『AV女優2 おんなのこ』
(永沢光雄・コアマガジン社・2800円+税)
AV女優フィールドワークとも言えるインタビューの逸品
ベストセラー『AV女優』(ヴィレッジセンター→文春文庫)の続編である。
アダルトビデオの情報誌に連載されている異色AV女優インタビュー・シリーズ
だ。
『AV女優』を読んだ時には驚いた。とにかく読ませる。おもしろい。ホロっとこさせる。まったく聞いたことがないライターだったけれど、書ける人って、いるところにはいるんだなあ、と思った。
今日、たまたま仕事先で【アルカリ】読者でもあるA氏が文庫化された『AV女優』(文春文庫)を読んでいた。
A氏いわく「でもさ、これってウソじゃない?」
「そう。これ、ほとんどウソですよね、やっぱり」と返した。
この本はそこがミソなのだ。
しがない中年ライターが、世間から差別されているところの性的労働者であるAV女優の女の子立ちから3時間、4時間と話を聞く。そして、そこで聞いた話から、ある時は対話形式で、ある時は小説風に、ある時はモノローグで、というように形式を変えながら、一編のインタビュー記事に仕上げる。
そこで、AV女優はウソをつく。このおじさんが聞くのは、その女の子のの生い立ちであり、性体験だからだ。
だから、とんでもない話をウソを交えてしゃべる。そして、永沢光雄はそのウソを全部受け止めて、書く。ここがミソと言った部分だ。つまり、永沢はウソをウソとして受け止めて、そのウソをつく目の前の女の子を見事に描いているのである。
ふつう、ノンフィクションとかルポルタージュというのは、事実を積み重ねて真実に至るというのが基本的なお約束になっている。そのルールに照らせば、『AV女優』は、ただ聞いたことをたくみに演出して書いた泡沫的な取材記事ということになるかもしれない。
しかし、このルポは確信犯的にそのルールを逸脱している。
なぜなら、永沢光雄は事実の積み重ねから真実が見つかるとは考えていないからだ。むしろ、ウソが飛び出してくる生々しい現場にいた自分という存在を、一つの真実と捉えているのだと思う。
そして、世の中で自己防衛のためにウソをつくのは差別される側と決まっている。AV女優は構造的にウソをつく存在なのである。そのウソに取り込まれつつ、しっかりと自分の土俵にもってきてしまう巧妙なワザを持った書き手が永沢光雄という人だ。凄いと思う。
傑作インタビュー集『AV女優』の続編は、やはり面白い。
前作ほどのインパクトはないが永沢節は変わらない。分厚い本だが、苦もなく読める。
面白かったのは、むしろ、インタビュイーであるAV女優の変化だ。前作に比べて、明らかに職業人としての自覚を持った人が多い。前作ではウソかホントかはともかく『ファザーファッカー』ばりの不幸な生い立ちが続出していて、その情念の噴出にたじたじとなってしまう部分があったけど、続編では、みなさん、職業としてAV女優を選んでらっしゃる。
どうやら、援助交際よりはプロの仕事であるという比較対象論で、AV女優が仕事として認知された模様なのである。
うーん、変な世の中だナー。
ま、そのへんは興味のある方が勝手に読んで感想を持ってもらうとして、永沢光雄のスタイルはいよいよ名人芸である。
オンライン書店bk『おんなのこ AV女優 2』
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