A DAY IN MY LIFE

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2003/12/31/Wed.
▲晴れ。
▲待ったなしの大掃除。しかし、きれいになったというよりは、こんなものがあった! みたいな宝探し状態に。持っていても、見つからなければ持っていないのと同じ、という至言を思い出す。写真の整理に熱中する。結局、あまり片づかない。例年通り(トホホ)。
▲NHK「紅白」。大嫌いな番組だったが、ここ数年はNHKならではの十年一日のごときクサい演出にハマっている。「台本通り!」と合いの手を入れたくなるような予定調和ぶり、最高ナリ。
▲裏番組は格闘技ばかり。日本テレビは「猪木」、TBSは「ボブ・サップと曙」(Kー1)、フジは「吉田秀彦とホイス・グレイシー」(プライド)。格闘技には興味ゼロだが、曙戦は泣けた。リングに上がった時点で曙に勝ち目はないと誰もが思ったのではないか。立ってるだけでも不思議、という上半身とか半身のアンバランスさだった。リングは土俵より広い。ロープもある。一気に倒せなければ曙に勝ち目はない。哀しかった。
▲「紅白」の大トリはSMAP。白組圧勝も必然ナリ。
▲近所の氷川神社に初詣。鳥居の外まで行列。若者が多かった。赤ん坊連れだったので並ぶ根性はなく帰宅。寝る。


2003/12/30/Tue.
▲曇り。
▲散髪。いつも切ってくれていた美容師さん、今月で退社。ボリビア、ペルーに旅行に行くという。南米には行ったことがないので、うらやましい。
▲いたさん宅で、毎年恒例のきりたんぽ鍋。美味なり。一同無言で食べる。


2003/12/29/Mon.
▲晴れ。
▲新宿までバギーを押して。東京麺通団でうどん。携帯を買いに行ったナオさんを待つあいだ、スターバックスでイクにミルクを飲ませる。ルミネ2の無印良品でフォトアルバムほかを購入。京王百貨店7Fのベビー休憩室、寂れ方が落ち着く。穴場かも。
▲歌舞伎町を抜けて、新大久保の台湾料理店で夕飯。
▲蓮見圭一『悪魔を憐れむ歌』(幻冬舎)。驚愕の鬼畜ノンフィクション。関根元と元妻の風間博子。二人は洋犬のブリーダー、ペットショップ経営者として名が知られる存在だったが、93年に男女4人を殺し、死体を処分したとして逮捕され、1審・2審と死刑判決を受けた(現在、最高裁に上告中)。本書は、2人の共犯者として逮捕された男の1人称で事件の概要を明らかにしたものだが、恐るべき事に、立件された4つの殺人は氷山の一角に過ぎないと言う。
▲虚言癖があったという関根だが、「35人殺した」とうそぶき、死体の処理は残忍にして巧妙、実に手慣れていたという。埼玉県警も十年以上前から関根に疑惑を持ち、捜査をしていたが、ついに逮捕には至らなかった。
▲なぜ逮捕されなかったのか。関根が口癖にしていた「ボディーを透明にすれば絶対に逮捕されない」という言葉の通り、死体が見つからなかったからだ。関根は死体を風呂場で解体し、骨はガソリンをかけて灰にし、肉は切り刻んで川に流した。風呂場に血を流すときにはバスクリンで色をごまかし、処理が終わった後には執拗なまでにきれいに掃除したという。事実、警察の捜査でも死体の解体が行われた風呂場からルミノール反応は一切でなかったという。
▲これほどまでに恐ろしい殺人者、関根元の元妻、風間博子も凄い。本書によれば、風間も関根を手伝って死体を解体したが、その手さばきは鮮やか。さらに、死体を切り刻みながら鼻歌を歌っていたという。本書では、その歌の歌詞まで書かれている。
▲本書を読むと、まず、犯人たちのやったことそのものに、人間の肉体がモノに還元されてしまった時に、殺人という事実すらがきれいさっぱりと消えてしまうという、人間存在の根源を揺るがすような恐ろしさを感じる。さらに、そうした行為を軽々と実行してしまえる人間が世の中にいるということに底なしの恐ろしさを感じる。いやはや、なんとも恐ろしい「現実」があったものだ。
▲この事件、「埼玉の愛犬家連続殺人事件」として知られているが、本書に書いてあるような凄まじい内実は脚光を浴びなかった。実は、この事件の前年に大阪でも自称ドッグ・トレーナーによる愛犬家連続殺人事件があったうえに、埼玉の愛犬家連続殺人事件の直後に阪神・淡路大震災、オウムの地下鉄サリン事件が立て続けに起こったことで、マスコミから目が逸れてしまったからのようだ。さらに、大阪の愛犬家連続殺人事件が5人殺していたから、こちらは4人、1人少ないということで衝撃力が薄かったのかも知れない。しかし、本書を読むと、関根元の強烈な殺人哲学(!)と、死体処理の職人芸、自分を中心に地球の自転を逆回転させかねない強力な妄想ぶりにア然とさせられる。根本敬が関根元を評して「自分の漫画から飛び出してきたような人物」と言っていたらしいが、それも納得がいく。
▲本書はもともと「週刊新潮」に連載された「手記」の形式で書かれた『共犯者』(山崎永幸著・新潮社)を元本に、角川文庫からタイトルと著者名を変えて、『愛犬家連続殺人』(志麻永幸著) として上梓された。さらに今回、語り手に取材し、聞き書きした著者の名前で加筆訂正を加え再刊されたらしい。上記2冊は一部で高く評価され、知る人ぞしる本だったようだ。著者の蓮見圭一といえば、『水曜の朝、午前三時』(新潮社)でプロフィールを隠して登場した話題の作家だが、一説に新潮社の社員と言われていた。真偽はともかく、これほど真に迫った描写をする書き手なら、『水曜の朝、午前三時』の手慣れた名調子も納得がいく。2冊の旧版はいずれも絶版のようだから、読んでみたい人は『悪魔を憐れむ歌』をお薦めする。悪夢を見るかもしれませんけど。


2003/12/28/Sun.
▲晴れ。
▲三多摩ロモ会忘年会。
▲歌野晶午『葉桜の季節に君を想うということ』(文藝春秋Honkaku mystery masters)読了。『このミス』第1位、「週刊文春」ミステリーベスト10第2位。たしかにとてもよくできている。ストーリーについては説明しないほうがいいだろう。まったく先入観なしに読んだほうが面白いし、昨年のミステリーの収穫であることは間違いない。だまされたと思って読んで、まず間違いがないだろう。
▲しかし、個人的にはあまりピンと来なかった。ミステリーのミステリーたるゆえんである仕掛けが小説のテーマと見事に結びついていて賞賛することにやぶさかではないのだが、どうもそのミステリー的な興趣を面白いと思えなかった。こういう作品を読むと、俺ってミステリー音痴なのかな……と思ってしまう。小説には、もっと過剰だったり、歪だったりするところがほしいと思ってしまう。ようするに、ハミ出したところのある、お行儀の悪い小説が好きなのかも知れない。『葉桜の季節に君を想うということ』はそのタイトル通り、端正に作られたロマンチックな小説である。


2003/12/27/Sat.
▲晴れ。
▲掃除。低い棚に並べてあったカメラを移動させる。ちょっと気が早いが、イクヤがハイハイできるようになった時の対策。
▲遅ればせながら、年賀状に使う写真を選ぶ。デジカメで撮った写真を使おうと思っているので、写真選びも面倒くさい。もっと早いパソコンが欲しい! と思うけど、贅沢を言い出すと切りがないので止めている。
▲来客あり。鮭とじゃがいもの鍋。
映画『明日があるさ THE MOVIE』。テレビで点けっぱなしにしていたので見るともなしに見てしまう。あんまりにもひどい映画なので吃驚してしまった。画面に映るあらゆるものが陳腐。金銭的にも労力的にもムダの一言。せっかくお金をかけて作ったのに、勿体ない。どんな題材でも、ちょっとした工夫ってあると思うのだが……。


2003/12/26/Fri.
▲曇りのち雨。寒い。
▲版画家の牛尾篤さん宅へ。奥様お手製のおいしいケーキとチキンをご馳走になる。フリーランス生活のサバイバル術が話題にのぼるが、牛尾さん独得のユーモラスな中にも硬質な怒りを感じさせるトークに身が引き締まる思い。ヤスケンこと安原顯さんの周りにはこういうまっとうな怒りを上手に表現できる大人の人が多かった。牛尾さんからおみやげに、牛尾さんが装画を描いた『白い兎が逃げる』(有栖川有栖著・光文社カッパ・ノベルス)をいただいた(あとで作者のあとがきを読んだら、表題作の雑誌連載中は、毎号牛尾さんの挿画があったらしい。見てみたい)。
▲すっかり長っちりしてしまい、東中野でタクシーを拾って帰る。雨。東京はその夜、今シーズン初めての雪になったらしい。見てないけど。


2003/12/25/Thu.
▲晴れ。
▲護国寺。梶浦孝博個展「うたうおかあさん」(音羽画廊[文京区音羽1-15-12 東急ドエルアルス音羽1F] 〜12月26日)。同名の絵本(『うたうおかあさん』(サンマーク出版))の原画展。リトグラフによるシンプルで、どこか懐かしいイラストレーション。とりわけ、昭和30年代、40年代のホームドラマアニメ(『ど根性ガエル』『天才バカボン』とか東京ムービー社製の……)をリアルタイム、あるいは再放送でさんざん見て育った30代〜40代前半の人にはたまらないのではないか。親子3人で楽しませてもらった。
▲梶浦さんはグラフィックデザイナーとしても活躍しており、「季刊クラシックカメラ」「極上カメラ倶楽部」シリーズのデザイナーでもあり、お世話になった。絵本のほうは、NPO法人日本子守唄協会代表の西舘好子が次代に残したい子守歌を選び、子守歌についてのエッセーを書いている。子守歌CD付き。しかし、テキストよりも絵のほうが100倍くらい良い。個展は好評につき1日延長、明日(26日)まで。
▲神谷町。大西みつぐ写真展「近所論」(ポラロイドギャラリー)を見に行く。ポラロイドによるピンホール写真。
▲ピンホール写真とは、レンズを使わずに、暗箱に小さな穴を穿ってフィルムを感光させる写真。レンズがないので、シャープさに欠ける。その代わり、幻想的な軟調の写真が撮影できる。ポラロイド社は、ピンホール+ポラロイドというピンホールフォトキットを製品化、販売しており、この写真展に出品されている写真もそのキットで撮影されている。
h ▲ポラロイド、ピンホールとくれば、その映像の「湿度」や「甘さ」を情緒的に使いたくなるのが人情だが、大西みつぐはむしろ乾いたタッチで湿度を入念に排除していく。ピンホール写真は絞りを絞っていかないと像を結ばないので、必然的に長時間露光になる。三脚にセッティングして撮影することになるわけで、機動性がなくなる。スナップの名手として知られる写真家大西みつぐが、いつもの軽やかなステップを禁じられた時にどんな写真が生まれたのか。そこで大西は自ら着衣をはぎ取り、裸でカメラの前に立ってしまう。静的な写真から性的な(?)写真へと動いていく道程が丹念に描かれており、実験の過程を見ているような面白さがあった。
▲神谷町のあたりは懐かしい。サラリーマン時代を思い出しながらスナップ写真を撮ってみる。新橋を経由して銀座四丁目まで。銀座松屋地下食品売場で買い物してから帰宅。


2003/12/24/Wed.
▲晴れ。
▲石川鴻斎『夜窓鬼談』(小倉斉、高柴慎治訳註・春風社)を続けて読んでいる。ますますおもしろい。解説を読んで、澁澤龍彦が小説の題材にしていることを知った。その「茨城智雄」。『夜窓鬼談』収録バージョンも爽快な面白さはあるが、澁澤バージョンのほうがおもしろそうだ。『ねむり姫』(河出文庫)に収録されている「ぼろんじ」がそれである。ほかに同書に収録された「画美人」、『うつろ舟』(河出文庫)に収録されている「花妖記」「菊灯台」も『夜窓鬼談』から材が採られているという。
▲高田馬場のメガネスーパーへメガネを直しにいく。
▲いつも行く近所の豆腐屋さんが年内で閉店と聞く。開店以来53年。奥さんが入院したことが閉店決意のきっかけだとか。ここのがんもどき好きだった。残念。
▲TBS『テレビ報道50年SP史上初!歴史を揺るがせた大ニュース…ランキング100』をつまみ見。司会はみのさん。御巣鷹山日航機墜落事故。機長の未亡人が語る辛い日々、事故当時のフライトレコーダーから窺える事故当時の凄絶な状況。泣ける。
NHKドラマ『川、いつか海へ』。今夜の三谷脚本は6話中、もっとも面白そうだった。ヒデキ醤油では、毎年、演劇好きの社長(江守徹)が新入社員歓迎の芝居を上演する。今年は『ロミオとジュリエット』。主演と演出はもちろん社長。ジュリエットは社長の愛人でもある受付嬢(観月ありさ)。ところが、ロミオが自殺するクライマックスにローレンス神父が登場し、ロミオにジュリエットが仮死状態であることを伝え、ロミオとジュリエットはハッピーエンドを迎えてしまう。「シェークスピアの冒涜だ!」と激怒する社長。制作担当の総務部福利厚生担当(香川照之)はローレンス神父役の営業マン(筒井道隆)をいさめるが、楽屋にある浮き玉を見ていると自分を止められなくなるのだという……。野田醤油ならぬ、(野多)ヒデキ(野田秀樹)醤油というネーミングがおかしい。
▲オンライン書店bk1に、デニス・ルヘインの『シャッター・アイランド』(早川書房)書評をアップ。


2003/12/23/Tue.
▲晴れ。天皇誕生日。
▲石川鴻斎『夜窓鬼談』(小倉斉、高柴慎治訳註・春風社)を毎日少しずつ読んでいる。明治20年代に刊行された奇談集。著者の石川鴻斎は詩文家、漢学者。原文は漢文。「鬼談」とある通り、「鬼」についての小話を集めているがぼくらがイメージするような、角を生やした鬼の話だけではない。神のように勧善懲悪を施したり、恨みを持って幽霊のような姿で現れもする。「お岩さん」「番長皿屋敷」などの怪談も含められている。同時代のラフカディオ・ハーンに再話されたり、のちに澁澤龍彦が小説の題材に採ったりもしている。
▲教養がないのでこういう説話というと、国語の時間に習った「今昔物語」とか「雨月物語」あたりを連想するのみだが、『夜窓鬼談』は明治期の本なので、材に採られている近世の話などもぐっと近しく感じる。登場する地名にもなじみがある。いずれも短いお話だが、簡潔な表現の中に人生のかたちがさらりと描かれているあたり、冗長な近代小説を読み慣れている眼には新鮮に映る。
▲500ページを超える大著(原著は上下巻)に、挿絵も加えられ、3,800円は安いと思う。春風社の本はいつもデザイン、造本が凝っていて感心するけれど、この本も大事にとっておき、時折開いてみたくなるような魅力がある。一気に読むのではなく、一編一編を熟読玩味したい一冊。
▲イクが珍しく泣いて泣いて。ミルクを160ミリに増やして与える。
▲義妹がくるので掃除。彼女は家事上手の女性なので、あまり散らかっているのも恥ずかしく、夫婦で掃除に精を出すが、そのあいだもイクは泣き続ける。ところが、義妹が来てからはご機嫌に。
▲翻訳家・編集者の井上真希さんから電話。井上さんの訳書『サムライ ジャン=ピエール・メルヴィルの映画人生』(ルイ・ノゲイラ・晶文社)のこと、井上さんの最近のもう一つの仕事『最後のY談』(中村 うさぎ/岩井 志麻子/森 奈津子・晶文社)についてあれこれと。井上さんとは故・安原顯さんを介して知り合うことができた。来年1月の安原さんの一周忌の話も出る。もう1年。去年の今頃は、安原さんを見舞いに慶応病院に通っていたことを思い出した。
▲夜は自宅でチゲ鍋。
NHKドラマ『川、いつか海へ』。今夜は倉本聰脚本の第3話。ダム建設の賛成派と反対派の抗争が子供の世界まで影響を与える。題材が面白く、途中までは面白かったのだが、尻切れトンボ。なぜ? 少女時代をその地で過ごした女性で、いまは新任の官僚(柳葉敏郎)の妻という役を小泉今日子が演じているのだが、『マンハッタン・ラブストーリー』を見た後となっては、キョンキョンは赤羽チャン(のぶりん)にしか見えない。
映画『突入せよ!「あさま山荘事件」』は映画館で見て、ちょっと期待はずれだった。テレビでやっていたので、「ながら見」をしていたのだが、やはり印象は変わらない。原田リアリズムとでもいうべきセミドキュメンタリータッチの演出、気の利いたセリフ、群像の中の登場人物の際だたせ方など、好きなところもあるが、こと「あさま山荘事件」に関しては主人公のかっこよさからして違和感アリアリで、時代背景をはしょってしまっているのも興趣を殺ぐ。
▲ふと原田眞人監督のことが気になり、公式サイトを見る。何かにつけてアメリカを引き合いに出す監督が、イラク戦争の「戦後」と自衛隊派遣をどう見ているのかに関心があったのだが、そんなことは一言も書いていない(当たり前か)。代わりに、『ラストサムライ』について書かれていて「あっ」と声をあげそうになった。すっかり忘れていたが、この人、『ラストサムライ』に出ていたはず。何の役だっけ? と一瞬考えたが、「ああ、あの大村財閥か!」と得心がいった。あの映画の「悪役」であり、明治政府の近代化を象徴する人物だったが、実に堂々たる役者ぶりだった。
▲パソコンの強制終了音に、イクヤがびっくりして泣き出す。寝ぼけたのか。世界の終わりのような悲しげな泣き方。腹減った→泣く、みたいな即物的な泣き方ではなく、情緒的な雰囲気が漂っている。


2003/12/22/Mon.
▲晴れ。
▲早起き。ルヘイン『シャッター・アイランド』(早川書房)読了。前作『ミスティック・リバー』(ハヤカワ文庫)書評下書き。
▲『チーズプラザ』色校戻し。完了。
▲イクヤと留守番。久々に日記更新。
▲6夜連続NHKドラマ『川、いつか海へ』を見ている。人気脚本家3人によるリレー形式の連続ドラマ。1つの浮き玉を狂言回しに、次々に「愛のかたち」を1話完結形式で描いていく。野沢尚(第1話、第5話)、三谷幸喜(第2話、第4話)、倉本聰(第3話、第6話)。第1話はイントロダクション的なストーリー。浮き玉は、山を捨てて海に職を求めた男(森本レオ)と、海辺で男と出会い恋に落ちた網元の娘(浅丘ルリ子)の息が封じ込められた浮き玉だった。その玉を亡き父の故郷の水源へと還そうと、二人の娘にあたる女(深津絵里)と離婚寸前の夫(ユースケ・サンタマリア)が山を歩く。野沢尚はミステリー、サスペンス以外は今ひとつという印象のある脚本家で、このドラマも盛り上がりに欠ける……と思ったら、第5話でこの第1話の続きが描かれるようだ。
▲今夜は第2話。三谷幸喜脚本。旅館経営を引き受けた脱サラ男(渡辺謙)と妻(小林聡美)。従業員は猛反発し、サボタージュ。眼にモノ見せてやろうと、夫婦だけで客(西田敏行)を迎え入れるが……。サラリーマンの悲哀と脱出願望の果てをさらりと見せる秀作。ギャグ押さえめで人情話にまとめているところが、かえってちょっとした笑いを引き立てている。才人三谷幸喜の面目躍如。どちらかというと芝居が硬い渡辺謙と、年を取ってますます自在な西田敏行の掛け合いが楽しい。


2003/12/21/Sun.
▲晴れ。
▲早起きしたので『仮面ライダー555』を見る。本編よりもCMが目を引く。キャラクター関連商品が花盛り。ケイタイで変身するとは! 隔世の感。
▲歩いて新宿まで。ヨドバシカメラ本店でCD−R、インクなどの買い物。メチャ混み。
▲デニス・ルヘイン著/加賀山卓朗訳『シャッター・アイランド』(早川書房)読了。前作『ミスティック・リバー』(早川文庫)が評判をとったデニス・ルヘインの最新長篇ミステリ。嵐の中、精神を病んだ凶悪犯罪者ばかりが収容されている孤島(シャッター・アイランド)に閉じこめられた2人の連邦保安官。本格ミステリの古典的設定を借り、「密室からの人間消失」「残された暗号」といったこれまたクラシカルな謎を用意していながら、物語はそこから大きく逸れていく。最後に物語が向かう場所は? 結末と解説は袋とじ。版元、編集者の自信のほどがうかがえる。事実、袋とじがハッタリに終わっていない。秀作。
▲『ミスティック・リバー』はクリント・イーストウッド監督、ショーン・ペン、ティム・ロビンス、ケビン・ベーコン主演によって映画化された。公開は1月10日。期待したい。


2003/12/20/Sat.
▲晴れ。
▲日記を書く気になれずサボっている。イクヤと留守番。掃除した部屋で昼から寝てしまった。目が覚めたら日が暮れていた。
▲『北の国から 遺言』後編。唐十郎がかっこいい。唐が出る場面をもっと見たかった。顔に人生が刻まれている。
▲倉本聰のナルシストぶりを再認識。自分で作った登場人物(五郎さん)を、寄ってたかってほかの登場人物に誉めさせる。自画自賛とはこのことなり。
▲『北の国から 遺言』の前に富良野塾のドキュメント番組があったのだが、富良野塾の宗教的雰囲気にもゾッとした。「生きることを教えている」とのたまうセンス、理解不能だ。『北の国から』も第1シリーズの頃は、都会から自然へという、陳腐になりがちなテーマを徹底的に掘り下げるという偏執的なこだわりが感動を呼んだが、その後は視聴者からどんどん遠くへ離れて行っているような気がする。ちょうどこのへんが幕の引き際だったかも。フジテレビは英断だったというべきだろう。


2003/12/19/Fri.
▲晴れ。
▲「チーズプラザ」(最終号・1月10日発売)色校戻しの時に差し替えるべく、追加撮影に行く。学習院裏から西早稲田。鶴巻町で油そばを食べる。しかし俺はさかえ通り千代作に軍配を上げる。 アップリンクギャラリーでお茶を。「第1回キュレーターコンペティション優秀賞受賞企画 DANSTROMA#003 new media/dance/installation」というのをやっていたらしい(パフォーマンスなのか何なのか……ほこりっぽいだけだった)。ギャラリーカフェならではの暢気な雰囲気は悪くないですが。
▲戸山公園でようやく見つけた花を撮影。勢いがついて新大久保の裏通りをスナップする。歌舞伎町を抜けて、さくらや写真館で昨日現像に出したフィルムのプリントをピックアップ。
映画『ラストサムライ』を見る。思ったよりも良かった。ツッコミどころは満載だが、ハリウッド映画が描く「アメリカ以外の世界」としてはマシなほうではないか。ドラマもツボが押さえてあって、最近の見せ場を数珠繋ぎしたようなハリウッド作品に較べればよく練られている。トム・クルーズという俳優のプロデューサーとしての手腕と出演作品を選ぶ眼を買っている。この作品も水準以上に仕上がった。世評通り渡辺謙の健闘が光るが、小雪の堂々とした立ち居振る舞いの自然さも見事だった。
▲テレビで見るつもりのなかった『北の国から 遺言』。「うんざり」と思いながらまた見てしまった。現実との地続き感、説教くささは『渡る世間は鬼ばかり』と同じ。テレビならではのエンドレス・ワールドを作り上げたという意味で賞賛されるべきシリーズ。オンエアーと同時代に生きた人は、多かれ少なかれ、登場人物たちの人生が気になるはずだ。スクリーンではこうはいかない。もうちょっと距離感があるだろう。


2003/12/18/Thu.
▲晴れ。
▲大倉舜二さんと久しぶりにお会いしてカメラの話、写真の話など四方山話を。
▲四谷三丁目に行ったので、ラーメン屋「大山」に寄ろうと思ったら店がなかった。ネットで調べたら、今年2月に閉店し、練馬方面に移転……というところまではわかった。キムチチャーハンが好きだったんですけどね。
▲乙一の最新刊『失はれる物語』(角川書店)読了。乙一がライトノベルスとして書いた短篇から作品をピックアップして再編集した大人向けライトノベル短篇集。ライトノベルって何? という人にも入っていきやすい作品集でもある。ただ、乙一のライトノベルス作品をすでに読んでいたので、なんだ、再編集短編集か、とちょっとがっかり。1編だけ書き下ろしが入っている。一般の読者向けにライトノベルを、という考え方はわからないでもないが、文庫が生きている(絶版になっていない)現状ではファンにとってはあまりメリットはない。装幀はすてきだけど。
▲『失はれる物語』に収録されている「手を握る泥棒の物語」はブロードバンドシネマとして公開される。ヒロインは内山理名。公開は来年2月。ショートフィルム向き題材かも。ちょっと見てみたい。


2003/12/17/Wed.
▲曇りのち晴れ。
▲エプソン販売社長インタビュー。入社案内のためのもの。実はビジネスマンの取材もけっこう好きだったりする。
「ターリー」でインドカレー。サ店で紺谷さんと憂国トーク。
▲bk1<怪奇幻想ブックストア>幻妖通信巻頭コラムの再録記事(オタクな趣味の話)をアップ。特撮怪獣フィギア関連に関心のある方にお薦めの記事。
▲茗荷谷で忘年会。ライカ・トークなど深夜まで。


2003/12/16/Tue.
▲晴れ。
▲明日インタビューするエプソン販売社長についての下調べなど。
▲伊坂幸太郎の最新長篇小説『アヒルと鴨のコインロッカー』(東京創元社)読了。例によって巧緻に、端正に組み立てられたストーリーに唸る。しかし、そうした完成度の高さ以上に読者を魅了するのが伊坂作品に登場する人物たち。とくにこの『アヒルと鴨のコインロッカー』はミステリーとしての仕掛けよりも、人物と彼らが語る言葉のほうが印象的だ。過去の伊坂作品から頭抜けた傑作ではないが、今後の作品へと橋渡しされる中2階的な作品として重要なのではないだろうか。
▲大学に入学するためにアパートに引っ越してきた椎名青年は、同じアパートに住む河崎というハンサムな男と知り合う。河崎は椎名に「一緒に本屋を襲わないか」と誘う。狙いは『広辞苑』。同じアパートの外国人学生にプレゼントしてやりたいのだという。河崎のペースに乗って強盗の片棒を担いでしまう椎名。しかし、河崎の言動にはどこか腑に落ちない部分がある。一方、「2年前」の物語が同時並行で描かれる。こちらはペットショップに勤める琴美と、琴美の元カレの河崎、そして、現在のカレであるブータン人のドルジの物語。町では猫や犬を残虐に殺す事件が頻発していた。琴美とドルジは偶然、犯人らしきグループを目撃してしまう。彼らの魔手は目撃者の琴美にも伸びてくる。
▲伊坂幸太郎の小説の小説の魅力の一つは、そのストレートな正義感にあると思っている。絶対的な悪に対して、登場人物たちがどう戦うのかが物語の底流にある。悪役の「悪」が単純すぎるというそしりも受けるかも知れないが、いまの時代に勧善懲悪がベースになっている小説は意外と新鮮だ。物語は複雑に入り組んでいるが、描かれている事柄はシンプル。そのギャップが面白い。「だまし絵」の魅力である。
▲bk1で定例打ち合わせののち、<怪奇幻想ブックストア>忘年会。<怪奇幻想ブックストア>もオープンして1年余。時の経つのは早い。バックナンバー記事も充実してきて、定番アイテムも揃ってきた。東雅夫さんの超人的活躍あればこそ。辻さん発案の「bk1怪談大賞」など毎年恒例にしたい企画もあった。すなみくん、FK氏のコンビネーションも絶妙で、充実した1年だった。
▲「チーズプラザ」(1月10日発売)の入稿完了。「ヤスケン追悼文集」のゲラ戻し。


2003/12/15/Mon.
▲晴れ。
広告農場で農場主の紺谷さんと打ち合わせ。久しぶりに入社案内の仕事。大学を卒業してから5年半務めていた会社が就職情報会社なので昔とった杵柄というか……。今回の仕事はインタビューのピンチヒッター。レギュラーの人をがっかりさせないようにがんばらなくちゃと思う。紺谷さんには駆け出しの頃からお世話になっているので、久しぶりにお会いして楽しかった。
▲「チーズプラザ」(1月10日発売)の入稿で深夜まで。家は修羅場状態。夕飯はカレー。


2003/12/14/Sun.
▲晴れ。
▲広末涼子妊娠&結婚発覚。大学に入ったら仕事が忙しくて中退。中退して本格的に女優業に精を出すべく舞台初挑戦中に妊娠発覚。つくづく中途半端な人だと思う。まあ、そのゆるさが今風だとも言えるけど。しかし、激しいアクションがつきもののつかこうへいの舞台をダブルでやって妊娠初期に何もなかったのはラッキー。やはり強運の持ち主か。
▲ある写真講評会に出席。褒められて嬉しい。褒められると伸びるタイプなんで……と自分で言っておく。講評会後、忘年会。初めてお会いする方ばかりで名刺がたくさんたまった。
▲写真展情報。大西みつぐさんの写真展「近所論」が虎ノ門のポラロイドギャラリーで開催中(〜12月26日)。ポラロイドのピンホールカメラキットを使った大西みつぐ流「ご近所写真」。スナップ写真の名手として知られる大西さんのこれまでの作風とはひと味違った世界が見ることができそう。
▲今日、写真家の曽根陽一さんと初めてお会いすることができた。曽根さんの公式サイトでは曽根さんの作品をゆっくりと楽しむことができる。ストロングタイプのスナップシューター。カッコイイ写真がたくさんあった。曽根さんが旧ソ連製のレンズに造詣が深いと知ったことも収穫ナリ。曽根さんにその道に誘い込んだ秋山さんとはゆっくりお話をすることができなかったのが残念だが、焦らずともまたゆっくりとお話しできる機会があるような気がする。なんとなくだけど。
▲調子に乗って木村恵一先生にも写真を見てもらう。先生からは励ましの言葉(?)と、アドバイスをいただく。お話をうかがっていて、木村恵一的スナップ哲学を垣間見ることができて興味深かった。木村先生いわく「途中下車」することで、予期しない「場所」と出会うことでスナップ写真が生まれる。そして、その「場所」にどんな人間が通りかかり、生活の場としているのかを、時には「待って」撮る。木村先生の作品を思い浮かべながら、その作品の「場所」における撮影スタイルが想像できた。やっぱり写真は面白い。
▲フセイン拘束。誰が何を裁くのか? 独裁者は断罪されて当然だが、裁くのはイラク国民と国際社会であるべき。もっとも、国際社会=アメリカとその同盟国になってしまいそうな雲行きだが……。せめてフセインがかつて蜜月状態だったアメリカの旧悪を暴露するような事態になればいいんだけど、取引材料として使うつもりに違いなく、フセインとアメリカの悪行をきっちりと公にすることこそ「国際社会」のやるべきことではないか。


2003/12/13/Sat.
▲晴れ。
▲品川。横木安良夫写真展「北へ、北へ。Torgotten Vietnam(キヤノンSタワー 〜12月25日)を見に行く。ベトナム北部の少数民族の村を訪ねた写真紀行。横木さんの写真にはよけいな言葉が必要ない。映像が能弁に語りかけてくる。言葉によらない映像詩。写真の才能ってこういうものだなあ、と思う。写真はすべてEOS Kiss Digitalによるものだが、一眼レフデジタルカメラもここまで高性能(かつ廉価)になったんだなと感慨があった。会場には横木さん自身による「1点もの」の写真集(上製本)も展示されている。インクジェットプリンタで出力し、製本屋さんに製本してもらうという贅沢なものだが、こんなふうに私家版写真集を作ってみたいと思う人も多いのではないだろうか。
横木安良夫さんご本人と久しぶりにお会いすることができた。写真展終了後、横木さんと、会場で待ち合わせたKさん、写真家の広田敦子さん、こみやんさんと軽く飲みに行く。


2003/12/12/Fri.
▲曇り。


2003/12/11/Thu.
▲曇り。
▲「ヤワラちゃん」こと田村亮子結婚。田村亮子を「ヤワラちゃん」と呼ぶたび、「マンガと違う!」と容姿についてケチをつけたものだったが、いつの間にか、「ヤワラちゃん」と聞くと田村亮子の顔しか思い浮かばなくなった。完敗だ。


2003/12/11/Thu.
▲曇りのち雨。
▲終日家で仕事。一歩も外に出なかった。
痴漢解雇、「退職金ゼロ」は酷=逆転敗訴に小田急立腹−東京高裁痴漢で4回捕まった40代の男が、退職金ゼロは不服と告訴し、2審で逆転勝訴。退職金の1/3が払えという判決。会社は小田急電鉄。鉄道会社の社員が痴漢で捕まって申し開きができるのかよ、と2ちゃんねるでちょっとした盛り上がり。JRで痴漢したんだから会社(小田急)に貢献した、という意見には笑ったが(笑)。しかし、4回捕まったってことは立派な常習犯では? 鉄道会社の社員が痴漢……、退職金ゼロでも文句は言えないと思う。(時事通信 )
ラジオ、めざまし時計などを大音量で鳴らし続け、隣人を慢性頭痛などに陥らせた女性を逮捕(奈良署)。犯人の顔が見たい! テレビの報道では、騒音は3年前から。耐えていた隣家もすごい。恨まれる心当たりはないという。犯人の家は家庭崩壊していたらしく、外に向かって音を出すことしかなかったのか。各局の取材記者が律儀に押収したラジオ、目覚まし時計を鳴らして体験していた。90ホン近い騒音だった。ラジオや目覚まし時計のほかにも、公務員の不祥事の記事を読み上げて録音、流していた。その朗読はなかなか読み慣れていた。
▲連日、幼児虐待の事件が発覚し、ニュースになっている。今日は1歳の二男に暴行続ける 傷害で塗装作業員を逮捕(共同通信)。1歳児の次男を父親が虐待。取り調べに「やってない。妻では?」とすっとぼけたという厚顔。いやな話だ。
▲展覧会情報をいただいたので紹介します。『牛尾篤 銅版画展』が横浜の石川町にあるGALLERY KANで今日から開かれています(〜12月23日)。牛尾篤さんは本の装画や雑誌の挿絵などで活躍している版画家。ウィーン国立応用美術大学に留学していた頃のカフェ三昧の日々を版画とエッセーで綴った『憧れのウィーン便り』(トラベルジャーナル)はとても素敵な本です。


2003/12/10/Wed.
▲晴れ。
▲ある写真講評の会に持っていこうと「小岩」と「平井」に撮影に行く。お題が「江戸川区」なので。ちなみに「新小岩」は葛飾区。江戸川区の中でなぜ「小岩」を選んだかというと、エスニック化がすすむ東京の街のひとつだから。それと「悪所」が街の中にあるところでしょうか。明るくて健全なだけの(光が回りすぎたような)街はきらい。光と影がなくちゃ!
▲ところで「平井」という駅があること、はじめて知った。平井非公式ホームページにユーモラスな地域案内がある。平井の駅近くの居酒屋の前には鰺のみりん干しがかかっていて、美味しそうだった。
▲伊坂幸太郎のデビュー作『オーデュボンの祈り』(新潮文庫)読了。年末恒例のこのミスでは、2作品がベストテンに入った伊坂幸太郎。デビュー作の『オーデュボンの祈り』は伊坂ワールドの根幹をなす「神様のレシピ」そのものズバリがテーマになった長篇小説。
▲主人公の伊藤は元プログラマ。会社を辞めて、コンビニ強盗に入る。悪の権化のような警官、城山と争って意識を失った伊藤は、目覚めると「荻島」という島にいた。100年前から鎖国をしているという荻島には、人間の言葉を話すカカシが立っていた。ほかにもこの島には常識外れな人々が住んでいる。島には「この島には足りないものがある」という言い伝えがあったのだが……。
▲名探偵は事件を阻止することができない。できるのは解決することだけ。名探偵は物語の外にいて、読者を事件に案内する役割を持つ。そのような「名探偵」についての思索をもとに、奇想天外な設定が生まれた。いわばメタ・ミステリーだ。しかし、そのような読み方をしなくても、人間の運命と人生の不思議さが精緻に組み合わされ、十分に楽しめる。人間の言葉を話すカカシのエピソードは、のちの伊坂作品にもたびたび登場し、作家としての思想哲学を象徴としていると思われる。寓話的でありながらリアリティーがあり、リアルでありながら現実離れしたまか不思議な小説。こんなヘンテコ(褒め言葉)でデビューした伊坂幸太郎、やはりただ者ではない。
▲12月28日、TBSテレビ「情熱大陸」に写真家の鬼海弘雄さんが登場する。好きな写真家なので放送が楽しみ。写真もいいが、ご本人の話し方、佇まいにも味があるのです。鬼海さんの最新刊は写真集『PERSONA』(草思社)。9,500円なり。買おうかどうしようか……ちょっと勇気のいるお値段です。


2003/12/09/Tue.
▲晴れ。
▲「チーズプラザ」(1月10日発売)の特集は「花」。ここしばらく撮りためてきた花の写真の画像整理と、原稿のまとめ。「チーズプラザ」はこの号が最終号となる。ちょうど1年間。短命に終わってしまったメディアだったが、毎号特集を仕切ることができていい経験になった。企画を立てて、取材して、写真を撮って原稿を書いて、デザインはカミさん……という、きわめて自営業的な仕事だったのだが、試行錯誤させてもらった。連載原稿をお願いした吉野信さん、カミゾノ☆サトコさん、特集でインタビューさせていただいたハービー・山口さん、平間至さん、島尾伸三さん、藤澤真樹子さん、小林紀晴さんほかのみなさんにも感謝しています。もちろん、たくさんの投稿写真を送ってくださった読者の方々にも! 
▲この秋、ベトナムの写真展が2つ開かれている。一つはコニカミノルタプラザ外山ひとみ写真展「ヴェトナムの光と風」(本日終了)コニカミノルタプラザ特別企画展、日越外交関係樹立30周年記念イベントというものものしいものだが、女性写真家が10年に渡ってベトナムの取材した写真の総決算的な写真展。先週、見に行ったのだが、日記に書くのを忘れてしまった。副題に「スーパーカブで駆け抜けた10年、Womanは輝き、Roadは生きていた」というわけで、「1994年にはスーパーカブで南北1万キロを縦断往復」(コニカミノルタプラザのHPより)したという。アジアの写真を撮る写真家は数多い。アマチュアで撮っている人もたくさんいる。しかし、アジアを撮った写真は、「いわゆるアジア」というか、紋切り型になってしまう危険性を抱えている。ぼくもアジアへの旅に魅了されていた時期があったので思い入れもあり、アジアの写真にはついつい意地悪な見方をしたくなってしまう。この写真展でも、いいな! と思えたのは1、2点で、期待していた感動は得られなかった。かくもアジアの写真、ベトナムというエキゾチックな被写体は難しいのか! と再認識した。写真展に合わせて、『ヴェトナム颱風』(外山ひとみ・新潮社)も刊行されている。外山ひとみといえば性転換した元女性(現男性)たちに取材したフォト・ルポルタージュ『MISS・ダンディ』(新潮社)という秀作があった。あの本の写真と文章にあった粘っこさのようなものが、ベトナムの写真からはあまり感じ取れなかった。それが残念だった。
▲もう一つ、横木安良夫写真展「北へ、北へ。Torgotten Vietnam(キヤノンSタワー 〜12月25日)。フォトエッセー『サイゴンの昼下がり』(新潮社)がロングセラーになっている横木安良夫さんの撮り下ろし写真展。EOS Kiss Digital片手にベトナムでロケを行なった写真展。こちらはまだ見ていないのだが、期待を込めて宣伝しておきます。
▲テレビドラマ『あなたの隣に誰かいる』。最終回。この手のミステリー、サスペンスって、種明かしでシラけると相場が決まっていて、このドラマも例外とは言えない。ただ、全体を覆うヘンテコなムードがかなり気に入っていたので、ワンクールなんていわないで、1年くらい延々とやってほしかった。反吐が出るまで見たかったドラマですね。


2003/12/08/Mon.
▲晴れ。
▲部屋で花の撮影。寝かしたり、起こしたりしながら、上から下から斜めから撮る。
▲夕方、テレビのニュース(テレ朝)で「絵本の読み聴かせ」を特集していて、「出るかな。出るかな」と思っていたら、やっぱり出ました、安藤哲也さん。安藤さんがbk1の店長を務められていたときにお世話になった。今は仕事のほかにパパ's 絵本プロジェクトでナビゲーターを務めている。たまたま安原顯(ヤスケン)さんの追悼文集に寄稿する原稿を書いていて、安原さんを引き合わせてくれた安藤さんと寺島淳一(TJ)さんのことを思い出していたところ。嬉しい偶然だった。安藤さんは元気そうだけど、ちょっと太った?(笑) 人のことは言えないか(爆)。
▲安原顯さんの教え子のみなさんが編むという「追悼文集」にぼくも交ぜてもらえるというので、原稿を書かせてもらう。依頼はずいぶん前にもらっていたんだけど、いざとなるといろいろと悩んでしまい、締め切りから遅れてしまった(ゴメンナサイ)。どんな文集になるのか、みなさんの文章が楽しみ。


2003/12/07/Sun.
▲雨のち曇り。
映画『仁義 Le cercle rouge』(1970年・仏 ジャン=ピエール・メルヴィル監督・脚本)をビデオで。2時間20分の大作。「仁義」という邦題、原題(赤い環)とは無関係のようだが、なぜか映画の雰囲気とマッチしている。
▲刑務所の中で看守から宝石強盗を持ちかけられたコーレイ(アラン・ドロン)は出所後、かつての仲間リコからカネと拳銃を奪ってクルマを走らせる。一方、護送中に脱走した犯罪者ヴォージェル(ジャン・マリア・ボロンテ)は非常線をかいくぐるために、偶然、コーレイのクルマのトランクに潜り込む。二人は奇妙な友情を感じ、宝石店の強盗を計画する。ヴォージェルは元刑事で射撃の名手ジャンセン(イヴ・モンタン)を仲間に引き入れ、計画は完璧に実行される。しかし、ヴォージェル逮捕に執念を燃やすマテイ警部(アンドレ・ブールヴィル)は周到な罠を用意していた……。
▲はぐれ者たちが起死回生を狙って宝石店を襲うというストーリーとも読めるが、全体にうつろなムードが漂う。赤い環、とは運命のことなのだと思うが、なるほど、男たちはどこか破滅を予感しながら、犯罪に突き進んでいく。捜査の一線に立っているマテイ警部も警察内でその手腕を疑われ、監査局長からイヤミを言われる。家に帰って迎えてくれるのは猫たちだけである(『サムライ ジャン=ピエール・メルヴィルの映画人生』(ルイ・ノゲイラ/井上真希訳・晶文社)によれば、メルヴィルの愛猫だとか)。追う者と追われる者、双方の凍てつくような孤独が伝わってくる。メルヴィル以外にはこういうムードを演出できる映画監督はいないような気がする。
▲また、『サムライ ジャン=ピエール・メルヴィルの映画人生』の『仁義』についての章で、メルヴィルは政治について語っている。右でも左でもない「無政府主義的」だと自身の政治的な立ち位置を語った上で、共産主義へのシンパシーが失われたことを率直に語っている。「風見鶏であったり、方針を変えたりする人間を非難するのは間違っている。君を一変させるのが人生というものなのさ」という言葉が印象に残る。


2003/12/06/Sat.
▲曇り。
映画『日本列島』(1965年・日活 熊井啓監督・脚本)をビデオで。社会派で知られる熊井啓監督の初期作品。昭和34年。米軍スコットキャンプの犯罪捜査隊(CID)の通訳として働いている秋山(宇野重吉)は、上官から特別の命令を受ける。神奈川県の基地に勤務していたリミット曹長が水死体で発見された事件の真相を調査せよというものだった。リミットは誰かに追われていた形跡があったうえに、死体は日本の警察が解剖する間もなく米軍によって本国送還され、死因すら明らかにされなかった。秋山は新聞記者の原島(二谷英明)、警視庁捜査第3課の刑事黒崎(鈴木瑞穂)らとともに事件の調査を開始するが、その背景に、下山事件、松川事件にも関係していると噂される米謀略機関(映画ではキャネル機関。キャノン機関がモデル)と、旧日本軍諜報機関の残党、麻薬密売組織がいることを突き止める……。
▲独立国家になったとはいえ、日本中に基地を持つ米軍。米兵がらみの事件も少なくなく、この映画の主人公、秋山も妻を米兵に殺されたとわかっていながら指をくわえて見ているしかなかった。映画のなかで描かれているリミット事件をめぐっても、捜査権を持つ日本の警察が完全に無視される姿が描かれている。そのような準占領下にあって、旧日本軍の謀略機関が外国のマフィアと手を組んで悪どい商売に手を染めている。外国人神父が犯人と目されながらも、外国へ「転勤」されて逃げおおせられてしまったスチュワーデス殺人事件など、日本の「独立」のもろさを象徴する事件についても描かれている。映画制作当時はこれらの事件から4〜5年経っているが、熊井啓監督にとって、日本の自主独立は依然として危ういものだという認識があったに違いない。その構造は、駐留米軍の数が減った現在にも通ずる部分がある。


2003/12/05/Fri.
▲曇り。
▲小林久三『日本映画を創った男 城戸四郎伝』(新人物往来社)読了。演劇の興業会社だった松竹に映画を根付かせ「松竹映画」の「大船調」を作り上げた大プロデューサー、城戸四郎を中心に、松竹映画の栄枯盛衰を描いたノンフィクション。著者の小林久三は乱歩賞作家として知られるが、元松竹のプロデューサーで、およそ松竹らしからぬポリティカル・アクション映画『皇帝のいない八月』に原作を提供してもいる。小林自身の嗜好といわゆる大船調(小津安二郎に代表されるホームドラマ。『男はつらいよ』『釣りバカ日誌』あたりがその後継路線となっていて、大船撮影所なき現在でも松竹映画の柱になっている)がマッチしているとは考えがたいが、本書も、城戸と距離を置いた冷静な筆致で「大船調」の再評価を行なっている。
▲「大船調」とは城戸四郎が松竹の特色として打ち出そうとした笑いと涙がある健全なホームドラマ。小津安二郎が代表格だが、その後も『男はつらいよ』『釣りバカ日誌』といった後継路線を得て、大船撮影所なき現在でも松竹映画の柱になっている。小林は「大船調」の成立を城戸のキャラクターと重ね合わせている。創生期の映画界は野蛮でヤクザな業界だったが、そこに東大出のインテリ、城戸四郎が現れ、自らも脚本を書き、娯楽性豊かな芸術作品を志向する。その結果、小津安二郎の作品を始めとする秀作が作られたが、一方で、城戸の専制的な撮影所経営は「大船調」以外の作品の成立を困難にさせていく。日本映画の光と影を描いて読み応えのある一冊。惜しむらくは、雑誌(「キネマ旬報」)連載の弊か、エピソードがリフレインされるところ。単行本化にあたって、交通整理をしてほしかった。


2003/12/04/Thu.
▲晴れ。
▲?


2003/12/03/Wed.
▲晴れ。
▲新宿ニコンサロン。第28回伊奈信男賞を受賞した大島洋写真展「千の顔、千の国―エチオピア」と、第5回三木淳賞を受賞した荻野育代写真展「緊張の方向」を見る。
▲大島洋写真展「千の顔、千の国―エチオピア」(〜12月15日)は10年に渡ってかの地に取材したモノクロ、ポートレート写真。奇をてらわないまっすぐな写真。
▲荻野育代写真展「緊張の方向」(〜12月8日)はバイクの部品や、チェーンなど「モノ」を丁寧に写真に写し取ったモノクロ写真のシリーズ。三木淳賞は若い写真家に贈られる賞。
▲編集&原稿、写真撮影などを担当した、極上カメラ倶楽部『オリンパスE−1』(双葉社スーパームック)の打ち上げ。移動中、新宿西口でバンド練習帰りのカジくんとフクちゃんとばったり会う。東京麺通団で日本酒。おむすびを食べたら、なぜうどんを食べないのか? とアカギコさんにおこられた。ほんとだ。ここはうどん屋だった。


2003/12/02/Tue.
▲晴れ。
▲晴れた。洗濯日和だね。
▲外苑前。ギャラリーDAZZLE。築地仁写真展「垂直状の、(領域)・03」のオープニング・パーティーに行く。海原修平さんと立ち話。上海に事務所を構え、日本と行ったり来たりの日々を送っている海原さん。上海での仕事は充実しているようだ。「かぼちゃ」に寄ってから帰る。偶然居合わせたオキツさん、クリリンとトーク。


2003/12/01/Mon.
▲雨。
▲伊坂幸太郎『ラッシュライフ』(新潮社)読了。札束で横っつらをはり倒すような画商と若い女流画家。独得の哲学を持った泥棒。未来を予測できる能力を持った「教祖」を「解体」しないかと誘われた冴えない信者。W不倫の精算を殺人で済ませようと考えるカップル。リストラされて再就職口が見つからず、街をさまよう中年男。まるでてんでバラバラな彼らの物語が、やがてひとつに収斂していく。だまされまい……と思っていてもやっぱりだまされた、というミステリならではの楽しみを味わうことができる、巧緻な作品。見事です。
▲『ラッシュライフ』に登場する泥棒「黒澤」は、『重力ピエロ』(新潮社)の探偵と同一人物のようだ。2作品ともにやや唐突に「カカシ」の話が挿入されるが、それはどうやらデビュー作『オーデュボンの祈り』(新潮文庫)と関係がありそうで……。1冊読みはじめたらすべての作品を読みたくなる。そんな作家です。


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