『コマネチ』
(北野武編・新潮文庫705円+税)
『HANABI』グランプリ受賞記念北野武読本
『HANABI』ベテチア映画祭グランプリ記念とでもいうべき本が何冊か出ている。そのうちの一冊が「新潮45別冊」、本書の元本だ。雑誌形式の本をそのまんま文庫化。これは、けっこう、珍しいことなんじゃないだろうか。
冒頭から、たけしとダウンタウンの松本人志の対談。お笑いの新旧革命児の顔合わせだが、意外に目新しいネタはなかった。
期待して読んだのは、硬派ルポライター吉岡忍(なぜ?)による『HANABI』製作現場ルポ。
たけしの映画製作現場のルポといえば、デビュー作『その男、凶暴につき』のルポ『監督たけし 北野組全記録』(佐々木桂・太田出版)を思い出す。おどろくほど、のちのたけしの作風となる特徴を言い当てていたルポだった。本書に収められた吉岡忍の理屈っぽい、「思索的」ルポよりもよほど面白かった。
軍団関係のネタは、個人的に苦手なのでパス。男が群がってるのって、なんか嫌なのだ。
もっとも、たけしのガキ大将気質が映画作りに向いていることは、軍団が証明しているのかも知れない。また、たけしの映画の中での軍団の連中は、誰も彼も独特の魅力を醸し出していてかっこいい。『3-4×10月』なんか最高だった。
面白かったのは吉川潮によるたけしのバイオグラフィー語りおろしだ。たけしの自叙伝『たけし!』(講談社)のゴーストライターをやったという吉川だけに、たけしのごく近くから、演芸評論家としての視点も入れつつ、たけし像を見事にあぶり出す。ツービートで漫才の世界を席巻した当時のことが詳しく書かれていて面白い。ちなみに、『たけし!』は、たけしのフライデー襲撃事件で絶版にされてしまっている(笑)。
そのほか、吉本隆明から、ナディア・コマネチまで、たけしへの手紙が収められている。
オンライン書店bk『コマネチ』
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