『タイ・ラオス・ベトナム酒紀行!』
(江口まゆみ・文 小のともこ・絵 アリアドネ企画・発行 三修社・発売)
女二人のアジア酒紀行
旅に出るのに目的が必要なものなのだろうか?
この問いかけは、まア、簡単に言えば「なんでそんなトコ行くの?」という問いかけで、ハワイをはじめとしたリゾート各地、ヨーロッパの歴史と文明、芸術の旅ならば免除される。
しかし、それ以外の場所へ旅しようと思ったら、この問いかけから逃れることは難しい。他人から後ろ指さされるのならまだいい。自分のなかで「なんでそんなトコ行くの?」という問いが浮かび上がってくると、自分のことながら何やってんだ?? と思ってしまう。
本書は、そのへんが実に明確だ。ズバリ「酒を飲みに」。それ以外のなにものでもない。
男なら「酒を飲みに」旅に出るなどというのは実にスノッブ。アル中の照れ隠しにしても、キザに過ぎる。しかし、二人の女子が旅に出る理由として、これほどユニークかつ単純な動機はない。コロンブスの卵というべきか。これだけで、本書の成功は約束されたと言えるだろう。
タイ・ラオス・ベトナムを一ヶ月で、酒を追いかけて旅する。酒を追い、酒に導かれ、酒で現地の人と仲良くなってバカなことをさんざんやるというただそれだけの話。
旅に出ると酒は楽しみの一つだから、ぼくもできるだけいろいろな種類の酒を飲むようにはしているが、この本を読むまでタイのメコン・ウィスキーがウィスキーではないということすら知らなかった。モチ米とエチルアルコールをベースにサトウキビで香りをつけたものだという。どうりでマズイはずだ(笑)。
また、タイで焼酎を飲んだ経験もない。ベトナムではヘビ酒(滋養強壮用)を引っかけたことはあったが、酒造りの現場には遭遇しなかった。
その気になって探せば見つかるものなのだろうが、旅のテーマをコレ、と決めるのは案外むずかしいものだ。その結果、ガイドブックに載っている名所を一通り回っておしまい、ということになってしまう。
そう考えると冒頭の「なんでそんなトコ行くの?」という問いには、答える用意をしておいたほうが良さそうである。酒飲みならず、タバコ、マリファナ、コーヒー、紅茶の嗜好品群や、バス・鉄道、飛行機などの乗り物系、芸能・スポーツなどの観戦系から、芸術・文化系、食べ物にこだわっても面白い。
でも、いろいろありすぎて、決めかねてしまいそうだな、やっぱり。
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