載。シリーズ3作を通じて、梶芽衣子はますます美しい。シリーズ3作中でも、ナミとユキの友情を軸にしているために、しっとりとした情緒を感じさせる大人の映画。とりわけ、地下水道を逃亡するナミにユキがマッチを擦ってマンホールから炎を落としていくシーンは感傷的な美しさに満ちている。「さそり」の笑顔が見られたのはシリーズはじまって以来だろう。愛すべき佳作(血とか暴力、残虐描写が苦手な人にはおすすめしないが)。
■ヤスケン最新刊『へそまがり読書王』ブックリスト!


2001/12/17/Mon.
▲晴れ。
▲やや復活。
▲恒例の会議とトーク。
▲ダイエル・キイス『五番目のサリー』(上)(下)。いわゆる「多重人格」をテーマにした小説としてはとてもポピュラーなもの。おそらくよく調べて書いたのだと思う。読みやすくわかりやすいが、小説としてはあまり面白くない。多重人格という病(乖離性同一性障害)の衝撃力を書いていたらこれだけの長さになってしまったという印象。
▲『季刊クラシックカメラ 特集ロッコール伝説』(双葉社)の見本誌が届く。絶賛発売中! bk1ではまだ入荷してません……。本屋さんのカメラ本コーナーでどうぞ。
■『図書新聞』天才ヤスケンの「今週のおススメ」より 第53回★藤田武司『増毛の海』
■貞奴の「偏食」(最終回)
■松岡圭祐『千里眼の瞳』刊行記念ブックフェア


2001/12/16/Sun.
▲晴れ。
▲もうダメ。
▲精神科医の町沢静夫さん、東京家族ラボ主宰の作家池内ひろみさん、アイディアカウンセリングセンター主宰の心理カウンセラー浮世満理子さんのお三方の座談会。2001年を振り返って、心と社会の問題をあれこれとうかがう。
▲編集者のM女史とトーク&飲み。
▲新宿。へとへとになる。


2001/12/15/Sat.
▲晴れ。
▲きのうの続きで映画『女囚701号 さそり』(1972)。梶芽衣子の「女囚さそり」シリーズ第1作。監督の伊藤俊也の監督第1作でもある。
▲「東映」マークのあとに、君が代が流れて日の丸が揚がる。女子刑務所。サイレンが行事を中断させる。脱走者が出たのだ。二人のうち一人は松島ナミ(梶芽衣子)。愛した男(麻薬捜査官)に裏切られ、その男を刺そうとして失敗、殺人未遂で服役していた。刑務所内では「さそり」と呼ばれ、恐れられている。
▲いわゆる女囚もの。冒頭とラストシーンに登場する日章旗に象徴されるように、娯楽映画でありながら、反権力色の強い、アナーキーで荒唐無稽なバイオレンス映画だ。
▲監督の伊藤俊也はバリバリの労働組合員だった。ところが、のちになぜか「戦犯」東条英機を肯定的に描いた『プライド・運命の瞬間』を撮り右旋回する。真の敵は日本ではなくアメリカだ、ということに思い至ったということなのか?
▲三多摩第九合唱団。30周年を迎えた同合唱団は今日の公演を最後に解散するのだという。オツカレサマでした。
▲立川GRANDUOとかいう駅ビルのうえに立川中華街というレンストラン街がある。家族で食事。人間関係についてトークなど。
■新刊ミステリ・レビュー『絶叫城殺人事件』『黒い林檎』『堕天使は地獄へ飛ぶ』
■『妖櫻忌』と篠田節子ミニフェア


2001/12/14/Fri.
▲晴れ。
▲台割とキャスティング。一人であれこれ考えているのが楽しい時間。
▲新宿のTSUTAYA。はじめて行った。日本映画が充実していてうれしい。「映画芸術」がレジ前展開されていて吃驚。「映画芸術」特集なる棚もあって、編集長の荒井晴彦(映画『Wの悲劇』などの脚本家。監督作に『身も心も』)などの作品が並んでいる。さっそく『荒野のダッチワイフ』、『女囚701号 さそり』、『悲愁物語』を借りる。
▲映画『荒野のダッチワイフ』(1967)は「ルパン三世」シリーズなどの脚本でも有名な大和屋竺の第一回監督・脚本作品。大和屋は日活で鈴木清順の助監督をつとめ、例の具流八郎グループの中心メンバーでもあった。日活を飛び出し、当時、若松孝二を中心として異様なパワーを見せていたピンク映画の世界で撮ったのがこの映画。
▲タイトルはたしかにエロ映画風だが、中身は今から見るとどこが成人指定なの? というくらい性描写はおとなしい。そのかわり、アバンギャルドで風変わりな世界を構築しており、渋谷のミニシアターでレイトショーしそうな雰囲気。具流八郎脚本による『殺しの烙印』が「わけのわからない映画」(by日活社長・堀久作)をさらに押し進めている。
▲ヤクザに誘拐された女を取り返して欲しいという黒メガネの男の依頼を受けた殺し屋が主人公。拳銃の早撃ちには自信があるこの男、午後3時になると時計を見なくても時間がわかる。なぜか。恋人が殺されたのが午後3時だからだ。殺し屋は恋人を殺した男を捜していて、ついに見つける。そのヤクザの一味にその男もいたのだ。そして……とここから幻想と現実の区別がつきにくくなっていく。
▲モノクロ、ロケ中心の撮影、手持ち撮影で、ゴダール風の演出を取り込んでいる。しかし、それが単なる真似っこになっていないのは、撮影所育ちの大和屋に映画作りの基礎がたたき込まれているからではないか? 山下洋輔がフィルムを見ながら即興で付けたという劇伴音楽も最高。
▲映画『悲愁物語』(1977)。『殺しの烙印』がきっかけで日活を追い出された鈴木清順が10年のブランクを経て作り上げた劇場用映画。脚本はこちらも大和屋竺。その10年、清順と具流八郎グループは何本かの脚本を作り、そのうち2本は製作が決定しかけていたが、プロデューサーにトンズラされるという不幸にあったという。やっと作ることが出来た『悲愁物語』の制作母体は、当時カラテ映画、『愛と誠』でヒットを飛ばしていた梶原一騎の三協映画。残念ながら興行的には惨敗で、以後、清順は『ツィゴイネルワイゼン』(1980)の成功まで雌伏の時を過ごすこととなる。
▲しかし、この映画、かなりヘンだ。興行的い惨敗もむべなるかな(笑)。当時、映画ジャーナリズムで評価していたのは「映画芸術」誌だけではないか。というか、ふつう、評価しないだろう、これ(笑)。
▲スポンサーがついて人気もカネも手に入れた女子プロゴルファーが、近所の主婦からストーキングされるという奇想天外なストーリー。主演は白木葉子(梶原一騎の推薦なんだろうな。新人)。ヒロインの恋人で、売り出しを画策するゴルフ雑誌編集長が原田芳雄。ストーカー主婦が江波杏子。
▲奇妙奇天烈な映画であることは間違いないが、そのディテールにさまざまに語るべきことを埋め込んでいるところはさすが鈴木清順。ヒロインの弟が叫ぶ「姉さんはぼくの真心だ!」という名セリフとともに一生忘れられそうにないトラウマ的映画(笑)。


2001/12/13/Thu.
▲雨のちくもり。
▲JCIIフォトサロンのライブラリーに寄ってから、九段下で高梨豊さんへのインタビュー。
▲久々に映画監督の細野辰興のホームページ映画の用心棒をのそいたら、来年公開予定の新作映画『竜二Forever』について「公開まで日誌」ができていた。
▲やたら見にくいページなので、テキストをコピペして読むと、そこに旧知の宣伝ウーマン馬場さんの名前が! 『竜二Forever』を担当しているとは知らなかった。そういえば馬場さんを紹介してくれたI氏がこの映画のことを話していたっけ……。
▲以前にも日記に書いたが『竜二Forever』は、映画『竜二』1本でこの世を去った役者(脚本も書き、プロデューサー的な働きもした)金子正次を主人公にした映画だ。ぼくにとってはリアルタイムで『竜二』の盛り上がりを記憶していることもあり、興味のある映画。早くみたい。
▲図書館で借りてきた心理学関係の本を端から読んでいく。取材のための予備知識を得るため。お手軽に作られた本が多く、やや暗い気分になる。中身がスカスカ。わかりやすさと簡単、お手軽をはき違えているような本が多い。
▲かと思うと、しっかりと作られた本は専門用語が多く、一般読者にはとっつきにくい。その中間に位置するようなポピュラリティーのある心理学、精神医学の本がもう少し充実するといいなと思う。
▲精神的にかなりブルー入って来たので雑誌「映画秘宝」を求める。『地獄の黙示録』&三池崇史特集。町山智浩の『地獄の黙示録』論はフレーザーの「金枝篇」などさまざまな元ネタに言及していて読み応えがある。三池崇史特集は「プロジェクトX」のパロディーのスタイルで三池崇史のサクセスストーリーを描く。最高(笑)。
▲というわけで、三池崇史の旧作『新宿アウトロー』(1994)。渡辺裕之と中条きよしが主演という、かなりベタなVシネマ。とりたてて凄い映画ではないが、破滅的なところは相変わらずか。
▲勢いがついて『弾丸ランナー』(サブ監督・1996)。この話題作をいまのいままで見たことがなかった。面白かったけど、ラストは?。ダイヤモンド☆ユカイが最高。
▲寝ようと思ったらテレビ東京で『なにわ忠臣蔵』(1997)をやっていた。忠臣蔵をなにわのヤクザに置き換えた珍作。荻庭貞明監督の映画ははじめてみたが、職人的な巧さにびっくりした。ちゃんとプログラムピクチャーの呼吸を知っている。


2001/12/12/Wed.
▲晴れ。
▲終日JCIIフォトサロンのライブラリー。1964年1月〜12月を中心にその近辺の「カメラ毎日」を読む。高梨豊さんへのインタビューのため、というのが主な理由なのだが、以前からこの時代のカメラ雑誌、とくに今は亡き「カメラ毎日」誌をじっくり読んでみたかった。
▲「カメラ毎日」は天才編集者と評され、編集長就任ののちには「天皇」と呼ばれるほど写真界に影響力を持った山岸章二が腕をふるったカメラ雑誌だ。1965年に立木義浩の「舌出し天使」をグラビアで五十数ページに渡って掲載。ほとんど雑誌ジャックだが、山岸は編集長ですらなく、台割をごまかして事後承諾的にページを乗っ取ったという伝説がある。「舌出し天使」は大きな反響を呼び、勢いに乗って山岸は翌1966年の新年号に高梨豊の「東京人」を一挙32ページ掲載する。
▲現在のカメラ雑誌(「アサヒカメラ」「日本カメラ」)もたしかにグラビアページはあるが、独自企画はほとんどなく、もっぱら写真集、写真展の宣伝ページとなっている。時代が違うとはいえ残念だ。なぜなら、この時代の「カメラ毎日」の写真はいま見てもとても面白いからだ。
▲1964年の「カメラ毎日」で高梨豊は「オツカレサマ」というタイトルで連載を持っていた。芸能人のポートレートである。渥美清、ザ・ピーナッツなど錚々たるメンツが顔を揃えているが、注目すべきなのはそれらのポートレートにパブリックイメージへのアイロニーが込められたさまざまな演出が仕掛けられていることだ。もちろん、それらはその人物をおとしめるものではない。大衆の人気者というパブリックイメージと実際の芸能人との距離感を浮き彫りにするような演出である。スタアがスタアであった時代だからこそなしえたユニークなシリーズであり、この種のポートレートとしては追随を許さない傑作である。


2001/12/11/Tue.
▲晴れ。
▲井上 トシユキほか著『2ちゃんねる宣言』(文藝春秋)を読んだ。あの2ちゃんねるが本になった。しかも版元は天下の文春。期待して読んだが、かなりがっかりさせられた。面白いのは2ちゃんねるの管理人「ひろゆき」と田原総一郎、山形浩生との対談くらい。あとはネタ的にちょぼちょぼと面白いところはあるけれど、総じて退屈。何をいまさらという内容が、誰に向けているのはいまいちよくわからない文章で綴られている。さらに「ひろゆき」インタビューはほとんどヨイショ。しかもかなり寒い……。「2ちゃんねらー的にはどうよ?」って感じですよ、ホント。
▲雨宮町子の新刊『死霊の跫(あしおと)』(双葉社)をネタに久々【アルカリ】を発行。
■特集『このミステリーがすごい! 2002』&ランクイン作品!
そんな季節になりましたなあ。
■特集『本格ミステリ・ベスト10 2002』&ランクイン作品!
こっちは原書房。年末年始に読むミステリーはbk1で買ってね。
■新刊ミステリ・レビュー  ファン待望『皆川博子作品精華』、折原一『沈黙者』


2001/12/10/Mon.
▲晴れ。
▲朝からbk1企画会議。
▲Nくんとお昼。
▲年末年始恒例の『このミステリーがすごい! 2002年版』(宝島社)入荷をにらんで記事の下ごしらえ。今年の『このミス』はとくに充実していると思う。ランキングを立ち読みして終わり、というわけにはいかないな。
▲雨宮町子の新刊『死霊の跫(あしおと)』(双葉社)読了。ホラー短篇集。面白い。前作の長篇ホラー『たたり』(双葉社)では、出だしから中盤にかけてはすごく面白&怖かったが、後半やや尻すぼみという印象があって残念だった。しかし、この短篇集ではやや玉石混淆とも思えるものの、巧妙な語り口と、多彩なモティーフで一つひとつ違う世界を作っている。次作が楽しみな作家がまた一人増えた。
■<ヤスケンのおススメ>第52回★松浦寿輝、久々の短篇二作
松浦寿輝、あいかわらず絶好調とのこと。の小説は純文学だけど、ホラー的な楽しみ方もできる。怖いけど、甘美ですらある世界。


2001/12/09/Sun.
▲晴れ。
▲西荻窪で散髪。お気に入りの古本屋「興居島屋(ごごしまや)」さんを冷やかす。
▲新宿昭和館で映画『にっぽん昆虫記』を見ようとして果たせず、映画『ピストルオペラ』を見る。共通点は両監督が日活育ちだということか。
▲『ピストルオペラ』にはまったく期待していなかった。そのせいか、思っていたよりも楽しめた。
▲美しい。わけがわからん。いかにも清順。スタッフもキャストも清順的であろうとするというか、殉じているという感じ。旧作『殺しの烙印』と比較するのは酷だが、こちらはこちらで独特な映画であることは間違いない。江角マキ子が案外良いというのも得した気分。
▲「かぼちゃ」。友人のO氏がカウンターの内側に入るというので激励(?)に。誕生日プレゼントなど持参し、O氏手製のおつまみなどいただく。
■<話題の本>末永直海『合鍵の森』ほか
末永直海『合鍵の森』、蓮見 圭一のデビュー作『水曜の朝、午前三時』ほか書評と編集者コメント。『合鍵の森』評は森うさぎ


2001/12/08/Sat.
▲晴れ。
▲区立大久保図書館で資料調べ。しかし、小さな「分館」なので予想通り十分な資料集めはできなかった。全然関係ない本を借りてしまい、それを「デニーズ」で読みふけったりして。
▲あまりにも調子が出ないので、うちの近所のマンガ喫茶で『青春動物園 ズウ』(小池一夫 原作・やまさき拓味 画・小学館)全16巻読破。このマンガ、小池一夫原作のもののなかでも飛び抜けてトンデモ度が高い。気味が悪いので手に取らないようにしていたのだが、20年ぶりに読んでしまった。
▲立髪正義は北海道函館近郊にある私立高校に入学するために青函連絡船に乗る。その高校は別名「ズウ(動物園)」。100万円さえ出せば、誰でも入学できる。普通の高校から見放されたワルが集められた高校だった。正義の父はその高校の創立者の一人だったが、もう一人の創立者に裏切られ自殺。正義は父の死の原因を探り、父の仇を討つために「ズウ」に乗り込む。
▲正義は、「ズウ」で美しく成長した幼なじみ洋子と再会する。しかし、洋子は父を裏切った現校長の娘でもあった。父の死の真相とは? 「ズウ」に隠された秘密とは……。
▲というようなシリアスなスタートだが、小池一夫の熱すぎる説教に悪役たちも滂沱の涙。永遠の愛を誓い合った「ヨッコ」(洋子)と「しし(獅子→立髪から連想)にーちゃん」(正義)の火傷しそうな抱擁に爆笑させられる。
▲さらに、一度はクライマックスを迎えたストーリーを半ば無理矢理ひっぱるために、ヨッコが不治の病にかかり、ししにーちゃんと二人で残り少ない命を全うするために旅に出るというとんでもない展開に。しかも、旅の途中で出会った人々は、みな、二人の純粋すぎる愛に感涙するのである。もう最高(いろんな意味で)。
▲この後半の展開は石原裕次郎と浅丘ルリ子の映画『憎いあンちくしょう』(1962年)を想起させる。『憎いあンちくしょう』は倦怠期を迎えたカップル(人気タレントの裕次郎とマネージャーのルリ子)が遠距離恋愛を続ける女性(芦川いずみ)と知り合う。裕次郎は、彼女が相手の男性のところまで駆けつける過程を番組で追い、二人の間に「純粋愛」があるのか、この目で確かめようとするが……というようなお話。和製ロードムービーだが、「純粋愛」なる言葉をめぐる青臭い議論に辟易しつつ、しかし溌剌としたテンポのよい映画で面白かった。
▲で、『ズウ』はどうかというと、ヨッコとししにーちゃんの純粋すぎる愛に出会った人々がいちいち感動するというトンデモマンガ。ところで、小池一夫先生は、なぜ「ん」をすべて「ン」とカタカナ表記するのか。なぞだ。
■『木島日記 乞丐相』と大塚英志の物語世界(ホラー)
民俗学×ホラーというのは確かにそそりますね。
■大塚英志の文芸、社会評論フェア
文芸、社会評論の論者としても活躍中。


2001/12/07/Fri.
▲くもり。
▲寒くなってきた。
BABジャパン「セラピスト」誌のM女史と打ち合わせ。
▲高梨豊さんインタビューのつづき。
▲新宿「かぼちゃ」。
▲買って積んで置いた山のなかから本を引っぱり出す。与那原恵『もろびとこぞりて』(柏書房)をつまみ読み。『物語の海、揺れる島』(小学館)を読んだとき、モチーフに対するスタンスに新鮮さを感じた。しかし、続けていくつかの短いルポルタージュや、この『もろびとこぞりて』を読むと、その意地悪さがちょっと堪らないものに感じるようになってしまった。とはいえ、その天の邪鬼なアプローチは独得のもので、もちろん読ませるだけの巧さはある。もう少し続けて読んでみたい人。


2001/12/06/Thu.
▲くもり。
▲寒くなってきた。
▲高梨豊さんインタビューのつづき。
▲福本博文の新刊『ワンダーゾーン』(文藝春秋)を読みはじめる。マインド・コントロールの実際を丹念に取材した名作『心をあやつる男たち』(文春文庫)に続いて、自己啓発セミナーなどのマインド商法をテーマにしたノンフィクション。前作『追跡者』(新潮社)は探偵稼業の現場を描いたもので意外の感があった。どれも買ってソンはない中身の濃さ。
『使うオリンパスOM』(双葉社)打ち上げ。大久保バーン・リム・パーでタイ風焼肉。
▲チュニジア料理店ハンニバルへ移動し、午前3時まで痛飲。


2001/12/05/Wed.
▲くもり。
▲あわや遅刻! ほとんど奇跡的に間に合う。
▲高梨豊さんと赤瀬川原平さんの対談。「ライカ同盟」のお話を中心にカメラ論、写真論について。興味深いお話に、時間を忘れる。対談後の会食で瀧口修造、深沢七郎の話が出て興奮。
▲先日亡くなった元「カメラ毎日」編集長の西井一夫の遺著『20世紀写真論・終章』(青弓社)を読みはじめる。西井が生前にまとめようとしていた最後の本はこれではなく、これから出る予定の「カメラ毎日」の黄金時代を築いた名編集者、山岸章二についての本なのだそうだ。ガンとの闘病を続けながら、最後の最後まで精力的に本を作っていたということに、まず感動する。
▲で、中身がまた凄いというかとんでもないというか、飛躍に次ぐ飛躍の連想的? 写真論に、かなり辛辣な写真家批評(書かれた人が傷つくタイプの罵詈雑言)が加えられたスキャンダラスとも言える写真論だ。しかし「これを書かないと死ねない」という必死の思いは伝わってくる。そこまで写真を愛した「写真バカ」であることは間違いない。こういうヘンな人、おれは案外好きなんだよな。生前お会いすることができなかったのがちょっと残念。
■新刊ミステリ・レビュー 『ミステリ美術館』『依頼者』
『ミステリ美術館』、クリスマスプレゼントにもらったらうれしいだろうな。


2001/12/04/Tue.
▲雨のちくもり。
▲映画『やくざ観音 情女仁義』(1973年・日活 神代辰巳監督 田中陽造脚本 岡崎二朗主演)をビデオで。
▲雲水の嵐雪 (松山照夫)が川で釣りをしようと釣り糸を投げると、魚ではなく女が引っかかる。女はもう死んでいたが、孕んでいた赤ん坊が生きており、嵐雪がこの世に引っぱり出す。
▲23年後、その赤ん坊は阿弥陀の若僧、清玄(岡崎二朗)に成長する。清玄は堅物で、「観音様に惚れている」と信仰心を隠さず、童貞を守っている。ところが地元の暴力団の二大勢力の一つ、斉田組組長の娘、美沙子(安田のぞみ)を敵対するヤクザから守ってやったことがきっかけで、美沙子と関係してしまう。しかし、二人は腹違いの兄妹だった。
▲美沙子に狂った清玄は寺を飛び出し、背中に観音の刺青を入れる。そして、美沙子を手に入れるため、実父の命を狙うのだが……。
▲奇妙な映画だが、とても面白かった。『ツィゴイネルワイゼン』(1980)、『陽炎座』(1981)などの系譜に連なる田中陽造の世界だ。神代辰巳お得意の、手持ちカメラによるゆらゆらと揺れる画面は、この世とあの世の曖昧な境目を表現しているように思える。好きな映画だ。音楽はなぜかあがた森魚。「赤色エレジー」もかかる。
▲沖浦和光著『幻の漂泊民・サンカ』(文藝春秋)読了。面白い!
▲サンカとは、1950年代までその存在が認められていた漂白民のことだ。山から山へと旅を続け、川魚や泥亀を獲って村の人たちに売ったり、箕の修繕などの作業賃をもらって流れ暮らしていた。戦前には三角寛にとって400編以上の「サンカ小説」が書かれ、人口に膾炙した。しかし、三角のサンカ小説は公安当局から漏れてきた情報とウワサ話を混ぜた猟奇的な犯罪小説といってよく、サンカの人たちへの偏見が助長された。
▲著者は『 三角寛サンカ選集』(現代書館)の解題を書くにあたって、これまで気になっていたサンカのことをあらためて調べ直し、本書を書いた。学者の書いた本だが、読みやすい。
▲サンカは日本の被差別民の系譜につらなる存在だが、資料となるような文書がほとんど残されていない。そして、彼らもいつのまにか日本社会にとけ込んでいなくなってしまった。サンカの末裔にあたる人たちも、口を開きたがらない。差別されてきた存在だからだ。
▲著者はわずかばかりの資料と先達の論考、そして古老へからの聞き取りから、サンカのルーツと、実際の生活を探る。また、日本社会のなかでサンカがどうイメージされてきたかも書いてある。
▲ぼくがサンカに興味を持ったのは五木寛之の『戒厳令の夜』『上』『 下』(新潮文庫)を読んでその存在を知り、中島貞夫監督の『瀬降り物語』(1985年)が公開当時話題になったからだ。本書によれば五木寛之の『風の王国』(新潮社文庫)がサンカの世界を描き、ベストセラーになった作品だという。未読なのでぜひ読んでみたい。
■『ミスティック・リバー』とデニス・ルヘイン ミニフェア
デニス・ルヘイン(レヘイン)、かなり評判になってます。


2001/12/03/Mon.
▲晴れ。
▲朝からbk1企画会議。
▲次号企画など練ったり。
▲新宿昭和館。映画『女囚さそり 第41雑居房』(1972年・東映・伊藤俊也監督 梶芽衣子主演))と映画『恋と太陽とギャング』(1962年・ニュー東映・石井輝男監督 高倉健主演)。目当ては『女囚さそり 第41雑居房』だったが、『恋と太陽とギャング』は巧者・石井輝男のハイセンスなコメディ・アクション。三原葉子の明るさがまぶしい。ハリウッドの翻案といってしまえばそれまでだが、今見ても十分に魅力的だ。お見事。
■『図書新聞』天才ヤスケンの「今週のおススメ」より 第51回★椎名誠『飛ぶ男、噛む女』
椎名誠の短篇集。かなり面白そうだ。椎名誠の最近の本も並べてみました。お買い逃しがあればついでにどうぞ。


2001/12/02/Sun.
▲晴れ。
▲風邪。元気が出てくる。
▲ひたすら仕事。何かがすり減ってる感じ。
▲映画『スリー・リバース』。どんな映画か? ブルース・ウィルス主演のポリス・アクション。ピッツバーグ市警の殺人課刑事だったウィルスは相棒だった従兄弟の不正を証言して、市警の鼻つまみ者になる。あげく、従兄弟は自殺。しかも、ウィルスが執拗に追っていた連続絞殺魔を追跡中、やはり警官だった父を失う。2年後、ウィルスは水上警察に左遷されていた。どん底にあってアル中になりかけていたウィルスのもとに、逮捕されたはずの連続絞殺魔から再び殺人予告が舞い込んで……。いわゆるハリウッド的なアクション映画だが、地味な分だけ好感が持てる。ウィルスの親類縁者がみな警察関係者、しかもイタリア系で出世の目が薄い(基本的に警察関係の仕事はアイルランド系が仕切っている)というようなバックグラウンドの描き込みが印象的だ。アメリカ社会では先に移民した連中から順に「業界」を抑えていったのだ。
▲なぜ今さら『スリー・リバース』を見たかというと、先月の日記にも書いた谷岡雅樹『Vシネマ魂』(四谷ラウンド)に凄いエピソードが書いてあったからだ。

「悲しい男がいる。私も悲しいが、彼は多分、それどころではない。その男は土曜と日曜にやって来る。そして必ず『スリー・リバース』の吹き替えを借りていく。アルバイトたちの話では『スリー・リバース』発売以来(93年にリリース)ずっととのこと。」

『Vシネマ魂』の初版は99年である。ともかく、この男、数年に渡って毎週、『スリー・リバース』を借りにくる。一度、アルバイトが面白がって『スリー・リバース』のケースを隠してしまったことがあったそうだ。「その時も彼は慌てずじっと待った。バイトが結局かわいそうになってそっと出したと言っているが、実は根負けしたのである。」
▲入店しては辞めていくバイトたちの一人残らずがこの『スリー・リバース』を見たという。もちろん、「『スリー・リバース』の謎」を解くためだ。おれもバイトたちと同じ気持ちで見てしまった。感想は『Vシネマ魂』にあるとおり「ブルース・ウィルス主演の何ということもないアクション映画」でしかない。この「『スリー・リバース』の謎」について、谷岡はあえてその謎を解こう(客に話しかけよう)とはしない。それが「暗黙のルール」だからと書いている。
■bk1ミステリ座談会2001
年末年始といえばミステリ三昧に決まっている。宝島社の「このミス」、週刊文春のベストテンなどが有名どころだが、オンライン書店bk1でもやってみました。今年話題のミステリを国内外総まくりです。
■特集★中東ホラーの知られざる世界
中東にホラー? マニアックな世界へご案内します。特集&フェアで紹介した本をお買いあげのお客様には本邦初訳のヘダヤートのホラー短篇をプレゼント。詳しくは記事をお読みください。


2001/12/01/Sat.
▲晴れ。
▲風邪。だいぶよくなったけど、まだイマイチ。
▲一眼レフは格好だけ、という変ちくりんなトイカメラ「TASHIKA」でぼちぼちスナップ写真を撮ってみたりして。「TASHIKA」に「気は確か(TASHIKA)か?」という名コピーを付けたのはオンラインカメラ店鈴木商店さん。「TASHIKA」絶賛発売中です。
▲土曜日のbk1
■森博嗣ファン必携! 『アイソパラメトリック』入荷しました
一般書店では通常予約、もしくは注文のみの(ほぼ)限定本。bk1なら現在24時間以内に発送してます。早い者勝ち。ぼくは森博嗣ファンと名乗れるほど熱心な読者ではないので、紹介記事は友人の変人森うさぎに書いてもらう。ついでにHPを作るようにそそのかす。


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