【アルカリ】0259号
99/06/30(水)

『真夜中の侵入者 市会議員連続わいせつ事件』
(松田美智子・幻冬舎アウトロー文庫・495円税)

 ま、一種の病気なんだろうけどね……

 『女子高校生誘拐飼育事件』の松田美智子による「犯罪実録モノ」である。親本はやはり恒友出版から刊行されている。
 女子高生を誘拐して性の歓びを教えちゃおうという「男の夢」をルポした『女子高校生誘拐飼育事件』と対になる「男の夢」を追ったのが本書だ。わかりやすすぎるタイトルだが、中味は仰天です。

 東京近郊の某県の小都市が舞台。前畑という男が主人公だ。
 地主の家に生まれ、派手なことが大好きな彼は、酒も煙草もやらず、仕事熱心で美しい妻もいる。舞台美術の会社を興して、社内不倫を楽しんだり、外車を乗り回したりと毎日をエンジョイしている。やがて野心は政治に向かい、市会議員に当選。まさにわが世の春。人もうらやむような成功を遂げていた。

 しかし、彼には誰にも言えない秘密があった。

 男は、街で見かけたイイ女のあとをつけて、その女の住居・交友関係を調べあげた後で、その女の寝室へ秘かに忍び込んでいた。そのうえ、寝ている女性のパンツをハサミで切り、そのパンツを収集していたのだ!

 あーばかばかしい。
 なんでこんな本読んでんのかなーオレ。
 もっと、ほかに読まなくちゃいけない大事な本があるような気がするんだよなー。

 しかし、なーんかいい味出してるんですよ。これ、ワザとなのかなあ。どう考えても、このルポって

「こういう犯罪ってけっこうバレずにやれまっせ、旦那」

 って感じで、暗に犯罪をそそのかしているような……。

 だいたい、この前畑という男自身が、週刊誌で読んだレイプ魔の記事を参考にして女の部屋に忍び込んだりしてるんだもんな。

 また、見出しがいいんですよ。もう、先を読まずにはいられないって感じで。

 「初めての獲物は女子高生」「恋人同士の部屋へ侵入」「女の横でマスター
ベーション」「襲った少女は合気道の有段者」などなど。

 ああ。なんか脱力する。

 しかし、この調子、どこかで、と思ったら、思い出しましたよ。

 たぶん、現在30歳以上の人しかピンと来ないかも知れないけど、これ、『ウィークエンダー』の世界じゃん。

 あの、泉ピンコもレポーターをやっていたという伝説の三面記事解説番組『ウィークエンダー』。レポーターたちが口角泡を飛ばしながら語り下ろしていたエロ+グロ+ナンセンスな三面記事の数々を彷彿とさせる調子なのである。

 どっかヌケてて、そこがおかしい。

 たとえば、この男、たった一度だけ思いあまって挿入してしまったほかは、いつも、見て触る、時にはオナニーする、という鑑賞派。真夜中に「侵入」するスリルだけでもうイキそうって人みたいなんですよ。しかも、いつもハサミもって行くわけ。

 ハサミ持った中年男が夜な夜なパンツを切りにいくっていうのは、なんか、もう、シュールな世界だよね。しかも、眠っていて気付かなかった女性もけっこう、いるっていうし。

 どこか、ばかばかしい犯罪。そのくだらなさが、イイ味を出しているのである。

オンライン書店bk『真夜中の侵入者』

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