【アルカリ】0300
99/ 08/27(金)

『ミニコミ魂』
(串間努編・晶文社・1900円+税)

 ミニコミ誌の楽しみ方と作り方

 ミニコミって、すでに死語のような気もする。ちょっぴり懐かしくもある言葉だ。今風に言えばインディーズ・マガジンか。
 編者の串間努はノスタルジックなミニコミ誌「日曜研究家」を出している人。「ホットケーキ年表」とか「グリコのおまけ年表」とか、レトロでキッチュな消費文化を取り上げて研究発表している。書店で見て面白いと思った。ぼくの守備範囲じゃなかったので、買うまでにはいかなかったけど。

 でも、やっぱり好きな人は結構いるらしく、業界紙編集者だった串間さんは、「日曜研究家」で食べていけるようになり、脱サラして「日曜研究社」という会社を設立したそうです。

 本書は全国の名だたるミニコミ誌200誌を紹介し、ミニコミ誌の作り手たちからコメントを取り、加えてミニコミ誌の作り方、販売方法の実際などのハウツーも盛り込んだ充実の入門書である。

 まず、いろんなミニコミ誌があるのが面白いよね。とくに面白いと思ったのは、缶紅茶(「紅茶番付」)とか缶コーヒー(「珈琲番付」)などの嗜好品に対してマニアックなツッコミ方をしてる専門誌。こういう世界はミニコミじゃないと追求できないわけで、流通を通っている本じゃなかなか成立しないと思う。

 あと、やっぱし超個人的な視点のやつ。「車掌」っていう有名なミニコミ誌がある。塔島ひろみという人の個人的な関心事のみで作られているミニコミで、本書のライターが取材をしようとしたら、開口一番「もらった感謝状の量と質を競い合う『感謝状対決』を次号でやるから感謝状下さい!」と言われたそうな。なぜ感謝状? あと、人気企画「ザ・尾行」というのがあって、これは単行本にもなっているはずだ。

 あと、池松江美っていう、アーティストというかなんというか、ユニークなミニコミを作っている人がいて、この人の「Saya&me」なんて絶対にミニコミでしかできない。だって、天皇のところの長女サーヤをホメ殺ししてる本なんだもん(笑)。この本はタコシェに友人のNさんと行ったときにNさんが衝動的に買い求め、おなかがよじれるくらい笑ってしまった。ま、かなりダークな笑いですけどね(笑)。

 また、本書の特徴はミニコミを作ったはいいけど、どうやって売ればいいかについても書かれていること。本屋への直接営業の方法や、集金などについての具体的な方法が書かれている。ミニコミを作る人って営業には向いていない人が多いわけで、具体的なノウハウが書かれている方が勇気が湧くってもんだ。

 ちなみに、ミニコミを置いてくれている本屋のこともちょっぴり紹介してある。中野ブロードウェイのタコシェは知っていたけど、新宿二丁目の模索舎という本屋は知らなかった。とくに模索舎はミニコミをおく書店として老舗でありメッカらしい。はじめて知ったので、ぜひ行ってみたい。サブカル系のみならず今時めずらしい左翼系のミニコミ誌もおいてあるそうなのでたのしみ!

 というわけで、ミニコミの世界は奥深いぞ!


*晶文社は出版・編集関連の優れた本をこれまでにも出してるんだけど、本書は「シリーズ・新道楽人生」だって(笑)。次はどんなのを出す気だろーか??


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