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2003/04/30/Wed.
▲曇り。風。
▲日記をまとめて更新(4月22日〜29日)。
▲橋本。初めて降りた。写真家の三輪薫さんと『645新世紀』(双葉社・6月下旬発売予定)の打ち合わせ。しかし、話題は途中からデジタルに。デジタルによる画像処理とアウトプットについての模索を続けているという三輪さん。ヴェテラン写真家がデジタル技術をどう写真に生かすのか、次回の個展は7月、エプソン・ピエゾグラフギャラリー京都で予定されているという。楽しみだ。
▲カミゾノ☆サトコさん→メディアセレクト。
▲昨日の続きの仕事を終えて、納品。あと1回分アリ。
▲武田花『カラスも猫も』(筑摩書房)読了。『煙突やニワトリ』(筑摩書房)に続く2冊目のエッセー集ということで、刊行は1995年。地方への撮影旅行で出会った奇妙な人、少女時代の記憶など、日常の断片を独得の筆致で綴る。肩こりがほぐれるような文章と写真。ちょっと古めかしい装幀は安西水丸。
▲文字は最小限。字義通りのビジュアル雑誌「FOIL」NO.2(リトル・モア)。創刊号は「戦争反対」。第2号は「祖先 ROOTS」。安村崇。「写真新世紀」グランプリの時から強烈な印象。好きな写真だ。前回は川内倫子、奈良美智の二人だけだったが、こちらはもう少し参加アーティストが増えている。しかし、圧倒的なのはやはり川内倫子だった。つくづく、写真に見入ってしまう。そっと添えられた言葉との相乗効果で写真が更に生きてくる。すでに横綱の貫禄があるが、次号ではどんなチャンレジャーが登場するのか。チャンピオンベルト制だと思って「FOIL」を見ると面白い。すばらしいです。
▲「spoon」(発行:プレビジョン/発売:角川書店)。この雑誌のターゲットからは遠く離れている俺だが、チェコ、絵本というアイテムに惹かれて買ってみた。絵本を大人が読んで癒されるという風潮は大嫌いだが、ビジュアルブックの原点は絵本。チェコというのもシブい。チェコ・リポートは、絵本一冊一冊が小さくしか紹介されていないのと、「行ってきまして」的記事で終わっていて、チェコ絵本についての分析がないのが不満。むしろ、福音館の「こどものともの47年」が面白かった。こんなシリーズ、知らなかった。紹介されているバックナンバーの中に「長野重一・写真、谷川俊太郎・文」による「よるのびょういん」なる絵本まであって、興奮する。これは端から読んでみたいなあ。
▲映画『イルマーレ IL MARE』(2000年・韓国)をビデオで。「IL MARE(海)」という名前が付けられた海辺の一軒家。その家の郵便受けを介して、1997年の年末と、1999年の年末を生きる男と女が手紙を交わし合うというファンタジックなラブストーリー。97年に新築されたばかりの家に引っ越してきた男性イ・ジョンジェ(『Interview』『純愛譜』)は失意の建築学生、99年にその家から引っ越していったばかりの女性チョン・ジヒョン(『猟奇的な彼女』『ホワイト・バレンタイン』)は別れた男性を忘れられない声優という設定。近過去との更新が未来を変えられるのでは、という期待を生む。そこがミソ。ラストにもう一ひねり欲しかったと思うのだが、この手の話は予定調和でも悪くないなと思ってしまう。『猟奇的な彼女』のヒロイン、チョン・ジヒョンが可愛い。


2003/04/29/Tue.
▲晴れ。みどりの日。
▲休日。水天宮。人形町から銀座まで歩く。
▲週末にビデオに録っておいたテレビドラマ『ぼくの魔法使い』(宮藤官九郎・脚本 日本テレビ系)第二回。面白い。リアルタイムで放送しているテレビドラマで久々に面白いと思えた1時間。ストーリー、キャスト、セリフの一つひとつにニヤニヤ笑いが止まらないっていうか。いろんな意味で最高です。
▲写真家、當麻妙の写真集『Tamagawa』が販売開始。公式ホームページで購入できます。送料別1500円。安い! です。東京郊外、多摩川沿いのランドスケープ写真集。限定200部なので、あっと言う間に売り切れると思うので、ご希望の方はお早めに。マジでいいですよ。


2003/04/28/Mon.
▲晴れ。
▲写真家の竹中隆義さんと『645新世紀』(双葉社・6月下旬発売予定)の打ち合わせ。645の現行機種の紹介記事の原稿をいただき、写真要素についてあれこれと。
▲写真家の大西みつぐさんと新宿ニコンサロンで打ち合わせ。『645新世紀』の「撮影術」的なページで、大西さんの645スナップ術を開陳いただこうという企画。掲載用にお借りした下北半島への旅を撮影したスナップの面白さに、その場で「脱力系旅情写真」と命名させていただく。
▲『645新世紀』の談話原稿がたまってしまったので、その作業をスタート。ほかに、キャメルスタジオの原稿整理の仕事なども。
『男の出産』(新潮文庫)を一気読み。副題に「妻といっしょに妊娠しました」とあるが、それって「想像妊娠だろう」とツッコミを入れたくなるような妄想炸裂。しかし、肉体的に変化していく女性と違って、男は想像、妄想くらいしかすることはないのかもしれない。そういう意味で、実に素直に妊婦のパートナーとなった男性(本書では妊夫)の気持ちを書いていて巧い、面白い。しかし、この本、どういう読者が読むんだろう。同じ立場の男性か、それとも、パートナーに読ませようと妊婦が買うのか。妊娠出産本は「ハウツー」か「体験記」だが、そのどちらも主役は女性。書き手もほとんど女性だ。こういう本は珍しい、というか、変わっている。しかし、「妊夫」がどんなことを考えるのを知るといううえでは、妊婦にとっても価値のある本かも。妊娠出産に関わるような人は読んでおいてソンはない本ですね。


2003/04/27/Sun.
▲晴れ。
▲「チーズプラザ」の原稿がすべて終わり、ゲラをメディアセレクトに出す。天気がいいので、近所の「薬王院」に牡丹を見に行く。精養軒のファクトリーショップでシュークリームを買って帰る。


2003/04/26/Sat.
▲晴れ。
▲久々に完全徹夜。一睡もしないということは年に1回くらいしかないのだが、だんだんラクになってくるような気がする。子供の頃から絶対に徹夜できない人だったのに。しかし、さすがにボロボロ感があり、昼前に原稿を届けに行った時には、二十代の女性のさわやかな笑顔に自分が虫けらになったような気分を味わう。
▲島尾さんの原稿、納得いかないのでもう一度直すことにして午後が潰れる。しかし、もうゴールが見えたって感じ。夜は新大久保の怪しいタイ料理屋で怪しい魚料理。味はいいのだが、タイから空輸されたという魚の断末魔の表情に不吉なものを感じる。立ちんぼのおねえさんたちの憩いの店だと思われる。


2003/04/25/Fri.
▲曇りのち雨。
▲京王線堀之内駅。初めて下車する。風景写真家の林明輝(りんめいき)さんとの打ち合わせ。林さんは写真集『あまかざり』(愛育社)、集『水のほとり』(愛育社)で知られる。1967年生まれというのは、自然風景写真の世界では「若手」だ。「これまで誰も撮ったことがない自然のイメージを撮りたい」という林さんの写真は詩情に富んだ滋味深いもので、見ていると吸い込まれていくような魅力がある。この日は『645新世紀』(双葉社・6月下旬発売予定)の巻頭口絵のための写真を選ぶための打ち合わせ。合わせて、写真家としてのこれまでの歩みをうかがう。
▲渋谷から原宿。新大久保。「チーズプラザ」の「デジカメレビュー」のために、MINOLTA DiMAGE XtPENTAX Optio SCANON IXY DIGITAL400の三台を取り上げるので、ここ数日メーカーから借りて持ち歩いている。この日も作例写真の撮影のために街をぶらぶら。にしても、最近のデジカメの性能向上には眼を見張る。新製品が確実に過去の製品よりも向上しているというのは気持ちがいい。銀塩カメラに比べてしまうと欠点ばかりが目に付くが、撮影機材の幅を広げ、写真の楽しさの可能性を増やすという点ではデジカメから目が離せない。
▲「チーズプラザ」の原稿を一つずつ書いていく。デジカメ画像のセレクト、画像処理、レビュー原稿、インタビュー原稿と、それぞれ違うスキルを使うので意外と集中力は落ちないのだが、時間があっと言う間に過ぎる。「デジカメレビュー」は初めてこういう形式の仕事をすること、デザイナーが相棒の柴田ではないことなどから、やや難儀して仕上げる。そのほかの原稿はいつも通り。『サンダー平山の大口径レンズ主義!』(双葉社)の入稿地獄からハイテンションが続いていて、妙に楽しく仕事をしていて変な感じ。でも「楽しい」のと「出来が良い」のはあんまり関係していないのかも知れないが……。


2003/04/24/Thu.
▲曇り。
▲写真家・作家の島尾伸三さんのご自宅へうかがい、インタビュー。写真集『まほちゃん』(発行:オシリス/発売:河出書房新社)を中心に子供を撮ること、家族を撮ることについてお話を聞く。奥様で写真家の潮田登久子もいらっしゃったので、先日まで二人で行かれていた中国雲南省への取材旅行についてのお話などもうかがう。とてもいい時間が流れている家だなあと思う。インタビューの内容は「チーズプラザ」(5月25日発売・メディアセレクト)に掲載されます。乞うご期待。
▲写真家の木村恵一さんの事務所へうかがい、木村さんと打ち合わせ。『645新世紀』(双葉社・6月下旬発売予定)に写真を掲載させていただく件で。雑誌掲載の写真を撮影する時に、645フォーマットが有利なこと、35ミリカメラ感覚で撮影できる操作系の簡単さなど、645カメラの魅力について聞く。見せていただいた写真は、下町のスナップショット、大根畑のルポなど。ヴェテランカメラマンのカメラアイが光る。
▲夜は島尾さんのインタビューのテープ起こしと、ざっと構成を考えて終わり。(自分としては)超特急の仕事なので。「チーズプラザ」の原稿、まだまだ残っている。


2003/04/23/Wed.
▲曇り。
▲写真家の吉野信さんのご自宅へうかがい、打ち合わせ。仕事の用件は二つあり、一つは「チーズプラザ」(5月25日発売・メディアセレクト)の投稿写真の選考。もう一つは極上カメラ倶楽部『645新世紀』(双葉社・6月下旬発売予定)のための原稿をいただき、写真を見せてもらうということ。仕事を終えた後に、吉野さんの奥様を交えて歓談。楽しい時間をすごす。
▲真保裕一『繋がれた明日』(朝日新聞社・5月15日発売予定)の書籍見本を読了。読みはじめたら止まらないテンポの良さは変わらない。19歳の時に女を争って男を刺殺してしまった主人公が、6年後、仮出所する。決して殺意はなかった。自分だけが悪いのではない……という気持ちを抱えながら、社会と折り合いを付けていくため、大人になろうとする。しかし、彼の過去を暴露するビラがまかれ、次第に追いつめられていくことに。「殺人者は罪をつぐなえるのか」という重いテーマをシリアスに描く。辛気くさいと捉えるか、その生真面目さに心打たれるか。評価の分かれるところでは? ただし、青年の成長物語として読むと、作者が模索している世界が垣間見えてくる。
▲そういえば。書くのを忘れていましたが、安原顯さんと交流が深かった村松友視さんが、安原さんについて書いた『ヤスケンの海』が幻冬舎から発売されます。発売予定は5月下旬。詳細は追って。


2003/04/22/Tue.
▲晴れ。
▲調子が出ない。ていうか、眠くて眠くて。
▲竹中隆義さんと久しぶりにお会いし、打ち合わせ。『645新世紀』(双葉社スーパームック)のカタログ的ページについて。誌面に登場するカメラをメーカーからお借りしているので、その品定めも。
▲写真を選んで、誌面を考えて、足りない画像をどうするか……というミニマムなことを考えているうちに時間が過ぎる。
▲荒木陽子文、荒木経惟写真・文『愛情旅行』(マガジンハウス・1989年・絶版)読了。てっきり読んだと思っていたのは勘違いだったらしい。荒木夫妻の国内旅行(箱根や京都、軽井沢温泉地などなど)についてのエッセー。陽子さんのテキストに、荒木さんが写真を添え、そのほか「相聞歌」として夫の視点から旅を振り返る。何しろ、この二人は「結婚以来お互い以外の人と旅はしていない」と書いているのだがから、「愛情」も筋金入りだ。文章の中味も、ほどよく甘い。なんとも不思議なテーストの本だ。
▲陽子さんが亡くなって、13回忌だと聞いたのは去年だったか。もちろん生前の陽子さんと面識があるわけもないが、なぜか親しみを感じてしまう。陽子さんの文章の魅力もさることながら、荒木さんの写真の根っこにいつも陽子さんの存在があり、荒木さんの新作を目にするたびに、そのことが思い起こされるからか。
▲そんなわけで、本書は陽子さんの生前に出版された本なのに、やはり亡くなってしまった人の本なんだと強く意識させられながら読み終えた。そういう背景をのけておいても、単純にここに書かれたような旅行がしてみたくなる。ちょっと前の本だが、旅の情報をふんだんに取り入れているにもかかわらず、まったく古びていない。それもまた不思議だ。


2003/04/21/Mon.
▲曇り。
▲午前中、ぐずぐずしているうちに約束の「午前中」が終わりかける。滑り込み。しかし、重大な忘れ物が……。
▲茗荷谷経由で市ヶ谷。山岳写真、ネイチャーフォトのヴェテラン写真家、川口邦雄さんを訪ねる。6月下旬発売予定のムック、極上カメラ倶楽部『645新世紀』(双葉社スーパームック)に原稿をいただくため。ケースに収められた写真がうず高く積み上げられた仕事場で、近作を見せていただく。最近愛用しているという6×4.5フォーマットのカメラ、マミヤ645AFで撮影されたヒマラヤの写真、白川郷、フィレンツェなどなど。写真家になったいきさつから、名取洋之助の「山岳写真批判」当時の逸話、黄金時代の「カメラ毎日」の話など、ほんの「さわり」だけ聞いただけでも興味がそそられる。
▲オンライン書店bk1で打ち合わせ。「怪奇幻想ブックストア」の企画、書評についてなどいろいろと。
▲銀座三州屋で写真とカメラについての飲み会。ゲストは写真家の中里和人さん。ちょうど、中里さんの写真が収録されたオリジナル文庫『いのち仕上げの名台詞』(小学館文庫)が出たばかり。有名人無名人324人の死の直前の言葉、辞世の句を収録した本。中里さんが撮りためてきた日本の自然の写真が生と死のドラマを盛り上げる。中里さんの作家活動とはまた違った一面をかいま見ることができる。「監修」に車谷長吉の名前があり、7人の辞世の言葉について文章を寄せている。ユニークな本。


2003/04/20/Sun.
▲曇り、雨、曇り。
▲ブツ撮りとデジカメデータ整理。
映画『007 ダイ・アナザー・デイ』を新宿シネマミラノで。ピアース・ブロスナンがジェームズ・ボンドを演じるようになって以来、毎回新進監督、実力派監督を抜擢して作品の内容も充実している……と思う。007シリーズにはあまり思い入れもないのでアレだけど。今回もハイテンポで見ている間は楽しい。ただ、アクションシーンにCGが多用され、ほとんど荒唐無稽。艶っぽいシーンも少なく、お子さまランチと化しているのは残念。にしても、ハル・ベリーがすばらしい。ロザムンド・パイクとのキャットファイトが見所か。
▲NHKアーカイヴス『男たちの旅路』第2話「墓場の島」をたまたま見る。根津甚八演じるシンガーソングライターが、自分をスターに仕立てたマネージャーに反発して、突如の引退を決意するが……という内容。シリーズの主人公、特攻隊崩れの吉岡(鶴田浩二)の戦友が、マネージャーだという関係が明らかになり、「戦中派」と「戦後派」の世代間ギャップの話になる。有名なドラマだが、見るのはたぶん初めて。価値観の異なる登場人物たちの葛藤が、ドラマの行方を二転三転させる。今時なかなかお目にかかれなくなったシンプルかつ力強いドラマ。山田太一ドラマの真骨頂ナリ。


2003/04/19/Sat.
/place-m/ ▲晴れ。
▲「鵜の木」下車。終日多摩川沿いを撮影して歩く。風が強く、全身砂まみれに。
▲ギャラリーart&river bankで岡本正史写真展「here, there and everywhere」。9.11にたまたまニューヨークに仕事で滞在していたという岡本さんの作品展。白い内装のギャラリーに二つの机があり、カバーがグレーに統一された本が並んでいる。デジタルカメラで撮影したニューヨークを、インクジェットプリンターで自作したたった一冊だけのオリジナル写真集のほか、既製の装幀をはぎ取った「参考文献」にベタ焼きのネガをしおりのように挟み込んで並べている。デジカメで撮影した写真集は画像の一部をクローズアップし、ドット画像にまで分解された映像になっているのだが、ぼくたちが感じる「リアリティー」のあり方を考えさせられてしまった。ドットに分解されたその映像の中に収斂されていく感じは、どことなくホラー。その怖さは、テレビやインターネットを通じて流通している画像イメージのほうが、もしかすると肉眼で見たものよりもリアリティーを感じるかも知れないという恐ろしさでもある。また、9.11を、個人的な視点による映像だけでなく、参考文献を提示することで、社会的な視野から考えるための材料も提供している。感性と知性、両面から刺激される。好きな作品だ。
▲オープニングパーティーで岡本さんから小林紀晴さんご夫妻をご紹介いただく。小林さんが四谷三丁目にフォトギャラリーをオープンするというお話などを聞く。偶然にもギャラリー・ニエプス(代官山から四谷三丁目に移転し、明日オープン)のすぐ近くだとか。四谷三丁目にはPLACE Mもあるので、ちょっとした写真の街だ。小林さんのギャラリーの名前はDays Photo Gallerry。オープニング展は椎名誠写真展「海を見に行く」。小林さんが思い入れを持っている写真だという。その次に小林さん自身の写真展を予定しているとのこと。この夏、四谷三丁目が熱い(かも)。
▲鈴木布美子さんから、現代アート、写真作品のギャラリーが増えているというお話をうかがう。生活の中にアートを取り入れていこうという発想は、例えば著名デザイナーのインテリアを買うことと同列に考えるべきことなのかもしれない。であれば、ラッセンの絵を大枚はたいて買うよりももっといいものがいくらでもあるはずで、問題は流通ということになる。。とくに写真は複製されることが前提の芸術形態だから、流通させやすいとも言えるし。


2003/04/18/Fri.
▲晴れ。
▲忙しい一日。午前中、ブツ撮り。午後、丹地敏明さんの事務所へ伺い、『645新世紀』のためにお話を聞き、作品をお借りする。
▲カミゾノ☆サトコさんと打ち合わせ。最近、ローライ・コードを買ったというカミゾノさんの写真、正方形フォーマットが性にあっているのか、いい写真が多い。『チーズ・プラザ』次号の連載ページに掲載する写真を選ぶ。
▲映画『非情城市』をビデオで。何度見ても好きな映画。侯孝賢の映画は退屈することも多いのだが、この映画は一瞬たりともダレない。扱っているテーマの重さゆえだろうか。


2003/04/17/Thu.
▲晴れ。
▲昨日届いた借り物のカメラ(ミノルタαSWEET II)に標準ズームレンズってのを付けて持ち歩く。ふだん、とっくに製造中止になったマニュアルフォーカスカメラか、デジカメしか使っていないので、AF一眼レフって新鮮。ママ向けの商品で、価格も低く抑えられてるのに、至れり尽くせりの機能。銀塩フィルムカメラも行く着くところまで行ったんだなあ、としみじみ。
▲ラビットノオトの岡本ノオトさんと打ち合わせ。ただ者ではないと思っていたが、その引き出しの多さと、ネタの面白さに感動。ウクライナ製のプラモデル、ぜひ組み立ててみたいです。
▲ぼくが編集した極上カメラ倶楽部『サンダー平山の大口径レンズ主義者』(双葉社スーパームック・1333円+税)が明日発売されます。写真機家を名乗り、数々のカメラ、レンズを手に作品を撮り続けてきたサンダー平山が、お気に入りの大口径レンズ約50本を選び、ライフワークの「おねえちゃん写真」でその実力を見せます。モノクロページには、ぼくがインタビューと取材をした「サンダー平山 写真機家人生を語る」と「撮影レポート」を収録。見て、読んで面白い本になったと自負しています。表のテーマはもちろん、カメラ、レンズ好き、写真を上手に撮りたいと思う人へのサゼスチョン。レンズのスペック、そのレンズを使うためのボディーのインフォメーションもあります。裏のテーマは「なぜカメラ、レンズに心惹かれるのか(ハマってしまうのか)」「なぜ女の子の写真を撮りたいと思うのか?」「写真家ではなく写真『機』家ってどういう存在、どういう生き方なのか」。まあ、ようするに、ぼくがサンダー平山という人と出会って、関心を覚えたことをできるだけ掘り下げてみようということでした。興味を持たれた方はぜひご購入下さいませ。オンライン書店ではまだ扱っていませんが(来週くらいから扱い始めるはず)、全国書店、カメラ量販店書籍コーナーでは18日から発売(のはず)です。よろしくお願いします。


2003/04/16/Wed.
▲晴れ。
▲手配。
▲キャメルスタジオに第一回目の納品。
▲数日前から読みはじめている足立正生『映画/革命』(河出書房新社)が面白くてたまらない。
▲足立正生は『鎖隠』『銀河系』などの伝説的な自主製作映画を監督、若松孝二たちとピンク映画の異色作(『胎児が密猟する時』『噴出祈願/15才の売春婦』『ゆけゆけ二度目の処女』『新宿マッド』)の脚本を書いたり、監督をしたりする。大島渚とも絞死刑』への出演や予告編の監督、『新宿泥棒日記』の脚本などで共同作業する。映画人だけでなく、アンダーグラウンドカルチャーに関心を示した澁澤龍彦、種村季弘、寺山修司らと交流があり、同時代のアーティストとしてオノ・ヨーコ、赤瀬川原平、写真家の吉岡康弘(本書で、最近亡くなったことを知り驚いた)や中平卓馬とも映画作り・上映を通じて共闘している。
▲60年代、70年代は政治の季節。足立はパレスチナに入れ込み、ゲリラの日常を「ニュース映画として」撮影した『赤軍──PFLP 世界戦争宣言』を作る。劇場から上映を拒否され、上映隊を組んで全国行脚。そして、1974年、『赤軍──PFLP 世界戦争宣言』のパート2,3と続編を製作する心づもりでパレスチナに渡り、以来1997年日本に強制送還されるまで日本赤軍と行動を共にした。
▲本書は、映画研究を専門とする1975年生まれの平沢剛(『アンダーグラウンド・フィルム・アーカイブス』(河出書房新社))が聞き手となって、足立の半生を主に映画とのつながりの中で描き出している。足立正生と言えば、赤軍、アンダーグラウンド、ピンク映画、とものものしいイメージがつきまとっているが、本書を読むと、芸術について、社会について徹底的に考え抜こうとした真面目さと、強烈な個性の人々とお祭り騒ぎをやりぬくバイタリティーが同居した不思議な人という印象だ。また、個人的な関心事として、赤瀬川原平、中平卓馬らについて足立がコメントしている内容が興味深い。
▲例えば、赤瀬川さんは足立たちが仕掛けた自主映画上映の「ハプニング」に参加、客席に向かってカラーボールをひたすらノックしていたり(その上映は「ハプニング」がすぎてちょっとしたパニック状態になったが、その中でも赤瀬川さんは淡々とノックし続けていたらしい)、『赤軍──PFLP 世界戦争宣言』のポスターをデザインしたのも赤瀬川さんで、PFLP(パレスチナ解放人民戦線)の人たちが赤瀬川さんを宣伝相として迎えるプランもあったとか(!)。一般には『老人力』(ちくま文庫)などで「ユニークな発想の作家、画家」くらいに思われている赤瀬川さんだけど、その活動の範囲、交遊の幅は唖然とさせられるほど広い。そのことを改めて実感。怪人です。
▲中平卓馬については、ひたすら悩んでいたという様子が語られているが、中平も、一時期はパレスチナで足立といっしょに映画を作るという気持ちがあったという証言は刺激的だ。半世紀近く日本から日本から離れていた足立は、80年代、90年代の日本を経験していなかったためか、ともすれば「政治の季節」と一括りにされ、伝説とともに歴史の引き出しの底にしまわれてしまいそうな事柄を、昨日のことのように語る。そのアクチュアルな姿勢を「生きた化石」と見るか、分断されてしまった歴史の連続性をつなぐ可能性として見るか。いずれにせよ、刺激的な本であることは間違いない。60年代、70年代カルチャーに興味のある方、日本のアンダーグランドカルチャー、政治闘争の歴史などに関心のある方におすすめ。


2003/04/15/Tue.
▲くもりのち小雨。降ったり止んだり。
▲今日も早起き。昨日に続いて、依頼のメールをしたり、電話をかけたりなど。
▲シュリロトレーディングへ機材の借り出しに。Kさんからハッセルブラッドについてお話をうかがう。火傷しそうに熱いカメラ話。興奮。
エリック写真展『一日と永遠』(ガーディアン・ガーデン)を見に行く。香港出身のエリック(CHUNG WAISUN)は昨年「季刊クラシックカメラ 17号」(双葉社)に登場してもらった若手写真家。第19回ひとつぼ展でグランプリを受賞し、今回はそのご褒美の個展。初めて見せてもらった時から、力強く大胆な表現に惹かれたけれど、今回の個展ではエリックの写真を「浴びる」体験ができた。彼の基本的なスタイルは、6×7フォーマットのカメラ(マミヤ7)に独製の強力ストロボ・メッツを組み合わせて、白昼堂々、ストロボを発光させてスナップ写真を撮るというもの。写真はカラー。超リアリティというか、現実が立ち上がってくるようなパワーを感じる。外は雨だったが、エリックの写真を見て、心の中は快晴といった気分。会場内に置かれていた一冊だけのオリジナルプリント作品集「明天會更好」は故郷香港のスナップ写真集だが、こちらもワクワクしてくるような写真集。写真展は17日(木)まで。銀座ガーディアン・ガーデン。日曜休館0:00P.M.〜7:00P.M.入場無料。
▲西荻で大人の飲み会(男4人)。のらぼう→亜細庵。大人にふさわしく、海外逃亡、プロ野球、お金、カメラなどが話題に。
▲旧知の大嶋浩さんからメールをいただく。ぼくが2003年2月の日記に大嶋さんの個人雑誌「Declinaison」を発見してコーフンした顛末を読んでメールを下さった。嬉しい。「Declinaison」ホームページを教えてもらい、さっそく見に行く。写真についての文章、興味深い。


2003/04/14/Mon.
▲晴れのち小雨。くもり。それほど暖かくはない感じ。
▲早起きして土日の遅れを取り戻すべく奮闘す。ややハイテンション。
▲写真家の吉野信さんと打ち合わせなどなどで午後が過ぎる。
▲現像に出したフィルムが機械の故障でグチャグチャに。ネガを見せられて眩暈。仕事仲間のHさんが、出版社社長のバカさ加減にブチ切れたのか、仕事を降りるとか。バカ話聞きたいな(はーと)。
▲で、会社勤めの時の先輩から突然メールをもらったり。「御茶ノ水で評判の歯医者」を検索していたらこのページを見つけたとか。「?」。
▲森山大道『犬の記憶』(河出文庫)読了。とくに後半が面白い。半生が具体的な言葉で語られているので。もう一度前半を読み返すと前半も面白いんだと思う、たぶん。


2003/04/13/Sun.
▲やや薄曇り、でもだいたい晴れ。暖かい。
▲今日は天気がいいので休みにする。あとのことは明日考えることに。
▲中野ブロードウェイまで散歩がてら歩き「タコシェ」へ。目当ての本はなく、そのほかに欲しいものもあったが、なんとなく我慢してみる。中野金龍門で昼食。いろんな意味で本場さながらの台湾料理店。
▲赤坂写真文化会館でハービー・山口写真展。4Fは「LONDON CALLING」と題し、ハービーさんが青春を過ごした70年代のロンドンをスナップしたモノクロ写真。パンクムーブメントが活況を呈した時代で、先日亡くなった「クラッシュ」のジョー・ストラマーほかのミュージシャンや、パンク時代からキャリアをスタートしたデザイナー、ヴィヴィアン・ウェストウッドのポートレートもある。5Fは「BLITS」というタイトルで、パンクののちに起こった「ニューロマンティック」の隆盛期をカラープリントで見せる。「BLITS」は「ニューロマンティック」のメッカだったクラブの名前。ハービーさんの写真はモノクロが多いが、このシリーズは若者たちの派手な出で立ちをモティーフとしているため、カラーだ。大光量のストロボで彼らの色を写し取っている。日曜日ということもあって、写真展は盛況。ぼくらが訪れる少し前にハービーさんがいたみたいだったけれど、すれ違いでお会いできなかった。写真展「BLITS」は4月13日(日)まで。「LONDON CALLING」は5月25日(日)まで。月曜休館。
▲会場で「オリジナルプリント付き」という新刊の写真集『LONDON Chasing the Dream』(カラーフィールド・インコーポレーテッド)を買う。2000部限定。ハービーさんの最初の写真集『LONDON AFTER THE DREAM』(1985年・流行通信社・絶版)同様、ハービーさんのロンドン時代の写真だが、収録されている写真はあまりダブリがなく、完全なニューエディション。『LONDON AFTER THE DREAM』はどちらかというと有名ミュージシャンの写真を中心に編まれていたが、『LONDON Chasing the Dream』はよりハービーさんの個人的な視点が前面に出ている。見応えのある写真集だ。写真集の購入はまだ書店流通に乗っていないようなので、今のところ写真展会場でのみ、ということのようだが、その後の販売方法についてのインフォメーションはハービー・山口公式ホームページをチェックして下さい。ハービーさんの写真が好きな人、モノクロ写真が好きな人には強力におすすめしておきます。
▲銀座経由で新宿コニカプラザ。米ロ駐日大使による写真展。意外に面白かった。とくに面白かったのは写歴がそれほどないというロシアのパノフ大使。おそらく、AF一眼レフにズームという組み合わせで、公務の合間に撮ったスナップなのだが、日本についてのフォトエッセーとして楽しめる。桜の下で新聞を広げるオヤジの写真に「花より新聞」とキャプションを付けるといった調子でユーモアが感じられる。大使の見た日本=感じ、理解した日本なのだということがよくわかる。写真を撮るということは撮る対象をどういうかたちでか「了解」したことなのだと思う。パノフ大使の写真を撮影する技術はそれほど上手ではないが、構図を作ったり、何を伝えたいかということがはっきりしている点などは、彼の国の絵画教育が影響しているのではないかなどなどと考えさせられた。一方、米ベーカー大使のほうは、実は写真家でもあって写真集を4冊も出しているとか。当然、技術的にも巧い。でも、それは、まあ、お上手という感じでとくに感じるものはない。米ロ大使の写真対決は、個人的にロ大使に軍配を上げたい。
▲辛酸なめ子の最新刊『ほとばしる副作用』(文藝春秋)読了。「サイゾー」に連載したアイドルへの批評など、雑誌に掲載したコラムを集めたもの。これまで読んできた「日記」や「マンガ」に比べると「薄い」感じ。いや、それよりも、コラムとしてのスタイルをキメるべく、型にはまってしまった印象があり、物足りなかった。野放図な「日記」の面白さを買いたい。……といいつつ、MEGUMIの野太い声や小倉優子のホクロについて言及している文章を読むと我が意を得たりと思う。やっぱり好きですね。
▲いま書店に並んでいる「美術手帖」(2003年4月号・美術出版社)の特集は「森山大道 中平卓馬 格闘写真史196×ー200×」。両氏の新旧作品を紹介するとともに、森山大道へのロングインタビュー、清水穣、倉石信乃、八角聡仁らの評論、とくに中平とと60年代から交流がある美術家の李禹煥(リー・ウーファン) 、中平卓馬写真集『来るべき言葉のために』のデザインを手がけた木村恒久へのインタビューも収録している。かなり盛りだくさんの内容。とくに二人の軌跡を一望できる「格闘写真史年表」は有り難い。
▲で、いま読んでいるのは森山大道『犬の記憶』(河出文庫)。80年代に「アサヒカメラ」に連載した自伝的フォト&エッセー。記憶と写真と。文も写真も独得の匂いがあって病みつきになる。ケルアックの『路上』(河出文庫)との出会いから写真集『狩人』が生まれた由。好きな作品同士が関連づけられるのはなぜかうれしい。
▲映画『欲望の翼』(1990年・香港)をビデオで。原題は『阿飛正傳』。ウォン・カーウァイはこの映画以前に香港ノワールの系譜に属する秀作『いますぐ抱きしめたい 旺角[上/下]門』(1998年・香港)ですでに注目されていたが、『阿飛正傳』の伝説的な成功により、世界的に注目される監督となった。ちょうど香港映画がブームになりかけていた時に公開された映画なので、日本公開以前から断片的な情報が入ってきたこともあって、ファンの間で異様な盛り上がり(といっても、のちのカーウァイ・フィーバーには及ばないが)を見せた。リアルタイムで見て、のち、レイトショウやビデオで何度も見ているが、何度見てもすばらしい。今回は張國榮(レスリー・チャン)追悼の意味を込めて久しぶりに見たのだが、ワンカットワンカットに込められた熱気は時を経ても失われていない。ストーリーの陳腐さ、不器用なモンタージュなど、ウォン・カーウァイを「映画の才能皆無」と評する向きもあるが、そういうマイナスポイントが希有の魅力になっているという、まさしくヘタウマ映画。オールスターキャストで青春映画を作るという大胆な試みも含めて、ウォン・カーウァイの野心が香港映画の最良の才能を結集するに足る魅力があったということを改めて感じた。しかし、あの問題のラストシーンを見るにつけ、せめて、トニー・レオンを主人公にパート2を作ってもらわなければ……と思う。レスリー追悼の意を込めて、13年ぶりに続編を作って欲しいと願わずにはいられない。幸か不幸か、続編にレスリーが登場する必然性はないわけだし……。


2003/04/12/Sat.
▲曇りのち雨。
▲朝、起きられない。天気も悪いので、今日は休日ということに。
▲ややダウナーな気分で日記更新。アイスカフェオレとロールケーキ。
▲散髪。新宿へ出てTSUTAYAでビデオを借りる。新大久保花水木で寿司。
▲映画『恋人たちの食卓』(1994年・台湾)をビデオで。好きな映画で、見るのは3度目くらいか。邦題はちょっと恥ずかしい。原題は『飲食男女』。人生は「飲むこと、食べること、男と女」だ、というセリフが作中に出てくる。台北の一流ホテル(円山飯店)内の中華料理店で総料理長を務めるラン・シャン(『不夜城』ほか)は十数年前に妻を失って以来、三人の娘と暮らしている。一家のルールは、日曜の夕食は家族全員で食べること。成人した娘たちはこのルールにいささかうんざりしている。長女は大学時代の失恋ショックでハイミスになりかけている高校教師、次女は父のような料理人になりたかったが反対されて航空会社のエリート社員に、三女はファーストフードでバイトしているフリーターだ。いわば典型的なホームドラマ。台湾風味の味付けはあるが、国際市場を意識したアン・リーの作品ゆえにいい意味での普遍性がある。三人の娘を演じたヤン・クイメイ、ン・シンリン、ワン・ユーウェンはいずれも当時の人気女優。台湾のテレビドラマを見ていたら、ヤン・クイメイが出ていて懐かしかった。ン・シンリンは台湾DHCのCMキャラクターになっていた。監督は米インディペンデント映画界出身で、ハリウッドでメガホンもとる台湾出身の映画監督アン・リー。主な作品は『ウェディング・バンケット』『いつか晴れた日に』『アイスストーム』『グリーン・ディスティニー』ほか。
▲ETVスペシャル『美輪明宏・一番美しいもの』(NHK 午後10時〜11時30分)を途中から途中まで。前にも偶然、「ヨイトマケの唄」誕生エピソードを語る番組を見たことがあるのだが、こちらは舞台『黒蜥蜴』の制作過程と、自身の生い立ち、三島由紀夫との交流、『黒蜥蜴』のテーマの一つである「無償の愛」などについてのインタビューで構成されている。美輪明宏ってかっこいいなあ、と昔から思っていたが、この番組でも、いちいち発言に説得力がある。前から気になっていた自叙伝『紫の履歴書』(水書坊)が欲しいと思いbk1で『光をあなたに』(メディアファクトリー)ともども注文。『光をあなたに』は二十代の頃に人から借りて読み、大感動した人生相談本(笑)。懐かしい。
▲林文浩『外道伝』(リトル・モア)読了。ファッション誌「DUNE」の編集長を務める著者がマルチクリエーター、ゲーマー、彫り師、戦場カメラマン、万引き王などなど、肩書きもその中味も一般社会から逸脱している人々(著者の周りにいる人たち)について書いた人物ルポ。最近、自分が気が狂ってるのか、相手(とか社会常識とか社会システムとか)が気が狂ってるのかと唖然とさせられることが多いのだが、翻ってみれば、そもそもルールは自分で考えて決めて守っていくもの。で、この本に登場する人たちの異様なまでのポジティブ・パワーも、「俺が掟だ」という確信から発しているものに違いない。すべての「外道」たちに栄光あれ。
▲今週読み終えていて日記に書き忘れていた本。柳家小三治『ま・く・ら』(講談社文庫)。写真家の高梨豊さんは落語が好きで『ライカな眼』(毎日コミュニケーションズ)を作るときに、対談相手に南伸坊さんが挙がった時には、落語の話が出きることを楽しみにしていた。対談原稿を作る際にも「落語の話はカットしないように」というお達しがあったくらいだ。『ま・く・ら』は南伸坊さんが装幀を担当した本で、その対談で話題にのぼった。今さらながら読んでみたのだが、とても面白かった。
▲落語を始める前の「まくら」ばかりを集めたものだが、口語的エッセー集というか、言葉とその言葉が話されている現場の雰囲気が見事に伝わってくる。内容は、落語についてというよりも、塩のことだったり、オーディオのことだったり、蜂蜜のことだったり、自宅駐車場に住み着いたホームレスのことだったりと何でもあり。予備知識なしに楽しめる。小三治の語り口もすばらしいが、文章に起こした人の工夫もなまなかなものではなかったと思う。本書は好評につき、『もひとつま・く・ら』(講談社文庫)も刊行された。


2003/04/11/Fri.
▲晴れときどき小雨。
▲二日酔い。まったく仕事にならない。数年ぶりにプロ野球中継を最初から最後まで見る。「巨人対阪神」。阪神の楽勝かと思いきや。巨人の9回裏の驚異的な粘りで延長へ。結局引き分け。すげえな。
▲bk1で買った新創刊の文芸誌「en-taxi【エンタクシー】」(扶桑社)、「小説」以外を一通り読んでみた。
▲柳美里、福田和也、坪内祐三、リリー・フランキーの4人が責任編集を務める雑誌として期待していた。この4人の書くもの、それぞれ面白いと思ったことがあるからだ。みずてんで注文して見たのだが、読んでみた感想は、「なんで雑誌を作ろうと思ったのかわからない」ということ。4人とも活字メディアで売れっ子だし、それぞれの現場でいい仕事もしている。自前のメディアを持ってまで書きたいこと、やりたいことがあるのかと思って注目していたのだが、それがあまり感じられなかった。だいたい、巻頭から、この4人が順列組み合わせ的に対談(しかも、ごく軽い)するというノリがちょっと……。いい書き手であるということと、こういう場で映えるスター性とはまた別なんだということがよくわかって、サムい。
▲面白かったのは、小林信彦と野坂昭如の対談(司会:坪内祐三)。あと、石原慎太郎をゲストに呼んで伊藤整の『発掘』『氾濫』『変容』などについて、福田和也と元「新潮」編集長の坂本忠雄が聞いている記事。いまどき伊藤整なんて、どこも取り上げないと思うから。ほかの記事はあまりピンと来なかった。
▲がっかりだったけれど、それよりも後味が悪いことが個人的にあった。坪内祐三が巻末カラーで連載している記事だ。安原顯さんへの批判を書いているのだが、この内容がなんというか、マイナスオーラが出ていて気色悪い。
▲坪内祐三さんが「文藝」だったかで、安原批判をした当時、ぼくは安原さんのbk1日記を担当していて、安原さんの「反論」を日記に載せた。坪内さんが安原さんを批判するのは自由だし、当たっている部分もあったと思う。でも、坪内さんはインターネットに接続していないらしく、bk1での書評掲載のシステム、安原さんとbk1との関係について、事実誤認があり、その誤認に基づいた憶測で安原さんを批判するという奇妙な文章でもあった。率直に言うと、坪内さんの被害妄想じゃないかなあ、と思える部分もあったのだ。
▲今度の「en-taxi」でも、「私は人の死をもってその人を赦すことはしない」と威勢がいいけれど、安原さんの坪内さんに対する批判を「嫉妬」だと推測して、バッサリと切り捨てている。まあ、そういう側面もまったくなかったわけではないだんろうけど、坪内さんのほうがずいぶん年下で、しかも売れっ子の書き手だ。安原さんが坪内さんに張り合うような部分はなかったと思うんだけど。
▲もっとも、「en-taxi」の記事でもっとも強烈なのは、安原さんが生前に作家の生原稿を古本市場に流したということ。これが事実かどうかはぼくにはわからない。まあ、そういうことがあってもおかしくないキャラクターだったとは思うけど、証言なしでは判断しがたい。もちろん、事実であれば安原さんに非がある。
▲しかしぼくがもっと気になったのは、記事では、その事実を最後に書くことで原稿のまとめとしている。安原さんの醜聞を最後に書いてその人を断ずるという意地の悪さに気分が悪くなってしまった。その恨みパワーの凄さに。
▲そして、「直筆原稿」が古書市場に流れたことを批判しているということに、安原さんが坪内さんについて批判していたこと「著者は、本の「内容」にはさほど関心がなく、「物」としての本、「古書店」を巡る雰囲気が好きなのだ。ぼくに言わせれば「真の本好き」とは到底言い難い。」(bk1掲載の坪内祐三著『古くさいぞ私は』への安原さんの書評)と見事に合致することが皮肉だなと思った。
▲で、個人的に不愉快だったのは、「en-taxi」のこの記事に使われている安原さんのポートレートがぼくが撮影した写真だったことだ。使うのはかまわないけど、無断で掲載するのってどうなんだ? クレジットは入っているから、もしかしたらbk1に断りが入っていたのかも知れないけど。偉そうなことを言っている記事なのに、そういうところに気が回っていない感じがなんだかなーと思うのだ。ま、ちっぽけなことだけどさ(笑)。


2003/04/10/Thu.
▲晴れ。
▲池袋ジュンク堂、リブロを転々。買いたい本がたくさんあって、どう考えても荷物になる。こういうとき、オンライン書店は便利だなと思うけど、どうしてもすぐに読みたい本を何冊か買う。
▲JCIIフォトサロンで調べモノ。「アサヒカメラ」の米倉さんとばったり会う。サジェスチョンをいただく。感謝。司書の女性の機転に助けられた。井口さんにも久しぶりに挨拶を。
▲カミゾノ☆サトコさんと「チーズプラザ」次号の打ち合わせ。興が乗ったので、ミミタを呼び出し、三人で歌舞伎町。中華料理と紹興酒。
▲昼間、回転寿司屋でぬいぐるみを抱いて寿司をほおばるおじさんを見た。駐車場の軒下で、背広を着た男が「アメリカでテレパシーがアタマに入ってきた人がいる」とケイタイで話している。夜、新宿コマ劇場前で「○○ちゃん、愛してる!!!」とケイタイで叫んでいる男を目撃。春だ。


2003/04/09/Wed.
▲晴れ。
▲バクダット陥落のニュース。お約束のVサインの民衆。しかし、テレビカメラのフレームの外ではどうなの? という疑惑はぬぐえない。北部ではあいかわらず戦闘が続く。
▲極上カメラ倶楽部Vol.3『645新世紀(仮)』(6×4.5フォーマットカメラの本・双葉社・6月発売予定)の台割を手直し。気分的に乗れなかった理由がわかり、手を加えてみる。明日から本格始動。
▲松本清張『水の肌』(新潮文庫)を週末に読んだ。立ち寄った本屋にロクな本がなかったので、新刊よりは清張のほうがいいだろうと。短篇集。収録作品は「指」「水の肌」「留守宅の事件」「小説3億円事件『米国保険会社内調査報告書』」「凝視」。いずれもミステリー。あっさりした味わいの短篇で、意外と古びていない。ガチャガチャとした風俗描写がないからだろう。印象的だったのは「指」。「陳腐」な「偶然」を逆手にとって、犯罪者の心理の道程を鮮やかに描いている。「小説3億円事件『米国保険会社内調査報告書』」は米国保険会社に雇われた米国人探偵の報告書という体裁をとって、清張一流の推理を展開する。一橋文哉『三億円事件』(新潮文庫)と比較したくなる。


2003/04/08/Tue.
▲晴れのち雨、のち曇り。
▲通常業務に復帰。不在中のあれこれの処理、写真の整理など。
當麻妙のホームページが更新されている。5月に新宿ニコンサロンで開かれる写真展「Tamagawa」の作品の一部が見られる。独得な空間把握のセンスが秀逸ナリ。


2003/04/07/Mon.
▲晴れ。
▲帰国。


2003/04/6/Sun.
▲晴れ。
▲坪林に行ってみることに。MRTで新店へ。バスがあるはずだが、本数が少なく、なかなか来ない。しびれを切らして、タクシーで。これが思ったより遠かった。小一時間、山道の急カーブを揺られる。久々に車酔いしそうに。
▲坪林へ、と思いついたのは茶藝博物館に行ってみたかったからだが、あいにく、翌週からの博覧会を前にお色直しの最中だった。仕方なく、街(といっても、ごく小さなもの)で茶料理を軽く。帰りはバスで新店まで。
▲新店駅の近くに川が流れている。吊り橋とボート、川沿いの茶藝館やレストランでにぎわっていた。ビールを飲みながら、川遊びをする人たちを眺める。今日は日曜日だ。
▲台北大学近くの駅でMRTを降り、韮饅頭を頬張ったり。
▲西門町をさまよう。


2003/04/05/Sat.
▲曇り。
▲市内観光付きのツアー。初体験。急遽行き先を台北に変えたので、フリーツアーを選ぶ余裕がなかったからだ。
▲しかし、バスで移動し、ガイドがつくので快適であることは間違いない。小銭も必要ない。モノを考える必要もない。至極便利であることは確かだ。何より効率的である。ただし、寄り道、回り道ができないという点で、今日一日、朝から夕まででお腹一杯である。
▲孔子廟、故宮博物館、茶藝館、足裏マッサージ。その合間合間に免税店が入るという趣向。茶藝館では「凍頂烏龍茶はSARSにも効く!」とセールス(笑)。
▲仕森夜市。すごい人出。ゲーセン。屋台。その他もろもろ。


2003/04/04/Fri.
▲曇り。
▲早朝。成田から台北へ。中正国際空港。台湾は1995年9月以来。8年ぶりだ。今回は台北のみ。SARS騒動で香港旅行の予定を急遽変更。成田でも一応、職員はマスクを付けていたが、中正国際空港では一般客もマスク姿が目立つ。
▲ツアー参加なので、バスで免税店へ。興味がないので、集合時間まで近所の路地裏を歩く。野生の花が咲き乱れているかのような勢いで、壁にはみ出しているマンションのヴェランダの花々。南国気分。
▲富都大飯店に宿泊。雨が降り始める。台北大車帖の裏の「自助餐」で軽く昼食。鉄板餃子がおいしい。チャイニーズ・ファーストフードショップである。このあたりには予備校が多く、学生向けの安食堂が多い。「自助餐」そのものは8年前からあったが、あかぬけた店が増えた印象。雨の中、西門町へ。日本ブームとは聴いていたが、ここまでとは。映画館に張國榮(レスリー・チャン)追悼上映の告知が。龍門寺まで歩く。
▲台北の印象は8年前と変わらない。変わったのはMRT(地下鉄)が開通したくらいか。新しい高層ビルも建たず、古い建築物はそのまま。スラム化が進んでいるのでは? と思われる路地裏もある。
▲夕食は中山道の鶏子荘で。満足なり。


2003/04/03/Thu.
▲晴れ。
▲今日は忙しかった。
▲早起きして『サンダー平山の大口径レンズ主義!』色校戻し用に画像データ修正。一段落して、先日の「浮世満理子さん×伊藤一尋さん」対談の原稿の下ごしらえをする。午前中、写真家の吉野信さんと打ち合わせ。今日からハービー・山口さんの写真展が赤坂の「写真文化館」でスタートと聞き、オープニング行きたいけど、そんな時間はないと諦める。吉野さんに自作のデジタルプリントを見せてもらう。あとCD-ROM作品『アフリカ』(アスキー)をいただいてしまい、恐縮。
▲色校戻し作業中にデジカメで撮影した作品1枚に支障があることが判明し、あわててサンダーさんに差し替えデータの用意をお願いする。
▲新興住宅地の不気味な風景。のち、サンダーさん宅にうかがおうと思いきや、九段下に用事があるのをすっかり忘れていて(汗)、予定変更。茗荷谷→九段下→藤沢。サンダーさんからデータを引き取り、茗荷谷に戻り、入稿準備。それから「浮世満理子さん×伊藤一尋さん」対談の原稿を最後まで書いてメール送信。
▲明日から月曜の晩まで不在です。すみません>関係者各位。


2003/04/02/Wed.
▲晴れ。
▲お金の話でもめる……というほどではないな。単に不愉快なだけ。しかも、直接話した相手の人も犠牲者だったりするし。お金のことそのものよりも、お金に対する先方の態度にムカつく。品格の問題。
▲極上カメラ倶楽部Vol.2『サンダー平山の大口径レンズ主義!』(双葉社スーパームック・4月18日発売予定)の色校が出る。今回は銀塩フィルムで撮影した通常の写真のほかにデジタルカメラで撮影した作品も収録している。サンダーさんの関心はすでにデジタルへと完全に移行した感じなのだが、あらためて印刷物として見ると、銀塩の圧倒的なクォリティーの高さばかりが感じられる。ぼく個人としては、デジタルものへの気持ちがやや萎え……。しかし、ちょっと前よりも確実に印刷対応はよくなっているし、デジカメ撮影の画像も格段の進歩。スーパーリアリズム調というか、妙なリアル感のある写真もあり、表現の可能性という意味ではやはり今からお勉強しておかねばなるまいと思わせられる。
▲サンダーさんの家まで色校を届け、その場でいっしょにチェックし、持ち帰る。
▲大塚英志『キャラクター小説の作り方』(講談社現代新書)読了。面白い。キャラクター小説とは、角川スニーカー文庫に代表されるジュニア向け小説のこと。アニメやマンガがカバーになっているアレです。本書は自身も『多重人格探偵サイコ』シリーズをそこから出している著者が、キャラクター小説をどう書くか実践的に教えるもの……なのだが、文芸評論もものする著者ゆえ、キャラクター小説から日本文学の本流を撃つかと思えば、『木更津キャッツアイ』論(秀逸)へと話題が転び、最後は、「このテロ、戦争時代に」という社会状況までを引っ張り込むというぶっちゃけた作り。いや、もちろん、深いたくらみの上なんでしょうが。こういう作りの本は好きだ。著者の旺盛な活動が反映された一冊。


2003/04/01/Tue.
▲晴れ。
▲聖母病院。午後からコツコツと仕事。
▲週末に香港への小旅行を予定していたが、肺炎の流行がおさまらないので台北に行き先を変更する。
▲吉祥寺でイラストレーターの近藤恵子さんと次号の「チーズプラザ」の打ち合わせ。
▲ミミタから電話。何事かと思う。張國榮(レスリー・チャン)が亡くなったという。ホテルから転落死。自殺。46歳だった。
▲香港映画にトチ狂っていたことがある。1994年から98年くらいまでか。その頃の象徴とも言えるスターの一人が張國榮だった。『男たちの挽歌』シリーズ、『チャイニーズ・ゴーストストーリー』では青臭さが鼻についたが、『欲望の翼』を見たときに、張國榮という俳優への評価が決定的になった。この人は映画スターである。しかも、天才的な。その後、公開作、未公開作を見た。『家有 [喜喜] 事』などのお正月映画でのコミカルな演技も忘れられない。『君さえいれば 金枝玉葉』、『金玉満堂』のような「受け」のポジションでの好演も見事だった。「オペラ座の怪人」を張國榮流に演じた『夜半歌聲』も(甘ったるいが)好きな映画である。『色情男女』あたりまでがぼくにとっての張國榮映画との蜜月で、その後は常磐貴子と共演した『もういちど逢いたくて  星月童話』にがっくりきたのが最後になった。
▲張國榮の代表作といえば、一般には『さらば、わが愛 覇王別姫』ということになるだろう。映画としても、俳優としてのピークを示した作品としても見事なものだった。しかし、その後の張國榮がピークを過ぎてしまったというよりも、97年の香港返還を境に、魔法が解けたように香港映画のパワーが落ちてしまったのだ。張國榮の主演作にお目にかかれなくなったのは、彼自身の問題以上に、香港映画そのものの問題が大きかったのではないかと推察する。香港映画の衰退を、張國榮の死によって思い知らされることになろうとは。合掌。


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