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2003/02/28/Fri.
▲晴れ。
ハービー・山口さん宅へうかがい、「チーズプラザ」のテーマ部門投稿(今号は「ホームタウン」)の投稿写真を選んでもらい、選評をうかがう。
▲「チーズプラザ」の原稿をひたすら。
▲今日でオンライン書店bk1の「ブックサイト ヤスケン」がクローズ。最後の挨拶を簡単に書いてアップ。2000年のbk1開店の時から安原顯さんと<文芸サイト>をやって、その後、ヤスケンのセレクトショップとして「ブックサイト ヤスケン」をオープンした。ほんの2年ちょっとの間だったけど、いろいろなことがあったなあ、と感傷に浸りたいところだが、そんな余裕もなく。お客様ならびにご協力下さったみなさん、本当にありがとうございました。
▲ヤスケンサイトは終了したが、ぼくが関わっているもう一つのbk1のセレクトショップ「怪奇幻想ブックストア」(東雅夫責任編集)があるので、bk1での仕事もしばらくは続きそう。引き続き、よろしくお願いします。
▲ちなみに、
「ブックサイト ヤスケン」は3月8日(土)までは参照可能です。


2003/02/27/Thu.
▲晴れ。
▲仕事の進行が各方面で遅れていて、焦りと不安。
▲山村基毅『戦争拒否−11人の日本人』(晶文社)読了。Aさんからいただいた本。てっきり新刊だと思って読んでいたら、87年初版。95年で7刷だった。しかし、今読んでもまったく古びていない。それどころか、イラク問題、北朝鮮問題を抱え、右傾化も進んでいる今の日本ではより切実に感じられるかも知れない。
▲タイトル通り、徴兵忌避者を取材したノンフィクションである。国が戦争に突入した時に戦争に行かないという選択はあり得るのか。そして、そのことは当人にとってどんな意味を持つのか。共同体意識が発達した日本で、同世代の若者が銃を取って死地に向かう時に、「戦争へは行かない」という意志を貫くというのは、共同体からのドロップアウトを意味する。著者は組織的に徴兵を忌避した人(共産党とか)たちではなく、あくまで個人として戦争へ行くことを拒絶した人々を対象にインタビューをしている。
▲いったい、ちっぽけな個人が、国家の戦争を拒否できるものなのか。そして、拒否し通したことは当人にとって「勝利」だったのか。戦争体験者が数少なくなった日本で、非戦はどんどん観念的なものになりつつある。戦争が始まったらはたして「逃げる」ことができるのか。戦後世代の眼から捉え直した戦争の現実が飾らない文章で描かれていて、面白かった。ロングセラーになっているのもうなずける。


2003/02/26/Wed.
▲晴れ。
▲写真家の奈良原一高さん宅へうかがい、インタビュー。月刊誌「清流」のためのもの。お話は昨年末に刊行された最新写真集『天 HEAVEN』(クレオ)や、先日パリのヨーロッパ写真館で開かれた奈良原さんの個展(初期作品から現在まで、モノクロ作品で構成)について。また、すでに銀塩から離れ、もっぱらデジタル・イメージングによる作品制作に移行しているという奈良原さんのデジタル化についても聞いた。そして、自身のこれまでを振り返って、転校の多かった少年時代がその後の人生に大きな影響を与えたことなども。お忙しい中、2時間近くお話しいただいて感激。
▲奈良原さんのポートレート撮影は中里和人さん。名刺をいただいて、『小屋の肖像』(メディア・ファクトリー)、『キリコの街』(ワイズ出版)の写真家だと気付く。あまりお話しする時間はなかったが、進行中の仕事でお願いしたいこともあり、今度あらためてお会いすることに。つい先日、ある人から中里さんの名前が出て、気になっていただけにその偶然に驚く。
▲『小屋の肖像』は全国のうち捨てられた「小屋」の写真が延々と続くというもの。廃墟ブームとも一脈通じるモティーフだが、少し違うのは、廃墟以上に小屋がささやかで、見過ごされていることだ。風景の一部として、その存在も忘れられがちな小屋だが、写真を撮ることで、その存在が際だってくる。目立たなかったクラスメイトの横顔を見直す気持ち。つづく『キリコの街』では、全国津津浦々の街の風景を捉えているのだが、風俗的なものが排除されて、中空に浮いたような浮遊感がある。古びたものを撮っても、レトロな感じではなく、むしろエキゾチック。ワイズ出版の写真叢書シリーズ(あまり好きではない)の中では一番好きかも知れない。
▲サラリーマン時代の同僚M、蠍子供会のMと渋谷。入った店のオーナーが、偶然、リーマン時代にお世話になった印刷会社の営業マンで、びっくり。向こうが俺たちのことを覚えてくれて、こっちも思い出した。同僚だったMとは年に1度くらいしか会わないのに、こういう偶然が重なるってのも面白い。ASIAN BAR bagusがその店。


2003/02/25/Tue.
▲晴れ。
▲北朝鮮が日本海へミサイル発射。ただし、飛距離は60キロ。逆ギレしておもちゃを投げた子供というか。フジの「とくダネ!」で電話インタビューに答えていた軍事評論家の神浦元彰は「大したことないっすよ〜」とノリノリ。どこかで聞いた名前だなと思っていたら、屋田くんが編集した『北朝鮮消滅』(イーストプレス)の著者じゃん。こういうノリの人なのかと妙に納得。
▲仕事、進行スケジュール的にいよいよ追いつめられてきた感じ。
▲カミゾノ☆サトコ女史と打ち合わせ。「チーズプラザ」の「ペットの撮り方」特集で「家猫取材」をやってもらったので、上がってきた写真のセレクト。思ったより上手く撮れていて(失礼)、充実した記事になりそう。ほかに同誌の彼女の連載フォトエッセイ「写真中毒患者」用に結婚式の写真を選ぶ。原稿の内容が「スナップ天国、それは結婚式」という内容のため。カミゾノさんは「季刊クラシックカメラ」でも連載をお願いしていた才女。
▲テープ起こしと資料集めと写真のチェックなどなど。
▲極上カメラ倶楽部『ライカでヌード』(双葉社)の色校。ヌードがテーマなので、女性の肌がきれいに再現されていないとダメ。ところが、あがってきたのは首を捻るような仕上がりで要再校。なんじゃこりゃ、という出来。うーむ。


2003/02/24/Mon.
▲雨。
▲辻堂。ペットショップ&犬の美容院シェルキーで犬のトリミングについての取材。まったく未知の世界だったので何を聞いても楽しく、実地を見せていただきつつ、あっと言う間に時間が経つ。
▲ペット写真家。SHI-BO(飯田忍)さんに「犬の撮り方」についてのインタビュー。SHI-BOさんは飯田忍名義で『ペットをカワイく撮る本』(山海堂)という本の写真・監修を勤めてもいる。また、もともとはフリーライターで『幸せになれる「ネットで結婚」5つの理由』(新潮社ラッコブックス)という、いとう忍名義の著書もあり、デジタルコミュニケーションアドバイザーの肩書きも持つ多才の人。
▲桜井秀勲『イロハからわかる編集者入門』(編書房)読了。「女性自身」「微笑」などの女性誌で編集長を務め、部数を飛躍的に拡大させた元編集者による入門書。タイトルが古くさいこと(イロハって言われても……)、装幀のセンスがイマイチなこと(とくにタイトルデザイン)、言葉の端々に脂ぎったオヤジの感性が炸裂しているところ(オレ的にはオッケーだが)などなど、本書が対象としている若き編集者志望者にはあまりウケそうにないな……と、やや暗い気持ちで読みすすめていたのだが、中盤あたりから、編集者として必要な資質、編集者をめざすなら学ぶべきことなどが具体的に書き連ねられ、「端くれ」のオレも自分のことを鑑みて、大いに刺激になった。編集者、記者の「文章十則」など、肝に銘じておきたいと思った。編集者の仕事に興味のある人や、すでに編集の仕事をしている人、業界話の好きな人、それから、オヤジの自慢話が好きな人(自慢話は生で聞くとうんざりすることもあるが、本で読むと面白い)におすすめしたい。版元の編書房は、HPを読んでいると、思わず応援したくなる小出版社。がんばってほしいです。
▲オンライン書店bk1<怪奇幻想ブックストア>に記事「多田智満子追悼特集」をアップ。東雅夫さんの口上、石堂藍さんの心のこもった追悼文と作品解説。読み応え十分です。ぜひどうぞ。


2003/02/23/Sun.
▲終日、サンダー平山さん宅でポジフイルムの山と格闘。写真と思い出話と。


2003/02/22/Sat.
▲曇り。
▲京成立石、猫のいるお宅へ取材に。商店街の総菜屋の充実ぶりに感動。蛸、帆立の串焼きをおみやげにする。
▲デジカメ研究と投稿写真鑑賞。映画『T2』をテレビでチラチラと見ながら。冷静になって見ると、ジェームズ・キャメロンて下手な監督なのかもと今さら思う。腕力があるのは凄いけど。


2003/02/21/Fri.
▲晴れ。
▲銀座ミキモトホールに、個展「マルタ島の猫たち」を開催中の写真家、新美敬子さんを訪ね、インタビュー。新美さんは猫写真集、犬写真集を多数出している方で、個展ともリンクした写真集『マルタ 幸せな猫の島』(河出書房新社)を上梓したばかり。『猫がよろこぶ写真の撮り方』(河出書房新社)という写真満載の「撮り方」の本も出している。女性誌の犬猫特集、カメラ雑誌でもおなじみ。今日もお題は「猫の撮り方」。旅で出会った猫とも親しくなり、一度ならず訪れる土地の猫と友だちになるという新美さん。写真にもその場の和やかな雰囲気が写っている。写真展は2月25日(火)まで。入場無料。
▲一橋文哉『「赤報隊」の正体』(新潮社)読了。朝日新聞阪神支局襲撃事件の通説を覆す、大胆な推理に基づいて、事件の裏にあるえせ同和問題などの背景を指摘、犯人とおぼしき人物への取材にまでたどりつく……という仰天内容だが、どうも全体に荒っぽいというか、大味というか。『闇に消えた怪人 グリコ・森永事件の真相』(新潮文庫)『三億円事件』(新潮文庫)のような、粘っこさ、緻密さに欠け、読み応えがいま一つ。
『写真とことば』(集英社新書)読了。戦前から現代まで、日本の写真家25人が残した文章をピックアップし、写真評論家の飯沢耕太郎が解説を加えた新書。写真家たちはどんな言葉で写真を語ってきたのか? そういう好奇心に応えた本である。コンパクトに歴史的写真家の横顔を知る上でも便利。


2003/02/20/Thu.
▲雨のち曇り。
▲茗荷谷、丸の内経由藤沢行き。サンダー平山さんのご自宅へうかがい、ポジの整理。
▲鶯谷お仙。おでん美味なり。


2003/02/19/Wed.
▲曇りのち雨。
▲写真家の三輪薫さんと打ち合わせ。三輪写真論、熱い。
▲蠍子供会。大久保一丁目マニト→屋台村。途中からゲストも参加。
▲オンライン書店bk1<怪奇幻想ブックストア>に、東雅夫さんの店長週報「幻妖週報」をアップ。


2003/02/18/Tue.
▲曇りのち雨。
▲『ライカでNUDE』ゲラチェック、「チーズ・プラザ」取材依頼、リサーチなどの雑務ほか。
▲AEAKI『TOKYO LUCKY HOLE』(Taschen)。荒木経惟『東京ラッキーホール』(太田出版・絶版)の海外版は、辞書のような厚さ。80年代初頭の新宿歌舞伎町、渋谷道玄坂界隈の風俗店をルポした写真集。風俗の世界にシロウトが大量流入し、サービスの内容もノーパン喫茶、のぞき部屋など多様化していった時代だ。その後、風営法の改正とともに、沈静化、定着化し、カジュアル風俗路線は日常になった感がある。そうした生の多様化の創世記を撮った写真集である。
▲この写真集には、いかがわしさの中に旺盛なパワーがみなぎっており、あっけらかんとした明るさが感じられる。海外バージョンということもあってどこか知らない街の世界のことにようにも感じられるが、よく見ると、歌舞伎町も道玄坂も、今とたいして変わっていないという印象もある。ネオンサインの中味は変わっても、風俗店特有のいかがわしさは変わらない。そのことに妙に安心したりもして。
▲吉祥寺ハモニカキッチンでイラストレーターの近藤恵子さん、デザイナー柴田と打ち合わせ。ハモニカの社長さんと久しぶりにお会いできた。数年前までは三鷹台に住んでいたので、この店にもよく来ていたのだ。
▲韓国大邱で地下鉄火事。死者100人以上か。大惨事なり。大邱には一度だけ、わずか数時間滞在したことがある。合掌。


2003/02/17/Mon.
▲晴れ。
▲FM東京でPCM放送(チューナーが必要な放送)の録音に参加。安原顯さんの番組「ギンギン・ニュー・ディスク」(毎週金曜日20:00〜24:00 <翌週再放送>)枠で追悼番組を作るということで。村井康司さんの司会で、寺島靖国さん、杉田宏樹さん、前園俊彦(オルトフォン社長)さん、田中モトヒロさん(音楽之友社)という錚々たる方々と。町田康さんからファックスが届いたり、久世光彦さん、田中康夫さん、見城徹さん、中山康樹さんらからの追悼メッセージが紹介されたりと、あっと言う間の2時間。本放送では安原さんのトーク「傑作選」や、番組ディレクターやリスナー代表の参加によるトークなども用意されるとか。放送は2月21日(金)、28日(金)の20:00〜24:00。PCMチューナーを持っている方はぜひ。かなり面白いと思いますよ!
▲貫井徳郎『プリズム』(創元推理文庫)読了。デビュー作の『慟哭』(創元推理文庫)が昨年夏あたりから火がついて売れているという著者の旧作が文庫化された。睡眠薬入りのチョコレートを食べた若い女性教師が何者かに撲殺された。教え子の小学生からはじまり、語り手を変えながら、多角的な推理が展開する。アントニー・バークリーの名作『毒入りチョコレート事件』(創元推理文庫)へのオマージュを捧げつつ、ミステリーの方法論にこだわった長篇小説。読んでいる間は実に楽しかった。だけど、読み終わってちょっと虚しい。釈然としない気分が残った。
▲写真家のHARUKIさんと久しぶりに痛飲。初めて本格的なカメラ(ニコンF2だった)を貸してくれ、カメラや写真について蒙を啓いてくれた恩人(だってことを今日まで忘れてた。ゴメン)。『ライカな眼』(高梨豊著・毎日コミュニケーションズ)を進呈する。
▲そういえば。『ライカな眼』の書評が「週刊朝日」(2/21号 2003/02/10掲載)に載った。評者は飯沢耕太郎さん。


2003/02/16/Sun.
▲雨、ちょっとだけ雪。
▲天気が悪いので予定していた撮影を中止。散髪。ヨドバシカメラ。宛名ラベルプリントアウトなどなど。


2003/02/15/Sat.
▲曇り。
▲上野で写真家の吉野信さんと「チーズプラザ」の連載、双葉社の「極上カメラ倶楽部」シリーズについての打ち合わせ。
▲亡くなった安原顯さん宅で遺族の方々と会葬者名簿作り。お通夜・お葬式では、氏名・郵便番号・住所は読みやすい字で書かねば……と名簿を作る身になってみて痛感(笑)。芳名帳の住所が略されていると、最後は香典袋を一枚一枚確かめなくてはならない。最後の一人が判明したときには達成感あったけど。
▲BGMはPCM放送。寺島靖国さんの番組。
▲今月の「噂の真相」口絵ページに安原顯さんの葬儀の模様が書かれているのだが、喪主挨拶で「(故人を)絞め殺したいと思ったいた人もいると思いますが」と喪主が述べたとあるのだが、実際の内容は「『こんちきしょう、ぶっ殺してやりたい』と思った方もおありでしょうが」(こちら参照)。殺し方まで勝手に指定しているのが面白い。
▲北浦和。母に近況報告。帰宅後、倒れるように寝てしまった。


2003/02/14/Fri.
▲晴れ。
▲西鎌倉で写真家のサンダー平山さんと打ち合わせ。双葉社のムック、「極上カメラ倶楽部」シリーズの企画内容の詰め。銀塩カメラが中心の企画なのだが、打ち合わせをしているといつの間にかデジカメの話題に流れていってしまう。銀塩時代の終わりをひしひしと感じる。
▲スタパ斎藤『間違いだらけのデジカメ選び』(ソシム)読了。デジタル系物欲ライターによる、自腹購入経験的デジカメレビュー。カシオQV10の昔から、最新機種のオリンパスC-5050ズームまで全52機種。前半の最新機種レビューは楽しく読めたが、現在の視点で過去のデジカメを語ることの空しさには驚かされた。
▲著者は52機種以上のデジカメを使い倒してきたわけだが、その撮影した写真はほとんど登場しない。一体、何のためのデジカメなのか? という部分が見事に端折られている(取材メモ、釣りのスナップショット、花の写真などなどを撮ったという記述はあるが)。
▲しかし、そもそもデジカメってかなり無目的、無意識に世界を「スキャン」しているのではないか、ポータブルコピー機みたいなものではないかと思っているぼくには、実に象徴的な「レビュー」だとも感じた。おそらく、この著者の本を読んでデジカメへの物欲がかき立てられる人も、著者と同じく無目的に「デジカメ欲しい」と思うタイプの人だろう。つまり、目的がはっきりしなくても「欲しい」のだ。写真を撮る機械としてのカメラが成熟商品となり、すでに一家に一台以上ある現実を鑑みれば、デジカメを目的を持って買うことのほうが難しいとすら感じる。さらにデジカメを買わなければならない切迫した理由なんて、果たしてあるのかどうか。デジカメという商品が寄って立っている場所の寄る辺なさを感じてしまった。とくに近過去のデジカメの陳腐化の速度を見ると、諸行無常の感がある。そのへんが、デジカメに魅力を感じない理由の一つでもあるような気がする。
▲そんなご時世に、マニュアル銀塩カメラの最たるカメラ、ローライの本『使うローライ』(双葉社・1700円+税)の増刷が決定。これで3刷目。


2003/02/13/Thu.
▲晴れ。暖かい。
▲ペット関係の本、資料探しなどなど。
▲つい最近買い換えたケイタイ、SO504iが突然「故障しています」というアラートが出てストップ。唖然とする。DOCOMOショップの修理部門で見てもらったら、「原因不明。メモリ吸い出し出来ず」とのこと。バックアップなんて取ってなかった。窓口のおねえさんも「こういう故障は初めて」だって。何にもしていないのに。大嫌いなソニー製品(経験的によく壊れる。スカしたデザインが嫌いなどなど)なんか買うからだと自分を責めてみたり(一番安かった)。まあ、機械に頼るほうもどうかしているわけで、今後はケイタイ頼みはやめようと思う。
▲製品は新品と交換(DOCOMOショップって、全機種全カラーの交換用新品を用意してるんだろうか?)30分ほどで交換完了。保証書は手元になかったが、電話番号から購入時期を確認して無料交換。対応はとてもよかった。DOCOMOの人に「申し訳ありません」と謝られるのも変な感じ。製造元に壊れた理由の追跡調査してほしい旨お願いする。一ヶ月ほどで回答が得られるはずとのこと。
▲オンライン書店bk1<ブックサイト ヤスケン>に記事「ヤスケンのお葬式〜弔辞(村松友視さん、寺島靖国さん)、喪主挨拶ほか」をアップ。お葬式に行けなかった方のために。


2003/02/12/Wed.
▲晴れ。寒い。
▲Kさんからお借りしたいしかわじゅん『薔薇の木に薔薇の花咲く』(全3巻・扶桑社文庫)読了。タイトルからは想像もつかないが相撲ギャグ漫画。それもかなりシュールな。「力士はなぜゴンスというのか?」という問いかけの深遠さ、力士の大量発生、いじめられっこの相撲取り、プリン好きの横綱などなど、ナンセンスの極み。
▲ブックオフで森山大道『サン・ルウへの手紙』(河出書房新社)を発見、律儀に定価の半額で売っていて、狂喜。即購入する。内容充実。何を撮っても森山大道。見ていると、何を撮ってもいいんだな、と思わせてくれる。つまり自由ってこと。ほかに富山治夫『現代語感1961-1999』展ブックレットを購入。
▲オンライン書店bk1<怪奇幻想ブックストア>に東雅夫さんの記事「メールによる一問一答/第2回ムー伝奇ノベル大賞優秀賞受賞作『ダークサイド・エンジェル紅鈴』の誉田哲也さん(作家)に聞く」をアップ。


2003/02/11/Tue.
▲雨の建国記念日。
▲使い物にならず。蒲団の中で『マークスの山』(下巻・講談社文庫)読了。ラストが違う。違うと言うより、カットしている。それに、全体を通して、ディテールがかなり違っている。「薄く」なった印象だ。マークスの像がよりはっきりと、高村薫好みになったというか……。ぼくはどちらかというと、ハードカバー版のほうが好きだ。「さかき」でお寿司食べたい。
▲なんとかオンライン書店bk1<怪奇幻想ブックストア>に東雅夫さんの記事「幻妖週報〜店長備忘録〜」をアップ。
『吉増剛造詩集』(ハルキ文庫)をポケットに入れて、野方の商店街で買い物。1936年(昭和11年)開業の乃がた食堂(野方食堂)という定食屋で夕飯。お店全体からいい感じのオーラが出ている昔ながらの定食屋で、働いている方々もみなさんヴェテラン。で、仕事が手早く、美味しい。小さな幸せを感じる。
▲映画『県警対組織暴力』(1975年・東映)をビデオで。深作欣二監督、笠原和夫脚本という『仁義なき戦い』の名コンビ。深作欣二が亡くなったのはご承知の通りだが、笠原和夫も先頃、分厚いインタビュー本『昭和の劇』(太田出版)を遺して亡くなったばかり。
▲西日本の各地を取材したと断った上で架空の街「倉島市」が舞台。地元ヤクザともちつもたれつ、ヘタするとヤクザ以上にヤクザなマル暴の刑事たち(菅原文太、佐野浅夫、山城新吾)。戦後間もなく倉島市を仕切ってきた大原組(組長の遠藤太津朗は刑務所、組長代理は松方弘樹)と、大原組から分派し、抗争の結果、カタギになって市議会議員になった金子信雄が後押しする川手組(組長の成田三樹夫は商いの巧いインテリヤクザ)が激しく対立し、松方弘樹の男ぶりに惚れた文太は大原組を後方支援するが、県警からやってきたエリート警部・梅宮辰夫は所轄の綱紀粛正を徹底させ、刑事とヤクザの癒着を禁止し、大原組を叩くが……。
▲戦後の混乱期が終わり、ヤクザの役割も、警察のホンネとタテマエも変化せざるを得ない状況にあって、いったい誰が正しく、誰が間違っているのか? 敵も味方も区別が付かなくなった高度経済成長期のアウトローたちの姿をリアルに描く。骨太のドラマに、イキのいい役者たちの弾けた演技、深作欣二のテンポのいい演出が噛み合って、見応えのある映画になっている。この映画を見ていると、深作欣二、中島貞夫らによる「実録」ヤクザ路線は、アメリカン・ニューシネマと呼応するような、劇映画の質的転換なのではなかったかと思う。


2003/02/10/Mon.
▲曇り。
▲茗荷谷。楽しい酒だったような気がする。


2003/02/09/Sun.
▲晴れ。
▲巣鴨とげぬき地蔵。台湾料理。猿田彦神社を強く薦めるおじいさんとの邂逅。染井霊園。
▲韓国映画『火山高』を新宿パラスで。チャン・ギョンス(チャン・ヒョク)は強烈な「気」を発散しているばかりに、ケンカに巻き込まれ、これまで退学8回。今度こそ、耐えて卒業を果たそうと誓っている。しかし、転校先の火山公は、校長が手中に収めている「師備忘録」をめぐって、教師と生徒が激しく対立していた。ギョンスは闘いに巻き込まれまいとするのだが、女子剣道部の主将ユ・チュイ(シン・ミナ)にひとめぼれ。彼女を争って、学園ナンバーツーのチャン・リャン(キム・スロ)にケンカを売られるが……。
▲全編にわたってデジタル色彩処理を施した気合いの入った映像と、香港映画のそれよりも重量感のあるワイヤーアクションを多用した派手なアクションシーンだけでモトをとった気分になった。裏返せば、設定に無理があったり、ストーリー展開がまどろっこしかったりもするのだが、眼をつぶってもいいと思ったのは、作り手たちの熱気があふれているからだ。80年代に鈴木則文監督が撮った学園コミカルアクションもの(『伊賀のカバ丸』『コータローまかりとおる!』『ザ・サムライ THE SAMURAI 』)を思い出させる。もっとも、お国柄なのか、『火山高』は、馬鹿馬鹿しい設定にも関わらず、ギャグは控えめ、お色気も抜きだけど。日本の会社(アミューズ)もお金を出しているので、吹き替え版もあるらしい。


2003/02/08/Sat.
▲晴れ。
▲ヘヴィー級の二日酔い。藤沢まで原稿を取りに。
▲飯沢耕太郎『写真評論家』(窓社)読了。いいわけが多いというか、腰が引けているというか。しかし、そんな著者のパーソナリティー以上に、写真について書いたり、出版したりというマーケットの小ささが悲しい。写真評論家の「現実」を知る上で貴重な本。
▲高村薫『マークスの山』(上巻・講談社文庫)スタート。
▲映画『人生劇場 飛車角と吉良常』(1968年・東映)。名監督内田吐夢晩年の作品。『人生劇場』は何度も映画化されているが、この映画は「残侠篇」を映画化したもの。キャスティングは飛車角に鶴田浩二、吉良常に辰巳柳太郎、宮川に高倉健、おとよに藤純子、青成瓢吉に松方弘樹、瓢吉の「先生」に信欣三などなど。豪華かつツボにはまった印象。フジカラーによる、人工着色的カラーも、美しい。
▲ほかに気になるヴァージョンは加藤泰監督版。そっちは青春篇、愛欲篇、残侠篇すべてを映像化。167分の大作である。


2003/02/07/Fri.
▲晴れ。
▲横山秀夫『第三の時効』(集英社)。横山秀夫作品の刊行ラッシュだ。ちょうどいいタイミングで各シリーズの連絡短篇が単行本一冊分にまとまりつつあったようだ。『陰の季節』(文春文庫)『顔 FACE』(徳間書店)はD県警、『深追い』(実業之日本社)は三ツ鐘警察署だったが、本書はF県警シリーズ。新味は、捜査一課強行犯捜査一係(通称一班)〜三係(三班)のそれぞれをキャラクターの違うリーダーが率い、驚異的な検挙率の高さを誇っているという設定にある。なかでも「 囚人のジレンマ」が面白かった。彼ら三人の個性的な刑事とその配下を束ねなければならない捜査一課長田畑の目から描いた事件の顛末。獲物を奪い合う猟犬としての一面と、職能集団としてのさらりとした人情味がある一面とを見事に描いて爽やかな感動を覚えた。
▲新旧の友人と吉祥寺で。


2003/02/06/Thu.
▲晴れ。
▲午前中、安原さんの追悼企画のことで、電話をもらったり、人と会ったり。ぼくは大したことはできないけど、安原さんリスペクトの企画がさまざまなメディアで生まれるのは嬉しいし、できることは何でもしたいと思う。
▲午後、『ライカでNUDE』(4月下旬刊行予定・双葉社)デザイナーへ原稿渡す。
▲タバコの煙でもうもうとしているマクドナルド(赤字転落したから余計そう感じるのかも知れないが、場末感たっぷり)で高野和明の新刊『K・Nの悲劇』(講談社)を一気読み。『13階段』、『グレイヴディッガー』(講談社)と同じく、タイムリミットを設定したサスペンスだが、今回はホラー風味も。引き出しの多さ、「勝ちパターン」を持っていること、現代社会からネタをピックアップしてテーマとして生かしていることなど、ベストセラーになる要素を持ったエンターテインメント小説の王道をゆく。先入観なしに読んでほしい。クライマックス、「やりすぎ」と思いながらも泣ける。おすすめ。
▲ジョイス・テネソン『トランスフォーメーションズ』(トレヴィル・1993年)、ジャン・ルー・シーフ図録(G.I.P)を古書店で。テネソンは松浦寿輝『幽』(講談社)の表紙写真にも使われている。非現実的な趣向を懲らしつつ、演出された空間のなかにモデルの肉体が際だってくるカラー写真。夢と現実の境目が描かれているともいえるけど、心地よさよりも厳しさを感じる。死とか孤独とか、そういうネガティブなイメージを内包しつつ、なおも美しい。
▲巻末のインタビューでは、ファインアートの写真家が、ワークショップの先生から、一念発起、ニューヨークに出て広告写真家として成功するまでの経緯や、芸術と広告の仕事にどう折り合いをつけるかなどの問題が率直に語られていて興味深い。写真家という「仕事」のあり方に興味があるからだ。シーフ図録は印刷は優れているものの、判型が小さいのでやはり大判の洋書を取り寄せたいと思ってしまう。
▲映画『座頭市と用心棒』(勝プロダクション・1970年)をビデオで。大映なきあと、勝プロで製作し、東宝が配給した。監督は岡本喜八。用心棒とはいうまでもなく三船敏郎である。骨休めのつもりで平和だった里を三年ぶりに訪れた市。ところが、その里は生糸問屋の主(滝沢修)とその息子でヤクザの首領(米倉斉加年)が激しく対立し、荒れ果てていた。対立の背景には、鋳造途中の小判から金をごまかして造ったのべ棒の存在があった。ヤクザの用心棒に三船、さらに、九頭竜と名乗る殺し屋(岸田森)が登場し、クライマックスへ。大映時代の座頭市のアナーキーさが薄れ、カチっとした構えの確かさを感じるのは、東宝という「スタジオ」の空気が残っているからだろう。過去の映画で見たような悪役、対立の構図、クライマックス……それらをパクリではなく、本歌取りと見せる腕前が岡本喜八の面目躍如。大河ドラマ『武蔵』が『七人の侍』を借用して名画に泥を塗ったのとはえらい違い。
▲ところで、北野武が座頭sを監督・主演すると報じられたが、『座頭市と用心棒』を久方ぶりに見て、問題は差別語だと思った。差別ネタで一斉を風靡したたけしだから、座頭市のもつ差別をネタにしたユーモアをたけし流にアレンジ、発展することは十分にできるだろうけど、現在の日本で「どめくら!」とか「かたわ!」が連発される映画って成立するんだろうか? もちろん、成立してもらいたいが、言葉をなくすることで差別を隠蔽しようとする現在のこの国ではとても困難だと思ってしまう。いっそ、全編外国語でやったほうがいいかもしんない。あるいは、差別語にすべて「ピー音」入れるとか。いずれにせよ、トホホ、だ。


2003/02/05/Wed.
▲晴れ。
▲Oさんからありがたいメールをいただき、涙。
▲舞城王太郎『阿修羅ガール』(新潮社)の書評をbk1にアップ。
▲加藤郁乎『後方見聞録』(学研M文庫)読了。めっぽう面白い回想録。加藤郁乎は60年代アングラカルチャーと歩調を合わせて大暴れした大酒飲みの俳人。本書は澁澤龍彦、池田満寿夫、白石かずこ、西脇順三郎、田村隆一、笠井叡、吉田一穂、窪田般彌、松山俊太郎などなど、著者の師・友人たちについてその思い出を書きつづった本。内容については服部滋さんの書評に書かれている通り。服部さんも指摘しているように、文庫化にあたって書き加えられた「矢川澄子」の章は衝撃的。しかし、そのことを抜きにして、まず、上記の名前にピンとくる方にはおすすめしたい。とにかく面白い。
▲また本書には写真も数多く掲載されているのだが、その中に細江英公さんがこのあいだ行なった大規模な写真展(山形県立美術館、松濤美術館ほか、写真集あり)でも誇らしげに大伸ばししていた一枚の写真があった。加藤郁乎の句集の出版記念パーティーが花園神社で開かれた時の記念写真(1971年)だ。三島由紀夫や土方巽とのコラボレーションや、ソラリゼーションによる作品で知られる芸術派の写真家の作品展に展示されるにしては、モロ記念写真ゆえ、違和感を感じたのだが、その面々を見れば、この一枚が60年代のカルチャーシーンの立役者たちが「揃い踏み」した写真であることがわかる。細江英公が彼らの同伴者として走ったことの証なのである。加藤郁乎も本書の中で、大型カメラを担いで記念写真を撮影した細江英公の様子を描いている。どんな人たちの顔があるかは実物をご覧になっていただくとして、いかにも惜しいのは、「五十音順名簿」はあるが、誰が、どの人かわからないことだ。そこに、若き日の安原顯さんの顔もある。


2003/02/04/Tue.
▲晴れ。
▲聖母病院。
『チーズプラザ』(メディアセレクト・1月25日発売)次号企画の大枠決まる。
▲P嬢来襲。チェブラーシカを見たり、水商売の裏話、のろけ話などなど。
▲就寝前に安原顯『ふざけんな』(図書新聞)。10年前に出た対談集だが、内容は現在と通底する部分が多い。今日は最初の辻井喬(堤清二)との対談。セゾン・グループの破綻以前に行われたものだが、いま読むとその末路を予感していたのではないかと勘ぐりたくなるような発言も。社員はたまったもんじゃないけど。


2003/02/03/Mon.
▲晴れ。
▲安原さん宅へ吉増剛造さんの詩を届けに行く。夕飯をご馳走になり、黒糖焼酎をいただきながら、奥さん、娘さんと歓談。式の後も何かと忙しく、お手伝いいただいた方への礼状を書くこともままならないとのこと。毎日、日経の文芸欄に記事が載ったり、ラジオで追悼企画があったりと、死してもなおヤスケンの周辺はにぎやか。お葬式のテープをお借りして帰る。オンライン書店bk1「ブックサイト ヤスケン」に弔辞(村松友視さん、寺島靖国さん)を掲載する予定。
▲ヤスケン追悼メッセージ、今日いただいた分を更新する→読者のみなさんから寄せられた「追悼メッセージ Q月2日分」


2003/02/02/Sun.
▲曇り。
▲K嬢とランチ。「気分の落ち込みが激しく、体調不良。食欲もない」というので心配していたのだが、表情はむしろ以前よりも人間らしい感じ。じゃあ、昔は何だったんだと言われそうだが。K嬢の希望で明治神宮を参拝する。10年以上ぶりにお参りしたのだが、立派なトコですな。写真をはじめるよう、勧めて別れる。フォトセラピー、という言葉があるのかどうか知らないが、写真表現とその写真を受容するという行為にはセラピー効果があるのではないかと思っている。
東京都写真美術館「エド・ヴァン・デル・エルスケン写真展 セーヌ左岸の恋」を見に行く。エルスケンが好きなので。「セーヌ左岸の恋」とはオランダからパリに出てきて、若い芸術家仲間たちと青春をすごしていたエルスケンが日常的に撮りためていたスナップを、フィクションによって再構築した写真集。日本版も出ていて、ぼくも持っている。大伸ばししたプリントを見られるというのは確かにありがたいし、何しろ好きな写真家なのだが見に行ってよかったのだが、不満も残った。
▲入場料1,000円。それにしては写真点数が少ない。川崎市民ミュージアムから作品を借りたり、エルスケンと交流があり、写真家としても影響を与え合った細江英公の作品も展示されていたのだが、それらがどうも穴埋めのような印象があるのだ。しかも、本邦初公開のシリーズでもなく、すでに写真集が出ているものだから、新鮮みはない。図録はなく、日本版の写真集を販売するのみ。なんだか、手抜きの展覧会だなあ、という印象が拭えなかった。もっとも、エルスケンのことを知らない人、初めて写真を見るという人にはいいきっかけになるとは思う。「セーヌ左岸の恋」のヒロインの女性は実は画家で、のちにイタリアにアトリエを持ち、77年にエルスケンがそのアトリエに彼女を訪ねた様子を撮影したドキュメンタリーを会場で上映していた。2月23日まで。
▲新宿TSUTAYA。半額セール中。日本映画ばかり三本。さっそく『仁義なき戦い』(1973年)。二度目だが、最初に見たのは十代の頃なので、だいぶ印象が違う。照明のせいなのか、光がよく回っていて、いかにもスタジオの映画という感じがする。『仁義なき戦い』といえば、手持ち撮影、傾いた画面、大胆な暴力描写。たしかに、すでにそのような手法は使われているが、シリーズ第一作らしく、それまでの撮影所システムの劇映画の尻尾が残っている。金子信雄が最高で、笑ってしまうところが何カ所か。文太の演技にもどことなくユーモアが漂っていて、後年、トラック野郎になる素質が感じられる。その後の文太が冴えないのはユーモアを失ったからではないか? 『北の国から』で純くんをボコボコにしていた文太にユーモアがあれば、あれほど陰惨にならなかったんじゃないだろうか。実録シリーズの幕開けだが、シリーズ後半のエスカレートが今から楽しみだ。


2003/02/01/Sat.
▲晴れ。
コニカプラザギャラリーで写真展を3つ見る。どれも面白かった。
▲ギャラリーAは永沼敦子写真展「にせものトレイン」。電車の中で、ついつい見てしまう、人の顔、足、手……。デジカメで大胆に切り取ったまなざしの強烈さに感動する。「作者コメント」にも感動したので、引き写しておく。「電車の中で、私は本当に変態だと思う。何かのフェチなのかも知れない。/でも実際のところ、あなたもそうじゃないですか。チラッと見てるくせに。/みんな勝手なことをやってるんです。かっこつけても無意識にさらけ出しているんです。/私はそれらをいつものようにデジカメに吸い込み、真空パックみたいにして持ち帰ります。/そんな写真行為が、もう始まっているのです。」永沼敦子はWEBサイトでも活動しており、anore24で作品がたっぷり見られる。会場で「Declonaison」なるフリーペーパーをもらったのだが、永沼敦子スペシャル。永沼敦子の写真について、乗客の視線を映像化したもの、とわかりやすく解説しているHiroshi Oshimaって大島洋だと思ったら、「Declonaison」の発行元にVALIS DEUXとある。VALIS DEUXの大嶋浩さんがHiroshi Oshimaだったのだ。いろいろな難しいことに通じている方だと思っていたが、写真評論の腕前も見事。
▲ギャラリーBは芹澤敬子写真展「ウテラスラマ」。こちらは、6×6カメラで夜のゴルフ場を撮影したシリーズ。きれいで、心地いい。そして、寂しい。このシリーズから厳選された100枚で写真集になったら、絶対に買うと思う。
▲ギャラリーCは石井雅義写真展「森のはじまる時」。公害で死の山と化した足尾銅山を再生させる試みが続いている。その山の姿を大型カメラで撮影したシリーズ。造形的な官能か、ドキュメントとしての律儀さかで揺れている感じがあって、少しもどかしさを感じたのだが、破壊された自然が再生していく過程で起こっているさまざまなことが一つひとつ興味深かった。
▲3つとも、3日(月)まで。新宿駅からすぐなので、お時間があればどうぞ。入場無料です。
▲カウンセリングルームを立ち上げたばかりの女性三人と経営コンサルタントのO氏と新大久保屋台村。その後、メンバー全員で歌舞伎町の寿司屋で別の飲み会に合流したのだが、そこで紹介されたのが東京芸術座取締役の釘崎康治さん、同演出部所属で劇作家・演出家の平石耕一さん、女優の青山恵子さん。東京芸術座は戦前からリアリズム演劇を追求し、新劇のひとつのかたちを造った村山知義によって創設された。平石さんは松本サリン事件を報道被害がなぜ起こったか? という視点から描いた『NEWS NEWS』(熊井啓監督が『日本の黒い夏 冤罪』として映画化)などで知られている。
▲宮本研の戯曲『美しきものの伝説』が好きだという話をしていたら、平石さんの新作は大正デモクラシーの、まさに『美しきものの伝説』と同じモティーフに挑むものだとか。明治どころか大正も遠すぎるって感じだが、あの時代の雰囲気は好きだ。平石さんがどんなアプローチをされるのか、興味が沸いた。
▲ところで、演劇一般でいえば、ジャンルとしての新劇=ダサイというイメージがかたちづくられ、過去の作品も忘れ去られ、社会的なインパクトは乏しい──というのが現状ではないかと思う。村山知義どころか、宮本研の名前をいったいどれくらいの人が知っているだろうか? でも、情熱を持ってがんばっている人たちもいるのだ。ほかにアニメーション・ディレクターの宇井孝司さん(『葉っぱのフレディ』など)も紹介された。どういうつながりだったのか……ちょっと謎。しばらくぶりに演劇の話などして新鮮だった。妙に濃い時間だったなあ。


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