【アルカリ】0239号
99/06/1(火)

『J−POP進化論』
(佐藤良明・平凡社新書・690円+税)

 日本の歌謡曲の深層をさぐる

 音楽にはあまりこだわりがない方だ。誰かが「これ、いいよ」と勧めてくれれば、素直に聴いてよろこぶ。しかし、ロックとが好みの音楽の中核にあるのは否定できない。世代的なものだろう。加えて、ポピュラー・ソング、ようするに歌謡曲だ。日本のものだけではなく、外国のものでも。理由は、たぶん、その国の文化とその時代の空気感が感じられるからだろう。

 ぼくにとって、音楽は大衆が支持するものであり、その土地の風景になじむものである。だから、のべつまくなし有線から流れてくるヒット曲の連打も嫌いではない。名も知らない曲を最後まで聴くために、ふらりと入った本屋から出られなくなることもある。

 『J-POP進化論』を書いた佐藤良明は東大の英文学の先生で、トマス・ピンチョンなどを訳している先生である。ポップ・カルチャーの洗礼を受けて育ったロック・ファン、ポップス・ファンだ。それらユース・カルチャーをとっかりにして、英米のポップスと大衆文化について一筋縄では行かいな論評をなしたのが『ラバーソウルの弾み方』である。これが滅法おもしろくてかった。でも、かなり難しくて手こずりもした。

 『J-POP進化論』では、ずばり、日本の歌謡曲の歴史を遡り、日本独特の民謡の音階と、世界の歌謡曲の趨勢となった白人・黒人連合によるロック、R&Bとの衝突という図式を示しながら、そのディテールを丹念に拾ってみせる。

 で、困ったのが、やたらドレミの音階が出て来るんこと。日本の音楽教育をサボりまくったぼくにはほとんどわからなかった(笑)。さすが、東大に行く優等生は違う、と妙に感心してしまったが、問題はそんなことではない。むし
ろ、そこに導き出されている結論が、あまりにも、当たり前というか(笑)。

 感心しなきゃいけないところなんだろうけど、べつに、ここまで細かく音階がどーたらって言わなきゃいけないわけー? と首を捻った。アカデミズムのいやみったらしさに辟易したと言えばいいのか。音楽に詳しい人、音楽教育を真面目に受けた人なら、まさによくわかるのかもしれないけど。


オンライン書店bk『J−POP進化論』

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