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2002/09/30/Mon.
▲曇りときどき雨。
▲朝5時起床。週末できなかった宿題をかたずける。
▲小栗虫太郎『二十世紀鉄仮面』(扶桑社文庫 昭和ミステリ秘宝)の表題作をようやく読み終える。戦前の財閥の後継者をめぐる権謀術数と、和製鉄仮面、間諜たちの暗躍……とやたらと派手な道具立て。たまにはこういうのもいいですな。
▲もう9月もお終いだ。


2002/09/29/Sun.
▲晴れのち曇り。気まぐれに小雨。
▲27日、永井豪のダイナミックプロダクションが、展覧会でマジンガーZのおもちゃに乗った少女を描いた絵を展示した東日本鉄道文化財団(渋谷区)とJR東日本(同)に2000万円の損害賠償などを求めたと報じられた。問題となった作品は洋画家の渡部満という人が描いたもの。永井豪側は、画家本人は訴えず、それを「商売」にした団体を訴えるというかたちを取っている。インターネットで渡部満を検索すると、こんな紹介ページがあり面白そうだ。いまは削除されているが、報道のあった段階ではカタログ販売をやっていたので、さっそくこのページを公開している玉英画廊あてに注文メールを出した。すると、今日、「収録した絵のなかに報道されている著作権問題に触れる作品があるのでカタログ販売はストップしている」旨の丁寧なメールをいただいた。
▲仕事柄、著作権を守ることの大切さは肝に銘じているつもりだが、個人的には著作権という考え方のセコさに息苦しいものを感じていて、もっとおおらかかつテキトーでいいのではないかと思っている。コピーライトよりコピーレフトのほうがかっこいい、とも思う。
▲もっとも一方では、サンプリングがアートの手法として認められている、ポストモダン的な状況を鑑みると、どっからどこまでがオリジナルか……という問題も出てくる。ビジュアルイメージの場合は、そもそもが現実にあるものをパクっているともいえるわけで、オリジナリティがどこにあるかは議論される余地が大いにある。永井豪側が作家を訴えなかったのは、そのへんに突っ込んでいきたくないからではないかと思われる。
▲ちなみに、渡部満の作品は、「ラファエロやボッティチェリ、尾形光琳や速水御舟といった古今東西の巨匠たちの名画を背景に自分の娘たち(由希子・奈緒子)を描き上げ」ているものらしい(前出の玉英画廊HPより)。面白そうだ。
▲午後から歩くことにする。先週の続きで椎名町方面。しかし、椎名町駅までは行かず、南長崎から千川通り。気が付いたら江古田だった。
▲江古田といえばKさんの本拠地。バッタリ会うかなあ、と思っていたら、小さな雑貨&古本&ギャラリースペースのノートに氏の名前とメルアドがあり、笑ってしまった。思わず電話して、おうちにお邪魔し、本棚を見せてもらう。高橋尚子がベルリンマラソンを二連覇したことを確認してから、Kさんの案内で居酒屋へ。勇気づけられたり、考えさせられたり、笑わせてもらったり。かえりは大江戸線で中井まで行って、歩く。
▲思い出したのは『完本 文語文』(文藝春秋)。明治の頃は、電話もなく、文人同士、突然、うちを訪ねるのがふつうだったという話。突然来て、主がいなければ、半日でも待っている、という時間感覚、人間関係の距離感を思ったのである。


2002/09/28/Sat.
▲曇りときどき雨。
▲低気圧。不調。
『海辺のカフカ 下』読了。読んでいる間は面白かったのだが、読み終えてみると、「常の通り」としかいいようがない。これまで村上春樹を呼んできた読者にとっては縮小再生産という印象じゃないだろうか。昔の作品を引っぱり出して、新作をけなすのは意地の悪いことかもしれないけど、かつて『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』をはじめとした作品に、新鮮さをおぼえ、感動もした人たちにとっては『海辺のカフカ』は物足りないのではないかと思う。端正であるという評し方もあるだろうし、深読みする余白もああるから知的なスリルがないわけではないが、率直に言って、今までの村上春樹の小説を焼き直してまとめたという雰囲気が濃厚なのだ。はじめて村上春樹を読む人にはいいのかもしれないが……。
▲脈絡なく小栗虫太郎の中・短篇小説を集めた『二十世紀鉄仮面』(扶桑社文庫 昭和ミステリ秘宝)を読みはじめる。小栗虫太郎なんて中学生の時に『黒死館殺人事件』(教養文庫版)と、『新青年傑作選』(角川文庫版)に入っていた短いものを読んで以来。スジとぜんぜん関係ない蘊蓄(しかもわりとどうでもいいもの)が滑り込んでくる文章に懐かしさを感じる。


2002/09/27/Fri.
▲曇り。
▲世の中の結婚している女性には二種類ある。配偶者を「主人」と呼ぶ人と、呼ばない人だ。テレビ番組「はなまるマーケット」(TBS)の中のコーナー「クイズ・ママダス2002」をぼんやりと眺めていてそう思った。俺の周りにいそうもない「奥さん」ばっかりが出ていて、ことごとく「主人が……」と言っている。上品なつもりなんだろうが、どうしても違和感を感じる。
▲ねじめ正一の長篇小説『出もどり家族』(光文社)を読む。面白い。冒頭「50歳とは憂鬱な年齢である」からはじまり、阿佐ヶ谷で民芸品店を営む「ネジメハジメ」が遭遇する、金にまつわるトラブルの数々が描かれる。終始、戸惑いがちに、しかし、いやおうなくトラブルに巻き込まれていくネジメハジメの複雑な心境が実感をもって描かれている。長寿時代の「中年小説」。ねじめ正一は、大学時代に詩を読んでいたが(面白かった)、小説家になって直木賞を取ってからは興味をなくしていた。表紙写真が印象的で気になってはいたのだが、読んでみようと思った直接のきっかけは 『図書新聞』天才ヤスケンの「今週のおススメ」より 第80回★ねじめ正一『出もどり家族』
▲昨日のニュースで作家の鮎川哲也が亡くなったことを報じていた。中学生の頃によく読んだ。なぜか覚えているのが、ある小説の中で、田舎から出てきた女性が、東京のレストランに入って、カレーライスかなにかを注文したら、そのスプーンに洗い残しがあって、東京という都会の雑然とした粗暴さを感じるというくだり。本格ミステリーの大家として、トリックばかりが注目されるが、やはり小説の面白さはそういうつまらない描写にあるような気がする。合掌。


2002/09/26/Thu.
▲晴れ。
bk1で打ち合わせ。bk1 HORROR WEB編集長の東雅夫さんと久しぶりにお会いする。今後の展開について。安原顯さんと電話で短いトーク。
▲書き忘れていたが、Candid Photoさんからお借りしているマンガ『ニナライカ』(河出書房新社)を読んだ。川崎ぶら〔原作〕・秋重学〔画〕。10年ほど前に「週刊サンデースピリッツ増刊」に連載されていたそうだが、まったく知らなかった。HIROMIXブーム直後に描かれたマンガで、女子高生がおじいちゃん(ちょっと木村伊兵衛入ってる)の形見のライカIIIfで写真を撮るというお話。原作者の川崎ぶらさんがカメラ好きらしい。だいたい、マンガにおけるカメラの描写はウソが多いのだが、たしかにこのマンガは極力正確をきそうとしているところに好感が持てる。だけど、クラシックカメラと女子高生という組み合わせからはじまって、最初から最後まで恥ずかしかった。×です。ゴメン。
『海辺のカフカ 下』快調。で、流れに棹さすように止めてみたり。しかし、何だろう、この軽さは。
▲止まってる間に立花隆『「田中眞紀子」研究』(文藝春秋)。タイトルにいささか偽りありとは立花隆自身が「はじめに」で認めているところ。立花は田中眞紀子にとくに関心は持っていないからだ。では何の本かといえば、今だから総括できる「田中角栄とは何者だったのか」。「金権政治の完成者」田中角栄と、角栄から受け継いだ遺伝子と、父の愛人への反発から複雑怪奇なパーソナリティーを持つに至った田中眞紀子について、立花隆が語り降ろしている。文献を頻繁に引いて、立花が解説する。車座になって立花先生の講義を受けているといったムードの本。それゆえ、田中以前・以後の金権政治、眞紀子と角栄の親子関係など、実にわかりやすくまとめられている。したがって、往年の立花隆流「調査報道」の本を期待すると肩すかしをくう。
▲夜はお好み焼きなど。


2002/09/25/Wed.
▲晴れ。
▲片瀬山。サンダー平山さんとデジカメについてなど。
『海辺のカフカ 上』(新潮社)読了。『下巻』へ。今のところ、快調そのもの。ただし、どこかで読んだような既視感がつきまう。エンターテインメント作品ではないから、作家の自己表現として、同じようなモティーフやテーマが繰り返されることには納得できるが、リアルタイムで読んできている読者としては、かつてのそれよりも面白さが減じているような気がするのだ。それはなぜだろう。終始「うそっぽさ」を感じる。それっていったいどういうことか。最後まで読まないとわからない。
bk1で打ち合わせ。
▲『海辺のカフカ』を中断して、伊藤真理写真・文『雲南の豚と人々』(JTB)を一気読み。著者は「雲南の豚」で太陽賞を受賞した写真家。「雲南の豚」はッ名写真集にまとめられたが(1998年・メディア・ファクトリー)、現在、品切れ重版未定で、ぼくは見ていない。昨年の11月に刊行された『雲南の豚と人々』は10年に渡る著者の雲南への撮影旅行の中から、文字通り人と豚をテーマにした写真を選び、文章を添えたもの。ぼくも雲南へは10年以上前に一度だけ行ったことがあるので、著者が述べているカルチャー・ショックや写真に写っている文物が懐かしく感じられた。また、それだけでなく、ディープ・アジアの暮らしを食べる側と食べられる側から見ていこうという、著者の姿勢に共感した。残念なのは、レイアウトが平凡で、印刷のクォリティーが低いこと。凡百の「旅エッセイ」に埋もれてしまうのは惜しい。


2002/09/24/Tue.
▲晴れ。
▲気が抜けたような一日。スタートはJCII ライブラリー。調べものついでに昔のカメラ雑誌などめくる。
▲仕事帰りになにげなく高田馬場のブックオフに寄ったら、ずっと探していた写真集が見つかって目を疑う。しかもきれい。ついでに安い。その写真集は、藤原新也さんの『少年の港』(1992・発行:スイッチ・パブリッシング 発売:扶桑社)。藤原さんが少年時代を過ごした門司港をモノクローム、6×6フォーマットで撮影し、文章を添えた大判の本だ。ちょうど10年前の本なので、すぐに見つかるかと思ったら、どういうわけかなかなか目にすることがなかった。
▲なぜこの写真集が欲しかったのか。処女作の『インド放浪』以来、表現者としての「私」というものにこだわり続けていた藤原さんが、自身のルーツを写真によって表現しようという試みの成否。また、数年前、話題になった写真集『千年少女』(スイッチ・パブリッシング)が『少年の港』と対になる写真集だと聞いていたせいもある。ついでに、『少年の港』で使用されているカメラが、藤原さんがアメリカで買い求めた古ぼけたローライフレックスだったということにも興味を惹かれた。さっそく、帰宅してページを繰ると、期待を裏切らない、印象的な写真が続く。久々にいいモノクロ写真を見たという満足感を覚える。
▲映画『アンブレイカブル』。M・ナイト・シャマラン監督の第二作。ぼくの周りではえらく評判が悪く、敬遠していたのだが、公開中の『サイン』を見て、この監督の映画の楽しみ方が分かったような気がして、それを確かめるつもりで見た。
▲突っ込んだ感想はネタバレになるのでここでは書けないが、シャマラン映画の魅力は、伏線の張り方の巧みさと、ラストでの鮮やかなオチにある。そういう点では、『アンブレイカブル』もシャマラン映画にちがいない。しかし、残念ながら冗長に過ぎた。このストーリーで、1時間ほどのドラマ(『ミステリー・ゾーン(トワイライト・ゾーン)』、『ヒッチコック劇場』のような)だったら、成功したと思うのだ。それでも、シャマラン監督が持っている独得のB級テースト、ぼくは好きだ。


2002/09/23/Mon.
▲曇り。
▲椎名町、東長崎。元カメラマンだという店主のこだわりのお蕎麦。その後、仕事。
▲拉致ではないか? とされる日本人がまた4人増えた。どう考えても氷山の一角。
▲日本テレビで「よど号ハイジャック」のドラマを見る。興味を持った方は 高沢皓司『宿命 「よど号」亡命者たちの秘密工作』(新潮文庫)をおすすめ。よど号ハイジャック犯たちがどのように北朝鮮社会に受け入れられたのか? そこで彼らが行なった犯罪行為を含めて、元シンパの目から赤裸々に描かれている。


2002/09/22/Sun.
▲曇りのち雨。
▲三多摩LOMO会。懐かしい顔も。てゆーか、俺自身が参加するの久しぶりだった。あいにくの雨。居酒屋をハシゴして、倍食べた感じ。ヤバ。
▲村上春樹を中断し、横山秀夫の既刊『陰の季節』(文春文庫)と、新刊『半落ち』(講談社)を続けて読了。前者は松本清張賞受賞した、著者にとっての出世作。D県警を舞台にした連作小説。捜査畑以外の警察官たちを主人公に、組織の中の人間関係の機微から生まれるミステリーを見事に描いている。後者は長篇小説。しかし、一つの事件をめぐって、刑事、検事、新聞記者、弁護士らがそれぞれの物語を紡ぎ出すという連作的な構造を持つB著者の持ち味をうまく発揮しているという点で破綻がない。それを見事と評価するか、物足りないとするかが難しいところ。しかし、松本清張的な大人のミステリーを期待する向きには、著者はまさに期待の星である。


2002/09/21/Sat.
▲晴れ。
▲完全なる休日。
▲御徒町、佐竹商店街、蔵前、吾妻橋、言問い通り、最後は三ノ輪橋から都電に乗る。三ノ輪の居酒屋で、オヤジたちの野球談義に耳を傾ける。彼らは申し合わせたように一人で店に来る。モツ煮込みとおでん。
▲高世仁『拉致 北朝鮮の国家犯罪』(講談社文庫)を一気読み。最近、テレビに出まくっている元北朝鮮工作員、高明進から「横田めぐみさんと特徴が一致する女性を見た」との証言を最初に引き出したテレビ・ディレクターによるルポ。なぜ、日本人たちが拉致されなければならなかったのか? という根本的な疑問、また、この拉致問題が抱えている問題の本質をわかりやすく解説している。ニュース番組の特集を見ていると、この本が「元ネタ」になっているなと感じることが多い。ぜひ読んで欲しい一冊。
▲村上春樹『海辺のカフカ 上』(新潮社)を読みはじめる。村上春樹はデビュー作からなんとなく読み続けていて、小説は全部読んでいる。以前ほど新刊が待ち遠しくはないが、やはり出れば一応読むでしょう、という作家。冒頭部分はいつもの春樹節。どうなることやら。


2002/09/20/Fri.
▲晴れ。
▲「季刊クラシックカメラ特別号 ベッサR2S/R2C」、印刷入稿完了。深夜12時を回って帰宅。
トップページの写真、変えてみる。
▲そういえば。「季刊クラシックカメラNo.17 特集R型ライカ」昨日から全国書店で発売中です。カメラ雑誌、ムックのコーナーでお手にとって下さい。


2002/09/19/Thu.
▲晴れ。
▲編集部、三人で解決策を探るが、一人分くらいの頭しか働かず、笑う。忙しくなってくると、余裕があればなんでもないことが、解決がつかないかのような錯覚に陥るのだ。
▲とはいえ、重大な誤りを見つけたりすると、へこみますな。


2002/09/18/Wed.
▲くもり。
▲「拉致」被害者の消息が明らかになるにつれ、凄いことになってきた。二人の拉致被害者が同日に死亡、としれっと発表する北朝鮮に不気味さを感じる。しかし、本当にウソみたいな話だと思う。
▲仕事の合間に『完本 文語文』(文藝春秋)を読むのが今週の娯楽。山本夏彦翁の文章には、何度も同じ話が出てくる。しかし、飽きない。なんど同じ話を読んでも面白いし、繰り返されるたびに「わかってくる」心地がする。文章の力、なんだと思う。
▲鈴木一誌事務所で高梨豊さんの著書『ライカな眼』(毎日コミュニケーションズ)の打ち合わせ。企画から出版まで1年近く……高梨先生、すんません。本のデザインについて知り尽くしている鈴木さんの言葉には説得力があって、唸る。


2002/09/17/Tue.
▲雨。
▲今週は「季刊クラシックカメラ特別号 ベッサR2S/R2C」の入稿に追われることになる。というか、いま、追われているところ。
▲そんなわけで、小泉首相の訪朝のニュースも、断片的に知るのみ。家人からメールで「拉致」速報が届く。実際の映像がともなわないので、実感が湧かないが、大変なことになっているのは間違いない。しかし、外国人を拉致してくるって方法自体がにわかに信じがたい話。『宿命 「よど号」亡命者たちの秘密工作』(高沢皓司・新潮文庫)を読んで仰天したクチなので、帰国間近と伝えられ、実際に家族が帰国をはじめている「よど号」関係者たちが、この北朝鮮の変心をどう受けとめているか、気になる。
▲帰って、ニュース映像を見る。飛行機を降りる小泉首相の「演技」に唖然。イッセー尾形が演じる「小泉首相」を小泉自身が演じ、しかもその芝居がクサい、という印象。あのとってつけたようなしかつめっつらは何なのか。この人にとって、一国の首相というものも「役柄」の一つにしか過ぎないのではないか。しかも、ヘタクソ。
▲連休中に見損ねていたビデオ、映画『バニラスカイ』を見る。面白かったが、オチが今ひとつ納得いかず。


2002/09/16/Mon.
」雨。敬老の日の振替休日。
▲仕事ののち、百人町屋台村。ビリヤニ美味なり。雨上がって歩いて帰る。
▲内田春菊『息子の唇』(集英社)読了。短篇集。好きな作家だけど、「?」という作品もあり、玉石混淆の感。表題作は、子供連れの「私」がタクシーの運転手にうちまで連れて行かれ、夫婦の愚痴をそれぞれから聞かされるという巻き込まれ型の奇談。面白かった。
▲明日、小泉首相訪朝ということで、先乗りしたマスコミの平壌取材映像を見る。北朝鮮はマスコミも「接待」していて、その様子が流れる。冷麺懐石で有名な高級料理店でのフルコース。嬉々として流しているマスコミもかなり変。


2002/09/15/Sun.
▲曇り。
▲やる気なし。山本夏彦『完本 文語文』(文藝春秋)で癒される。生きてる人間よりも死んだ人間のほうが親しい……こういう感覚、浮き世を忘れさせてくれますね。
▲連休の中日。ビデオで見逃していた映画『ウォーターボーイズ』。矢口史靖監督の映画はこれまでも見ていたが、いい意味でアクが抜けてメジャー感が生まれている。クドさが魅力だったという向きもあるかもしれないが。自分が男子校だったせいもあって、どこか懐かしく感じた。プール、青春というと、『バタアシ金魚』以来の感動かも。
▲『バタアシ金魚』といえば、原作者の望月峯太郎の『ドラゴンヘッド』が映画化されるとか。ウズベキスタンにオープンセットを組んで、という発想が面白い。監督は飯田譲治。映画がつまらなくても、どんな「絵」になるのかは見てみたい。


2002/09/14/Sat.
▲雨。
▲低気圧的不調。仕事を切り上げて京王百貨店「世界の中古カメラ掘り出し市」。中古カメラ店が催事場に大集合、ってやつ。ついたのは午後七時。見やすい、ということはお客さんが少ないということ。Aさんにバッタリ。こういうところで会うと気まずい。収穫はナシ。ちょっと安心。
▲M・ナイト・シャマラン監督の最新作、映画『サイン』の先行ロードショーに行く。シャマラン監督、「『シックス・センス』ほどじゃないな」とこの先言われ続けそうな感じ。可哀想。というのは、この監督のB級テーストに侮りがたいものを感じるから。この映画もパルプ・マガジンのB級SF小説のノリや、雑誌「ムー」的なアホらしさがあって、個人的には好きだ。ユーモアの感覚が近いというか。ま、劇場内も「(笑)」って感じでしたけどね。
▲急に寒くなった。長袖着てくりゃよかったな、と。そういう天気。


2002/09/13/Fri.
▲晴れ。
▲三連休前に、というわけで、原稿がドカドカっと入ってきて、その整理。いくつか積み残しは出たけど、目途はたった……けど、編集部でスキャニング用に使っていたPCがダウンしてしまう。ちっ。
▲今さら、と言われそうだけど、貫井徳郎『慟哭』(創元推理文庫)読了。幼女連続殺人事件を追う警視庁捜査一課長の心の闇と、心に黒い穴をあけたまま新興宗教にのめり込んでいく中年男。二人の物語が重なり合ったとき……。意外な結末もさることながら、人物描写の巧みさ、物語の語り口の巧さが印象に残る。著者が執筆当時25歳の新人だったとは驚き。
▲テレビドラマ『愛なんていらねえよ、夏』(TBS)が最終回を迎えた。案の定、視聴率は悪かったみたいだけど、こうい時代錯誤でばかばかしいドラマ、嫌いではない。むくんだ広末と、くしゃおじさんみたいな渡部篤郎が少女小説さながらの古くさい物語を演じているというだけで奇ッ怪きわまりなく、悪趣味なものが好きな人には堪えられないだろう。『ケイゾク』、『トリック』が有名な堤幸彦だが、本質はこちらのほうにあるんじゃないかと思う。オエ。


2002/09/12/Thu.
▲晴れ。
▲東野圭吾『予知夢』(文藝春秋)読了。物理学の助教授、湯川学が探偵役を務める「探偵ガリレオ」シリーズ。連作小説5編が収録されている。印象に残ったのは最後に入っている「予知る」。向かいのマンションノ引っ越してきた不倫相手が窓越しに実況しながら首吊り自殺をする、というショッキングな冒頭。そして、その事件の二日前、自殺した女が首吊りをしているところを見たという少女。少女は予知夢を見たのか? そして、この自殺には何かのトリックが施されていた可能性が……。ショートストーリーの中に、二転三転あり、ラストのオチが見事に決まっている。お見事。
▲疲れ切ってしまい、早々に就寝。寝ぼけて電話を取ったのが最後の記憶。


2002/09/11/Wed.
▲晴れ。
▲今日は9.11の日。日本テレビで倒壊するビル内部の映像を放映するというので、見る。新米消防士のドキュメンタリーを撮っていた兄弟が、消防隊についていって撮ったビデオ映像。人が落ちてくる音。土埃ですぐにレンズが真っ暗になってしまうあたりに臨場感がある。
▲ニューヨークの追悼式典も中継していたが、興味がないので見ない。9.11当時、ぼくは黒海沿岸のオデッサにいて、この事件を知らなかった。カフェでテレビに群がっている人がいた、というのがほとんど唯一の思い出である。世界は茫漠として広い。ニューヨークで3000人死んだという衝撃力よりも、実際のところメディアによる報道が喚起したイマジネーションの方が凄かったのではないか。その後のアメリカ政府のやり方を見ていると、米メディアと緊密な関係を持つ先進国の共同幻想ばかりが膨らんでいくような違和感を覚える。そしてまた、ブッシュ政権のイラク侵攻についての決意表明。ブッシュって信じられないくらい馬鹿な大統領だと思うんだけど、9.11の衝撃と、その後のアフガン戦争での「成功」(反吐が出るが)が、彼の妄想的発言を現実にしかねない。「馬鹿が戦車でやってくる」。洒落にならない。


2002/09/10/Tue.
▲晴れ。
▲辻堂までカメラを借りに。はじめて降りた駅。滞在時間20分。線路脇の木。
▲電車の中での読書。司馬遼太郎『街道をゆく 5 モンゴル紀行』(朝日文庫)、夢見心地で読了。ぼくは司馬遼太郎の熱心な読者ではないけど、たまに読むとじんわりと痺れるような快感を味わうことが出来る。とくにこの『街道をゆく』や『アメリカ素描』(新潮文庫)のような文明批評眼が生かされた紀行文が好きだ。歴史的な知識と、文明を批評するまなざしがバランス良くミックスされていて、読みやすいうえに示唆に富んでいる。
▲このモンゴル紀行でも、広大な土地にわずか数百万人程度の人々が暮らす、辺境の地モンゴルの姿を、周辺国との歴史的な交わりとの関連の中に生き生きと描いている。ぼくは5年ほど前にモンゴルを訪れているけれど、その時の印象をまざまざと思い出すことが出来た。ぼくが彼の地を訪れたのは10月近かったはずで、すでに晩秋、草原は茶色がかっていたことや、ゲル(包)の埃臭い空気や、羊料理の匂いを思い出した。
▲原稿整理に追われる。
▲デザイン事務所に寄って帰宅。なかなか進まなかったデータチェックをやっと終え、オンライン書店bk1「BOOK SITE ヤスケン」のヤスケンの編集長日記! 9月8日(日)雨のち晴を更新。なぜ大変だったかというと、日記の中で、安原顯さんが寺島靖国さんの蔵書一覧を書き出していて、その膨大な量の本をデータベースで逐一チェックしていたから。書棚の写真を頼りに書名を書き出した安原さん、体調万全ではないのに、凄すぎる。寺島さんの蔵書の趣味がシブく、調べるのも楽しかったことが救い。しかし、大半の本は絶版、または品切れ・重版未定というのが残念。


2002/09/09/Mon.
▲曇り。
▲予定より少ない原稿を持ってデザイン事務所へ行き、そのあとも、原稿整理などでなんとなく一日が終わっていく、という感じで。
▲そうそう。虎ノ門と五反田で原稿をいただく。五反田に麻婆豆腐丼の専門店というところがあって、へーと思う。味は、一応、中国成都の陳麻婆豆腐風。まあ、普通。
▲読む本がなく、司馬遼太郎『街道をゆく 5 モンゴル紀行』(朝日文庫)を読みはじめる。面白い。モンゴルに行きたくなる。このころは、ソ連経由でしかモンゴルに行けなかった。現在では北京から直通の鉄道がある。そのままシベリア鉄道に合流するのだ。
▲テレビドラマ「北の国から」ドキュメント。期待はずれ。かなり退屈する。でも、おれの期待が間違っていたんだろうな。


2002/09/08/Sun.
▲雨のち曇り。
▲首藤瓜於『事故係生稲昇太の多感』(講談社)読了。一昨年の江戸川乱歩賞受賞作『脳男』(講談社)の著者による第二作。
。デビュー作は、SFテイストも入っためまぐるしい展開のサスペンスで、江戸川乱歩賞作品としては異色の感があった。しかし、こちらは古典的ともいえる連作小説。主人公は交通係勤務の若手警察官。顔はゴリラのようだが、純情で正義感の強い若者、という設定。昇進試験に打ち込む先輩警官や、異能を発揮するベテラン警官などが登場し、主人公の成長の一助となる。テレビドラマにするとしたら……とキャスティングを想像したくなるような「正調」ぶりである。そういう意味で、少し物足りない。


2002/09/07/Sat.
▲雨。夜半、とくに。
▲散髪。仕事にならず。
▲ 福沢諭『ザ・フィリピンパブ』(情報センター出版局・現在品切れ重版未定の模様・1600円)読了。面白かった! ミュージシャン、旅人、ライターのかたわら、サパークラブの雇われ店長をやっていた著者は、一人のフィリピーナを雇い入れたことからフィリピンパブ化したお店の運営をやることになる。オーナーは別にいるものの、実質的に店を任されていた著者は、フィリピーナたちの言い分を聞きながら、フィリピンパブの体裁を整え、儲けも出す。その黄金期と衰退期を、細かいお金の計算と、店長から見た女の子評で描いたノンフィクション。フィリピーナたちのルポとしては、表題通り、じゃぱゆきさんたちとその男たちの姿を社会学的な視点を交えて批評的に描いた、久田恵の古典的名作『フィリッピーナを愛した男たち』(文春文庫)、フィリピンを描かせれば当代ナンバーワンの著者が、フィリピーナとフィリピンの風土に墜ちていく男たちの姿を半ば共感をもって描いた秀作『マニラ行き』(浜なつ子・太田出版)シリーズが即座に思い浮かぶが、福沢諭の筆致はこれまでのそうしたフィリピンものと一線を画し、どこまでも「巻き込まれ型」なところが面白い。プロの取材者ではないからといってしまえばそれまでだが、店長として距離をおいて女たちを見ようと「自制」したフシのある著者の視点が本書を毛色の変わったものにしている。しかも、最後まで読むと、その「自制」もたかがしれていた、というオチがつくところも面白い。大きな本屋の本棚や、新古書店などで見つけたら、ぜひ手に取ることをおすすめする。



2002/09/06/Fri.
▲曇り?。
▲新井素子『おしまいの日』(講談社)読了。新井素子の小説を読むなんていったい何年ぶりだろう。デビュー当時の新井素子を中学生の頃にリアルタイムで読んでいた。初期短篇と『ひとめあなたに…』(角川文庫)が好きで、それ以降は読んでいない。『おしまいの日』は『ホラー小説時評 1990−2001』(東雅夫・双葉社)を読んでその内容を知り、読みたいと思ったのだ。『ひとめあなたに…』に登場するサイコな人妻を主人公に……となれば、ぼく好みである。実際に読んで、新井素子が描く「粘着タイプの女性」ほど恐ろしいものはないと改めて実感。ただし、『おしまいの日』を最後まで読んでも、期待したような満足感は得られなかった。『ひとめあなたに ! …』の印象が強すぎるからか……。ちなみに、『ひとめあなたに…』の角川文庫版の表紙はメルヘンチックで好きになれない。やはり初版の双葉ノベルス版が「気分」だった。ところが、その初版本は大学時代、友人にビリビリにやぶられてしまったのだった。合掌。
▲ローライの新製品発表会。発表された内容についてはローライ製品の日本における輸入代理店である駒村商会のHPに詳しい。個人的な関心事としては、ローライ35のゾナー40mmF2.8と、ローライフレックス80mmF2.8をLマウントレンズとして甦らせるということと、昨年からプランだけは公にされていたワイドローラCの復活である。しかも、ワイドローライにはスーパーアンギュロン50mmF4が搭載されるという。大いに期待したいが、当日見ることが出来たワイドローライ(正式名称は「ローライフレックス 4.0 FW」)はモックアップだった。残念。
▲四谷二丁目経由で深夜に帰宅。



2002/09/05/Thu.
▲晴れ。
▲帰京。日本カメラ博物館で軽く取材。ステレオ写真研究の第一人者島和也さんにお目に掛かった。
▲編集部で雑用。原稿の受け取りなど。
▲早々に引き上げて、録画しておいた山田太一作のドラマ『香港明星迷』。薬師丸ひろ子、山本未来、室井滋の三人が香港スターにはまる、という話なんだろうなと思って見始めたら、「はまり」が浅くてやや興ざめ。男社会の中で仕事をするキャリアウーマン、姑の介護に疲れている主婦など、常の通りのお話といった印象。香港スターは「口実」に過ぎない。したがって、香港映画の熱にうかされたことがある人から見たら、期待を裏切られる出来映え。
▲もっとも、香港ロケ、香港明星の鄭伊健(イーキン・チェン)の特別出演など、くすぐられる部分もないわけではない。山田太一全盛時代にドラマを楽しんでいた身としては、「山田太一節」とでもいうべきセリフ回しにノスタルジーを感じたりもした。
▲香港スター話に物足りなさを覚え、本棚から村田順子の名著『香港美アイドル探偵団』(風雅書房・絶版)を引っぱり出して香港明星たちの魅力を反芻。『香港美アイドル探偵団』はマンガ家で正真正銘の「香港明星迷」(香港スターファン)の村田順子が書き下ろした、香港明星たちの魅力をマンガで紹介したガイドブック。日本で公開されていなかった香港映画の秀作(そのうちの何本かはこの本の出版後に公開、ビデオ化されている)が紹介され、香港四大天王(という呼び方も過去のものになって久しいが)をはじめとした香港のスターたちの魅力がマンガで描かれていて面白い。香港スターの魅力を描いた本としては出色の出来。版元の倒産で絶版の憂き目にあっているが、どこか再刊しないかな。もちろん、その後の「香港明星」も加えてね。


2002/09/04/Wed.
▲晴れ。
▲新幹線で「長野」、長野電鉄に乗り換えて「信州中野」。フォクトレンダーブランドで銀塩マニュアルフォーカスカメラの世界を活気づけているカメラメーカー(株)コシナの取材。彼の地に訪れるのは二度目だ。小林社長、今回の取材のインタビュー、赤城耕一さんと設計開発部門を訪ねる。
▲これから発売されるベッサR2S、ベッサR2C(ベッサR2をベースに、ニッコールSマウント、コンタックスCマウントを搭載したカメラ)の開発に関わった技術者の方々に、お話をうかがう。コンタックスCマウントは70年前に作られたオールド・マウントだが、それを再生させたのは二十代、三十代の若い技術者たちだった。詳細は10月19日発売予定の「季刊クラシックカメラ特別号 ベッサR2S/R2C」(仮)に掲載されるので、興味のある向きはぜひ。
▲ほかに、別の本の企画でフォクトレンダーのレンズ群を設計されている光学設計者の方からもお話をうかがうことができた。
▲夜は小布施蔵部。酒造の一角を居酒屋に改造した店。雰囲気もいいし、料理もおいしい。『小布施ッション』(日経BP)は、この酒造「桝一」の杜氏を務め、「蔵部」のプロデュースも手がけたアメリカ人女性セーラ・マリ・カミングス編による講演録。
▲旅のお供はミステリでしょう──というわけで、綾辻行人の代表作『霧越邸殺人事件』(祥伝社ノン・ノベル)。小劇団「暗色天幕」が迷い込んだ豪邸は人嫌いの主人が使用人たちと暮らしていた。招かれざる客たちが吹雪で閉じこめられた晩、第一の殺人が起きる。そして、北原白秋の詩「雨」を見立てた連続殺人が幕を開ける。ボリューム、内容とも、充実の一冊。ただし、好き嫌いが分かれる作品だとも思う。個人的にはここまでの重厚感のない、デビュー作『十角館の殺人』(講談社文庫)の印象の方が強烈だった。


2002/09/03/Tue.
▲晴れ。
▲とくになし。


2002/09/02/Mon.
▲晴れ。9月に入ったというのに日中は暑い。
▲新宿でレア・レンズの受け渡しをこっそりと。
bk1Fくんと打ち合わせ。新オフィスへはじめて行く。
トップページの写真を変えてみた。
▲【アルカリ】のお題はマンガ『ヒミズ』(講談社・全4巻)。さっそく、読者の方からメールをいただく。同じ古谷実の『僕といっしょ』(講談社・全4巻)も面白いよ、とのこと。今度読んでみようっと。
▲まったく期待しないで読みはじめた矢崎葉子『タイ式』(太田出版)が面白い。タイトルから「タイ人式ライフスタイルのすすめ」みたいなヌルい本じゃないかと思っていたのだが、タイ式はタイ式でも、著者がプーケットで出会ったタイ人の若者たちの「タイ式バブル物語」だったとは。いま、まさにそのバブルの「崩壊」部分にさしかかっており、実は日記を書くよりも続きが読みたい(笑)。ぼくはプーケットには行ったことはないが、タイには何度か行っているので、タイ人気質には多少心当たりもある。いかにもタイらしい、バブル崩壊物語。


2002/09/01/Sun.
▲晴れ。
▲体調が悪く、ブックガイド(スティーブン・キングの新刊『トム・ゴードンに恋した少女』(新潮社))一本書いてお終い。9歳の少女が森で迷い、生き抜こうとするサバイバル・ストーリー。単純なストーリーだが、キングの絢爛たる文章術で最後まで息をつかせぬ迫力。凄い。近日中にオンライン書店bk1の「識者書評」に載る予定です。ロング・バージョンを【アルカリ】で配信するつもり。
▲服買う気力もなくファーストフード店で『ドイツカメラへの旅』(東京書籍)を読む。肩が痛い。頭も痛い。それに妄想。最後のは違う病気か(笑)。
▲日曜日の王道としての「ちびまるこちゃん」「サザエさん」。カツオ、宿題は早めに片づけておけと波平から何年言われ続けているのか。ま、どうでもいいけど。
▲「サバイバー」は日曜深夜の「濃縮版」の方が断然面白い。てゆーか、見比べている人はいないだろうけど。あのサバイバルの現場に「あいのり」のラブワゴンが乗り付ければ面白いのに、と空想。おれは、やらせでも面白ければいいと思う。以上。


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