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2003/01/31/Fri.
▲快晴。
▲これから作るムックの打ち合わせなど。
photographers' galleryで写真家の高梨豊さんと詩人の吉増剛造さんのトークショー。二期に渡った高梨さんの写真展で、二度目のトークショー。一度目で語り足りなかったという吉増さんの発案だそうだ。
▲二人の話は詩的な飛躍を交えながら弾んだ。高梨さんは写真集『地名論』(毎日コミュニケーションズ)では「ピーカン・順光・湿度なし」をうたい、それまでのいくぶん情緒的な光を捨た。「地名論」連載の最初期に「アサヒカメラ」誌上で吉増さんは「高梨豊の写真は虚無へ向かっている」と発言したという。湿気をたっぷりと含んだ日本列島の風景を神話的な彩りとともにあぶり出した高梨さんの写真集『初國』(平凡社・品切れ)を愛する吉増さんゆえの違和感だったのかもしれない。しかし、前回のトークショーで吉増さんは『地名論』に新たな発見をし、高梨さんとのトークに刺激を受けたようだ。その結果としての二度目のトークショーなのだろう。
▲写真家高梨豊は一作ごとにコンセプト、手法を変えることにこだわってきた。それゆえ、発表直後よりも、その後から評価されることが多い。「『地名論』は発売当時(2000年)よりも、今見たほうがさらに面白いんじゃないですか? 収められた風景のいくつかはすでに面変わりしているから」というようなことを先日高梨さんにお話ししたのだが、写真の特質である記録性は、時間とともにその価値を高めていく。「その瞬間」には気付かなかったことがあからさまになる。それも写真の面白さだ。
▲photographers' gallery第二期の高梨豊写真展では最新作の「WINDOWSCAPE」(2002年度の京セラコンタックスカレンダーで一度発表された)。在来線の列車の窓から撮影した風景写真だが、トークショーの中で「地面から宙に浮いた」という意味の言葉が出た。つまり、『地名論』では、1脚を使い、地べたに足を付けて撮っていたが、今度は列車に乗って、絶えず移動しながら眼と手が反応するままに撮ったということだ。写真を撮りに行くのではなく、飛んでくる風景を掴まえる──『地名論』のリハビリとして気楽な気持ちではじめたという高梨さんだが、並んだ写真の中には、たしかに風景とのキャッチボールの心地よさがあった。
▲吉増さんは前回のトークショーをふまえ、この日、「一脚の白い杖──」というフレーズが繰り返される原稿用紙二枚ほどの詩を持参し、カラーコピーしたものを参加者全員に配った。『地名論』における「ピーカン・順光・湿度なし」の光をあらためて発見したことの喜び、高梨さんの1脚を使った撮影の様子、そこから自由に連想された歴史的な時間を自在な言葉遣いで綴った詩だ。吉増さんによる朗読は時折即興で言葉を足したり、変えたりしながら、心を揺さぶった。詩人が放つ言葉の力に感動した。
▲吉増さんの詩に不意に安原顯さんの名前が登場する。文芸雑誌「海」に安原さんの薦めで一千行の詩を発表したこともあり、そののちも安原さんは「贔屓」の詩人として吉増さんについて繰り返し書いてきた。そんな縁のあった安原さんの死から受けたインスピレーションが詩に入り込んでいったのだ。この日、吉増さんは一千行の詩「絵馬」が掲載された「海」を持ってきて、参加者に回した。その詩には吉増さん自身が恐山を撮ったボケた「死出の旅」とでも呼びたくなるような写真が掲載されてもいる。高梨さんは「この当時文芸誌の詩のページに写真が載ることなんてなかったし、載った写真がボケているにもかかわらず、とてもいいということに驚いた。『カメラ毎日』の山岸章二も興奮していたし、中平卓馬もびっくりしていた」という逸話も添えてくれた。
▲トークショーの内容はphotographers' galleryが出している写真雑誌「photographers'gallery press」の次号に掲載される予定とのこと。「photographers'gallery press」はまだ1号しか出ていないが内容充実。おすすめだ。こちらで購入できる。
▲トークショーを終えて、高梨さん、吉増さんとちょっとだけ立ち話を。吉増さんから「安原さんのご遺族へ」と今日配られた詩のコピーをお預かりする。
▲トークショーをいっしょに見に行ったAさん、家人と新宿の韓国料理店モンシリで鱈鍋ほか。かぼちゃでP嬢、Kさんと遭遇。


2003/01/30/Thu.
▲快晴。
▲自分の仕事が本になったり雑誌になったりするころにはすっかり過去のことなので忘れてしまうのだが、宣伝しておく(笑)。一冊目は雑誌『チーズプラザ』(メディアセレクト・1月25日発売)。30代女性を読者対象の中心においた、写真投稿、生活情報誌。ぼくがやっているのは写真家インタビュー(ハービー・山口さん)、撮影ノウハウ(庄司桂子さん、丹地敏明さん)、連載(吉野信さん、カミゾノ☆サトコさん)、写真投稿ページの仕切りなど。全ページ数の1/3くらいかな。ぼくが編集しているページのデザインは柴田尚子。二人のユニットで仕事をするというのが今回仕事を引き受けたテーマの一つ。書店でも売ってるはずだけど、全国チェーンのD.P.E.ショップ「パレットプラザ」でのほうが手に入りやすい。350円という比較的安価な価格設定なので、よろしかったらぜひ。
▲赤城耕一著『使うベッサ』(双葉社)。こちらは、クラシックなレンジファインダーカメラ(一眼レフとは違う構造のカメラ)を現代に蘇らせたフォクトレンダー・ベッサの世界を俯瞰する一冊。著者の赤城耕一さんはベッサ・シリーズの展開に並々ならぬ情熱を注いだ原稿を書いてきた方。この本も熱いです。フォクトレンダーブランドはレンズラインナップが充実しており、ライカで使用が可能なもの、一眼レフ用などさまざまなので、比較的安価で高性能なMFレンズが欲しい方にはその方面のガイドとしても興味深いと思う。そちら方面に関心のある方は、ぜひ。
ホワイトヴィレッジスタジオのYさんと、『ライカでNUDE』(双葉社・3月下旬発売予定)に掲載するインフォメーション記事についての打ち合わせなど。
▲舞城王太郎(1973年生まれ)『阿修羅ガール』(新潮社)読了。面白いとは思う。でも、留保付きになってしまうのは、好みの問題か、それとも世代的な問題か。補助線にしようと思い、1961年生まれの吉村萬壱『クチュクチュバーン』(文藝春秋)を読む。こちらは、ほんと、掛け値ナシに面白い。世界の終わりとか、死とか、そういうものへのアプローチの好みなのか。しかし、『阿修羅ガール』が派手な装いのドラアグクィーンのごときにぎやかさを持っているのは間違いない。今回の作品は新潮社のカラーに染まった(?)のか、ぶっこわれぶりにややまとまりが(ってのも妙な表現だが)あるような印象。ちょっと悩みますな。


2003/01/29/Wed.
▲快晴。冷え込む。
▲写真家のハナブサ・リュウさんに取材。90年代半ばからパリで撮影していた正方形フォーマットのヌード作品について訊く。日本ではポルノとヌードの線引きが曖昧で、ヌード=ポルノと捉えられる。したがって、「そそる写真」であることがヌード写真の絶対的な価値になっているというお話がとりわけ興味深かった。3月下旬発売のムック『ライカでNUDE』(双葉社)に掲載予定。
▲舞城王太郎の最新刊『阿修羅ガール』(新潮社)。まだ半分だけ。いいフレーズがいくつもある。後半、どうなるか。。
▲ノー・アルコールデー。たまっていたメールの返事などを書いて12時就寝。


2003/01/28/Tue.
▲快晴。
▲李小牧著 根本 直樹編『歌舞伎町案内人』(角川書店)。中国湖南省出身の元バレエダンサーが、歌舞伎町で最初の「外国人キャッチ」となり、自らを「案内人(ガイド)」と呼ぶ矜持を持って歌舞伎町に立ち続ける理由は? ハングリー精神と夢を追うおおらかさを持った著者は、歌舞伎町の裏社会とどうつきあい、どう根を張ったのか? 波瀾万丈すぎる内容には、眉にツバをつけたくなるところもあるけど、発展途上国から歌舞伎町に出てきて、夢とガッツと才覚があれば、このような生き方もあり得るのではないかと思わせる。歌舞伎町という街もまた、何があってもおかしくない街だからだ。面白くてパワフルで、なおかつ怪しい……歌舞伎町を愛する人、在日外国人に興味がある人、アンダーグランド世界に興味ある人におすすめしたい、出色の本。一気読みでした。
▲先週から今週にかけて読んだ本。日記に書いていなかったのでメモっておく。
▲舞城王太郎『暗闇の中で子供』(講談社ノベルス)。メフィスト賞受賞作『煙か土か食い物』(講談社ノベルス)に続く奈津川家サーガの第2弾。前作は面白くて気に入っていたのだが、この第二作はさっぱり乗れず、途中で挫折して放り出してあったのだが、今度は最後まで。破綻しまくってんだけど、目新しさはある。いいとは思わないけど、やはりホットな作家だと思う。
▲蓮實重彦『帰ってきた映画狂人』(河出書房新社)『映画狂人、語る』(河出書房新社)を交互に。どちらも蓮實重彦が登場する、対談、インタビューを集めたもの。面白さにバラつきがあるけど、具体的な映画について語られる部分はやはり刺激的かつ面白い。したがって、作家、映画監督とのやりとりや、蓮實重彦へのインタビューは面白いけど、アカデミズムの人たちとの鼎談はつまらない。空疎な言葉の連なりというか、どうでもいいやというか。15年くらい前には、そういうアカデミックな言説(という言葉も懐かしい)もうちょっと輝いていたような気がするんだけど、あれは幻だったのか。
▲村松友視『黄昏のダンディズム』(佼成出版社)藤原義江、植草甚一、幸田文、森雅之、武田百合子、佐治敬三、吉行淳之介など、著者がダンディズムを感じる人たちについて書いたエッセー集。ゆるゆると書かれた余裕の文章から、個性的な生涯を送った人たちの横顔が浮かび上がってくる。ベースになっているのは、著者とその人々との交流、あるいは、因縁、思い出などで、一般的な評伝とは光の当て方が違っている。その陰影を楽しんだ。
『ライカな眼』(毎日コミュニケーションズ)の打ち上げを軽くやろうという電話がTさんからかかってきて、新宿でTさん、高梨豊さんと合流する。高梨さんとTさんは、高梨さんの写真展「我らの獲物は一滴の光」(photographers' gallery)で待ち合わせてきたとのこと。
▲『ライカな眼』が好評だということ、写真展が盛況だということなどで、高梨さんのテンションも上がっていて、盛り上がる。たまたま安原さんのお葬式で吉増剛造さんと初めてお会いできたのだが、その場で、吉増さんと高梨さんのトークショウが1月31日(金)に開かれると聞いて、ぜひ行こうと思っていた矢先だった。お二人は今回の写真展のためにトークショウを開き、それが好評かつご本人たちにとっても面白かったため、急遽二度目のトークショウをやることに決まったとか。高梨さんに聞くと、吉増さんはその日、新作の詩を用意すると言っていたとか。楽しみだ。この晩は、鼎→ナジャ→風花→?(ゴールデン街)という流れで。酔っぱらった高梨さんに何度も握手をしてもらい、感激するやら照れるやらで終わった一日。
▲ヤスケン追悼メッセージ、今日いただいた分を更新する→読者のみなさんから寄せられた「追悼メッセージ 27〜28日分」


2003/01/27/Mon.
▲雨。
▲軽い二日酔い。調子が出ない。しかし、今日から日常に復帰せねば……と思う。
▲清流出版に安原さんの最後の連載原稿(口述筆記)を送る。
▲ヌード撮影会取材の記事についての打ち合わせ。→江古田。結局、飲み。仕事、がんばろー!! と思う。以上。


2003/01/26/Sun.
▲快晴。夜、小雨。
▲明け方5時に目が覚めてしまう。安原さんへの追悼メッセージに混じって、bk1で書評を書いていただいていた方から「私信」と断った、心あたたまるメールをいただく。感激してお返事など書いているうちに朝。
▲安原顯さんのお葬式。10時集合。お手伝いの方たちに集まっていただき、準備。夕べのお通夜が滞りなく済んで少し余裕は出たけど、今日は今日で流れが違うので緊張。
▲司会はお通夜に引き続き露木茂さん(安原さんの早稲田高等学院時代から親友)、弔辞は村松友視さんと寺島靖国さん。村松さんは24日の朝日新聞夕刊に書かれた追悼文をベースにエピソードを追加したもので、文芸誌「海」時代の出会いから、作家となってのち、自分の小説について言及しない安原さんを振り向かせるべく、「時代屋の女房」の主人公とその妻に、安さん、まゆみさんと夫妻の名を借りたことなどを述べられた。寺島さんはジャズ評論家のなかで「イロモノ」扱いされた二人の友情と、オーディオに注ぎ込んだカネと情熱を飾り気のない言葉で語られた。
▲喪主挨拶では、まゆみさんが「夫婦と言うよりケンカ友だちでした」「罵詈雑言ばかりで不愉快な思いをされた方もいらっしゃると思いますがすみません」「今日のお天気が良いのは、安原の心がけがよかったからではなく、みなさんのおこないがよいからだと思います」などなど、ヤスケンをネタに笑いも漏れて、実に安原さんのお葬式らしい、カラっとしたものになった。
▲町屋葬儀場で安原さんと最後のお別れ。輪王殿にもどって初七日法要を済ませ、お弁当とビール。島尾ミホさんが送って下さった黒糖焼酎「瓶仕込み」(弥生焼酎醸造所)。まゆみさん、眞琴さん、寺島靖国さん、音楽之友社の田中モトヒロさん、双葉社の草野頼子さん、春風社の内藤寛さん、うちのカミさんらで追い出されるまで飲み、その後、タクシーで安原宅の前にあるジョナサンに移動。松本賢吾さん、タリバン上野さんと合流して、11時過ぎまで飲んだ。安原さんもきっとそこにいて、あの笑顔で笑ってくれていたはずだと思う。
▲へとへとになって帰宅。ほっとしたような、寂しいような夜。
▲ヤスケン追悼メッセージ、今日いただいた分を更新する→読者のみなさんから寄せられた「追悼メッセージ 26日分」


2003/01/25/Sat.
▲快晴。
▲安原さんがbk1でやったインタビューなどの記事を一覧にすべく作業。膨大な量の「日記」と「書評」。でも、安原さんのキャリアの最後を飾る仕事としては、足りなかったと思う。責任を感じる……。しかし、「死」を前に著書を次々刊行し、オンライン書店でそれを自ら売った。亡くなった日は、奇しくも『ファイナル・カウントダウン』(清流出版)が全国書店で発売された日だ。そして、訃報が出た翌21日には、新聞に清流出版の大きな広告が出た。最後に本を作って売るということを見事に演出してしまった。
▲昼過ぎに安原さんのお宅へ伺い、喪主のまゆみさんと寛永寺輪王殿第1会場へ。献花の並び順を決め、会葬の流れを確認。まゆみさんが遺影を見て、「なんか変じゃない? ……あ、タバコがない!」。葬儀社が気を利かせた? のか、タバコを持った手ごと消されてしまっていた! 「元に戻せ!」と抗議。で、ちゃんと間に合った。タバコ吸ってる遺影ってそんなに非常識なものなんだろうか? 安原さんの場合、肺癌だったからよけいブラックなんだけど(笑)。まゆみさんいわく「タバコ吸ってる写真だから選んだのに」。そうこうしているうちに、打ち合わせの時間になり、お手伝いにきていただいた方たちに集まってもらう。
▲会場を大きいほうへと変更したことは正解で、やっぱり人があふれた。「お清め」はタバコの煙でもうもう。追い出されるまでにぎやかな、明るいお通夜だった。いかにもヤスケンらしいノリだった。
▲安原さんの創作学校時代、昨年までやっていた朝カル教室の教え子のみなさんたちとお茶を飲んで帰る。明日はお葬式だ。
▲ヤスケン追悼メッセージ、今日いただいた分を更新する→読者のみなさんから寄せられた「追悼メッセージ 25日分」


2003/01/24/Fri.
▲晴れ。
▲明け方、安原さんの夢を見た。駅のホーム。最近、売れている本の話などをしていて、ふと、安原さんに原稿を書いてもらって、カジュアルなジャズや現代音楽などの入門書を作れないかなあ、と思いつく。でも、安原さん、忙しいし、あんまり体調もよくないし……と言いだしかねていると、電車が来てしまい、ぼくだけその電車に乗った。ホームに残った安原さんに手を振った。
▲自分なりに分析すると、安原さんとはオンライン書店bk1の仕事で出会い、本の話をしたり、インタビューにおつきあいしたりもした。でも、安原さんにとっての、本当の「現場」である本作りに関われなかったことが悔いになっているんだと思う。自分の力不足を棚に上げて、だけど。そういう意味で、各出版社の担当の方たちにジェラシーを感じる。
▲通夜&葬儀の連絡を取り合ったり、ヌード撮影会取材の打ち合わせをしたり(週末の取材なので、ぼくは行けなくなってしまった。残念!)、春刊行予定のムック二冊分の企画を考えたり調べものをしたりで一日が終わる。
▲ヤスケン追悼メッセージ、今日いただいた分を更新する→読者のみなさんから寄せられた「追悼メッセージ 24日分」


2003/01/23/Thu.
▲雪のち雨→上がる。
▲冠婚葬祭、今まであまり出る必要がなかったので、いい歳をして喪服も持ってない。で、スーツとコートを買いに。
▲お通夜とお葬式でお手伝いをお願いしたい人たちとのやりとりなどでせわしない一日。合間に、春から初夏にかけて出したいムックの台割を作る。2,3細かい企画をつっこみたいなあ、と思うのだけど、予算が限られているので、あまり手間がかかるのは難しいし……と悩んでみたり。
▲双葉社の草野頼子さん、音楽之友社の田中モトヒロさんと安原さん宅へ伺い、お通夜とお葬式の打ち合わせ。お手伝いしていただける人たちの名簿作りと、仕事の割り振り。献花の順序、読み上げる弔電など決めなければならないことがけっこうある。草野さんには文学・出版関係、モトヒロさんには音楽関係の窓口になってもらっているので、相談しながらすすめる。
オンライン書店bk1あてに続々とヤスケン追悼メッセージが届いている。今日いただいた分を更新する→読者のみなさんから寄せられた「追悼メッセージ 23日分」


2003/01/22/Wed.
▲晴れのち曇り。
▲友人のIさんから心あたたまるメールをもらう。ありがたい。
▲根津の一軒家でヌード撮影の立ち会い。戦前にマッチで大儲けしたお大尽のうちだったとか。ガラス張りの板張り廊下など、日当たりもいい。今ではスタジオになっており、テレビや雑誌などで撮影に使われている。撮影は田村彰英さん。ポラの代わりにデジタルカメラを使い、露出を決めていく。端で見ていて、効率がとてもいい感じ。撮影は順調至極。予定通りに終わる。3月下旬刊行のムック『ライカでNUDE』(双葉社)のためのもの。
▲安原さんのお宅にうかがい、お通夜、葬儀の打ち合わせ。まゆみさん「まだ一度も涙が出ないのよね」。気が張っているのだと思う。一段落した後に落ち込むんじゃないだろうかとちょっと心配。
▲安原さんの死が新聞、テレビのニュースで報じられたため、お通夜と葬儀の会場を寛永寺輪王殿第2会場から、もっと広い「第1会場」へ変更することになった。場所は同じなので混乱はないと思うけど。どのくらいの数の人たちがくるのか、見当がつかないのが難しいところ。
オンライン書店bk1あてに届いたヤスケン追悼メッセージを仕込み、オンエアー。→読者のみなさんから寄せられた「追悼メッセージ」


2003/01/21/Tue.
▲晴れ。
▲昼、家人から電話をもらい、安原顯さんが亡くなったと知らされる。あわてて、安原さんの奥さんのまゆみさんに電話する。昨日、亡くなったのだという。日当たりのいい部屋で、寝ても起きても落ち着かないとこぼしていた安原さんがめずらしく横になることが出来て、まゆみさんも、娘の眞琴さんもうとうととしている間に、静かに息を引き取っていたのだそうだ。
▲まゆみさんの指示で双葉社の草野さん、音楽之友社の田中モトヒロさんに電話し、出版界、音楽・オーディオ関係の人たちへ通夜と葬儀について情報を回してもらう。ほどなく、アサヒ・コムにニュースが出たと知らされる。清流出版の藤木さん、安原さんが清流出版から出した三冊の編集を手がけた井上俊子さん、春風社のヤスケン担当編集者内藤さん、作家の松本賢吾さんたちから、次々電話が入り、ぼくも新潮社の矢野優さんや、岡本ノオトさん、情報センター出版局の安藤健一郎さん、元オンライン書店bk1店長の安藤哲也さんなど、安原さんの日記にしばしば実名で登場した人たちに電話で安原さんの死を伝えた。
オンライン書店bk1のオフィスで、今後の展開について打ち合わせ。打ち合わせに参加したメンバーの表情を見ていると、安原さんという存在がbk1にとって大きかったということを感じる。
▲茗荷谷から大塚まで、気がつくと歩いてしまっていた。ショックなことがあると、歩きながら考えるのがぼくの癖なのだ。10歳の時に父を亡くしているせいか、人の死には冷淡なつもりでいたが、安原さんの死は(覚悟できていたはずなのに)、堪えた。
▲安原さんの情の深さ、細やかさは尋常ではなかった。怒ったり、感激したり、喜んだりが甚だしく、話を聞くだけで、ぼくもいっしょになって激することができた。ぼくが結婚したと報告したら、さっそく家人ともども食事をご馳走してくれ、ご祝儀までくれた。結婚式も披露宴もせず、仲人もいないぼくたち夫婦にとって、安原さんの優しさは身に染みた。しかし、一方で、人とべたべたすることを嫌い、自分のかっこわるいところは絶対に見せたくないダンディな人でもあった。ワープロが打てなくなって、口述筆記でどうですか? と尋ねたときに、「口述筆記なんて、かっこわるくてできねえよ」と言った。書き出しに呻吟する姿を人に見せたくないし、人に手伝わせることにかえって気を使ってしまう人なのだった。理不尽と思えば、誰に対しても大声でバカヤロー! と吠える反面で、大好きな作家である久世光彦さんが見舞いに訪れると相好を崩して、少年のような表情で喜ぶ一面もあった。チャーミングな人だった。
▲大塚のマンガ喫茶に入り、オンライン書店bk1「ブックサイト ヤスケン」のトップページ、および、読者のみなさんへと題した記事を書く。書いては直し、でいたずらに時間が過ぎる。
▲メディア・セレクトで25日発売の女性向け写真投稿雑誌「チーズ・プラザ」創刊号反省会。見本誌が上がっており、次号の企画を視野においたミーティング。「チーズ・プラザ」は全国書店と、D.P.E.チェーン店「パレットプラザ」で販売されます。創刊号特別価格350円。ハービー・山口さんへのインタビューほか、投稿写真、ハウツーなどの記事を手がけています。
▲帰宅して、「ブックサイト ヤスケン」をもう一度見直して、手を入れる。胸のあたりに白いもやもやがある感じ。気分が晴れない。川上弘美『龍宮』(文藝春秋)読了。ほろりと来る。人間というものの、あてどなさ、あやふやさ。のどごしのよさに飲み過ぎてしまった。


2003/01/20/Mon.
▲晴れ。
▲サンダー平山さんと打ち合わせ。3月に出るムック(『ライカでNUDE』双葉社)の件と、春以降に予定している本について。例によってデジカメをめぐる昨今の事情について雑談も。
▲写真家の横須賀功光さんが亡くなった。14日に亡くなっていて、すでに親族だけで葬儀は終えているという。入院されたというお話はずいぶん以前に聞いたことがあったのだが……。資生堂の仕事をはじめとして数々の話題作を撮った広告写真の巨匠であり、写真家としては『射』などの作品で、写真を化学反応による「物質」として捉える唯物的な発想に立った作品を発表した。それらの作品は、写真にまつわる神秘性を引き剥がすことを目的としたもので、写真についての優れて批評的な作品だったと思う。ぼくは取材で二度ほどお会いする機会があったが、巨匠としての風格とは別に、写真について語る様子に若々しさを感じた。65歳という年齢は亡くなるには早すぎると思う。合掌。
▲映画『上意討ち 拝領妻始末』(1967年・三船プロダクション)をビデオで。小林正樹監督、橋本忍脚本、三船敏郎、仲代達矢らが出演する、正調東宝時代劇である。
▲会津藩で三百石を取る笹原伊三郎(三船敏郎)は武芸の腕を買われ、笹原家に婿養子で入り、以来二十数年、宮仕えを続けてきた。そこへ、藩主(松村達雄)の側室の一人、いち(司葉子)を息子与五郎(加藤剛)の嫁に、という「上意」が伝えられる。いちは男の子を一人もうけたが、移り気な藩主と新しい側室に耐えかねて二人につかみかかり、その騒動で暇を出されたのである。理不尽な「上意」に、伊三郎は縁談を断ろうとするが、父の立場と家の行く末を思い、与五郎は受けると言う。与五郎といちは結婚し、夫婦仲はむつまじく、娘も生まれる。しかし、藩主の長男が病気でなくなり、いちとの間の子供が世継ぎとなると決まると、今度はいちを大奥へ返せと新たな「上意」が下る。腹に据えかねた笹原父子は、どんなことがあってもいちを戻さない、と反発するが……。
▲黒澤明の時代劇にも言えることだが、東宝時代劇の特徴は、近代人の目から封建時代の人間の置かれた状況、葛藤を腑分けするという手法にある。そのあたりをこそばゆいを思う向きもあるだろうし、いささか図式的だと思わなくもない。しかし、橋本忍脚本の緻密な構成、ムダがなく簡潔なセリフ、小林正樹の終始一貫してテンションが下がらない演出手腕、そして、撮影所システムが機能していた頃の日本映画に特有の高い技術レベルは実に見事である。こういう映画を見てしまうと、昨今のテレビ時代劇など見ていられない。演出や脚本といった作家的な要素以上に、画面を作っている職人たちのレベルが段違いなのだ。また、近代演劇的な構造を持つ映画なのに、チャンバラシーンの迫力も十分。芸術性と娯楽性を併せ持っている。殺陣は黒澤映画で有名な久世竜だ。


2003/01/19/Sun.
▲曇り。
▲cafe杏奴でカレーとコーヒー。「このミス」第2位の乙一『GOTH』(角川書店)(今日現在bk1では品切れ中です。リンクはアマゾン)読了。
▲猟奇殺人に心惹かれる高校生の「僕」は、無口な美少女森野夜が同じ関心を持つことを知り、奇妙な友情を育む。異常な事件に巻き込まれるフェロモンを発する森野と、異常者の心理を読んで事件の真相に近づく「僕」という奇妙な探偵コンビの連作短篇集。
▲乙一は1978年生まれ。まだ20代半ばだが、小説そのものが醸し出すなんともいえない微妙なムード、ストーリーテリングの上手さなど、末恐ろしい書き手だ。とくに、読書が好きで友だちに恵まれない中高生、および、元中高生にとってはたまらなく甘美な世界だと思う。つまり、超マイナーなジャンルと化した文芸の世界を愛するひねくれ者の気持ちをつかんでいる。実に今ふう、新世代の作家だ。
▲USBケーブル、インクカートリッジを買ってきてやっとプリンタ復活。結婚してプリンタが二台になり、もう一方を使っていたのだが、せっかくあるのに勿体ないな、と。さっそくいろいろなものをプリントアウトしてみる。
▲映画『下落合焼き鳥ムービー』(1979年・東映株式会社/獅子プロダクション)をビデオで。タイトルでピンときた人もいるかもしれないが、『ケンタッキーフライドムービー』の日本版。といっても、この二本の映画の間に共通するのはパロディーなどの小ネタギャグが満載なところだけか。右翼が闊歩する大日本下落合大学でいろんなことが起こるというお話。「下落合」は企画・脚本に名を連ね、出演もしている赤塚不二夫が住んでいる地名からだと思われる。ぼくも住人なので、見てみようと思ったのだ。「焼き鳥」は、劇中で「焼き鳥パーティー」が開かれるというアイディアに結びついている。
▲主演は所ジョージ。柄本明、坂崎幸之助(アルフィー)、BG4(モト冬木の髪はふさふさ)、たこ八郎、タモリ、高見恭子、宇崎竜童などが出演している。監督は「監督」というタレントになってしまった山本晋也。いろんな意味でカルト的な映画だが、笑える場面はあまりなかった。「あの人、若い頃はこんなだたんだな〜」という発見が主な楽しみ。珍味。この映画の製作もしているピンク映画の雄、獅子プロは向井プロダクションに社名変更したみたいですね。
▲映画『豹(ジャガー)は走った』(1970年・東宝)をビデオで。作品本数は少ないものの、東宝育ちの「アクション派」として日本映画ファンから高く評価されている故・西村潔監督作品。
▲東南アジアの新興国、南ネシアでクーデターが勃発。大統領のジャガールは日本経由でアメリカへの亡命を希望する。ジャガールの命を狙う革命政府からの追っ手からジャガールを護るため、警視庁一の射撃の名手(加山雄三)が特命を帯びる。一方、ジャガール政権と革命政権に二股をかけて利権を確保したい商社大日本貿易は、一流のスナイパー(田宮二郎)を雇い、ジャガールを狙わせる。大日本貿易から派遣され、ジャガールの通訳を務める女性(加賀まりこ)は「シェパードと黒豹の闘い」と形容する。果たして、ジャガールは無事にアメリカへ出国出来るのか?
▲東宝アクションの秀作である。銃、クルマ、アクション映画が大好き、という匂いが画面から立ち上るところが、ファンにはたまらない。加山雄三の「薄さ」対田宮二郎の「濃さ」という構図も出色。監督の西村潔は、晩年、女風呂を盗撮中に捕まりその数年後に自殺してしまった。石原慎太郎の大学時代の同級生で東宝に同期入社し、慎太郎原作の『青年の樹』(77年・東宝)を監督もしている。日活とも東映とも違うバタくさいセンス、監督本数が少ないのは惜しいと思う。
▲「月刊 清流」の安原顯さんの連載原稿の構成。予定より遅れて完成、メールで送る。


2003/01/18/Sat.
▲晴れのち曇り。
▲新宿で買い物。TSUTAYA、この土日、レンタル100円。長蛇の列。俺も6本借りてしまう。新宿コニカギャラリーで写真展を見る。特筆すべき感想はナシ。プリンタ復活計画。インクを買って帰ったら、USBケーブルもインクカートリッジもなかった。アホ>自分。
▲映画『無宿(やどなし)』(1974年・勝プロダクション)をビデオで。中島丈博と蘇武道男の脚本を斎藤耕一監督が映画化した。
▲太平洋戦争中、刑務所で出会った二人のヤクザ(勝新太郎、高倉健)が遊郭で再会する。二人は協力して遊女(梶芽衣子)を助け出す。勝は日露戦争中に沈んだバルチック艦隊の軍艦を引き上げるという夢を持っていて、元潜水夫の健さんを口説く。女一人、男二人のドリカム状態は、おそらく『冒険者たち』が下敷きになっていると思われる。
▲アラン・ドロンとリノ・ヴァンチェラ、ジョアンナ・シムカスの三角関係を爽やかに描き、アクション映画としても優れていた『冒険者たち』は日本の映画人を魅了したらしく、ほかにも西村潔監督『黄金のパートナー』(79年・東宝 出演:藤竜也、三浦友和、紺野美沙子)、鷹森立一監督『冒険者カミカゼ』(81年・東映 出演:千葉真一、真田広之、秋吉久美子)がある。しかし、中ではこの『無宿(やどなし)』がよくできている。勝新太郎のしなやかさ、健さんの一途、そして、梶芽衣子の純情がそれぞれいい味を出していてアンサンブルがうまくいっているからだ。
▲映画『華麗なる一族』(1974年・芸苑社)を続けてビデオで。モデルとなった太陽神戸銀行の合併劇も、その銀行名自体が消えてしまった今では今昔の感があるが、今も昔も、大蔵省、日銀、都市銀行の関係は変わらず、合併だ、業界再編だ、という話題も尽きない。原作は山崎豊子のベストセラー。思想的にはバリバリの左翼ながら、娯楽映画を作る手腕の確かさで次々に大作をものしてきた山本薩夫監督がオールスターキャストで映画化した。ビデオ2巻、210分の長尺だが、飽きさせない。
▲都市銀行第10位の阪神銀行のオーナー頭取、万俵(佐分利信)は業界再編で、大手都銀に吸収されることを恐れている。子供たちの家庭教師として家に住み、いつしか万俵の愛人となり、正妻(月岡夢路)をさしおいて、家を差配している愛子(京マチ子)の趣味は閨閥作り。長女一子(香川京子)を大蔵省主計局次長のエリート美馬(田宮二郎)に嫁がせ、長男鉄平(仲代達矢)には自民党党人派の大物大川の娘(山本陽子)、次男銀平(目黒祐樹)には関西財閥の大物(志村喬)の娘(中山麻里)を。さらに、次女の次子(酒井和歌子)には権勢を振るう佐橋総理につながる家へ嫁がせようと画策する。銀行家として万俵財閥を大きくしていこうと野心を燃やす万俵と、阪神特殊鋼という会社の経営を任され、自前の高炉を持とうと夢を持つ鉄平の確執、そして、業界再編をにらんだ狐や狸の化かし合いが繰り広げられる。人間の欲望と権謀術数、親子の葛藤など、今見ても十分に面白い。
▲谷岡雅樹『キングオブVシネマ』(太田出版)を一気読み。Vシネマ、どこがいいか? 場末だからだと俺は思う。光があれば影が生まれるのは当然で、いまの世の中、どこもかしこも光が回りすぎて平板でつまらない。そこで、場末、影、闇の部分に強く惹かれる。Vシネマもその一つだ。少ない予算で作るとなれば、いきおい、人の肉体が頼りになる。エロか暴力か、あるいはその両方か。それがVシネマだ。そして、谷岡雅樹という人は、たぶん、日本で一番Vシネマを見ている人だ(あと、テレビドラマも)。そして、熱い。その一部はWEBでも読める。ぜひ→谷岡雅樹ニュース


2003/01/17/Fri.
▲晴れ。
▲企画を考えたり、資料を読んだり。
▲映画『D.O.A ファイナル』(2002)。三池崇史監督、Vシネマの竜虎、哀川翔と竹内力共演のシリーズ最終作。こんどは2346年の横浜が舞台だ(ロケ地、香港)。この映画では、哀川翔がいきなり戦闘レプカントである、冗談ではなく本気だ。
▲「旧世界」では世界大戦が行なわれた結果、滅亡状態。この横浜はほかの地域と隔絶、ゲイの市長が牛耳り、避妊薬を市民に飲ませ、強引な産児制限をやっている。市長に反旗を翻す若者たち(テレンス・インほか)とさすらいのレプリカント、リョウが出会い、市長に牙を剥く。市長のもとには、ホンダ(竹内力)という強力な警官がいた。リョウとホンダの対決が始まる……。「ンなアホな」をマジでやって、きっちり満足させてくれるのが三池映画である。この映画も例外ではない。やはりラストでぶっとぶ。しかし、これでファイナルというのは物足りない。Vシネマ根性で、「新D.O.A」をぜひ。
▲釈由美子のテレビドラマ「スカイ・ハイ」(テレビ朝日系 11時15分〜)。釈の見せ場が決めぜりふだけ、というのは物足りない。以前この枠でやっていた「生きる情熱としての殺人」くらいサービスしてほしいところ。


2003/01/16/Thu.
▲曇りっぽい晴れ。
▲大学時代の先輩とのランチの約束をすっぽかしてしまう。ゴメンナサイ!!
▲風邪もだいぶよくなってきたので、来週以降のアポイントを入れはじめる。
▲横山秀夫『顔 FACE』(徳間書店)読了。内容は前日日記を参照していただくとして、どれも面白かった。とくに最後の1話が面白い。暴力と向き合う警察という組織の性格上、性別は大きな壁となる。その隔たりは、組織の中にだけあるのではなく、犯罪者の側にもある。並の作家が長篇小説にしても十分に読ませる内容になる一編だが、さらりと短くまとめているところが好ましい。世は大長編時代。こってりとした長篇エンターテインメントに胃もたれしたと感じる向きにおすすめ。
▲大河ドラマ『武蔵』のチャンバラシーンの無惨さを見て、急にマトモな時代劇が見たくなり、レンタルビデオ店で探すが、昔の時代劇はほとんどおいてない。黒澤明以外なしというのは何とも。新宿のTSUTAYAまで足を伸ばせばいいのだが、そこまでの気力はなく、岡本喜八監督の最近の作品『助太刀屋助六』(2001年)を借りる。
▲冒頭の岸田今日子のナレーション、真田広之の飛び跳ねっぷりあたりから、喜八節全開。優れた映画監督の作品はファーストシーンからラストシーンまでどこを切ってもその人だ。
▲仇討ちの手助けをして謝礼をもらうことを生業としている「助太刀屋」がこの映画の主人公。侍ではないが、帯刀している流れ者のヤクザである。その助六(真田広之)が7年ぶりに故郷へ帰る。そこでは宿場町全体が仇討ちが始まるのを固唾を飲んで見守っていた。さっそく助太刀しようと申し出る助六だが、討つ側は関八州取締出役(岸辺一徳)を後見人にしたお役人の面々。仇は元役人で同僚を斬った居合いの達人片倉(仲代達矢)。仇討ちの行方は? 助六はどう巻き込まれていくのか? というお話。
▲セットと小道具に実に時代劇らしい気の使い方が見られるのがヴェテラン監督ならではの味である。スジの運びもテンポがよく、ムダがない。上映時間88分。二本立ての一本として見たら、かなり満足度が高いだろう。実際に岡本喜八は筒井康隆原作の『ジャズ大名』を井筒和幸監督の『犬死にせしものの』との二本立て興業をしたことがあって、リアルタイムで見たいるが、『ジャズ大名』がなんと面白く感じたことか。残念なのは『助太刀屋助六』が巨匠岡本喜八の作品としてピックアップされてしまうことで、この映画一本だけを映画館で見ても、少し物足りないと感じる人が多いのではないか。
▲しかし、『大誘拐』、『EAST MEETS WEST』と大作が続き、とくに後者のできが芳しくなかったことを考えると、『助太刀屋助六』のような小品を丁寧に仕上げていることは喜ばしい。岡本喜八は1924年だから、今年79歳(先日亡くなった深作欣二は1930年生まれ)。鳥取県生まれ。山陰のモダニストという点で写真家の植田正治、を想起する。大作を引き受けて無惨な結果を続けている市川崑に比べれば、断然、岡本喜八の職人としての誠実さを買いたい。冒頭、喜八映画の常連俳優が次々に登場したり、随所に織り込まれるユーモラスなセリフなど、喜八ファンの期待に応えた小品だと思う。


2003/01/15/Wed.
▲晴れ。
▲少しずつ風邪はよくなっているのだが「やる気」が出ない。今日もあまり仕事にならなかった。
▲横山秀夫『顔 FACE』(徳間書店)を半分まで。ちょうど『半落ち』(講談社)が「このミス」などで話題の時期に、うまく新刊が連続している。それぞれの版元は大喜びなんじゃないかな。『顔』とはまた地味なタイトルだが、内容はこれまで著者が書き続けてきた警察小説のなかでも毛色を変えている。主人公は『陰の季節』(文春文庫)収録の短篇「黒い線」に登場した鑑識課似顔絵係りの婦警、平野瑞穂。鑑識課から異動になった彼女のその後が連作形式で描かれている。男性社会である警察を、一婦警の視点から描くという姿勢は、著者がこれまで書いてきた警察小説と同じだが、女性が主人公ということで、ややユーモラスな味を加えている。そのあたりが少し印象を変えているのかも知れない。いわゆるD県警シリーズからスピンアウトした「外伝」という位置づけになるからだと思うが、外伝特有のリラックスしたムードがあるように思う。残りを読むのが楽しみだ。
▲頭がはっきりしないので、あまり深刻なものは勘弁──と思い、日韓合作の刑事もの『ソウル』(2002)をビデオで見る。評判が悪かった映画なのでまったく期待はしていなかったのだが、やはり残念なデキだった。日本から来た熱血刑事(長瀬智也)が、ソウル市内で連続する現金輸送車強奪事件に巻き込まれ、ソウル市警の刑事に韓国の流儀を押しつけられながらも捜査に協力していくというスジ。アジア閣僚会議の阻止を訴える過激派による日本の外相の誘拐事件や、韓国軍からのプラスティック爆弾盗難事件など、複数の事件が絡み、退屈はさせないが、物語後半、「お約束」が続出して見る気を殺いでくれる。過去の映画を真似るのはかまわないが、真似るならその真似方にこだわってほしかった。せっかくソウルでロケをしているのに、その効果もあまり現れていない。
▲『ソウル』は韓国に行ったことがあることと、韓国映画が好きだからもののついでに見たようなものだが、今日借りてきたビデオの本命は『カタクリ家の幸福』。三池崇史監督のホラーミュージカルコメディー。ウワサ以上に凄かった。シュワンクマイエル風のクレイアニメでスタート、デパートを首になったお父さん(沢田研二)がお母さん(松坂慶子)と出戻りの長女(西田尚美)とその娘、前科持ちの長男(武田真治)と、山の中の一軒家にペンションを開く。ところがまったく客が来ない。ようやく現れた客は自殺、その次に現れた客も……。デタラメな展開、奇天烈な演出といった、カルトムービーになくてはならない要素をてんこ盛りにしながら、なおかつ、娯楽映画としてのパワフルなサービス精神に溢れたケッ作。独りよがりなところが微塵もないのがいい。原案は韓国映画『クァイエット・ファミリー』。それをミュージカルに、というのは日本チームの発想で、音楽は馬飼野康二(!)、振り付けはコンドルズの近藤良平。まあ、だまされたと思ってみてください。すンごいです。


2003/01/14/Tue.
▲晴れ。
▲今年の風邪は、のど・はな・せき、の模様。したがって、しゃべったりすると声はひどいし、はなみずずるずるだし、相手に迷惑。小さくなってPCのデータ整理とか、次の企画の資料作成とか。
▲清流出版によってから帰宅。ごろごろしながら横山秀夫『深追い』(実業之日本社)。面白くて、つい最後まで一気に読んでしまう。少し勿体ないような気持ちになる。著者お得意の警察小説。市の外れ、広い敷地面積に警察署と署員の住宅を併設した「三つ鐘」署を舞台にした連作短篇集だ。職住一体の地方警察署、といういかにも地味な設定が著者らしいところ。例によって、いわゆる警察小説が主役として扱ってきた捜査一課などの華やかな職場ではなく、そこから外れたり、そこと無縁の人たちにスポットを当てた作品。気に入ったのは最後の一編「人ごと」。横山秀夫の警察小説といえば、何といっても初期短篇集『陰の季節』(文春文庫)が面白く、その後の作品は同工異曲の感が拭えない。しかし、「人ごと」は警察についての知識を開陳するといった内容ではなく、もう少し開かれた人情話になっていて、新鮮みがあった。
▲しかし、昨年度の「このミス」第1位に輝いた長篇ミステリー『半落ち』(講談社)もそうなのだが、読んでいる間は充実感がある。面白いと感じている。しかし、読み終えて、どこか物足りなさが残る。初期の『陰の季節』に比べると、どうこかしら甘さというか、ぬるさというか、微温的な感じがしてしまう。しかし、それくらいのほうが、世間一般からは「読みやすい」と歓迎されるのかな。ちょっと寂しい気もする。


2003/01/13/Mon.
▲晴れ。
▲やや恢復。ただし、咳。近所のサ店で『映画狂人、語る。』(河出書房新社)を半ばまで読む。蓮実重彦が学者や映画監督、映画評論家らと80年代後半〜90年代に行なった鼎談、対談を収録した本。映画と記号論。そこで語られていることの内容がさっぱりわからない。でも、80年代後半、こういう言辞を有り難いと思い、かっこいいと思っていたのである。不思議。鈴木清順の「いなし方」のみが普遍的価値を持ちうる、というのが素朴な感想。
▲パソコンに向かう気にどうしてもならず、寝転がって成人式記念ドラマ(?)を見る。松本恵主演。とにかく、この新成人、よく泣く。いったい、何回泣いたのか、数えておくべきだった。
▲口直しに買ったまま見ていなかったビデオ『ドキュメント 座頭市 勝新太郎を斬る!』(BMG VIDEO)を見る。1989年に公開された勝新太郎監督・脚本・主演の『座頭市』のメイキングビデオである。ただただ撮影現場でビデオを回しているという感じで、できは芳しくないが、勝新が写っていればそれでいいのだ。殺陣の見事さに目を奪われる。時代劇は殺陣が命だと思うが、昨今のテレビ時代劇の悲惨さときたら目を覆うばかり。大河ドラマの『武蔵』のチャンバラシーンのかっこわるさを思い出し、暗然たる気持ちに。メイキングビデオの締めは勝新太郎の名言「無駄の中に宝がある」。「ゴミの中に宝がある」と言い換えたのは勝新太郎原理主義者の根本敬だった。


2003/01/12/Sun.
▲晴れ。
▲終日寝て過ごす。本棚から『俺 勝新太郎』(廣済堂文庫)を引っぱり出して、久々に名調子を楽しむ。カバー袖に宣伝されている中村玉緒『アホな女』、古本屋で見つけたら買いだなと思う。


2003/01/11/Sat.
▲晴れ。
▲絶不調。寝たり起きたり。
▲締め切りを1日すぎて「セラピスト」の原稿を仕上げてメールで送る。
▲オンライン書店bk1の<怪奇幻想ブックストア>もっと知りたい村山槐多!――村山槐多本特集に寄せてをアップ。


2003/01/10/Fri.
▲晴れ。
▲風邪でダウン。


2003/01/09/Thu.
▲晴れ。
▲病院へ。薬をもらう。毎年、この時期になると風邪(だかインフルエンザだかわからないけど)を引いて個人病院へ行くのだが、その病院は看護婦さんをルックスで選んでいるとしか思えず、しかも、その「趣味」の微妙さが味わい深いのだが、今年はわりと正統的な美女で、こちらのプロファイリングをかわされた印象。しかし、小さな幸せ。
▲「チーズプラザ」色校、直し。朝まで。


2003/01/08/Wed.
▲晴れ。
▲『使うベッサ』(赤城耕一著・双葉社・1月28日発売予定)の色校戻しで日が暮れる。
▲書き忘れていたこと。オンライン書店bk1の<本は生きている〜bk1読者書評大特集>。ぼくは中条省平さんへのインタビューをやってます。中条さんのお話はプロの編集者、ライター、その志望者にとってすごくためになると思いますよ。アクセス数もかなりいいみたいです。ぜひお読み下さい。
▲【アルカリ】を書く。『終戦のローレライ』について。なんだかやたらと硬い文章になってしまった。ほんとは「『エヴァンゲリオン』みたいだと思った(装幀は樋口真嗣だし)」とか「最後は賛否両論有るだろうけど、おれは賛!」とか書けばよかった書き直せばいいんだけど、そこまで粘着じゃないし。明日のことを考えよう。
▲風邪引いてるのに飲み。午前様。反省。


2003/01/07/Tue.
▲晴れ。
▲TBS緑山スタジオで心理カウンセラーの浮世満理子さん(アイディアカウンセリングセンター主宰)とドラマ『高校教師』のプロデューサー伊藤一尋さんの対談の司会進行。「セラピスト」誌(BABジャパン)のためのもの。お二人の対談を担当するのは二度目。今後、連載でやることに。伊藤さんのドラマ作りの哲学、野島伸司の作品世界についてなど興味深かった。新生『高校教師』のオンエアーは1月10日(金)10時〜。
▲Kさんの父君が年末に亡くなったと知らされる。合掌。


2003/01/06/Mon.
▲晴れ。
▲文章の読解能力のない編集者、「字」を知らない編集者ほど、「読者にわかりやすいように」と言い張って、つまらない赤字を入れて譲らない。自分の主観で思いこんでいるだけなのに「客観的に見て」と言い募る。バカか。自分も編集者の末席にいる人間として他山の石にしたい。
▲風邪の引きはじめ? 毎年この時期になると風邪引くんだよな……。
▲オンライン書店bk1の<怪奇幻想ブックストア>店長挨拶幻妖週報〜店長備忘録〜をアップ。
▲昨日、安原さんからもらった「年頭挨拶」のテープ起こし、少し整えたけど、情報量としては削らず、ほぼノーカットでオンライン書店bk1の<ブックサイト ヤスケン>編集長日記にアップ。村松友視さんによるヤスケン画付き新年のご挨拶。
▲年を越してしまった『終戦のローレライ』の書評を仕上げる。ロングヴァージョンはメールマガジン【アルカリ】で配信する予定。


2003/01/05/Sun.
▲晴れ。
▲今日で正月休みもお終い。テープ起こし。【アルカリ】HPリニューアルのためのレッスン。はかどらず。安原さんのお見舞いと、起こした原稿を見てもらう。今日はあまり調子が良くない様子。早々に引き上げ、うちに帰って作業の続き。眠い。


2003/01/04/Sat.
▲晴れ。
▲雲一つない。天気がいいので雑司ヶ谷のほうへ。池袋まで歩いて、硯屋でうどん。美味なり。偶然、見つけた梅舎茶館。有名だと入って知る。お茶1000円は一瞬、高いと思うけど、お急ぎでなければ、お湯を注いで何杯も飲めるし、ゆるりとした気分も味わえて結局高くないという感想。茶を飲みながら、この店も紹介されている平田公一監修『中国茶の本』(永岡書店)をめくる。とてもよくできた本。中国茶の本を読み比べたわけではないが、入門者にとってはわかりやすいし、かつ、写真、デザインともにクォリティーが高い。値段も手頃。
▲バーゲンの人混みに卒倒寸前。映画『マイノリティ・レポート』期待はずれ。「未来モノ」につきものの小道具やらセットやらCGやら「だけ」が見所。ほかには何もない。使い道のないおもちゃがいっぱい詰まった袋。福袋と感じるか、ゴミ袋と感じるかは各人の主観だが、俺は後者。『A.I.』もひどかったが、こちらも負けずにひどい。スピルバーグに何かを期待するほうが間違っているのか。
▲【アルカリ】HPリニューアルしようと思い、本を見ながら、あれこれ。ムズカシ。てか、全部最初っからやり直したいが……。


2003/01/03/Fri.
▲晴れ。
▲安原さん宅に年始の挨拶と、ViaVoiceを届けに。さっそくViaVoiceをiMacにインストール、試しに使ってみるが、意外とちゃんと認識する。へえ。
▲安原さんは調子良さそう。大晦日に田中康夫(長野県知事)が突然見舞いに訪れたという話を聞いた。安原さんは『たまらく、アーベイン』(絶版)を編集、「思ったより売れなかった」とか。「マリ・クレール」時代には、田中康夫と浅田彰の対談もセッティングしたというから、のちの田中康夫の方向性をすでに予見していたのかも知れない。田中康夫は「ヤスさんには小説ヘタだヘタだって言われたなあ」と旧交を温めつつ、やっしーステッカーや、長野県政の広報資料を置いていったというから、さすが政治家と思う。
▲安原さんから「清流」連載用に、と吹き込んだというテープを預かる。一部をbk1の「編集長日記」として出そうと思い、テープ起こしを引き受ける。


2003/01/02/Thu.
▲晴れ。
▲家人の実家へ年始の挨拶。すき焼きをご馳走になる。
▲未読本シリーズ。関川夏央『二葉亭四迷の明治四十一年』(文藝春秋)を少しずつ。
▲あと、すでに絶版の『映像の仕掛人たち』(86年・キネマ旬報社)。たしか、ゾッキ本コーナーで買ったはず。日本映画のプロデューサーら、制作現場に関わっている(た)ヴェテランたちが自らの「生涯の一作」について語るというエッセー集。岡田茂東映社長(当時)が『きけわだつみの声』、田中友幸東宝社長(当時)が『ゴジラ』を語り、独立プロデューサーの伊藤武郎が『金環食』を語るといった具合。一気に読んではもったいないので、少しずつ読むことに。読んでいると映画が見たくなってくる。


2003/01/01/Wed.
▲曇りのち晴れ。元旦。
▲昼近くになって起き、雑煮。近所の氷川神社に寄ってから、母のところへ年始の挨拶。
▲行き帰りの電車のなかで勝目梓の短篇集『蜜と牙』を読む。『終戦のローレライ』(・講談社)をようやく読み終えて、あっさりとした、肩の凝らない小説が読みたかったので。『蜜と牙』には、根岸吉太郎監督のデビュー作『情事の方程式 オリオンの殺意より』(いどあきお脚本・78年・にっかつ)の原作小説「オリオンの殺意」が収録されているので、映画を見たあとに買ってみたのだ。
▲目当ての短篇はあっさりとしすぎていていま一つだったのだが、そのほかの小説の救いのなさが面白かった。
▲とくに「弾けブルース」という短篇は本当に悲惨な話。その容貌からアミンとあだ名されている、自動車修理工場勤務の混血児(19歳)が、ピンサロで知り合った三十がらみの子持ち女とデキてしまう。女は東北から出稼ぎに来て消息を絶った旦那を捜しに東京に来ていた。旦那の居場所を見付けた女は、旦那のところまで行くが、すでに旦那には女がいて、したたかにぶん殴られる。帰ってきた女を不憫に思い、その娘とも馴染んだアミンは、このまま結婚して家族になってもいいと思うのだが、そこへ旦那がやってくる。で、大立ち回りとなるのだが、まあ、あとは想像通りのあっけない結末。その他の短篇も、世間様の前に、暴力で自滅していくしかない若者たちを主人公としている。その救いのなさがいい。正月早々(笑)。
▲続けて、大晦日に(多少)掃除をして、発見した未読本の中から藤本義一『川島雄三、サヨナラだけが人生だ』(河出書房新社)を読む。
▲川島雄三については、助監督だった今村昌平が川島の死後、間もなく編集して出した『サヨナラだけが人生だ』があり、すわ、復刻かと思って買ったのだが、羊頭狗肉だった。『暖簾』で大阪弁のセリフを書き、『貸間アリ』で脚本を書いた藤本義一が、短いながら濃密だった、「師」川島雄三との交流について書いたエッセイや講演、対談(長部日出雄、殿山泰司、小沢昭一)、川島を描いて直木賞候補にもなった短篇「生きいそぎの記」、シナリオ『貸間アリ』を収録した本である。
▲あえて狗肉と書くのは、書かれている内容に重複があることと、同名の前著があまりにも有名だからだ(古本屋で高値がついている)。しかし、川島雄三のまとまった評伝がない現在では、この本も貴重な一冊ではある。河出書房新社は、なぜか川島雄三関連の本をほかに2冊出している。川島雄三自身の文章を中心に構成した『花に嵐の映画もあるぞ』、『愛のお荷物』などで川島映画の脚本を書いている柳沢類寿の川島雄三論などを収録した『柳よ笑わせておくれ』だ。もし、この三巻が一冊になっていたりしたらいいんだけど、どうも水で薄めてあるような予感がするなあ……。でも、繰り返しになるが、川島雄三の全体像がわかるような本がないので、読んでみたい。


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