【アルカリ】0258号
99/06/29(火)

『女子高校生誘拐飼育事件』
(松田美智子・幻冬舎アウトロー文庫・495円税)

 女子高生監禁は男の夢か

 『福田和子はなぜ男を魅了するのか』の著者の初期作品だ。単行本は恒友出版というところから出ている。いわゆる実話事件もの。竹中直人主演で映画化もされた。『完全なる飼育』である。

 前書きが面白い。
「結局彼は、“色魔”の烙印を押されたまま、五年もの実刑判決を受けましたが、多くの男性が一度は描いたであろう夢をかなえた、幸せ者であったかもしれません。」
 うーん。いいですね、このフレーズ。

 説明の要もないような気がしますが、この本は女子高生を誘拐監禁した中年男が、性の歓び(笑)を誘拐した女子高生に教え、それなりによろしくやっていたんだけど、最後はバレてとっ捕まったというお話しである。

 で、果たして、そんなことが起こりうるのか?

 冴えない中年男に誘拐された処女が性の虜になってけっこう幸せ、というようなことが。

 というような疑問に対してこのルポは「そういうこともあるかも」と控えめながら事例をあげている。そういう意味でまさにポルノである。だって、誘拐犯にセックスを強要されて気持ちよくなるってのは、いくらなんでも男に都合がよすぎる(笑)。

 しかし、このルポはファンダジーではない。そこが厄介なところであるけれど、いわゆる「ハイジャック症候群」という心理障害で説明できる。

 ハイジャックに遭遇した被害者が、意外なほどハイジャック犯へ同情的になるという状態だ。同様に誘拐監禁状態にあった人の心理状態には、しばしば誘拐監禁者への依存的な感情が生まれるのである。

 極端に抑圧された状況におかれると、人は判断力が狂ってくる。入ってくる情報量が少なくなると、いま、ここで得ている情報を鵜呑みにしやすくなる。その結果、本来は脅迫者である犯人に従順になることで得られる安寧に心惹かれるようになる。

 で、それがポルノ方面に転んだのがこの本。下らないんだけど、そのくだらなさがいいんだよね。

 大体、章立てのタイトルが「まぶしい十七歳の裸身」とか「初めて見た精液」とか「優しいセックスの手ほどき」とか「開花した若い肉体」とか「セーラー服プレイの狂態」とか、アナクロ。ピンク映画かロマンポルノか。面白すぎる(笑)。

 男の夢としての女子高生監禁という位置付けはさもしくてよい。結局は、中年男は女子高生の旺盛な生命力に負ける、と思う。その必然が、男の哀れっぽさをいや増すのである。ま、そんなことはどうでもいいか(笑)。

オンライン書店bk『女子高校生誘拐飼育事件』

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