A DAY IN MY LIFE

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2002/03/31/Sun.
▲晴れ。
▲小金井公園で三多摩LOMO会の花見。1年てあっと言う間だ。
■ヤスケン編集長日記 3月29日(金)雨


2002/03/30/Sat.
▲晴れ。
▲渋谷シネマソサエティーで三池崇史監督の最新作、映画『荒ぶる魂たち』
を見に行く。加藤雅也主演のヤクザ映画。男気爆発の150分。ビデオ化される時には4時間弱の大長編となるらしい。久々、【アルカリ】を書こうと思う。
▲「福ちゃん」で山盛りの刺身。その後、帰り道で某氏とばったり。二人が本屋から出てきたというのが、いかにも「らしい」。
▲勝新太郎が自らのプロダクションで製作し、監督、脚本もものしているテレビシリーズ『警視K』の第3巻。このシリーズ、勝の芝居っぽさを廃したヌーベルバーグ的な演出と、サイコサスペンス風の犯人像をいち早く提示するなど、先進性がうかがえる。もっとも、腹の出た勝新の魅力は乏しく、視聴率低迷で打ち切りもやむなしか。密かに楽しみたいマニアックなシリーズ。
▲映画『新しい神様』(1999)をビデオで。
『生き地獄天国』(太田出版)を読んでから気になっていた。映画。雨宮処凛は、元リストカッター、元ヴィジュアルバンドのおっかけ、そして右翼団体に接近、ミニスカ右翼としてバンド活動、新左翼の塩見元赤軍派議長らとともに北朝鮮を視察し感銘を受けるなど、あっちへ行ったりこっちへ行ったりとさまよい続ける。自分は社会とつながっていたいが、ダメな自分は誰かに強力に引っ張って欲しい。だから天皇、主体思想に感動する。『新しい神様』は反天皇を標榜する土屋豊が雨宮にビデオを渡し、その毎日を語らせる。彼らは右翼について、天皇制について、今の社会について語り合う。そのうち、雨宮は土屋監督に惹かれていく。
▲ややとっちらかっている印象はあるが、それこそが、混迷する現代の象徴か? 雨宮処凛はこの映画ののちもしぶとく生き続け、最近、立て続けに二冊の本(小説『暴力恋愛』(講談社)『自殺のコスト』(太田出版))を刊行した。要注目。
▲サム・ペキンパーの映画『キラーエリート』(1975)をビデオで。
▲CIAから外注を受けて謀殺、密殺を請け負っている民間護衛組織“コムテグ”メンバーたちの苦い活躍。ニンジャ部隊の活躍が眩しい。
■ヤスケン編集長日記 3月28日(木)晴


2002/03/29/Fri.
▲雨のち曇りのち雨。
▲気が抜けてしまい、あまりはかどらず。今日は次号「クラカメ」の台割をいじったり。
▲沢木耕太郎の新刊『イルカと墜落』(文藝春秋)は著者久々の紀行。もっとも、テレビクルーとともにアマゾン奥地へ──というお話。なんだかなあ。
▲送別会。ちょっとおセンチに(ウソ)。生きていればまた会えますよ!
■ヤスケン編集長日記 3月27日(水)どしゃ降り


2002/03/28/Thu.
▲晴れ。寒い。
▲「季刊クラシックカメラ」でヌード撮影をお願いすることになり、プロダクションから宣伝材料をもらう。当然だけど、みんな裸。黒バックの前に立ってパンツ一丁。正面から撮っているので、スタイルが一目瞭然。ちょっと残酷なポートフォリオだよなあ、と思う。編集部でそれぞれどのコがいいか選んでいるときはやや人買い気分。その事務所はオーディションは受け付けていないとのことで、来週、撮影するカメラマン氏に最終決定をお願いすることに。
▲夏前の刊行をめざして制作中の高梨豊著『ライカな眼』(仮・毎日コミュニケーションズ)の本文原稿を一通り完成。ただし、これから膨大な注釈、リライトが発生すると思われ……。
▲写真家の大倉舜二さんと四谷三丁目でお会いし、ご馳走になる。大倉さんの写真集『TOKYO X』(講談社インターナショナル)に感動したぼくはbオンライン書店bk1でインタビュー(■大倉舜二、写真集『TOKYO X』を語る)をお願いした。その『Tokyo X』は日本のメディアではほとんど黙殺に近い扱いを受けたのだが、在日英字新聞数紙が書評を載せ、その勢いで表紙に書評を刷り込み、ニューヨークの書店で販売するという。ニューヨークといえば、20世紀の写真の本拠地。どんな反響があるか注目したい。ほかにニューヨークテロ事件と、写真家集団マグナムによるルポ『ニューヨークセプテンバー11』(新潮社)についてなど。
▲内田春菊責任編集『内田金玉』(イーストプレス)を読む。内田春菊ゆかりの人々が漫画を書いたり文章を書いたり鼎談したり。長嶋有里枝と内田春菊、それぞれのダンナさんを交えた4人の鼎談が面白かったな。斎藤学、岸田秀というビッグネームを揃えた鼎談は、鼎談の難しさを感じてしまった。うがった見方かも知れないが、精神科医と心理学者のアプローチというのは当然のことながら違う。しかし、同席していると、その違いがはっきりとは見えにくい。ゆえに、二人それぞれの個性が阻害されているように感じられた。
■ヤスケン編集長日記 3月26日(火)雨


2002/03/27/Wed.
▲雨。
▲録りだめしてあった「アリーMYラブ」2回分をまとめて見る。
▲東野圭吾の新刊は長篇ミステリ。『レイクサイド』(実業之日本社)。親も参加している「お受験」サークルの勉強合宿に遅れて参加した俊介は、妻がそのサークルの中の誰かを浮気しているのではないかと疑っている。そこへ、その証拠をつかんだと、愛人の英里子が現れるが、彼女は殺されてしまう。しかも犯人は妻だった……!? 二転三転するストーリー。小品だが複線の張り方が実に巧みで飽きさせない。しかし、読み終えてちょっと虚しい。
■ヤスケン編集長日記 3月24日・25日


2002/03/26/Tue.
▲曇りときどき雨。
▲歯医者。子供のころは全然平気だった。だが、大人になってからなぜか恐怖を感じるようになった。映画『マラソンマン』の影響か?(ナチのローレンス・オリビエが歯を抜く拷問を……)
『銭金について』(朝日新聞社)読了。やっぱ、この人最高だな。このひねくれぶり、まさに反時代的。「文学は悪」と言い切り、文学にまつわる権威を否定しつつ、しかし、直木賞をもらったことで「ザマアミロ」と世間に言いたくなるというダメな自分をこれでもかと書く。露悪的なスタイルは時に気色悪いけど、この人の覚悟にはやはり恐れ入る。
▲ところで、偶然、ある大学の同級生のことを考えていたら、ページをめくったところにその人の名前があって驚く。車谷長吉はその人について「この女はどうしても私に原稿を書かせたいらしい」を書いている。そうか、やつも車谷ファンだったのかと思い、うれしいような恥ずかしいような。たしかにそういうタイプの女だったからだ。しかし、彼女の願いは成就しなかったようだ。出版社を辞めたとも聞いた。今、どうしているんだろうか。いい仕事をしているといいけれど。
▲新宿歌舞伎町<上海小吃>。オシリス、bk1混成チーム。この店はマジ旨いですよ。中華は人数揃わないと、いろいろ頼めずつまらないので、今日は満足。
▲オシリスさんは写真専門の出版社。『まほちゃん』はハイパー・キュートなモノクロ写真集。生きる希望がわいてきますよ。オシリスさん、近々サイトを立ち上げるというのですごく楽しみ。
■<ミステリ>新刊レビュー 樋口有介『木野塚佐平の挑戦』


2002/03/25/Mon.
▲晴れ。
▲昨日の続き。
▲安原顯さんがブックス安藤店長の安藤さんと、田中さんの「卒業」祝いを、というので、ぼくも花など持って出かける。って、ぼくもご馳走になっただけですが。元気が出る話をいろいろと。安藤さんはbkiから糸井重里事務所に移籍するけど、ブックス安藤の仕事も続けるとのこと。安原さんのブックサイト<ヤスケン>ともどもよろしく!


2002/03/24/Sun.
▲晴れ。
▲新宿御苑で花見。Oさんが作った重箱の料理を堪能。素敵な人だ……。P嬢の誕生日ということで乾杯など。肝心のサクラはTOPページの写真を参照してください。
▲夜まで飲み続ける精神的余裕はなく、帰宅。倒れるようにして寝てしまい、起きてから仕事の続き。気が付くと深夜。泥船からスコップで水をすくいだしている気分。


2002/03/23/sat.
▲雨。
▲自宅にてコツコツと仕事。
▲映画『宵待草』(1974年・日活)をビデオで。
▲神代辰巳監督の一般映画。脚本は長谷川和彦。
▲大正デモクラシーが盛んな時代。アナーキストを気取るいいトコのぼんぼん谷川(高岡健二)は、先輩格のテロリスト平田(夏八木勲)と交番を襲うなどの活動をやっているが、パッとしない。組織の命令で深窓の令嬢しの(高橋洋子)を誘拐し、身代金をせしめようとするがうまくいかず……。
▲学生運動に挫折した世代の心情を大正時代のテロリストに重ね合わせた異色映画。例によって例のごとく、カメラはふらふらとさまよい、登場人物たちのくぐもったモノローグや、鼻歌が続く。神代辰巳独得のこの雰囲気に慣れると快感だ。やや太りすぎの高橋洋子がえんえんとでんぐり返りを続けたり、夏八木勲が歌うコミックソング風の鼻歌など、見所、聞き所は多い。変な映画。
▲映画『ふたりの人魚 蘇州河』(2000年 中国・ドイツ・日本)をビデオで。
▲上海が舞台。ビデオカメラマンの「私」は、秘密めいたクラブで「人魚」を演じる女、メイメイと出会う。メイメイは「私」にこんなふうに言う。「もしも私がいなくなったら、マーダーのように探してくれる?」。
▲マーダーはバイク便の仕事をしながら姿を消した恋人を捜し続けている男だ。一種、都市伝説的なその男の物語を「私」は夢想する。マーダーはマフィアの運び屋をやっている不良少年。仕事の一つが少女を家と伯母のところの間を送り迎えすることだった。いつしか二人の間に恋心が芽生えるが、その恋はマフィアたちの犯罪によって踏みにじられる。そして、少女は消えた。
▲そのマーダーが現実に現れ、メイメイを見つけ、失踪した少女だと言い張る。そして「私」はマーダーにメイメイと別れてくれるように切り出されるが……。
▲監督のロウ・イエは中国映画界の新世代をリードするフィルム・メーカーだという。ミュージック・クリップ風の映像、明らかに村上春樹の影響を受けたモノローグなど、香港、台湾のアートムービーに通底するムードがある。こういう映画は嫌いではない。主役二人のみずみずしい魅力もいい。
▲しかし、どこか自閉的というか、こぢんまりとまとまりすぎていて感動を呼ばない。残念だ。日本のアップリンクも出資している。原題は、上海に船で上陸したことがある人には懐かしい蘇州河から採られている。上海に思い入れのある人はとりあえず見ておく価値はあると思う。
■ヤスケン編集長日記 3月22日(金)曇、のち雨
■ヤスケン編集長日記 3月21日(木)晴、強風


2002/03/22/Fri.
▲曇りのち雨。
▲井田真木子の遺著『かくしてバンドは鳴りやまず』(リトル・モア)読了。やはりすばらしい。わずか3回分の原稿でしかないのはいかにも残念だが、断片とはいえ、その生の最後まで、井田真木子が書き手として新しい仕事に挑戦しようとしていたことに感動した。
▲かつて沢木耕太郎が近藤紘一の単行本未収録の新聞記事とルポを一冊の大著にまとめたことがある(『目撃者』。のち、新聞記事を省いて文春文庫に収録されたが現在は品切れ・重版未定のようだ)。その「編集後記」の中で沢木は近藤の死を「真の意味で途上の死」と惜しんだ。井田の死にも同様のことが言えるのではないだろうか? 
▲つづけて車谷長吉『銭金について』(朝日新聞社)を読みはじめる。不況が長引くいまの日本で、なぜか車谷長吉が魅力的に感じられる。不景気と文学は相性がいいんだな、やっぱり。
▲歌舞伎町、心の旅。
■<ホラー>東雅夫のイチオシ新着棚 2002年3月中旬★「伝奇と怪異」の新星・島村匠に注目せよ!
■ヤスケン編集長日記 3月20日(水)晴
■<ヤスケン>監修=田沼武能・金子隆一『定本 木村伊兵衛』(朝日新聞社)


2002/03/21/Thu.
▲晴れ。
▲春分の日だそうです。
▲大橋由美『井島ちづるはなぜ死んだか』(河出書房新社)
▲井島ちづるとは誰か? 1999年に27歳の若さで死んだフリーライターだ。中森明夫らが講師をつとめたライターズ・デンに通い、講師の一人AV監督のバクシーシ山下に志願してAVに出演。22歳まで処女だった井島はAVに出て処女を失う。そして恋ができない自分から発想した単行本『恋ができない!!』(太田出版)を取材執筆し、死の間際まで幻冬舎から出る予定だった小説を書いていたという。
▲著者の大橋由美は友人だった井島の死を受け止めるための「喪の仕事」として本書を書いたのだろう。井島が取り組んでいた自殺未遂者へのインタビューを収録し、井島の周囲にいた人々に取材している。しかし、読んでいてノレない。どうしようもなく退屈だった。それは井島ちづるという人の魅力がどうにも理解できないからだ。乱暴な言い方かも知れないが死にたければ(人に迷惑にならないように)死んでくれてけっこう、としか思えなかった。
▲国際フォトジャーナリスト柴田三雄さんの事務所で打ち合わせ。柴田さんはスペースシャトル打ち上げや自衛隊の取材撮影、ジャンボジェット機の航空撮影などスケールの大きな仕事で知られる。またニコンのカメラ、レンズを中心としたクラシックカメラの分野でも活躍されており、「季刊クラシックカメラ」にご登場いただいている。今回のお題は「ニッコールレンズ」。明日からヨーロッパへ立つという柴田さんにオールドニッコールレンズでの撮影をお願いした。ニコン話ほか興味深いお話をいろいろとうかがう。
▲そういえば。『季刊クラシックカメラ 特集フォクトレンダー』(双葉社)絶賛発売中です!
▲祭日どころではなく遅れがちな仕事を挽回しようと焦るものの……。
■ヤスケン編集長日記 3月19日(火)晴


2002/03/20/Wed.
▲晴れ。
▲西荻で「クラカメ」関係者飲み会。居酒屋でIさんとバッタリ。深夜まで写真のことなど。
■ヤスケン編集長日記 3月18日(月)晴
■<ヤスケン>おすすめ 第62回★中山康樹『ジャズメンとの約束』
■<ホラー>『岡本綺堂妖術伝奇集』編纂余話〜東雅夫


2002/03/19/Tue.
▲晴れ。
▲ホラーサイト今後の展開会議。
▲先年亡くなったノンフィクション作家、井田真木子の遺著『かくしてバンドは鳴りやまず』(リトル・モア)を読みはじめる。「リトル・モア」に10回連載を予定しながら、井田の死によって3回分のみの原稿が残された。その原稿に、井田の連載全回分の見取り図ともいえるメモと、生前の井田へのインタビュー、井田の代表作『プロレス少女伝説』(文春文庫)の「主人公」である神取忍へのインタビューが掲載されている。
▲連載のコンセプトは、井田が名作ノンフィクションをセレクトし、その書き手の「目」になって、その作品と書き手について書くという野心的なものだった。それも、例えば『冷血』のカポーティーと『そしてエイズは蔓延した』(この本の原題がかくしてバンドは鳴りやまず、である)()のランディ・シルツを一回の連載で取り上げるといった組み立て方である。井田真木子という恐るべき書き手が死に至る最後まで走り続けていたということにあらためて感動した。
▲さらに、「メモ」の中には連載一回分をさいて近藤紘一を取り上げる予定になっており、近藤紘一フリークのぼくとしては好きな書き手がもう一人の好きな書き手をどう書くか、実に興味深く、読みたかった。そのメモには近藤紘一の「妻と娘」への取材も構想されており、つい先日『アジア大バザール』(講談社文庫文庫)に収録された「パリの近藤紘一」(神田憲行)でまさにその妻ナウさんと娘ユンさんのその後のレポートを読んだばかりだったので、井田真木子が二人に会ったらどんなレポートを書いただろうかと思ってみたりもした。


2002/03/18/Mon.
▲晴れ。
▲午前中、定例会議。
▲夜、K本さんと打ち合わせ。そのまま飲みにいく。
▲永瀬隼介の3作目の長篇小説『デッドウォーター』(文藝春秋)を一気読み。読みはじめると止まらないのが永瀬さんの本だ。
▲フリーライターの加瀬は35歳。「事件もの」一本で勝負している硬派ライターだが生活は苦しい。加瀬は一発逆転を狙って死刑判決が出ている強姦殺人犯のルポを書こうとしているが、この犯人は死刑判決が出ているにも関わらず、死など怖くないと言い放つ。そして、謎めいたほほえみを浮かべながら加瀬を含めた周囲の人間を翻弄する。そんな悪魔的な犯罪者の過去を調べるうちに、加瀬は自分の私生活との恐るべき接点を見つけ、慄然とする。怒りをたぎらせる加瀬だったが、相手は法に守られた刑務所の中だった……。最後まで一気に読ませる筆力。今から次作が待ち遠しい。
▲永瀬隼介ってどんな作家? という向きにはこちらをご参考にどうぞ。→永瀬隼介、『アッシュロード』を語る(2002/02/07)
■ヤスケンの編集長日記! 2002 3月16日(土)曇
■<ヤスケン>新着書評 フィリップ・ソレルス/五十嵐賢一訳『セザンヌの楽園』(書肆半日閑)


2002/03/17/Sun.
▲晴れ。
▲母のところへ。
▲映画『ケイゾク/映画』をビデオで。
▲途中までは「本格推理??」な感じなのだが、付け足しのような最終シークエンスは「エヴァンゲリオン」のごとし。いったい何なんでしょうか? テレビシリーズで死んだっぽい人たちが説明もなく生きているのも居心地悪い。いっそ夢オチにしてくれた方がマシ(笑)。
▲七戸優の絵が気になって『カンパネルラ』(パロル舎)を購入。bk1から届く。東雅夫さんも推薦です。
▲黒澤明と公私ともに親しく、助監督も務めた映画監督・堀川弘通が書いた『評伝 黒澤明』(毎日新聞社)を読んだ。黒澤を偉大な監督として認めつつも、作品の瑕疵についても書き、私生活についても率直な筆致で書いていて興味深い。黒澤が「天皇」と呼ばれ、その独裁ぶりを揶揄されることが多いのは事実だが、『七人の侍』までは東宝という大家族主義的な会社の中で機能していたようだ。しかし、東宝のスタッフ、大部屋俳優などの必死のがんばりを忘れた黒澤はハリウッドとの合作映画(『トラ!トラ!トラ!』など)の失敗から精神的に追い込まれていく。
▲黒澤の映画作りは「一将功成って万骨枯る」だとつぶやくスタッフの言葉が象徴するように、苛烈なものだった。その結果、黒澤は「世界のクロサワ」になったわけだ。天才黒澤の偉大さと、映画監督としての作品づくりへの強欲、そして作家としての試行錯誤を独自の視点で描いた評伝。黒澤映画初心者にもおすすめできる読みやすい本です。


2002/03/16/Sat.
▲晴れ。
▲整理とか。
▲散髪。それから原宿のデザイン・フェスタ・ギャラリーで「三多摩ロモ展」へ。今日・明日のみの展覧会。ある一日をメンバーそれぞれが写真に収めたシリーズが印象的。
▲東中野「メゾン・マドリード」でスペイン料理。最近のお気に入り。
▲映画『ホールド・ユー・タイト』。スタンリー・クアンは好きな監督なのだが、この映画はよくわからなかった……。チンミー・ヤウファンなので、彼女が出ているだけでいいといえば、いいんだけど。ゲイの中年を演じているエリック・ツァンがあいかわらず上手い。
■ヤスケンの編集長日記! 2002 3月13日(水)晴
■<ヤスケン>新着書評 原満三寿(まさじ)『評伝 金子光晴』(北溟社)


2002/03/15/Fri.
▲晴れ。
▲昨日のつづき。原稿整理をえんえんとやっていると、その内容のなかに取り込まれていく感じがする。
▲テレビドラマ『ケイゾク』を最後まで見る。Fくんの不気味な一言の意味がわかる。このトンデモなラスト、爆笑するしかない(笑)。が、そういう意味で渡部篤郎の演技がクドすぎ。なんだよ、あれ。しかし『ケイゾク』、刑事ドラマのパロディ、オマージュなど楽しめる部分が多々あった。トリックあり、細かいディテールへの引っかけがありで、凝っている。脚本を最後まで一人で書いた西荻弓絵という人、すごいと思う。
▲体調が急激に悪くなり(よくある)、映画『戒厳令の夜』をビデオで見たりする。こういうストーリーの映画を大まじめに作ってしまえるセンス、理解不可能。しかし、嫌いかと言われるとそうでもない。小学生のころか、中学生のころにテレビで見てけっこう感動した覚えがあり、その後、原作を読んで「サンカ」の民族誌を知り印象深かったのだけれど、大人になって見たら、アレ(汗)って感じ。
■<ミステリ>新刊レビュー 逢坂剛『無防備都市 禿鷹の夜II』/梓河人『ぼくとアナン』


2002/03/14/Thu.
▲晴れ。
▲なんとなくダウナーな一日。
▲エルロイの『キラー・オン・ザ・ロード』(扶桑社文庫)読了。いかにもアメリカンな連続殺人鬼の「自伝」という型式をとった悪夢のような長篇小説。州境を超えて、殺人を犯しながら旅を続けるマーティンは、物語の中程でロスという警官に正体を見破られる。しかし、ロスもまた殺人の快楽にとりつかれた男だった。エルロイ恐るべし。
■ヤスケンの編集長日記! 2002 3月12日(火)晴
■<ヤスケン>新着書評 マリオ・プラーツ/裏一章訳『蛇との契約 ロマン主義の感性と美意識』(ありな書房)
■<ヤスケン>新着書評 『集英社世界文学事典』(集英社)


2002/03/13/Wed.
▲晴れ。
▲新宿税務署に確定申告の書類を提出しに行く。
▲午後、打ち合わせが立て続けに。
▲写真家の三浦憲司さんからデジタル一眼レフカメラとオールドレンズのマッチングの良さについてお話を聞き、目からウロコが墜ちた思い。
▲ベトナムの名作ルポ『ハノイの純情、サイゴンの夢』(講談社文庫)の著者、神田憲行さんとお会いする。神田さんといえば『アジア大バザール』(講談社文庫)に収録されている短篇「パリの近藤紘一」も印象的だった。ぼくも近藤紘一の大ファンだからだ。お話は仕事のこと、写真のことなど。
▲「季刊クラシックカメラ」最新号の見本誌が仕上がった。特集は「フォクトレンダー」。フォクトレンダーがドイツの名門光学メーカーだったが、長く低迷していたが、日本の光学メーカーコシナが復活させた。ちょうどコシナの小林社長が編集部に見えられたので、さっそく見本誌を見ていただく。発売は15日。編集長、執筆者の方々と酒宴。
■<ホラー>ブックフェア 「幻想文学」最新号&関連書
■ヤスケンの編集長日記! 2002 3月11日(月)晴


2002/03/12/Tue.
▲晴れ。
▲映画『新・仁義なき戦い』をビデオで。
▲世評が芳しくなかったので期待はしていなかったのだが、それにしてもあまりにも『仁義なき戦い』から遠い映画。幼なじみの二人(トヨエツ、布袋)が片方はヤクザ、もう片方は夜の世界で事業家として成功を収めている。しかし、ヤクザの抗争が二人を引き合わせて……というお話。『どついたるねん』『顔』の阪本順治が監督を務めているため、どこまでも作家的というか、阪本映画。ヤクザ映画にはまるで見えない。しかし、これは阪本順治の責任ではないという気もする。『仁義なき戦い』の名を継ぐのであれば、もっと荒々しく、暴力的な世界を描くべきで、その「任」はむしろVシネマを撮っているような若手職人監督にあるのではないか。
オーエス出版のIさんから拙著『カウンセラーになろう!』重版の知らせ。今度で6刷目。うれしいデス。
■<ミステリ>『戦士たちの挽歌』書評とフォーサイス ブックフェア


2002/03/11/Mon.
▲晴れ。
▲一昨年くらいから花粉症なんだけど、今年は最悪。これって毎年悪くなる一方なんすかねえ。
▲というわけで、仕事は進まず……。
▲鈴木宗男国会証人喚問。とくに新事実もなく。しかし、今更アレだけど、「ウソを吐く」って悪いことだよねー、やっぱ。偽証罪で告発するってけっこう大切なんじゃないかとちょっと思う。
▲17歳少女監禁虐待ってのももちろん凄いけど、子ども4人(うち一組双子)の世話をさせられたとか、容疑者男女完全黙秘とか、かなりスゴイ背景がありそうです。
■ヤスケンの編集長日記! 2002 3月10日(日)快晴
■<ヤスケン>新着書評 小沼丹『小さな手袋/珈琲挽き』(みすず書房)
■<ヤスケン>新着書評 大塚和夫他編『岩波イスラーム辞典』(岩波書店)
■<ヤスケン>新着書評 アレクサンドル・イヴァシキン編/秋元里子訳『シュニトケとの対話』(春秋社)
■<ヤスケン>新着書評 『ウォルター・ペイター全集 1』(筑摩書房)


2002/03/10/Sun.
▲晴れ。
▲次から次へと懐かしいモノが現れて……。
▲映画『インサイダー THE INSIDER』(1999)をビデオで。
▲タバコ会社を解雇された研究者ワイガント(ラッセル・クロウ)は会社がニコチンの害悪を知っており、さらにニコチンの吸収を高めるためにアンモニアを加えていることを告発する決意をする。しかし、巨大資本を有するタバコ会社は守秘義務を楯に取ると同時に、告発を放送しようとするCBSニュースに圧力を掛ける。CBSニュースの看板番組「60ミニッツ」のプロデューサー、バーグマン(アル・パチーノ)は内部告発者(インサイダー)であるワイガントを守るため、死力を尽くす。
▲上映時間158分はたしかに長いがその時間をたっぷりと楽しむことができる力作。物語の前半は守秘義務を課すことで企業にとって都合の悪い情報をつぶそうとするタバコ会社の汚いやり口を暴く。やや精神的に不安定な部分のあるワイガントは人生でもっともキツい窮地に陥る。そして、物語の後半は報道の現場に企業経営の論理を押しつけようとする経営と、ジャーナリストとしての信念を貫こうとするプロデューサー、バーグマンの戦いを描く。ともに企業の論理に押しつぶされそうになりながら、プライドをかけて戦う男たちである。アメリカ映画の伝統に乗っ取った見事な映画。
▲アル・パチーノって作品の選び方が実にいい。ラッセル・クロウは冴えない風貌のエリート研究者を巧妙に演じている。二人の魅力がこの映画の硬質なテーマに華を添えている。おすすめです。
▲テレビドラマ『QUIZ』最終回まで見終える。
▲いやはや。ラストのどんでんの評判がサイテーだったドラマシリーズだが、オレ的にはオッケー。このズッコケ方はすばらしい(笑)。クライマックスの途中まで、中流家庭をぶっとばす反社会的な危ない話に向かうと思わせておいて(まあ、「公共」電波のテレビにそんなもの期待してもアカンけど)、最後の着地点が「一家の絆が深まった」というトンデモなオチ。これは笑うしかないだろう。このズッコケぶりにはいろんな要素が含まれている。最後まで果敢に挑戦(何に?)したスタッフの健闘を称えたい。あと白いセーラー服の内山理名ちゃんにカンパイ(笑)。


2002/03/09/Sat.
▲晴れ。
▲確定申告。締め切りぎりぎりになってからじゃないとやらないという行動パターンがここでも……。途中でいやになって現実逃避。
■<ヤスケン>新着書評 高橋英郎『モーツァルト366日 新訂版』
■ヤスケンの編集長日記! 2002 3月6日(水)曇
■<ミステリ>新刊レビュー  黒田研二『今日を忘れた明日の僕へ』/真保裕一『ダイスをころがせ!』
■<ホラー>注目新刊/種村季弘対談集『異界幻想』ほか


2002/03/08/Fri.
▲晴れ。
▲昨日の続きのような一日。
『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』(角川書店)で颯爽とデビューした元ひきこもりの作家、滝本竜彦の第二作『NHKにようこそ!』(角川書店)を読む。大学を中退してひきこもっている主人公が、新興宗教の勧誘を手伝う美少女や、「夜」々木アニメーション学院のゲームクリエーター科にすすんだ高校時代の後輩と出会い、「ひきこもり脱出プロジェクト」と称して美少女に講義を受けたり、後輩とエロゲーを作ろうと試みたりする青春小説。クライマックスは胸キュン(死語)。悪の組織に立ち向かうことができれば、自分もひきこもりから脱することが出来るのではないかと考えた主人公は、NHKを「日本ひきこもり協会」と読み替えて、仮想敵だと考える。戦うべき「悪」や「敵」を探しあぐねているポスト冷戦後の先進国の若者を描いたという点で興味深い。
▲入院した友人から電話。役に立つような話はできなかった。
▲夜は台湾料理屋で半分に割られた鶏の頭を食べたり、台湾風パブでタレなし餃子(いま話題)を食べたり。ロシア人のおねえさんとチェブラーシカの話題で盛り上がったり。そのおねえさんの一族はもともとベラルーシとかウクライナとか、ヨーロッパよりのロシアをルーツとしているそうで、いつのまにか親戚が住んでいる場所が別の国になっていたというのはなんかスケールの大きな話。親戚を頼って旅行したら、親戚がウクライナ語をペラペラしゃべっていて言葉が通じなかったらしい。チェブラーシカについては「30年くらい前のもので、ロシアでは完全に忘れられている」そうです。でも、歌をちゃんと覚えていて歌ってくれたから、やっぱり有名なんでしょうな。久々にホームページを見たらDVD BOXが出るとか。
■<ヤスケン>新着書評 沼野充義『亡命文学論 徹夜の塊』
■<ヤスケン>新着書評 フランソワ・ベスフルグ他著 富永良子訳『ベリー公のいとも美しき時祷書』
■ヤスケンの編集長日記! 2002 3月6日(水)曇
■<ミステリ>このミステリを読みのがしていませんか? 永井するみ『防風林』(講談社)


2002/03/07/Thu.
▲晴れ。
▲TBS「ベストタイム」で、いま注目の大神源太(ジー、オーグループ会長)特集。例の5億円かけた映画『ブレード・オブ・ザ・サン』は、主人公大神源太が「幻の葉(バナナ茶?)を探しに行く冒険」というストーリーらしい。ますます見たい。この映画に関わったという人が匿名で登場し「見せ場をつなげただけの田舎芝居」とクサしていたけれど、その撮影現場では大神源太自らがシナリオをどんどん変更、即興で演出をしていったというから、これはもうゴダールか北野武か(笑)。いやあ、ほんと見たい。
▲で、大神がかき集めたカネのゆくえは知れず、被害総額は数億。番組のキャスター女史が「映画なんか作ってる場合じゃないですよねえ」と発言。そりゃ違う。被害者の方には申し訳ないが、「映画なんか作っちゃうから面白いんだよ!」。福岡出身の大神は矢沢永吉に憧れ「成り上がりたい」が口癖だったとか。ますます気になる。
▲ぼくも編集に関わっている「クラシックカメラminibook」シリーズ(刊行中。現在11巻+別巻1→プロフィール参照)の常備書店ができるというので、一気に6点増刷がかかる。それに伴う細々とした作業など。
▲「クラカメ」がらみでまた飲みに。先日発表になったライカの新機種(実に18年ぶり)「M7」のことや、カメラのはなし、これからの企画についてなど。
▲映画『回路』をビデオで。
▲「前半は面白いけれど後半わけわからん」という世評通り(笑)。とはいえ、黒沢清の映画を見続けている当方としては、むしろ後半部分こそが黒沢清の真骨頂で、後半から逆算することで前半もまるで違う映画のように見えてくる。いわゆるホラー、ネットの怪談、というようなエンターテインメント志向ではなく、もっと本質的な人間存在のあやふやさや、黒沢清独得の終末感漂う世界を味わうべき映画なんだろうと思う。おれ的にはオーケーな映画。じっさい、怖かったし。
■ヤスケンの編集長日記! 2002 3月5日(火)晴


2002/03/06/Wed.
▲晴れ。
▲仕事的には単調。ってゆーか、目的地に向かって歩いているんだけど、途中道草食ったりとかそんな感じ。
▲グレゴリ青山さんの『旅で会いましょう。』(メディアファクトリー)を読む。グレゴリさんは「旅行人」などでおなじみのバックパッカー漫画家。インド映画に詳しく、クラシックカメラ好きでもある。一度取材させていただいたことがあり、その後、偶然、上海行きの船の中でばったり会い、上海では何度か夕飯をご一緒した。本書にはそのときの上海行のときのこともわずかばかり登場して、とても懐かしかった。お気に入りだった中華料理店がツブれてしまったということも描いてあって、ちょっとがっかりしたけれど。
▲ぼくは会社を辞めて、長期の旅行に出るスタート地点が上海だったのだが、グレゴリさんは長期旅行ではなく短期旅行にシフトしつつある時期だったようだ。この本も、短期で楽しめる旅行がコンセプトになっていて、大連、ウラジオストック、台湾、韓国が舞台になっている。ぼくも長期旅行からは足を洗った(?)ので、そういう意味でも感慨深く読んだ。おすすめです。
▲「クラカメ」編集長、Aさん、Tさんと飲み。
■<ヤスケン>現代思潮新社が贈る知の世界──エートル叢書
■ヤスケンの編集長日記! 2002 3月4日(月)晴
■<ミステリ>恩田陸最新刊『図書室の海』書評とブックフェア
■<ホラー>東雅夫のイチオシ新着棚★『少年トレチア』をめぐる怪しい噂!?


2002/03/05/Tue.
▲晴れ。
▲黙々と原稿整理。突然、眠気が襲ってきて……。
▲根本敬『電気菩薩 豚小屋発犬小屋行きの因果宇宙オデッセイ』(径書房)読了。おなじみの面々……と思いきや、小学生の娘の目の前で本番顔写三連発のエロモデル「ママ野際」なるトンデもなくイイ新キャラが登場。因果の深さに心の底から感動した。また、おなじみの川西杏さんとの微笑ましい交流もいよいよクライマックスといった趣き。まさにファン必携、生涯大切にしたい一冊である。
▲根本さんの本を読んでいると元気になってくる。因果まみれの人間の面白さをとことん追求、因果まみれの人間たちの魅力を味わい尽くして、そのお裾分けをしてくれているからだ。さらに、どんなふうに生きてもいいんだってことを教えてくれる(まア、そんな感想はこっちの勝手な受け取り方なんだけど)。これからは木の芽時の季節。いい時期に本書に出会ったという気がする。久々に心の底から☆☆☆☆☆。
■<ヤスケン>「今週のおススメ」より第61回★杉田宏樹『ヨーロッパのJAZZレーベル』
■ヤスケンの編集長日記! 2002 3月1〜2日


2002/03/04/Mon.
▲晴れ。
▲恒例の会議のあとで打ち合わせを簡単に。
▲延々と原稿整理。いったい、本当に終わるんだろうかといぶかしみつつ。
▲映画『狙撃』(1968年)をビデオで。
▲加山雄三主演のハードボイルド。脚本はのちに『野良猫ロック ワイルドジャンボ』、『最も危険な遊戯』、テレビ『大都会PART2』などで活躍する永原秀一。最近、亡くなって「映画芸術」で追悼特集が組まれた。それを読んで興味をそそられたのだ。ちなみにこの映画は東映Vシネマでリメイクされている。主演は中村トオル。
▲凄腕のスナイパー、加山雄三は新興ヤクザの藤木孝の依頼で密貿易組織を襲撃、完璧に仕事をこなしたが、藤木が考えているよりも敵方の組織の力は強力で、加山は命を狙われる。相手方の殺し屋は名優森雅之。加山の恋人を浅丘ルリ子が演じている。監督は黒澤明門下の堀川弘通(先年、『評伝 黒澤明』(毎日新聞社)がドゥ・マゴ文学賞を受賞した)。手堅い演出で破綻のない仕上がり。いや、破綻があった。ルリ子の趣味は蝶収集で(仕事はファッションモデル。変な女だ)、パプア・ニューギニアに蝶の採集に行きたいと願っている。それが、いわゆる「脱出」先。文学的で結構だが、その先導役が女だというのがイマイチだ。むしろメカニック役の岸田森との友情に殉じて欲しかった。
■<ヤスケン>マンデリシュタームと近現代ロシアの文学と芸術


2002/03/03/Sun.
▲晴れ。
▲そういえば。新宿区役所通りに奇妙な店がある。ミスタードーナツの数件隣に出来た「新感覚カフェ 彩」という店なのだが、何が新感覚かというとコーヒーなどの飲み物のほかにうどんやカレー、天丼があるのである。しかも、コーヒー130円。うどん一杯280円(開店セールで100円引き)という安さ。新感覚なのか旧感覚なのか……で、コーヒーがけっこうおいしかったりして(彩的には「イタリア高級珈琲豆使用」。イタリアンローストな感じではある)。
▲で、「彩」で、尊敬する根本敬さんの最新刊『電気菩薩 豚小屋発犬小屋行きの因果宇宙オデッセイ』(径書房)を読む。川西杏、佐川一政、亀一郎など、根本ファンにはおなじみの濃い面々が続々登場。542ページ、おなか一杯。
▲ドラマ『QUIZ』をかけっぱなしにして仕事。やっぱり一つの事件だけで連ドラをワンクール持たせるってかなり無理が……。
▲映画『ディアボロス 悪魔の扉』(1997年)をビデオで。
▲フロリダの田舎からスカウトされてニューヨークへやってきた弁護士キアヌ・リーブスは、国際的な活動をするバカでかい弁護士事務所で腕を振るう。オーナーのアル・パチーノに気に入られ、仕事も順調。ところが、そこに大きな落とし穴が……。
▲グリシャム原作の『ザ・ファーム 法律事務所』(1993)をふと思い出したりする。もっとも、『ディアボロス』は、神に変わって人間を裁く「法」に使える人間たちが陥りがちな「悪魔の誘惑」を寓話的に描いたホラー風味のサスペンスだ。凄腕の弁護士にかかれば、有罪の人物も無実にできる。しかし、それは果たして「正しい」ことなのか? 虚栄の街、ニューヨークを舞台に青年弁護士がかいま見る天国と地獄。『愛と青春の旅立ち』、『ホワイト・ナイツ』などのトンデモ監督、テイラー・ハックフォードの演出はあいかわらずクドい。そこが気に入っている(笑)。


2002/03/02/Sat.
▲晴れ。
▲ぐずぐずと蒲団のなかで本を読んだり。吉田修一の処女短篇小説集『最後の息子』(文藝春秋)。新宿二丁目でゲイバーを何軒か営んでいるおかま「閻魔ちゃん」と暮らす主人公の日常を描いた表題作ほか、ちょっと切ない青春小説3篇を収録。面白い。
▲ビデオ屋で見逃していたドラマ『QUIZE』の第1巻を借りて見たり。
▲映画『血を吸う薔薇』(1974)をビデオで。
▲岡本喜八門下の山本迪夫という監督のフィルモグラフィーを見ると、奇妙なことに和製ゴシックホラーというか、洋風ホラーの味わいを日本に移植しようとした異色の作家で、劇場用映画の監督本数は決して多くない。『血を吸う薔薇』はその短いフィルモグラフィーのなかでも最後の作品にあたる。
▲白木(黒沢年男)が山奥にある全寮制の女子校に新任教師として赴任してくる。その学園の学長(岸田森)の妻は事故で亡くなったばかりで、その死体は学長宅の地下室にあった。学長の家に泊まった白木は、死んだはずの学長の妻が家の中を歩き回っているところに遭遇する……。
▲高校生のころにピーター・カッシング主演の吸血鬼映画をよく見た。いかにも英国風の雰囲気を狙った美術や、映像は、公開当時は恥ずかしいものだったかもしれないが、今見るといい味が出ている。チーフ助監督が小栗康平というのはちょっと意外。
■ヤスケン編集長日記 2月27日(水)曇


2002/03/01/Fri.
▲晴れ。
▲もう3月。締め切りの仕事があって……。
▲柳美里と福田和也の対談集『響くものと流れるもの』(PHPソフトウェア・グループ)。福田和也が柳美里の『ゴールドラッシュ』(新潮社)を「新潮」誌上でを酷評、柳美里自らが同じく「新潮」誌上で反論。それぞれの文章を再録している。対談よりもそちらの文章の方が数倍刺激的。お互いに褒め合う対談って読んでいる方が恥ずかしい。
▲歌舞伎町「南風」。その後、飲み会に合流して結局……。
■<ミステリ>レビュー 連城三紀彦『白光』/近藤史恵『桜姫』


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