A DAY IN MY LIFE

2001年11月の日記


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2001/11/30/Fri.
▲晴れ。
▲『使うオリンパスOM』の残務処理。そうそう赤城耕一著『使うオリンパスOM』(双葉社)絶賛発売中! オリンパスの一眼レフカメラ、OMシリーズと、コンパクトカメラに革命を起こしたオリンパスXAについてのカメラとレンズの本です。書名↑をクリックしてオンライン書店bk1で購入できます。
▲新宿花園神社「酉の市」。今日が最後の「三の酉」だ。フリーになってから毎年小さな熊手を買うようになった。祈商売繁盛。熱燗とおでんが楽しみだったりもするのだが。軽く飲みに行って帰宅。
▲車谷長吉(くるまたに・ちょうきつ)の『文士の魂』(新潮社)。面白い、というか、滋味深い。「反時代的」と自ら認める私小説作家、車谷が自身の読書体験の中から名作を語る。「そもそも文士とは反時代的な毒虫ではないか」という車谷の文学観、好きだ。取り上げられているのは漱石、鴎外、嘉村磯多、吉行淳之介、永井龍男などなど錚々たる作家ばかりだが、一見、地味な作品を取り出して、その見事さを愛情を込めて綴るさまは見事。薄い本だが、中身はずっしりと重い。おすすめ。


2001/11/29/Thu.
▲晴れ。
▲色校戻し&次号企画会議。う。意外とタイトなスケジュール。
▲やっぱり、なんとなく調子が出ない。
▲姉小路祐『首相官邸占拠399分』(講談社ノベルス)。名前は知っていたが読んだことがなかった作家。公安の刑事が潜入対象に自殺されるという冒頭に大きな期待を抱いたが、ほどなくして……。権力の末端にあって、忠誠を誓いながら裏切られてきた男たちが首相官邸を占拠する。首相官邸や警察組織についての蘊蓄がが読みどころなのかも知れないが、小説としての「うま味」に欠ける。本書は最新刊なので、既刊には「当たり」があるのかもしれないけど。


2001/11/28/Wed.
▲晴れ。
▲「季刊クラシックカメラ」色校。かなりイケてる感じ。
▲高梨豊さんインタビュー2回目。
▲中藤毅彦さんと新宿で。
▲映画『情事の方程式 「オリオンの殺意」より』(1978)。日活ロマン・ポルノ。潰れた大陸書房という出版社が出していたシリーズだ。ずいぶん前に神保町で買っておいたビデオ。
▲根岸吉太郎監督(『遠雷』『絆』ほか)のデビュー作。脚本は傑作『(秘)色情めす市場』のいどあきお。原作は勝目梓の「オリオンの殺意」という短篇小説でつい最近出た『蜜と牙』(徳間文庫)に収録されている。
▲主人公は高校生の男の子。父(戸浦六宏)が母(根岸明美)と離婚し、若い女(山口美也子)と再婚した。主人公は継母が自分の日記を盗み読みしていることを知り、エロチックな妄想を書くようになる。さらに日記には邪魔な父親の殺人計画までが……。
▲エロチックなシーンはもちろんあるのだが、この映画は叙述ミステリー的な構成を取っていて楽しめる。模型飛行機、プラネタリウム、フーテンの生き残りみたいな女(亜湖)など細かいエピソードも気が利いている。


2001/11/27/Tue.
▲晴れ。
▲寝たり起きたり。
▲インタビュー、座談会記事を仕上げる。
▲朦朧。
■島尾伸三・潮田登久子、しまおまほ・島尾ミホ・島尾敏雄ブックフェア。それぞれユニークな人たち。


2001/11/26/Mon.
▲晴れ。
▲朝から会議。午後も会議。
▲体調×。仕事がたまっていてブルーな気分に。
■天才ヤスケンの「今週のおススメ」より第50回★車谷長吉『文士の魂』。これ、かなり面白そうですよ。
■新刊ミステリ・レビュー 『ボトムズ』『死の殻』。海外ミステリー話題の2作。


2001/11/25/Sun.
▲晴れ。
▲発熱。嘔吐。
▲若竹七海『悪いうさぎ』(文藝春秋)。つまらないわけではなく、最後まで苦もなく読んだ。しかし、全体としてどことなくちぐはぐな印象を受けてしまう。登場人物たちがピンと来ないというか……。
▲女子高生が失踪する。手負いの女探偵が事件を追う。出だしも設定も好みである。ややぶっきら棒な文章のスタイルも悪くない。荒唐無稽というわけではなく、それなりにリアリティはある。しかし、犯人、動機などがどうにも腑に落ちない。相性の問題かも知れないが。
▲立花隆『東大生はバカになったか』(文藝春秋)。「東大生は教養がない」と言い切る立花先生はカッコイイ。しかし、大学改革論をぶった後で、自分の大学時代には授業に出ずに読書と議論の毎日を過ごしていた、と自慢するのはいかがなものか。だったら、やっぱり大学なんてただの「場」としてあればいいだけじゃないか。そんな感じで、いささか支離滅裂の感は否めないが、立花隆の凄いところは、読んでいるとこちらまで東大や大学教育を「一喝」している気分になれるところ。だから世のおじさんたち(「文藝春秋」的読者)に大人気なんだと思い至った。読み心地はエンターテインメント本にかなり近い。もちろん「知の巨人」らしく、大学教育の歴史、教養の定義など、蘊蓄も楽しめる。


2001/11/24/Sat.
▲晴れ。
『Vシネマ魂』(四谷ラウンド)の著者、谷岡雅樹が店長を務めていたレンタルビデオ店があった(る?)西新井に行く。開発途中。ベットタウン化はなはだしく、少しがっかり。もちろん、通りすがりのヨソ者の勝手な感想だが。
▲映画『ソードフィッシュ』。ジョエル・シルバー製作の映画には当たり外れがあるが、これは当たりだろう。監督のドミニク・セナはタコ映画『60セカンズ』とは別人の冴え。トラボルタは常のごとく好調だが、ヒロイン、ハル・ベリー萌え。冒頭『狼たちの午後』への挑戦状を突きつけるが、あれも「目くらまし」? マジに見ると腹立つかもしれないけど、個人的にはこういう馬鹿馬鹿しいストーリー、何度見ても良いと思う。
▲ビデオで、映画『日本の黒い夏[冤罪]』。松本サリン事件を素材とした冤罪被害告発映画。ヴェテラン監督熊井啓は若かりしころ『帝銀事件』も冤罪の線で映画化している。
▲『日本の黒い夏[冤罪]』は『海と毒薬』の時のド迫力路線ではなく、淡々と事実を検証していくというスタイル。事実を基にしているフィクションとはいっても、描かれる人たちの多くは容易にモデルが知れるわけで、その人たちをどう描くかに配慮がなされている。それは当然のことかもしれないが、その配慮ゆえに、どこか歯切れの悪さは否めない。たとえば、冤罪被害にあった河野義行さんのプライバシーを突っ込んで描くわけにはいかないとか、刑事を悪役として描くにも配慮が必要だと言うことだ。結果として、むしろノンフィクションで描いた方がコトの本質に迫れるのではないかと思わざるをえなかった。
▲とはいえ、警察内部の組織的な問題と、マスコミの「商売」のために「冤罪」がデッチ上げられてはたまらない。この「冤罪」事件の問題点がわかりやすく描かれているという意味ではよくできている。
▲また、映画として実に丁寧に作られていることは間違いない。少なくとも、この映画は映画を見たという満足感が得られるだけの「質量」がある。伝統的な日本映画というか、いささか古くさいと感じないでもないのだが、今となってはかえってそれが新鮮ですらある。ぼくは熊井啓監督の前作『愛する』のトンデモなアナクロぶりも決して嫌いではない。


2001/11/23/Fri.
▲晴れ。
▲怠惰な1日。何もする気が起こらない。
▲谷岡雅樹の熱き血潮『Vシネマ魂』(四谷ラウンド)。「積ん読」状態になっていた本だ。ゆえに1999年12月初版といささか古い。年間数百本の新作が作られるVシネマ(この名称は東映ビデオが登録商標を取っているのだが、一般にビデオ用映画はVシネマと総称されている)の世界ではあっという間に状況が変わってしまう。しかし、谷岡が指摘するように、Vシネマという世界が「批評」からもっとも遠く離れた「ゴミの山」であることはいまだに変わっていない。谷岡は情熱を持って、ボクシングを見るなら四回戦からすべて見るべきだという方針のもと、あらゆるVシネマ(ゴミの山)を見、そのなかからお宝を探し出してくる。それが宝に見えるか、やはりゴミにしか見えないかという問題はあるとしても……。
▲著者の谷岡雅樹はレンタルビデオ店店長、ビデオ卸問屋への勤務経験を持つ。ビデオ店は足立区西新井にあり、そこに来店する珍客たちのエピソードも披露される。そこにはVシネマ的現実がドンとそびえており、ホワイトカラーの「映画批評」とは極北の場所にある。Vシネマは場末なのだ。だから面白い。実際にVシネマを見ると、「金はともかく(映画に比べれば断然安い)時間を返せ」と言いたくなることもある。谷岡雅樹はVシネマに時間をたっぷりと注ぎ込むことで、見ていない者を圧倒する。見ないやつよりは見ているやつが勝つ。それが映画を愛するということだからだ。
▲日活(まだ「にっかつ」ではなかった)ロマン・ポルノ『(秘)女郎市場』(1972年)を見る。荒木一郎原作・田中陽造脚本、曽根中生監督の時代劇。
▲文化文政年間。目利きの女衒、吉藤次(益富信孝)は女衒が集う女郎市でそっぽを向いている。吉藤次が高い値をつけたいような女がまったくいないからだ。そこに、薄汚れた、少々頭の弱い娘、お新(片桐夕子)が現れる。木の上に登って笑っているお新をむりやり市のせりにかけた吉藤次はお新を「みみず千匹、エレキくらげがうようよ」という名器の持ち主と断定、たった一人50両の値を付ける。
▲品川宿の品川楼に100両で買われたお新は、さっそく客を取らされるが、女郎の仕事の意味がわからないまま、天真爛漫にふるまううちに、客が勝手にコケ、大騒ぎになる。大店のぼんぼん、相撲取り、ヤクザなどが次々に挑戦するが失敗の連続……というエロチック・コメディ。
▲監督の曽根中生は才気走った演出で知られる人だが、この映画でもテクニシャンぶりを発揮している。『日活ロマンポルノ全史』(講談社)によれば現在、消息不明とのことで、惜しい。当時の「日活」はまだ映画作りへのこだわりがうかがえ、時代劇のセット、衣装なども見事だ。片桐夕子の愛らしさも魅力。
▲ジャン=ピエール・メルヴィル監督、アラン・ドロン主演の往年の名作映画『サムライ』。殺し屋(ドロン)を描くフレンチ・ノワール。こいつ本当にプロ? と思うような描写が続出。森一生監督、市川雷蔵主演の『ある殺し屋』の方が断然面白い。ややがっかり。


2001/11/22/Thu.
▲晴れ。
▲午前中で最後の校了作業が終了。ふー。
劇団てぃんかーべるの公演『魍魎の匣』の初日。原作はもちろん京極夏彦の『魍魎の匣』(講談社文庫)。上演時間3時間30分の大作だが、展開がなめらかで想像していたよりもずっと短く感じた。原作に登場するキャラクターへの思い入れというか、リスペクトが感じられるところに好感を覚えた。面白かったです。
▲赤坂見附駅近くの兄夫食堂。韓国風茶碗蒸しというのが素朴でおいしかった。
■bk1クリスマスフェアスタート→クリスマスに読んでほしい ヤスケンおすすめの2冊


2001/11/21/Wed.
▲晴れ。
▲あらかた校了作業が終わる。
bk1。編集会議。リニューアルに向けて前進中。いい感じになりそうだ。明日22日からクリスマスフェアスタート。クリスマスプレゼントに本をという方はぜひ。
▲本橋信宏『依存したがる人々』(ちくま文庫)。著者が睡眠薬中毒だったことはほかの本にも書いてあったが、本書は、そこから立ち直ったあとに不安神経症を患った経験をもとに「依存」について書いた本。いっしょに事務所を持っていた友人がアルコール中毒になり、そこから立ち直った顛末など、具体的な事例とともに、そこからどうすれば立ち直れるかを書いている。ちょっと困るのは、著者の筆力があるためか、こちらまで不安神経症的症状があるのではないかと不安になるところか(笑)。アル中話しは中島らもの名作『今夜、すべてのバーで』(講談社文庫)以来の身につまされ方で酒を飲みたいという気持ちを十分殺いでくれる。情緒の安定に自信のない方におすすめしておこう。


2001/11/20/Tue.
▲晴れ。
▲33歳になった。
▲校了へ向けて一直線。
▲『使うオリンパスOM』(赤城耕一著・双葉社)の見本が上がってくる。赤城さんのこれまでの本(『使うM型ライカ』(同)『使うハッセル』(同)『定番カメラの名品レンズ』(小学館))とはひと味違ってややカジュアルに仕上がった。オリンパスというカメラが赤城さんにとって青春のカメラであり、ライカやハッセルなどの舶来高級カメラとは思い入れの仕方がちょっと違うからだと思う。ぼくにとってもオリンパスのカメラとのつきあいは長いので、編集していて楽しかった本だ。発売は11月27日(火)。全国書店、大型カメラ店の店頭に並ぶ。いましばらくお待ち下さい。
▲その後テープ起こしなど。
▲綾辻行人の第二作『水車館の殺人』(講談社文庫)を今更。奥深い山間に作られた洋館「水車館」。名前の通り、大きな水車がある館だ。そこには交通事故で顔を失った車椅子の男と、二十歳になったばかりの美しい娘という奇妙な取り合わせの夫婦が住んでいた。そこで一年前に起こった惨劇の続きがふたたび……。デビュー作でもある前作『十角館の殺人』(講談社文庫)に比べれば衝撃度は薄いが、十角館の設計者・中村青司が設計した奇矯な建物「水車館」で起こる連続殺人という趣向は悪くない。
■もしも誘拐した少年がヤクザの一人息子だったら?→新刊ミステリ・レビュー 荻原浩『誘拐ラプソディー』(双葉社)


2001/11/19/Mon.
▲晴れ。
▲ひゃー。文字校正、足りない原稿を書くとか、そんな感じで一日が……。
▲松島利行『日活ロマンポルノ全史』(講談社)。ちょっとだけ読んでやめるつもりが、止まらず最後まで。著者は毎日新聞社の映画記者。ロマンポルノのはじまりから終焉までを、監督、女優のエピソードを交えながら描く。ぼくはロマンポルノの最後にぎりぎり間に合った世代で、高校時代によく見に行った。ビデオに押されて過激描写がウリの「ロマンX」に移行していった頃だ。
▲リアルタイムで見ていたのはサイコホラー、加藤文彦監督、桂千穂脚本の『オーガズム真理子』、すずきじゅんいち(たしか鈴木潤一名義)監督の『制服肉奴隷』、黒沢直輔監督、石井隆脚本の秀作『夢犯』、金子修介監督の『濡れて打つ』、そして相米慎二監督の傑作『ラブホテル』(同時上映は山本晋也カントクの『小松みどりの好きぼくろ』)など。アダルトビデオがすでにエロ市場を席巻していて、すでにロマンポルノは落ち目だった。ロマンポルノはエロでアピールしていたけれど、まぎれもなく「映画」であって、ストーリーも演出もちゃんとあった。いま見ると、エロ部分が風化しているだけにかえって面白く見れるかも知れない。見逃している秀作・傑作、けっこうある。こういう本を読むと、見逃している映画をモーレツに見たくなる。
▲で、ロマンポルノの中でぼくが大傑作だと思っているのは芹明香主演の田中登監督・いどあきお脚本の『(秘)色情めす市場』(74)、前出の『ラブホテル』の二本。『(秘)色情めす市場』は大阪釜ヶ崎のドヤ街でゲリラ的にロケを敢行したカルト作。知恵遅れの弟を持つ売春婦を主人公に、目を背けたくなるような現実とそっから突如詩的幻想の世界に滑っていくという超絶的な展開にひっくりかえりそうになった覚えがある。
▲そのほかわいせつ裁判になった『恋の狩人 ラブ・ハンター』(72)や、おもろうてやがて悲しき『キャバレー日記』(82)も印象深い。といっても、このへんはもちろんリアルタイムではなくのちに名画座の特集上映やビデオで見たものだ。それゆえ、見逃している作品も多い。とくに神代辰巳作品は『濡れた唇』(絵沢萌子!)、『一条さゆり 濡れた欲情』くらしか見ていない。
▲カフカ全集、欲しいよな、やっぱり……↓
■連載コラム★山之口洋の『不審事物』【14】★蘇る不死鳥 フランツ・カフカ。新訳カフカ全集、面白そうです。
■連載コラム★石堂藍の幻想文学番外地【15】★カフカ『万里の長城ほか』ほか。こちらもカフカ全集。ほかに神林長平の新刊も。


2001/11/18/Sun.
▲晴れ。
▲麓敬子『映画ひつまぶし』(ワイズ出版)。愛嬌のあるシネマ・レビュー集。ボリューム、内容ともに充実している。映画の内容紹介はもちろん、俳優のゴシップなども丁寧に書き込まれていて、著者の視点が明快なところが面白い。索引付きなのもうれしい。映画を見たくなってくる。
▲↑には収録されていない映画だが『ミッション・トゥ・マーズ』。マジメに見ていたおれが悪かった……というようなクライマックスとラスト。こういうトンデモ本(SFではなく)ありそうだな。しかし、にもかかわらず、デ・パルマ万歳と言いたくなるのはなぜ?
▲深夜、しし座流星群。新宿からでもちゃんと見えた。天文にはまったく興味がないのだが、たまたま外が見えるところに住んでいるのでなんとなく見てしまった。しかし、速いね、流星って。
■若竹七海の新刊『悪いうさぎ』レビューとミニフェア。多彩な作風を持つ注目作家。『悪いうさぎ』はマジ面白そう。ってゆーか、買いました。これから読みます。


2001/11/17/Sat.
▲晴れ。
▲池袋。
▲ボリューム的には物足りないが、日本の写真家のアウトラインを知るうえでは貴重な『日本の写真家』シリーズ(岩波書店)、さすがに全部買おうとは思わないが好きな写真家のものは何冊か持っている。
▲今日は『35 高梨豊』『26 石元泰博』『21 大辻清司』の三冊を。日本におけるバウハウス的写真の伝道に一役買った石元泰博、石元と交流があり、シュルレアリスムなど当時の芸術運動のオルガナイザーの一人でもあった大辻清司、そして、大辻の教え子でもある高梨豊。サ店でページをめくる至福の一時。
▲菅浩江『永遠の森 博物館惑星』(早川書房)。評判通り端正な作品。読んでいて気持ちがいい。未来の話だがノスタルジックな雰囲気がある。


2001/11/16/Fri.
▲晴れ。
▲「入稿」シリーズでドタバタ。
▲荒木町でYさんと。
■ 新刊ミステリ・レビューは物集高音『赤きマント』(光文社カッパノベルス)。変わり種ミステリ。


2001/11/15/Thu.
▲晴れ。
▲四谷三丁目交差点で、サラリーマン時代の上司とバッタリ会う。そういえば、四谷三丁目には以前会社でいっしょだった人がうじゃうじゃいるんだっけ。
▲大倉舜二さんと原稿のやりとり。
▲ひたすらポジ入稿作業。妙に集中してしまい気がつくと日が暮れている。
▲綾辻行人の『十角館の殺人』(講談社文庫)を一気読み。すでに古典の域に入る「新本格派」の作品。綾辻行人のデビュー作だ。ぼくの読書歴のなかで「新本格」の諸作品はすっぽり抜け落ちており、いまさらながら読んでみることに。
▲予想していたよりもかなり面白かった。孤島に残された十角館なる館に大学のミステリー研究会の会員たちが合宿に行く。彼らはお互いを「エラリィ」「ポウ」と有名推理小説家のニックネームで呼び合う。そこに、不気味な殺人予告がなされ……。知的ゲームの面白さはもちろん、鮮やかな幕切れの余韻も心憎い秀作。
▲若竹七海『クール・キャンデー』(祥伝社文庫)。祥伝社文庫の「中篇」シリーズの一作。女子高生の一人称のベタぶりに鳥肌。こういうのは苦手だなあ、と思いつつ、テンポのよさで最後まで読ませる。最後の最後でのどんでん返しはあざやか。もしかすると橋根未彩 さんが言っていた「後味の悪い若竹七海作品」の後味の悪さってこういうことなのかしらんと思う。個人的には後味の悪い話、好きだ。
▲安晃竜一『歌舞伎町アンダーワールド』読了。うーん。軽い読み物としてならいいのだろうが、イマイチ。
■ 連載コラム★貞奴の『偏食』【27】は話題の『声に出して読みたい日本語』ほか。


2001/11/14/Wed.
▲晴れ。
▲取材先に文字校正を送付したりいろいろ。せわしない。
▲写真家の高梨豊さんインタビューの第一回。プロヴォーク参加の手前まで。興味深いお話をいろいろとうかがう。数回に分けてロングインタビューするということは今までなかったことなので、これからが実に楽しみ。
bk1。やだっちとトーク。『立花隆先生、かなりヘンですよ』(谷田和一郎著・洋泉社)の話題に。ぼくがこの日記で面白かったと書いていたことに反論をいただく。『立花隆先生、かなりヘンですよ』のなかの立花隆批判は、立花隆のサイエンス記事を読んでいる人にとっては「常識」なのだそうだ。ゆえに、あまり面白くなかったとのこと。ごめん、無知でした。しかし、ぼくのような文系バカにもわかりやすく立花隆のサイエンス記事の問題点を指摘しているという点ではやはり評価してあげたい。この手の批判本にありがちなダークなうらみつらみを感じさせないさわやかさもあるし。
▲安晃竜一『歌舞伎町アンダーワールド』を新大久保の書店で。テーマと買った場所がかぶっているので、採れたてをいただくという感じ。中身の方は、読みやすいのはいいが、ややマユツバな感じもする……。
▲今日はもうへとへとで『アンティーク』を見て就寝。


2001/11/13/Tue.
▲晴れ。
▲忙しい一日。午前中、遅れていた原稿をデザイナーに入稿。
▲東大前総長蓮實重彦さんへのインタビュー。総長時代の式辞、講演、原稿をおさめた『私が大学について知っている二、三の事柄』(bk1で予約受付中)についてなど。蓮實さんは総長時代、すでに二冊、大学について語った・書いたものを集めた本を出している。『知性のために』(岩波書店)『齟齬の誘惑』(東大出版会)だ。『私が大学について知っている二、三の事柄』は蓮實さんが大学について語る最後の本という売り文句になっており、その通り、内容は大学のあり方、大学の将来像などについての話題が中心となっている。とはいえ、それだけにはとどまらず、日本の現在についてかなり辛辣な批判も含まれている。お会いした蓮實さんは総長時代の雑感、情報大量消費時代に生きる現代人に対する批判をわかりやすく丁寧に話して下さった。
▲蓮實さんから映画についても、若干、お話をうかがえたのは個人的にうれしくもあった。ぼくも高校の頃から蓮實さんの映画評を読んでいたクチだからだ。12月1日ごろbk1の人文サイトにアップ予定。ご期待下さい。
bk1サスペンス・ミステリーサイト年末企画「2001年度サスペンスミステリーを振り返る」。bk1ブックナビゲーターの方々と座談会。11月最終週にアップ予定。
▲最後はゴールデン街にたどりつき、飲んだくれる。
■ 『ささら さや』と加納朋子ミニフェアをbk1<ミステリー・サスペンス>サイトにアップ。ちょとメルヘンチックでもある加納朋子版「ゴースト」。


2001/11/12/Mon.
▲雨のち晴れ。
▲ぼくが編集を担当、インタビュー原稿などを書いた『使うローライ』の重版が決まった。タイトル通り、いま密かなブームになっている二眼レフカメラの名機についての蘊蓄とマニュアル、写真家インタビューを収めた本。使ってみると、二眼レフには独特の楽しさがあるんですよ。
bk1。Tさんとトーク。
▲N.Y.でアメリカン航空機が墜落。しかも墜ちた場所はクィーンズの住宅地。
■ 『図書新聞』天才ヤスケンの「今週のおススメ」より第48回★『インストール』をbk1<文芸>サイトにアップ。高校生で文藝賞を取った綿矢りさの「インストール」がお題。辛口で知られるヤスケンも絶賛。


2001/11/11/Sun.
▲晴れ。
▲西武新宿線西武柳沢、田無、東伏見。西武新宿線に乗ることなど滅多になく、ほとんど学生のとき以来。懐かしい駅名から、学生時代の友人・知人の顔を思い浮かべた。


2001/11/10/Sat.
▲雨
▲新宿。書店徘徊。ある文庫を探し歩くが見つからず。著者名とタイトルのみうろ覚えだったので、どの文庫に入っているかがわからないのも見つからなかった理由かも知れない。こういうときは、オンライン書店の便利さを痛感する。また多ジャンルに渡って著作活動をしている著者の場合もそうだ。ジャンル別のフロア展開だと、ある著者の本をまとめて買いたいときには歩き回らなければならない。
▲というわけで、結局うちに帰ってbk1で注文。当初の予定では買った文庫をサ店でじっくり読もうと思ったのだがそんなわけで果たせず。ちとザンネン。
▲蓮實重彦『映画狂人』シリーズを拾い読み。雑誌などですでに目にしていた記事(「リュミエール」など)もあり、懐かしかった。蓮實重彦といえば、ちょうどぼくら三十代が大学生だったときに精力的な著作活動を行っており、あの独特の文体に痺れた思い出がある。
▲勢いがついて、蓮實重彦が東大総長に就任して最初の入学式でしゃべった祝辞を収録した『齟齬の誘惑』を読みはじめる。40分もしゃべってニュースになった、例のあれだ。
■新刊ミステリ・レビュー 戸梶圭太『未確認家族』、日本推理作家協会編『名探偵で行こう』をbk1<ミステリー・サスペンス>サイトにアップ。


2001/11/9/Fri.
▲雨
▲午前中は打ち合わせ。午後は原稿。
▲夜、打ち合わせで高円寺へ。かなり怪しい企画について意見交換。
▲そのまま高円寺の飲み屋をハシゴ。中央線のなかでも高円寺はなじみの薄い駅で、大した知識がなく新鮮。飲み屋に漂う場末感がたまらない魅力。
▲東大を卒業したばかりの著者が、「地の巨人」こと立花隆の「無知」と厳しく批判した『立花隆先生、かなりヘンですよ』(谷田和一郎著・洋泉社)を一気に読む。
▲ぼくは立花隆の読者としてはごく初期の『中核VS革マル 上』『下』(講談社文庫)と『立花隆のすべて』(文藝春秋)(文庫あり)くらいしか読んだことはなく、立花隆の科学ジャーナリストとしての著作には触れたことはないのだが、『立花隆先生、かなりヘンですよ』を読む限り、「知の巨人」の最近の著作は相当トンデモなことになっているらしい。
▲本書は立花隆の科学知識の誤りを指摘し、その背景にある立花隆の思想を読み解き、さらにはなぜ立花隆の本の質が下がってしまったのかについてまで考察している。
▲著者は立花隆の著書を通読することで、キャリア前半の仕事(「ロッキード事件」「日本共産党の研究」)を評価し、科学ジャーナリストして著作を発表するようになった近年の仕事に対して批判を加えている。立花隆の功の部分にも目を向けつつ、科学ジャーナリストでありながらオカルトに接近していること、講演・対談などでの発言と著作で主張していることに矛盾があることなどを鋭く指摘しているのだ。
▲著者は「あとがき」で、立花隆の著作を通読するうえで同感する点も多かったとしたうえで、それだけにあれだけ影響力のある書き手が誤った知識を堂々と披瀝していることに驚き、立花隆のみならず一般マスコミの流す情報のいい加減さも推して知るべしというような内容のことを書いている。本書のテーマは立花隆批判だが、著者が疑っているのは、立花隆を「知の巨人」に仕立て上げたマスコミ一般そのものだろう。その批判精神はきわめてまっとうだと思う。
▲若き著者が「知の巨人」を批判するということは、あたかもゴライアテに少年ダビデが立ち向かったようなものだが、本書を読む限りでは、若い書き手の率直な批判は的を射ていると感じた。一読者としては、著者も書いているように、立花隆の反論を読んでみたいと思う。
■『夜陰譚』と菅浩江の世界をbk1<ホラー>サイトにアップ。菅浩江さんの著者メッセージをいただいたので、既刊本も並べる。『永遠の森 博物館惑星』(早川書房)が星雲賞と日本推理作家協会賞をダブル受賞するなど今注目の作家だ。


2001/11/8/Thu.
▲曇り。
▲新宿警察署に行ったら、なんとなく運転免許を更新をすることに。ペーパードライバーなので、講習が身に入らず、意識が飛びがちに。不意に『使うオリンパスOM』の再校がでることを思い出し、愕然。あわてて編集部へ。
▲無事再校戻し。引き続き原稿など。
▲宮田親平『トラムのある街』(光人社)。元「週刊文春」編集長で、現在、科学・医療ジャーナリストである著者が書いた海外のトラム事情。トラムというのは路面電車のこと。いわゆる「鉄ちゃん」的なレポートゆえ、ぼくにはピンとこないのだが、ブダペスト、ブラチスラバ、プラハの東欧三都についてのレポートは懐かしく読んだ。
▲阿部和重『ニッポニアニッポン』(新潮社)をお題に【アルカリ】を書く。で、いま、本文を読み直して気が付いたのだが、タイトル以外の本文中で『ニッポニアニッポン』が『ニッポアニッポン』になってしまっている……。ごめんなさい。次号で訂正文を載せよう。恥ずかしい。
▲ビデオで『ランボー3 怒りのアフガン』。「アフガニスタンの戦士たちに捧ぐ」という献辞が、いま見るとなんとも皮肉だ。「2」ではベトナムで暴れたランボーが、今度はアフガニスタンでソ連軍相手に大暴れ。アメリカの「正義」ってつくづくご都合主義だな。
■高田崇史『試験に出るパズル』レビューと「QED」シリーズ・ミニフェアをbk1<ミステリー・サスペンス>サイトにアップ。


2001/11/7/Wed.
▲曇り。さ、寒い。
▲コツコツと仕事。一字一字活字を拾っているような気分になる。睡魔が……。
bk1ミーティング。
やだっちと映画話。石井聰互監督の初期作品『爆裂都市』がいかに面白いかという話を聞く。石井聰互は好きな監督だけど、なぜかぼくは『爆裂都市』を見逃している。たぶん、戸井十月が映画を作る前に書いた原作小説を読んでいるからだろう。戸井十月は映画『爆裂都市』に出演もしているが、映画づくりそのものの企画段階から噛んでいた。そして、映画よりも先に小説を書いているのだが、それは『マッドマックス3』的なスケールの大きな話で(うろおぼえ)、とうてい日本映画のスケールではなかった。だから、映画を見るときっとそのショボさにがっかりするだろうと思いこんでいたのだ。しかし『爆裂都市』が公開されたのが1982年。19年も前の話だ。芥川賞作家になってしまった町田康(町蔵)も出演していることだし、いま見ると確かに面白いかも知れない。
▲ついでに黒沢清の映画評論集『映画はおそろしい』(青土社)の話になる。「タカザワざん、メチャクチャ面白いですよ!」。たしかにチラっと見せてもらったら面白そうだ。黒沢清といえば、ゴダールとトビー・フーパーだもんな。
▲で、例によって黒沢清の映画で面白いのはどれか? という話になる。ぼくは『神田川淫乱戦争』や『ドレミファ娘の血は騒ぐ』のような初期作品が好きじゃない。『地獄の警備員』を付け加えてもいい。黒沢清の映画は今は亡き「シティロード」誌で公開時に常に絶賛されており、見てがっくりということばかりだった。
▲ところが哀川翔と前田耕陽コンビの軽妙なアクション・コメディー『勝手にしやがれ!』シリーズから見直した。このテンポのよさはただものではないと仰天した。
▲で、高橋洋脚本のホラー作品『復讐』二部作と『蛇の道』はすばらしい。怖い映画が駄目な人には『ニンゲン合格』を薦めておこう。世評に高い『CURE』も、悪くはないが、『復讐』二部作の方が満足度は高いと思う。期待が大きすぎたゆえか『カリスマ』は「滑った」というのがぼくの印象だ。
▲サッカー。「日本V.S.イタリア」引き分ける。ゴールは柳沢。
▲本当に久々に「アルカリ」を書く。お題は『フリッカー式』(講談社ノベルス)


2001/11/6/Tue.
▲曇り。
▲原稿整理(つづき)&初校チェック。
▲新潮社から近刊予定の長篇小説『水曜の朝、午前三時』を読んだ。70年の大阪万博にコンパニオン(当時の呼称は「ホステス」)として働いた女性を主人公にしたラブストーリー。当時の風俗を絡めたレトロタッチの雰囲気が特色。人類の進歩と発展をテーマに、戦後の経済復興の総仕上げとして盛り上がった大阪万博だが、その理想とは裏腹の苦い恋愛ドラマが描かれる。この小説、単純素朴という見方もできるかもしれないが、ぼくはそこが魅力だと思った。著者は蓮見圭一という新人作家なのだそうだ。
■第55回毎日出版文化賞をアップ。文化の秋、賞関連のニュースが続く季節だ。


2001/11/5/Mon.
▲雨。
▲原稿整理に追われる。なんとかデザイナー氏にトス完了。でも肝心の原稿が……。
▲友人の誕生日にかこつけて月曜から飲み。意識をなくすほどではないが、かなり飲む。なぜか無性に腹が立ったような記憶があるのだが、よくは覚えていない。でも実は酒宴そのものがつまんなかったから酒がすすんだのかも(笑)。忘れてるって気が楽だな。周りは迷惑かも知れないが。
■『闇先案内人』レビューと大沢在昌ミニフェアをアップ。『闇先案内人』、ぼくは好きな小説なのだが、安原顯さんと話した折りに安原さんは不満だという。その理由の一つが「いまどき某国はねえだろ」ということなのだが、まあ、それはそれとして冒険小説としての面白さは十分にあると思うんだよな。アップした書評は直塚和紀さんによるもの。
■新刊ミステリレビューを更新。ブリューゲルの名画が登場する『墜落のある風景』(創元推理文庫)と、朝比奈耕作シリーズ最新刊『「横浜の風」殺人事件』(Tokuma novels)の二冊。


2001/11/4/Sun.
▲快晴。強風。
▲気まぐれに「東京大仏」に行ってみることに。
▲東武東上線下赤塚駅から歩く。下赤塚駅近くは下町っぽい雰囲気で意外ににぎやか。ちょうど秋祭りの最中で、神社の境内ではフリーマーケットも開催していた。
▲駅から歩いて「水車公園」に寄って水車を見物し、東京大仏がある「乗蓮寺」に目指す。乗蓮寺のすぐ近くには小さな植物園や美術館もある。畑と住宅地が広がっていて、北関東で育ったぼくには懐かしい風景が続く。
▲東京大仏は、昭和49年に先代の住職が発心し、3年後に建立。大仏以外にも「がまんの鬼」や「奪衣婆(だつえば)」などのキャラものの石像があって楽しめる。
▲大仏好きというのはいるもので、にっぽん大仏さがしは全国の大仏を紹介するホームページ。
『フリッカー式』(講談社ノベルス)を読了。いささか唖然とさせられる結末だが、なぜか不愉快ではない。少なくとも若い作者にありがちなナルシズムがなく、とてもクレバーな書き手だと思った。密かに次作を期待しておこう。
▲緊急出版された田中宇著『タリバン』(光文社新書)を読みはじめる。アハメド・ラシッドの大著『タリバン』(講談社)に比べれば、新書サイズということもあり気軽に手に取れる本だろう。また、著者は日本人ジャーナリストゆえ、日本人から見たイスラム教、イスラム原理主義についてわかりやすく解説することに心を砕いている。筆致も冷静だ。
■『図書新聞』天才ヤスケンの「今週のおススメ」よりは田口ランディの最新刊『昨晩お会いしましょう』。ぼくも表題作のみ読んだが、面白かった。やっぱり巧い。


2001/11/3/Sat.
▲くもりのち雨。
▲テープ起こしなど。
▲高幡不動へ。
▲映画『RUSH!』をビデオで。哀川翔自らプロデュースを手がけたクライム・ムービー。共演は『シュリ』の主演女優キム・ユンジン。
 焼肉店チェーンを成功させた父親に反発し、狂言誘拐を考えた娘(キム・ユンジン)と、焼肉店勤務の男(哀川翔)の逃避行──と思いきや、物語はぜんぜん関係ない方向へ転がっていく。哀川翔はプロデューサー業で忙しかったのか、それとも遠慮したのか意外に出番が少なく、一世風靡セピア時代の盟友、柳葉敏郎ら、脇キャラにスポットが当たっている。
 瀬々敬久監督作品(脚本は井土紀州と共同)ゆえ、ふつうのエンターテインメントはハナから期待しなかったが、やっぱりヘンな映画。哀川翔ファンのマジョリティーにはおすすめしがたいが、へそ曲がりの邦画ファンにウケる要素は十二分にある。なので、オレ的には楽しめた。


2001/11/2/Fri.
▲晴れ。
▲新宿で若手写真家の中藤毅彦さんと。依頼していた撮り下ろしの写真原稿をお預かりする。夜の東京をモティーフにしたモノクローム写真5点。この年末、中藤さんは「季刊クラシックカメラ」ではこの東京の写真、「アサヒカメラ」ではソウル、「カメラレビュー」では東欧の都市の写真を掲載する。ちょうど各メディアの撮影地がいいあんばいにバラけている。いずれも楽しみだ。
▲写真家の小沢忠恭さんを取材。小沢さんはアイドル誌「momoco」(学研)の巻頭グラビアをはじめとしたアイドル写真のイメージが強い。ぼくも小沢さんの名前を覚えたのは「momoco」のカメラマンとしてだった。
▲しかし、写真家としての小沢さんは、作家立原正秋の遺児が、料理人としての腕を振るった『料理と器 立原正秋の世界』(平凡社)では料理、笠智衆のポートレート集『おじいさん』(朝日新聞社)など幅広く活躍している。小沢さんはデジタルにも積極的に挑戦しており、ホームページも充実している(OzLand)。
▲取材の目的は、まさに「momoco」時代に愛用していたというミノルタXシリーズについてお話をうかがうことだったが、デジタルカメラの進化についていろいろと教えていただき、返り討ちにあったといったところ(笑)。肝心のクラシックカメラ的話題は12月15日発売の「季刊クラシックカメラ 特集ミノルタ」をお楽しみに。
▲『使うオリンパスOM』の色校正を終え、印刷会社に戻す。
幻冬舎NET学生文学賞受賞作『途中下車』(幻冬舎)読了。「社会とは一部の秀才が車掌を、一部の天才と狂人が運転手を務めて連行されている巨大な列車である。」という書き出しから一気に引き込まれた。両親を事故で失った大学生とその妹が喪失感のなかで結ばれる近親相姦モノだが、字面から想像するようなおどろおどろしさはなく、むしろ明るい。著者の高橋文樹は東大仏文在学中の22歳でこの小説を書いた。その若さがプラスに働いているんだと思う。いい小説だ。
▲「妹萌え」つながり(?)ということで、本年度のメフィスト賞受賞作『フリッカー式』(講談社ノベルス)。こちらはカバー見返しに「本書は『ああっ、お兄ちゃーん』と云う方に最適です(嘘)。」と書いてあるような、確信犯的「妹萌え」ミステリー。こちらも主人公は大学生。
▲キチガイ兄弟のなかで唯一マトモで、主人公が近親相愛的な感情を持っていた妹が自殺した。その自殺の原因が、有力者たちにあると知った主人公は復讐を誓うが……。著者の佐藤友哉は執筆時21歳。こちらも若い。まだ読みかけだが、達者である。恐るべし。
▲しかし妹萌えって、なんだかなー。妹、いないのでとくに心理的な抵抗感はないんだけど(笑)。


2001/11/1/Thu.
▲はれ。
▲西澤保彦『夏の夜会』(光文社カッパノベルス)読了。テーマは面白いんだけど、やや物足りないような気も。謎→謎解き、というミステリのスタイルを面白がれるかどうかということも関係があるんだろう。
▲記憶の曖昧さをついてサスペンスを盛り上げていくというアイディアはとてもいいと思うんだけど、小説としてのアクみたいなものもつい求めたくなってしまう。
▲上野で安原顯さんと。結婚祝いということで妻ともどもご馳走になった。


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