『露出者』
(下関マグロ・メディア・ワークス 主婦の友社・1500円+税)
プライバシーのない男!
さて、この本の表紙には、著者の下関マグロの電話番号が刷り込んである。そう。露出者とは、プライバシーをすべてマスメディアで公開している男性、著者その人のことである。
下関マグロは、スワッピング雑誌の会社への就職を皮切りに、エロ業界でのフリーライター仕事をメインに十数誌に連載を持っている。レディース・コミックとか、裏物の本とか、SM関係の雑誌とか。
ある日、モテたい、というシンプルな発想から、自宅をテレクラ化すべく、ある時から電話番号をいろんなメディアに公開。その反響を原稿にするというゲリラ的な記事を書いた。そして、そのうち、自分をネタにすべく、サラ金への借金状況を告白&あらためて調査機関に信用調査したり、探偵を雇って自分の仕事の評価を調査してもらったり、見合いのドキュメントを記事にしたりと、常に自分を露出することで勝負してきた人なのである。
すごい。そして面白い。
電話番号を公開したら、イタ電攻勢にあったりするわけだけど、それが、苦じゃないという。どっちかっていうと、うれしいと書いている。その感じ、なんかわかるようなきがするんですよ。
大東京で、一人で暮らしていて彼女がいなかったりすれば、イタ電でもなんでもいいから電話がジャンジャン鳴ってくれた方がいいんじゃないか? 「鳴らない電話」ほど寂しいものもないわけだし。しかも、そこにかかってくる電話が女性だったりすれば、それだけで、夢があるじゃないですか。顔は見えないし(笑)。
まア、所詮一人上手であることは否めませんけどね。
で、下関マグロは、文中、モテないモテないと書いているけれど、ちゃんとやることはおやりになっていて、その顛末は、露出するメディアによって書き分けている。たとえば、レディース・コミックではエッチの顛末を。「裏モノの本」では振られ虫のトホホな毎日を書くわけだ。そして、そのどちらもウソではない。切り取った場面が違うだけなのだ。
また、下関マグロは、本名でビジネスのハウツー本を数冊出版していて、そちらもちゃんと売れて、講演なんかもやったことがあるというのだから、恐れ入る。露出しまくりの、その反響に応えまくりで、原稿もたくさん書いて。
まさにスーパーな活躍だけど、それらの活動をと並行した露出というのは、下関マグロ自身がメディア化してるっていうことなののではないか。
つまり、露出する、ということはきわめてメディア的。伝言ダイヤルもじゃまーるも、インターネットも、それらすべてが個人を繋ぐメディアに収斂する。
こういうコミュニケーションは、人類の歴史の中でかつてなかった。そして、それをまず、最初に実践しようとした果敢な冒険者のレポートが本書である。
おもろうて、やがて悲しき、そのペーソス&ユーモアあふれる語り口に、肩こりが取れていくような気色の良さを感じだ。
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